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【D.LEAGUE 24-25】第6ラウンド(1/9)観戦レポート〜甲乙つけがたい対戦多し……首位は引き続きKADOKAWA DREAMS!

村山 久美子

ダンスのプロリーグ「D.LEAGUE(Dリーグ)24-25」の5年目のシーズンが、2024年10月13日に幕を開けました。2025年5月22日までの約半年間をかけて合計14ラウンドが行われる〈レギュラーシーズン〉と、その成績上位6チームが出場して今シーズンの覇を競う〈チャンピオンシップ〉(2025年6月19日開催)の観戦レポートをお届けしていきます!
寄稿は自身も複数ジャンルのストリート系ダンスを踊りこなす舞踊史家・舞踊評論家の村山久美子さんです。

Dリーグ参加チームは全体として、年々レベルに差がなくなり、勝敗をつけるのが難しくなるばかりである。しかし今ラウンドはこれまでにも増して、優れた舞台同士、あるいはさほど心惹かれない舞台同士の対戦で、甲乙つけがたいものが多かった。

第6ラウンド(1/9)の各MATCHレポート

1st MATCH

1st MATCHは、ハウス、ロックなどで、“整わない美”を追究したDYM MESSENGERSと、注目のエース颯希を中心としてヒップホップを展開したKADOKAWA DREAMSの対戦。

前者は黒のパンツスーツのダークなイメージで、集団の規則性、整合性を避けた急速な動き、整然を避けたフォーメーションの目まぐるしい変化を見せ、ヒップホップ・カルチャー本来の味わいがあった。振付の面白さ、個々のダンサーの上手さ、クールさも光った。硬質なロッキンから始まった最初のソロは、とくに印象深かった。

DYM MESSENGERS「LOST MESSAGE」©D.LEAGUE 24-25

後者は、このチームには珍しいピアノ曲でのダンス。グループ分けでの踊りでも、全員のユニゾンでも、前者とは対照的な動きの一体化が際立つ。ピアノ曲のリズムの表現は緻密だが、音の質感は動きからあまり感じられなかった。

KADOKAWA DREAMS「MESSAGE」写真はエースパフォーマンスを担った颯希 ©D.LEAGUE 24-25

結果は、2-4でKADOKAWA DREAMSの勝利。今シーズンからの「シンクロの重視」の表れのように思われる。

2nd MATCH

2nd MATCHは、ガールズ・ヒップホップ風のダンスを見せたMedical Concierge I’moonと、純白のフリル襟の衣裳で「祈り」をテーマにしたCyberAgent Legitの対戦。

前者は、第5ラウンドの時のマニッシュなパンツスーツとは打って変わって、ヒョウ柄のレオタードで、官能的な動きの連続。様々なジャンルのダンスをこなしてラウンドごとに多様な作品を披露するという心意気は評価したいが、長年とことん追究してきたジャンルのみを踊るチームには、技術面で勝てないのは否めない。とはいえ、同じジャンルに徹しているチームの作品が、マンネリ化することが多いのも否めない。シーズンを通じての、作品の多様性も、どこかで評価できるとよいのではないだろうか。

Medical Concierge I’moon「バーニング・ムンダラー」©D.LEAGUE 24-25

後者は、時折「祈り」のポーズを入れながらの、このチームのメイン・ジャンルのポップでのダンス。全員のポッピンの質が高いが、「安息を願って祈る人々」の表現であれば、もっと心のこもった精神性の高い「祈り」がほしい。

CyberAgent Legit「Pray」©D.LEAGUE 24-25

結果は、0-6でCyberAgent Legitの圧勝

3rd MATCH

3rd MATCHは、コミカルなヒップホップを見せたSEPTENI RAPTURESと、「狐の嫁入り」というテーマの神秘的な雰囲気の作品を踊ったBenefit one MONOLIZの対戦。

前者は、季節にふさわしく年末年始の宴会で酔った人々の滑稽な様子を、しゃっくりやオフバランスの身体の揺れ、フロアでの回転などで描いた愉快なダンス。

SEPTENI RAPTURES「あけまひて、おめれとーございましゅっ」©D.LEAGUE 24-25

後者は、鈴、和太鼓等々の邦楽で、狐の仮面をつけて始まり、仮面を外してから大技が繰り広げられる。アクロバティックな大技は、美しく効果的だったが、仮面をつけていたシーンでの、全員動きをそろえる意図のユニゾンで、少々ばらつきがあったのは惜しまれた。

Benefit one MONOLIZ「狐の嫁入り」©D.LEAGUE 24-25

結果は6-0でSEPTENI RAPTURESの圧勝。それほどの差があるとは、筆者には思われなかった。

4th MATCH

4th MATCHは、ブレイク、ヒップホップ、ハウスをメインとするValuence INFINITIESと、ブレイクのKOSÉ 8ROCKSの対戦。どちらも、極めて高度だった。

前者は、ドラムのリズムの変化で動きの速度、ヴォリューム、フォーメーションなどを変化させ、後半は、一気に加速させて緊迫感を増大させた。いつもながら、ジャンプや床へのダイヴなどの際の、音楽のリズムの掬い取り方が粋。

Valuence INFINITIES「No Waste」©D.LEAGUE 24-25

後者は、三味線と打楽器による和のテイストの音楽で、逆立ちのフロアワーク以外に、組体操のような立体的なフォーメーションからのダイヴや空中水平回転で、高さのあるアクロバットを強調。全員ブレイクをメインとするチームであるため、全員のブレイキンの安定感がすばらしい。

KOSÉ 8ROCKS「天」©D.LEAGUE 24-25

結果は、4-2でValuence INFINITIESの勝利。作品内容、力量の差は見出されず、筆者としては引き分けにしてあげたい思い。

5th MATCH

5th MATCHは、スタイルの異なるヒップホップのチーム同士、SEGA SAMMY LUXList::Xの対戦。

前者は、これまで、スタイリッシュなヒップホップのイメージだったが、今回は、ベーシックなヒップホップに立ち返ったという、少々遅めの弾力感のあるダンス。エースパフォーマンスのソロを踊ったCanDooはベテランの名舞踊手だが、数々のバトルで見せてきたようなエキセントリックな大技が充分に見られなかったのは、少々残念。

SEGA SAMMY LUX「Old to the new, New to the old」©D.LEAGUE 24-25

後者は、強い打でビートを刻む音楽での、前者より新しいスタイルのヒップホップ。急速なメロディーに合致した動きも、輪郭がくっきりとしてクリアで、かつ、大きなエネルギーも出ていた。そして、前ラウンドでも書いたが、全員の吸いつくような床の踏み方、その安定感が、このチームの大きな魅力。

List::X「The Frontier」©D.LEAGUE 24-25

結果は、1-5でList::Xの勝利

6th MATCH

6th MATCHは、演出振付のアイディアが豊かなavex ROYALBRATSと、ハウスやブレイクのジャンルで勝負したdip BATTLESの対戦。

前者は、マイケル・ジャクソン風のカッコよさを強調したジャズ・ヒップホップ。全員のシルエットがスマートで、これまでコミカルな作品が多かったこのチームの、意外な力量をアピールした。鏡の中と外がダンスの最中に繋がるかのようなトリックも、巧みだった。

avex ROYALBRATS「TAP OUT」©D.LEAGUE 24-25

後者は、奔流のようなハウスダンスをメインに、ブレイクを差しはさむような構成。スピード感と大きなエネルギーは魅力だったが、ハウスのステップにあまり弾力感がないため、全体に足さばきがやや重い印象を受けた。

dip BATTLES「TSUKINUKERU」©D.LEAGUE 24-25

結果は、4-2でavex ROYALBRATSの勝利

7th MATCH

7th MATCHは、唯一クランプのジャンルのチームであるFULLCAST RAISERZと、コンテンポラリーダンスとも言える自由な創作を行っているLIFULL ALT-RHYTHMの対戦。

前者は、やや速めのテンポのクランプで、爆発的なエネルギーだけでなく、軽やかさも加えたクランプ。軽やかにした部分がヒップホップに近いスタイルになったため、クランプでの動きがやや単純に見えてしまったのは残念。しかし全員、四肢の動きに影響されずにがっしりと動かない強い体幹で、とりわけエースパフォーマンスを踊ったINFINITY TWIGGZのそれは見事だった。

FULLCAST RAISERZ「Live and let live」写真はエースパフォーマンスのINFINITY TWIGGZ ©D.LEAGUE 24-25

後者は、映画の撮影のシーンで、役者たちが宇宙人だったのが発覚。しかしじつは監督も宇宙人だった……という内容で、コミカルなシーンの連続(ユーモアのセンスは、以前のほうがよかったようにも思われるが……)。エースでソロを踊ったのは、ロックのhirokoboogie。手足が長く、その可動域がバレエや新体操のように大きいが、Y字バランスでバランスを失う雑さは、ほかのいろいろなチームの片脚オフバランスの安定感と比べると、評価されるべきものではないようにも思われた。

LIFULL ALT-RHYTHM「Secret」©D.LEAGUE 24-25

結果は、2-4でLIFULL ALT-RHYTHMの勝利

最も優れたダンサーMVDは、Valuence INFINITIESのTSUKKI。今ラウンド終了時点でのランキング1位は、前回に引き続きKADOKAWA DREAMS。

第6ラウンドのMVDに輝いたValuence INFINITIESのTSUKKI ©D.LEAGUE 24-25

次回、第6ラウンドは2025年1月23日(木)開催!

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早稲田大学大学院博士課程満期終了。ハーバード大学大学院、ロシア国立プーシキン記念外国語大学留学。 早稲田大学、工学院大学、東京経済大学、青山学院大学、青山学院大学大学院で非常勤講師として、舞踊史、ロシア・バレエ史、ロシア語の講義、ストリートダンスの実技を担当。 舞踊評論家として、読売新聞、日経新聞、ダンスマガジン、各種公演プログラム等々に、舞踊評論を1980年代前半から寄稿。 文化庁芸術選奨推薦委員、東京新聞全国舞踊コンクール、さいたま全国舞踊コンクール現代舞踊部門審査員、まちだ全国バレエコンクール審査員。 著書に、「バレエ王国ロシアへの道」(東洋書店新社、2022年)、「二十世紀の10大バレエダンサー」(東京堂出版)、「知られざるロシア・バレエ史」(東洋書店)他。訳書に、「ワガノワのバレエレッスン」(新書館)他。論文に、「マリウス・プティパの創作の変遷」「F・ロプホーフのダンスシンフォニー『宇宙の偉大さ』」他多数。 バレエを東京バレエ団元バレエ・ミストレス友田弘子、ボリショイ・バレエ団元プリンシパルでモスクワ国際バレエコンクール第一回優勝者ゲンナージー・レージャフ他、コンテンポラリーダンスをネザーランド・ダンス・シアターの元中心的ダンサー中村恩恵、ストリートダンスを国際ダンスバトル世界チャンピオンSHUHOとGO GOBROTHERSのReiに師事。舞踊歴約60年現役。

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