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【D.LEAGUE 24-25】第8ラウンド(2/6)観戦レポート〜全チームがレベルアップ。接戦を制したCyberAgent Legitがトータル首位に!

村山 久美子

ダンスのプロリーグ「D.LEAGUE(Dリーグ)24-25」の5年目のシーズンが、2024年10月13日に幕を開けました。2025年5月22日までの約半年間をかけて合計14ラウンドが行われる〈レギュラーシーズン〉と、その成績上位6チームが出場して今シーズンの覇を競う〈チャンピオンシップ〉(2025年6月19日開催)の観戦レポートをお届けしていきます!
寄稿は自身も複数ジャンルのストリート系ダンスを踊りこなす舞踊史家・舞踊評論家の村山久美子さんです。

Dリーグ全体としてのレベルがどんどん上がっており、チームの実力の差がなくなってきていることをこれまでも指摘してきたが、今ラウンドは、正にそれを物語るように、全7マッチのうち4マッチが4-2という引き分けに近い結果で、6-0の完全勝利(SWEEP)は皆無だった。

第8ラウンド(2/6)の各MATCHレポート

1st MATCH

1st MATCHは、昨シーズンから実力派の女性のみで再編成されたジャズ、ソウル、ワック、ロックダンスをメインとするMedical Concierge I’moonと、体幹や足腰の強靭さが際立つヒップホップを見せるList::Xの対戦。

前者は、力強い女性ヴォーカルの曲に導かれ、ソウル、ロックをメインとした潔いダンス。ソウルが抜群のカッコよさだった。優れたダンサーは身体の動きを即座に完全にストップさせることに長けているため、シンクロパフォーマンスで、ロッキンのシンプルな動きを用い、全員でしっかり腕や全身を止めたのも、効を奏していた。

Medical Concierge I’moon「Power to the woman」©D.LEAGUE 24-25

後者は、これまでとは異なる、肩の力を抜いた、ダンスを楽しむような明るい作品。エースパフォーマンスを踊った気鋭のTenjuがジャッジポイントを獲得したとはいえ、エースによるソロの規定の長さである2×8の前後も、もう少し彼を際立たせたほうが、作品としては焦点がはっきりして、見栄えがしたのではないだろうか。

List::X「unmet」©D.LEAGUE 24-25

結果は、5-1でMedical Concierge I’moonの勝利

2nd MATCH

2nd MATCHは、BGirlのYasmin以外は男性の出演者でヒップホップをメインとするダンスを見せたDYM MESSENGERSと、「Kicks on da beat」(Kicksはスニーカーのこと)というテーマで、ステップを強調したヒップホップを見せたSEGA SAMMY LUXの対戦。

前者は、今ラウンドで筆者が最も強く印象づけられた舞台。軽やかに床に吸い付く足さばきをはじめ、全身の動きが、肉体の重みを感じさせない心地よいやわらかさ。全員の身体コントロールのすばらしさに、心を奪われた。

DYM MESSENGERS「THE PLACE」©D.LEAGUE 24-25

後者は、ハウスやタップダンスに近い急速なステップのヒップホップをメインとした作品。DYM MESSENGERSの足さばきがすばらしかっただけに、ステップを強調した前半が、少々鈍重に見えてしまった観がある。中盤のエースパフォーマンスのKANAUのヒットの力強さ、後半のダンスのテンポをおとしたシーンの迫力は、魅力があった。

SEGA SAMMY LUX「Kicks on da beat」©D.LEAGUE 24-25

結果は、5-1でDYM MESSENGERSの勝利

3rd MATCH

3rd MATCHは、活躍が続いているKELOをエースパフォーマーとして、アニメーションによる作品を踊ったKADOKAWA DREAMSと、熟練のブレイクのチームKOSÉ 8ROCKSの対戦。

前者は、「11街区13号棟」というテーマで、病室のような、あるいは人体実験室を思わせる場所でのエピソードを、バイブレーションやストップのロボットダンスのような動きで描いた。全員一体となった非人間的な表現は、とても見ごたえがあった。ただ、エピソードを動きで語ったぶん、いつもより動きのスケール、空間の使い方が狭められたようにも思う。

KADOKAWA DREAMS「11街区13号棟」©D.LEAGUE 24-25

後者は、打楽器が主の音楽に合わせ、パワームーヴも含めた各々の動きを、細かいリズムを掬い取りながら、勢いでではなく一切衝撃を感じさせずに、慈しむかのように丁寧に行った。しかも、胸のすく大技を連発。磨かれたブレイクの舞台だった。

KOSÉ 8ROCKS「Futurity」©D.LEAGUE 24-25

結果は、2-4でKOSÉ 8ROCKSの勝利。

4th MATCH

4th MATCHは、ヴォーグやジャズをメインとしたBenefit one MONOLIZと、「コメディアン」というテーマで、マイムやアクロバット等で愉快なエピソードを表現したavex ROYALBRATSの対戦。

前者は、ドラキュラが正体を隠すために使った名前「ALUCARD」をテーマに、柔軟性を生かしたポーズとヴォーグでの、ホラー感覚のダンス。ポーズの美しさをさらに追究し、ヴォーグで超絶技巧のはっとさせるようなもの見せられると、作品がさらに面白くなるように思う。

Benefit one MONOLIZ「ALUCARD」タイトルのALUCARDはドラキュラ(DRACULA)の綴りを逆にしたもの ©D.LEAGUE 24-25

後者は、コメディアンの台詞のみを音響にして、マイムやダンスを行った。対話する二人のマイムは、動きの輪郭がしっかり浮き彫りになっていて、滑稽で非常に楽しい。ただ、この二人以外の、寿司職人の恰好のダンサーたちの動きは、寿司職人としての動きが創られておらず、動きの必然性が不明確な部分も感じられた。寿司職人の衣裳にしたことに問題があるのかもしれない。コメディアンのマイムのダンスは、アイデアとしてとても魅力的なので、ぜひ、さらに練り直して再演してほしい。

avex ROYALBRATS「Comedian」©D.LEAGUE 24-25

結果は、2-4でavex ROYALBRATSの勝利

5th MATCH

5th MATCHは、コンテンポラリーダンスやフリースタイルの作品のLIFULL ALT-RHYTHMと、ヒップホップ、ハウス、ブレイクなどを織り交ぜたダンス見せたValuence INFINITIESの対戦。

前者は、「Control」というテーマで、身体をしっかりコントロールする、ゆっくりとした動きの男性による女性のリフトから始まり、制御不能になったかのような急速な震えの動きの集団のダンスなどに移ってゆく。テーマは様々な表現の可能性をはらんでいるように思われるが、振りがやや単調になり、また、見せ場も充分には作れていなかったように思う。

LIFULL ALT-RHYTHM「Control」©D.LEAGUE 24-25

後者は、巧みな音楽表現をするチームらしく、和のテイストも入れた多様なリズムと速度の音楽を、動きの種類、スケール、テイストを様々に変えて、見事に描き切った。

Valuence INFINITIES「Essence」©D.LEAGUE 24-25

結果は、1-5でValuence INFINITIESの勝利

6th MATCH

6th MATCHは、ヒップホップを追究し続けるチームSEPTENI RAPTURESと、クランプを追究し続けるFULLCAST RAISERZの対戦。

前者は、「3度目の氷河期」というテーマで、これまで2度敗戦を喫しているFULLCAST RAISARZに対して、3度めの正直で勝利への壁を打ち破る意味合いを込めたという。ブルーの照明に包まれ、氷に閉ざされたイメージの透明の板を破るような冒頭の演出が、好印象。その後の振りに、描きたいキャラクターがもう少し明確に盛り込まれると、さらに面白い作品になるように思われる。

SEPTENI RAPTURES「3度目の氷河期」©D.LEAGUE 24-25

後者は男性のチームだが、女性のクランプのダンサー3人をゲストのSPダンサーで加え、女性をサポートする立体的な動きなどを入れて、これまでとは少々異なるシーン作りを行った。ただその代わり、舞台に充満するパワーは、男性のみで行っていた舞台よりやや落ちたのは否めない。

FULLCAST RAISERZ「GET OFF」©D.LEAGUE 24-25

結果は、4-2でSEPTENI RAPTURESの勝利

7th MATCH

7th MATCHは、ポップにヒップホップのテイストを加えた作品を見せたCyberAgent Legitと、ポップのみで勝負したdip BATTLESの対戦。

前者は、バイブレーションを多用する軽やかで洗練されたポッピンとヒップホップを融合させた作品。息の合ったシンクロの部分が多い。

CyberAgent Legit「layered」©D.LEAGUE 24-25

後者は、ポップで世界的に活躍する日本トップクラスのベテラン、BooとHIROKIをゲスト(SPダンサー)に迎え、ポップのジャンルの醍醐味と言える、重く深いヒットのずっしりとしたパワフルなダンスを展開。

dip BATTLES「カタストロフィ」©D.LEAGUE 24-25

結果は、4-2でCyberAgent Legitの勝利。しかし、ポップ対決でこのジャンルの醍醐味を堪能させたdip BATTLESの敗北は、腑に落ちない。CyberAgent Legitのメンバーも、dip BATTLESのパフォーマンスを見て顔がこわばっていた。

前ラウンドのFULLCAST RAISARZの敗北も同様であるが、そのダンスジャンルの醍醐味と言えるものを見事に表現したチームが敗北するのは、大きな問題である。それはまず、審査項目の問題であると思われる。「テクニック」「コレオグラフィー」「ステージング」「シンクロパフォーマンス」「エースパフォーマンス」と項目に分けた採点は、一見評価の緻密さを目指しているようで、じつは重要な“ダンスの本質”の評価が漏れる可能性がある。それを評価するに近いジャッジ項目は「テクニック」だが、同じジャンルでの勝負でも、その醍醐味の表現と、単に見栄えのするテクニックが、同等に置かれる可能性がある。その醍醐味を見事に表現することがいかに難しいかを熟知しているのは、長年そのジャンルを追究してきたダンサーだ。しかし毎回変わるDリーグの審査員陣を確認すると、当該ラウンドで使用されるダンスジャンルのうち、あるものに対してはそのジャンルをメインとする審査員が誰もいない、という場合もある。今ラウンドでも、ポップ対決があるのにもかかわらず、ポップをメインとする審査員はいなかったように思う。

このような問題を解決するためには、審査項目を再検討するとともに、各ラウンドの前に、作品で使用するダンスジャンルを報告するようにし、それに合わせて審査員を選ぶことが望まれる。

今ラウンド終了後のランキング1位は、CyberAgent Legit。最も優れたパフォーマンスを見せたダンサーMVDには、KOSÉ 8ROCKSTaichiが選ばれた。

ROUND.8のMVDに輝いたKOSÉ 8ROCKSのTaichi ©D.LEAGUE 24-25

次回、第8ラウンドは2025年2月27日(木)開催!

この記事を書いた人 このライターの記事一覧

早稲田大学大学院博士課程満期終了。ハーバード大学大学院、ロシア国立プーシキン記念外国語大学留学。 早稲田大学、工学院大学、東京経済大学、青山学院大学、青山学院大学大学院で非常勤講師として、舞踊史、ロシア・バレエ史、ロシア語の講義、ストリートダンスの実技を担当。 舞踊評論家として、読売新聞、日経新聞、ダンスマガジン、各種公演プログラム等々に、舞踊評論を1980年代前半から寄稿。 文化庁芸術選奨推薦委員、東京新聞全国舞踊コンクール、さいたま全国舞踊コンクール現代舞踊部門審査員、まちだ全国バレエコンクール審査員。 著書に、「バレエ王国ロシアへの道」(東洋書店新社、2022年)、「二十世紀の10大バレエダンサー」(東京堂出版)、「知られざるロシア・バレエ史」(東洋書店)他。訳書に、「ワガノワのバレエレッスン」(新書館)他。論文に、「マリウス・プティパの創作の変遷」「F・ロプホーフのダンスシンフォニー『宇宙の偉大さ』」他多数。 バレエを東京バレエ団元バレエ・ミストレス友田弘子、ボリショイ・バレエ団元プリンシパルでモスクワ国際バレエコンクール第一回優勝者ゲンナージー・レージャフ他、コンテンポラリーダンスをネザーランド・ダンス・シアターの元中心的ダンサー中村恩恵、ストリートダンスを国際ダンスバトル世界チャンピオンSHUHOとGO GOBROTHERSのReiに師事。舞踊歴約60年現役。

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