バレエからだ診断でバレエに必要な「柔軟性」をセルフチェック。
簡単な質問に「はい」or「いいえ」で答えるだけで、あなたのタイプがわかります!
診断スタート
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踊るために必要な三大要素<①柔軟性②軸の安定性(コア)③ターンアウト>。
この3つを簡単にセルフチェックできる、オリジナルの診断テストを3回にわたってお届けします。
監修&アドバイスをしてくれるのは、ヒューストン・バレエ&バレエアカデミー専属ストレングス&コンディショニングコーチの川﨑章広さん(通称アキさん)率いるPASMIのみなさん。
アキさんの豊富な知識と経験を基に、理学療法士、クラシック・バレエの先生の知見を集めて、あなたの「踊るための身体」を徹底解剖します!
第1回では、バレエに必要な「柔軟性」にフォーカス!
自分の身体を知れば、踊りのアプローチも変わります。
イラスト:武蔵野ルネ
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- もくじ
- 診断結果! タイプ別に詳しく
バレリーナタイプ
ダイヤの原石タイプ
コツコツ努力型タイプ
伸びしろ満点タイプ
【診断テストを解説】
部位別にわかる! あなたの柔軟性
【質問コーナー】教えてアキさん!Q & A
Q1. 柔軟性と弛緩性の違いとは
Q2. レッスンの前に行うといいことは?
診断結果! タイプ別に詳しく
<特徴>
生まれ持った柔軟性あり。子どもの頃、「バレエに向いているね」と言われたタイプです。
上半身、特に背中が柔らかい人は、正しいポジションでのアラベスクが行いやすく、「アダージオが得意」という人も、このタイプには多いでしょう。
ただし、関節がゆるゆるの「バレリーナタイプ」さんは、身体をコントロールするための筋力が人一倍必要でもあります。
<アキさんからアドバイス>
関節に負荷がかかりやすいタイプで、関節の怪我を起こしやすい傾向にあります。強い筋力がないと怪我にもつながりやすくなります。アレグロや大きなジャンプなど、瞬発力が必要なエクササイズが苦手な方は、補強トレーニングを取り入れてみましょう。
例えば、反張膝の人は、骨と骨をつっかえ棒のようにロックしているか、もしくは膝の後ろにある靭帯に骨がもたれている状態で、筋力を使わずに立っている場合があります。「これ以上は危険!」という身体のサインを察知する感覚も鈍くなっているため、関節を痛めるようなストレッチをグイグイ行っている人も。
まずは関節を少しゆるめて、負担がかからないところで立つ感覚を身につけましょう。アンロックの状態で立っているだけでも、関節を守る周辺の筋力がUPして、コントロール力が身につきます。
こんにゃくのように柔らかい身体をコントロールするのは、必要以上に筋肉が働いて身体が疲れやすくもなります。でも、正しい感覚&サポートする筋力がつけば、誰よりもしなやかに、プロのダンサーのようなダイナミックな動きもできますよ!
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<特徴>
バレエを踊るための可動域はありますが、筋肉の柔軟性がやや欠けています。
ただ、適切なエクササイズを行えば、ターンアウトやバレエの正しいポジションが身につきやすいタイプです。
「ダイヤの原石タイプ」さんによく見られるのは、関節のゆるさを守るために筋肉が無理に働き、身体が硬くなってしまっているケース。
このタイプは関節がゆるゆるなため、正しいアライメント(骨の配列)をキープすることが困難です。お尻、前の太もも、ふくらはぎばかりを使いすぎて、身体のラインに影響が出ている場合も。
「ダイヤの原石タイプ」さんの中には生まれ持った関節の可動域はあるけれど、バレエを始めたばかりで筋肉が硬いという人もいるかもしれません。
<アキさんからアドバイス>
ポワントを履くようになってから、ふくらはぎがモリモリ発達して硬くなったという人はいませんか? 筋肉は、使いすぎても、使えていなくても硬くなります。それを防ぐためにも、使った筋肉はその都度もみほぐす、使えていない筋肉は適切にトレーニングするなどのケアを行いましょう。
一度ポジションを見直して、正しいポジションでエクササイズを行うようにすれば、おのずとバレエに必要な柔軟性は身につきます。
まずは自分の弱いところを理解して、トレーニングを行うことから始めましょう。
関節がゆるい「ダイヤの原石タイプ」さんは、バレエに特化したストレッチよりも、関節をサポートする筋肉のエクササイズがおすすめです。
筋力UPと同時に身体の柔軟性も強化できる、下の動画のようなハムストリングのためのエクササイズは効果的! 筋肉を温めながらのストレッチは、怪我の予防やパフォーマンスの向上にもつながりますよ。
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<特徴>
生まれつき柔軟性をそなえているというよりも、努力の積み重ねによって、バレエのための柔軟性を身につけたタイプです。
「コツコツ努力型タイプ」さんは、関節のゆるさがないので関節が安定しているとも言えます。筋力が加われば、しなやかな動きや瞬発力を兼ねそなえたダンサーになれる可能性もあります。
<アキさんからアドバイス>
努力家ゆえに頑張りすぎてしまう人が多いと感じます。
ストレッチする時は、
①筋肉がきちんと伸びているか
②関節に負担がかかっていないか
を見極める感覚が大切。
脚を前後に開脚するスプリッツをしてみましょう。
ハムストリングが伸びてイタ気持ちいいなら◎。
ストレッチ後に、股関節や膝関節にじんわり痛みが残るようなら、それは身体の危険信号です。
ゆるんだ関節は元に戻りません。無理に作られた関節のゆるさでターンアウトをすると、関節や身体がどんどんねじれて怪我の原因にもつながります。
関節はゆるくないのに、180度に開いた1番ポジションができる……という人は、一度自分のアライメントを見つめ直してみましょう。
関節のゆるさがないのは安定性があるということ。決してマイナスなことではありません。筋肉のストレッチやサポートするトレーニングをしましょう。
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<特徴>
身体がカチカチで、思った通りに身体が動かない……という人もいるのでは?
でも、適切なエクササイズを行えば、身体は必ず応えてくれます! 努力次第では、バレエに向いた柔軟性を身につけることができるので、伸びしろ満点な身体をポジティブに受け入れて。
関節そのものは安定している可能性が高く、クセがついていないという点も「伸びしろ満点タイプ」さんの良いポイントです!
もし、長年バレエを続けているのになかなか身体が柔らかくならない……という人がいれば、誤ったストレッチをしている可能性があります。
<アキさんからアドバイス>
まずは、自分の身体の状態を理解することから始めましょう。
必要な水分量や栄養、休息、睡眠はとれていますか?
仕事などで同じ姿勢をとり続けて、身体が凝り固まっていませんか?
日常生活での自分の行動パターンを見つめたら、カチカチの原因が見えてくるかもしれません。
身体の柔軟性、関節の可動域が低いままだと動ける幅も狭く、怪我が起こりやすくなります。
股関節やハムストリングが硬いまま、グラン・パ・ド・シャはできません。
最初は、自分の身体のできる幅を理解して、可動域を少しずつ増やしていきましょう。
ストレッチして柔軟性を身につけるのは、怪我を予防するにも大切なこと。関節そのもののストレッチではなく、筋肉をストレッチするのがポイントです。
また、ストレッチを行う前に、全身にアプローチできるようなリリース……例えば瞑想や、呼吸法を取り入れてみるのもいいかもしれません。
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【診断テストを解説】部位別にわかる! あなたの柔軟性
<関節の可動域(弛緩性)をチェック>
①親指が手首にラクラクつく人は、生まれつき全身の関節がゆるい可能性があります。
②脚を伸ばして座った(長座の姿勢)時に、かかとが床から指2本分以上浮く人は「反張膝」です。膝関節がゆるい状態で、バレエを習っている人に多く見られます。
③手のひらを上にして、腕を肩の高さでまっ直ぐ伸ばした時に、肘が15度以上反る人は「反張肘」です。肘の関節がゆるい状態です。
<筋肉の柔軟性・可動域をチェック>
④股関節および、ハムストリングスを含む脚のバックラインの柔軟性をチェックしています。
頭・背中・かかとまで一直線になるよう立ちます。パラレルの状態で片脚を上げ、反対の手で上げた足をキャッチ。上の絵のように、上げた足の小指側を持つことができたら柔軟性あり。
⑤肩の柔軟性をチェック。両手をグーにして、背中のうしろで拳と拳がタッチできたら◎。上のイラストでは、左肩の可動域を診断しています。
⑥背中(脊柱の回旋)を診断しています。両膝、両足を合わせて座り、腕は胸の前でクロス。顔は正面を向いたまま、上半身をツイストします。前にくる肩の中心が、顔の下まで回旋できたら、背中の柔軟性あり。
⑦足首の可動域をチェックしています。壁を正面に拳一個分離れた位置にパラレルで立ち、そのまま片脚を立てて座ります。上の絵のように、立てている膝が壁にタッチできたら柔軟性あり。
【質問コーナー】教えてアキさん! Q & A
Q1. 柔軟性と弛緩性(しかんせい)の違いとは?
- A1.
柔軟性:関節の可動域+筋肉の柔らかさ・伸縮率
弛緩性:関節のゆるさ
<解説>
バレエの柔軟性を診断する時、僕は【身体の柔軟性】と【関節弛緩性】の2つをチェックします。
【柔軟性】のテストで一般的なのは、立位体前屈。身体の2カ所(手とつま先)の距離がどれくらい近づくかを測ることで、バックラインの伸縮率や股関節の可動域を評価します。
【弛緩性】は、関節の可動域だけをみて診断します。「弛緩性が高い」というと、一見バレエダンサー向きのように思えますが、スポーツ学ではあまりいい意味として使いません。なぜなら、本来あるべきテンション(関節包や靭帯などの張り)がゆるんでしまっている状態だからです。
バレエや新体操では、美しさを求めるがゆえに過度なストレッチをしている人を多く見かけます。それは正しい知識がないと怪我にも繋がりやすく危険です。
バレエで大事なのは、関節の弛緩性が高くても、関節周りの筋肉がちゃんと働いているかということ。
<関節の可動域>のチェックで「はい」が多かった人は、ストレッチだけではなく、関節周りの筋力トレーニングも意識して取り入れるよう心がけてくださいね!
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Q2. レッスンの前に行うといいことは?
- A2.
ウォームアップとは、ストレッチではなく、レッスン前に筋肉を温めて目覚めさせておくこと
<解説>
仰向けになり、全身に酸素がいきわたるよう深く呼吸するだけで、身体は充分温まります。
もしくはヨガブロックを内股に挟んで内転筋をチェックしたり、四つん這いになって「ドッグピー(犬のおしっこ)」というエクササイズを行うこともあります。
筋肉が活性化されていない状態でスプリッツをしたり、セラバンドで足裏のエクササイズをしても、あまり効果は期待できません。レッスンの前は、自分の身体に耳を傾けて、筋肉がアクティベートできる状態にしましょう。
最後に日常でも簡単に取り入れることのできる、ウォームアップのエクササイズをご紹介します。
バレエに必要な、ターンアウトを向上させる股関節のためのトレーニングです。
人間の身体には限度があり、股関節は45〜60度ほどしか開きません。バレエダンサーのようなターンアウトを身につけるには、日々のレッスンとストレッチに加えて、股関節をサポートするお尻(大殿筋)の筋力トレーニングが効果的です。踊るためには、関節を守る筋肉とダイナミックな動きを生み出す筋肉のバランスが大切です。特に「モンスターウォーク」は誰でもすぐにできるので、下の動画を参考に、チャレンジしてみてくださいね。
指導:アキさん、モデル:藤原青依さん(ヒューストン・バレエ ソリスト)
- 【川﨑章広 Akihiro KAWASAKI】
- 全米五大バレエのひとつ、ヒューストン・バレエ&アカデミーで2011年より専属ヘッド・ストレングス&コンディショニングコーチとして活躍。12年の経験の中で41%以上の怪我を減らした実績を持ち、生活習慣や日々のルーティンの大切さを唱える。
2020年10月には、世界中の芸術家やアスリートをサポート、支援するため、芸術・スポーツ・医療の分野を含めた各分野の専門家によるサポートシステムを構築し、還元することを目的とした団体PASMI(Performing Arts & Sports Medicine Institute)を設立。その代表を務める。
また、2021年、2023年には、ダンスに関する医療関係者、教育者、科学者およびダンサーによって設立された国際的な学術団体である国際ダンス医科学会(IADMS)に出席。2021年に「The Rob Bone Connected to the Finger Bone: Corrective Exercises for Fascial Lines of the Upper Body(上半身のファシア・システムとコレクティブエクササイズ)」、2023年には「Using Data to Empower Students: Pointe Readiness and Functional Movement Screening at Houston Ballet Academy(ポイント・アセスメントやファンクショナル・ムーブメント・スクリーンのデータをどのように活用法)」を発表し、ダンス医科学の分野で高く評価された。
- 「PASMIのサロン」情報はこちら → https://www.pasmi.org/salon
【参考】これまでに開催した川﨑章広さんのオンラインクラス一覧
●【第1回】効果的なウォーミングアップとセルフ・メンテナンスのストレッチ&エクササイズ
(2020年10月25日開催)
●【第2回】ターンアウトと外旋筋のトレーニング
(2020年11月22日開催)
●【第3回】体幹と腰骨盤帯を鍛えるエクササイズ
(2020年12月20日開催)
●【第4回】ジャンプのためのエクササイズと膝関節の怪我予防
(2021年1月24日開催)
●【第5回】ピルエット&ターンのためのトレーニング――軸の安定性と足首の怪我予防
(2021年3月21日開催)
●【第6回】アダージオを上達させる軸脚と足部のエクササイズ
(2021年4月18日開催)
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