★本日のリハーサル動画★
『マノン』第1幕より寝室のパ・ド・ドゥ(米沢 唯、井澤 駿)
※2/21追記:ただいま動画不具合のため調整中です。再開までしばらくお待ちください
※2/21再追記:再開しました
2020年2月22日(土)開幕の新国立劇場バレエ団『マノン』。
その出演ダンサーたちによるリレーインタビュー企画「私と『マノン』」、第1区からバトンを受け取り、第2区を走るのはこの4名です!
Videographer:Kenji Hirano, Kazuki Yamakura
インタビュー動画編集:Ballet Channel
4th Runner:井澤 諒(物乞いのリーダー)
前回の上演時はまだ入団前だったので、僕にとっては今回が初めての『マノン』です。
僕の演じる物乞いのリーダーは、この時代の貧富の差や、貧しい者の「生きるか死ぬか」という部分を、物語の中で表現していると思っています。
“物乞い”という言葉の通り、彼らはいつもお腹を空かせていて、明日生きていけるかどうかもわかりません。こういう役があるからこそ、「愛とお金のどちらを選ぶべき」ということが安易には言えなくなる。だからすごく大切で、重要な役だと思っています。
でも僕は役に入り込んでしまうと周りが見えなくなってしまうので、入り込みすぎる一歩手前で、役と客観的な自分との間を行ったり来たりしながら演じています。
個人的に好きなシーンは、第3幕の「沼地」の場面。マノンとデ・グリューが最後に踊るパ・ド・ドゥです。マノンとデ・グリューの激しい愛のぶつかり合いみたいなものを感じるし、マノンは最後、愛を選んで亡くなるのではないか、と思う。とても感動します。
ストーリーは同じでも、踊る人の何気ない仕草や表情で、観ている人の印象は変わります。そこにこそ、バレエの面白さがある。お客様にはそうした部分も楽しんで観ていただけたらなと思います。
★物乞い役のみなさんが表現しているもの……作品を観る時のヒントになるお話をありがとうございます! それでは井澤諒さん、次はどのダンサーを指名しますか?!
- 次は福田圭吾さんを指名します! 圭吾さん、いつもいろいろと教えていただいてありがとうございます。これからも、いっぱいいっぱい、技術を教えてください。よろしくお願いします!
5th Runner:福田圭吾(物乞いのリーダー)
2012年に『マノン』が上演された時にはレスコー役で出演しました。
セットが組まれた舞台に足を踏み入れたとき、まるで映画の世界にでも入ったかのような、違う劇場に立っているのではという感覚になりました。
レスコーは、彼を中心に物語がどんどん展開していく重要な役で、一つひとつの動きがどう見えているか、鏡を見ながらすごく研究した思い出があります。キャラクターとしては本当に悪い人というか(笑)。ですから演じる上でも、人間の汚い部分をどれだけ出せるのか考えながら演じたのを覚えています。
「マノン」第1幕 レスコー(福田圭吾)
今回、僕が演じるのは物乞いのリーダーです。
彼は、人から物を盗んだりするのが悪いことだとは思っていない。その無垢さが、当時のフランスが盗みをしなければ生きていけない社会だったことを伝えている。そういう役どころだと思っています。
序盤のシーンの踊りはダイナミックで、テクニック的には本当に難しいですが、僕たち物乞いの踊りでお客様を『マノン』の世界へと一気に引き込みたいと思っています。
役作りについては、演じるというより「なりきる」。その役の人生を、どんどん深く掘り下げれば掘り下げるほど良いのではないかと感じていて、それは役の大きさに関係なく、舞台上に出ているキャラクターすべてが同じだと思います。
もちろんテクニックも必要になってくるので、そのバランスの取り方が大変ですね。
キャラクターを自分の中に落とし込んで、その中で、いかにテクニックをきっちりやるかというバランスをとるためには、ひたすら練習しないといけないんだろうな、と感じます。
僕は自分でも振付をしますが、その視点でマクミラン振付の『マノン』の特徴をあらためて考えてみると、バレエ的に自然とは言えない動きが多く登場するんですね。例えば物乞いのリーダーは右回転から一気に左回転に切り替えないといけなかったりする。ダンサーに高度なテクニックを要求する振付を、意図的に多用している感じがします。繊細なタッチが必要で、なおかつダイナミックに踊らないといけないパがたくさんあります。そういう一つひとつのパが、とくにデ・グリューやマノンなどは、そのまま感情表現につながっているのかな、と思います。
★ご自身でも振付をする福田圭吾さんならではのお話、とてもおもしろかったです! 福田さん、次のダンサーを指名してください!
- 僕は井澤駿くんにバトンを渡します。駿くん。僕たちは普段よく一緒に飲みに行ったりしていますけれども、最近は行ってないですね。あの……いつが空いていますか? スケジュールを教えてください。
6th Runner:井澤 駿(デ・グリュー)
『マノン』との出会いは比較的最近のこと。『白鳥の湖』などのクラシック・バレエ作品とは違ってヴァリエーションを踊ることもないですし、触れる機会がなかなかありませんでした。『マノン』のような「ドラマティック・バレエ」の存在をあらためて知ったのは、大学生になってからです。クラシック・バレエしか知らなかった僕にとっては、ナチュラルな演技方法が新鮮だったのを思い出します。
今回は初役でデ・グリューを演じます。デ・グリューはマノンを愛しているがゆえに「嫉妬」をしますが、それは本当に自然な感情で、人間らしいと思います。例えば、もしも自分の恋人が、別の男性から贈られたブレスレットをしていたらどう思うか? 単純ですが、そんなふうに「自分だったらどう思うのか」をまず考えてみるようにしています。指導の先生からよく言われるのは、「演技が“形”にならないように」ということ。それはどういうことなのか。どうすれば“形”ではない演技ができるのか。それをいま、リハーサルを通して勉強中です。
個人的に好きなのは、第1幕の寝室で踊るマノンとデ・グリューのパ・ド・ドゥです。お互いがハッピーな気持ちで愛し合って、本当に気持ちがひとつになっているシーンです。踊っていても楽しいですし、音楽も盛り上げてくれます。
『マノン』は振付も音楽もすべてが一体になっているから、これほどまでに素晴らしい。
振付指導のパトリシア・ルアンヌ先生も、そうおっしゃっていました。
振付も音楽も、意味のないものは何ひとつない。だからこそ、音と振りがひとつでも合わなければ、違う表現になってしまう。そうしたところを厳しくご指導いただきながら、本番に向けてどこまでもこの役を追求していきたいと思っています。
★井澤駿さんの踊る麗しいデ・グリュー、楽しみにしています! それでは井澤さん、次のダンサーの指名をお願いします!
- 今回、僕のマノンを演じてくださる米沢唯さんへ。唯さん、いつもありがとうございます。これからもよろしくお願いします。
7th Runner:米沢 唯(マノン)
『マノン』との最初の出会いは、私が新国立劇場バレエ団に入って2シーズン目の2012年に、高級娼婦の役で出演させていただいた時でした。主役の方が踊るマノンの姿を見ながら、「なんて複雑で、なんて素敵な振付なんだろう」と憧れたのを覚えています。
高級娼婦たちの踊り
今回は、そのマノン役です。
マノンを踊らせていただくとわかったとき、「時代背景も文化も全然違う。お金とデ・グリューの愛との間で揺れ動くという複雑なキャラクターを本当に理解できるだろうか?」と不安でした。でもリハーサルを重ねるたびに、マノンという人物にどんどん惹かれていき、いまでは彼女に恋しています。
本当におこがましいのですが、私がどういうマノンを演じるのか、ぜひ、舞台で観ていただきたいと思います。
★このページトップに掲載したリハーサル動画からも、米沢唯さんがマノンという役を心から愛していることが伝わってきます……。米沢さん、次のダンサーの指名をお願いします!
- 私の“お兄さん”(レスコー)、木下嘉人さんを指名したいと思います。
木下さん。私からお伺いしたいことがひとつありまして。いままでバレエを踊ってきて、指導してくださる方など、どなたか人に言われて自分のなかで大事にしている言葉とか、目指しているものとか、そういう“誰かからもらったギフト”があれば教えてください。
★米沢唯さんからの質問に、木下嘉人さんは何と答えるのでしょうか……?! リレーインタビュー〈私と『マノン』〉第3区は2月21日(金)公開予定です!
公演情報
新国立劇場バレエ団『マノン』