ダンスのプロリーグ「D.LEAGUE(Dリーグ)24-25」の5年目のシーズンが、2024年10月13日に幕を開けました。2025年5月22日までの約半年間をかけて合計14ラウンドが行われる〈レギュラーシーズン〉と、その成績上位6チームが出場して今シーズンの覇を競う〈チャンピオンシップ〉(2025年6月19日開催)の観戦レポートをお届けしていきます!
寄稿は自身も複数ジャンルのストリート系ダンスを踊りこなす舞踊史家・舞踊評論家の村山久美子さんです。
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2024年12月26日に行われた第5ラウンドは、一つだけとくに抜きん出ている舞台と感じるものはなかったが、その代わり、これまで以上に、魅力を感じる演出振付の数が多かった。
第5ラウンド(12/26)の各MATCHレポート
1st MATCH
1st Matchはスタイリッシなヒップホップを踊るSEGA SAMMY LUXと、新体操、ワックなどを織り交ぜたコンテンポラリーダンス風の作品が多いLIFULL ALT-RHYTHMの対戦。
「PICO PICO DIGITAL TRAVELLERS」というテーマの前者の作品は、10年ほど前に、大阪のWRECKING CREW ORCHESTRAが世界の注目を浴びた、音楽と振付に完全にシンクロするELワイヤーの光による「光のダンス」を想起させるような、蛍光色のラインをつけた衣裳でのダンス(WRECKINGの、コンピューター制御でELワイヤーを光らせて踊る作品のような複雑な仕掛けはないが)。偶然にも、7th MatchのSEPTENI RAPTURESも同様に蛍光色のラインをつけた衣裳を使用した。
光るラインが動くことでデジタル感は出たが、強調されてしまうラインの作り出す図形の、精密さ、面白さは、少々足りなかったように思う。
SEGA SAMMY LUX「PICO PICO DIGITAL TRAVELLERS」©D.LEAGUE 24-25
後者は、新体操出身の永井直也の美しい空中回転、ゲストの妖艶な男性ダンサーたちによる強烈な演技のワックなどのダンス、二人一組で二倍の背丈になったドレス姿のダンサー等々のシーンを、レトロな感覚の音楽でつなぎ、謎めいた儀式のような魅惑的舞台を創出した。
LIFULL ALT-RHYTHM「Special」©D.LEAGUE 24-25
結果は、1-5でLIFULL ALT-RHYTHMが勝利した。
2nd MATCH
2nd MATCHは、男女ともに女性性を強調するBenefit one MONOLIZとブレイクのチームKOSÉ 8ROCKSの対戦。
前者は、鳥の求愛をテーマとした作品で、鳥のイメージのポーズや誘惑するようなしぐさを、主として全員そろった動きで表現した。
Benefit one MONOLIZ「Courting」Courtingは求愛行動という意味 ©D.LEAGUE 24-25
後者は、ベージュのスーツでの大人の男の世界。洗練された作品を創ることが多いYOUTEEの振付で、力みのないあえて勢いを殺したアクロバティックな“軽やかなパワームーヴ”の妙を、粋なドラムのリズムとのシンクロで見せた。
KOSÉ 8ROCKS「振(ふる)」写真は本作の振付者でエースパフォーマンスも担当したYOUTEE ©D.LEAGUE 24-25
結果は、2-4でKOSÉ 8ROCKSの勝利。
3rd MATCH
3rd MATCHは、アニメーションのジャンルを主としたdip BATTLESとブレイクとヒップホップをメインとしたValuence INFINITIESの対戦。
前者は、柔らかい生地のおしゃれな白のパンツスーツで、アニメーション特有の人形振り、ポップの筋肉をはじくヒットや、ブーガルーの胸と腰など身体の各部の引っ張り合いをミックスした振付。エースダンサーとしてのMARINの急速な短いソロが、柔らかい衣裳の揺れも相まって美しかった。ただ、人形振りの動きや群舞のフォーメーションに、もうひと工夫ほしいようにも思われた。
dip BATTLES「Beauteous Animation」写真はMARINによるエースパフォーマンスの場面 ©D.LEAGUE 24-25
後者は、ラフな衣裳も動き方も、素の飾り気のなさがカッコイイ舞台。打楽器風のリズムが主の音楽で、全員、全身が音楽に満たされているような踊り。集団で空中回転に入る跳び上がりの瞬間に音楽のビートを当てるなど、音楽表現が巧み。今回も、全体として音楽性の高さが際立った。
Valuence INFINITIES「Earnest Play」©D.LEAGUE 24-25
結果は、1-5でValuence INFINITIESの勝利。
4th MATCH
4th MATCHは、エースダンサーKELO以外はすべて女性の出演者のパワフルなヒップホップのKADOKAWA DREAMSと、女性のみのジャズ・ヒップホップなどのチームMedical Concierge I’moonの対戦。
前者は、直方体の枠の中で不気味に踊るKELOのまわりで、女性たちが電子音の強いビートの音楽に合わせ、筋肉を強くヒットさせ震わせながら踊った。
KADOKAWA DREAMS「COLD MOON」©D.LEAGUE 24-25
後者は、「スタイリッシュ」と「セクシー」の両方の表現が行えるこのチームならではの「独自性」を強調したと思われる舞台。ネクタイをつけたパンツスーツでのマニッシュでスマートなジャズ・ヒップホップから、上衣を脱いで黒のビスチェ姿になり、ガールズ・ヒップホップに近い(ガールズほどに色気は出さない)柔らかみのあるダンスに変わる。ゲストを二人投入して増やしたソロが、すべて上質だった。
Medical Concierge I‘moon「SSS(トリプルエス)」©D.LEAGUE 24-25
結果は、6-0でKADOKAWA DREAMSの圧勝。しかし、これほどに差があったようには、筆者には思われなかった。また、審査員は毎ラウンド審査をしないので気にならないかもしれないが、KADOKAWA DREAMSの音楽の質、それに合わせる踊りの質感が毎ラウンド似ている印象があり、他のチームに比べ、作品の多様性に欠けるように思われる。
5th MATCH
5th MATCHは、ダンスの上手さだけでなくコミカルな面ももつCyberAgent Legitと、ヒップホップとハウスで多様な作品を創るavex ROYALBRATSの対戦。
前者は「Hit The “Kakkun”」というテーマで、ポップとロックのボキャブラリー、そのジャンルのダンスの上手さを駆使しながら、膝カックンのいたずらを仕掛け、仕掛けられては即座に復帰して別の動きに移る、ユーモラスで巧みな技のダンスを演出。とても楽しい舞台だった。
CyberAgent Legit「Hit The “Kakkun”」©D.LEAGUE 24-25
後者は、面白いエピソードをダンスで表現するのが得意なチームだが、今回は、緩急のあるリズムの音楽やラップに合わせて、急速に踊りまくった。その速さのためか、全体として動きのスケールが小さめになってしまったのが、惜しかった。
avex ROYALBRATS「Highest」©D.LEAGUE 24-25
結果は、4-2でCyberAgent Legitの勝利。
6th MATCH
6th Matchは、ハウス、ロック、ワックなどをミックスしたDYM MESSENGERSと、全員クランプのダンサーであるFULLCAST RAISERZの対戦。
前者は、穏やかで明るい朝のイメージのゆったりしたダンスから、しだいに速度を増してシーンを展開させた作品。ハウスの急速な部分は、音楽を余裕をもって楽しみながらの粋なダンスだったが、オールドスクールのロックやワックのダンスは、もう少し速度を落としたほうが、ダンサーの本来の力が出せるのではとも思われた。きちんと止める、ためるというジャンル独特の魅力が、充分に出ていないのが残念だった。
DYM MESSENGERS「Nu Morning(ニュー・モーニング)」©D.LEAGUE 24-25
後者は、「蘇怒夢〜SODOM〜」というテーマで、ベッドで寝ているダンサーを中央に置き、怪奇小説のような気味の悪いシーンを演出。クランプの動きを急速にコミカルに行ったため、動きの規模が小さくなり、彼らがいつもアピールしている男の力強さはあまり発揮されなかったように思う。ただ、クランプでドラマを作る新たな可能性の追究ではあると思われる。
FULLCAST RAISERZ「蘇怒夢〜SODOM〜」©D.LEAGUE 24-25
結果は、4-2でDYM MESSENGERSの勝利。
7th MATCH
7th MATCHは、大きい動きの波のヒップホップをメインとするList::Xと、筋肉を細かく震わせるポップに近いヒップホップのSEPTENI RAPTURESの対戦。
前者は、柔らかい床踏み、深い屈伸などによる弾力のあるスケールの大きなダンススタイルで、振り回されたり引っ張られたりして、自力ではコントロールできない、睡眠中の夢の感覚を描いたような作品。
List::X「sleep」©D.LEAGUE 24-25
後者は「忍び」というテーマで、1st MATCHのSEGA SAMMY LUXの項で述べたように、蛍光色のラインのついた衣裳で、歩き方、ポーズなどに忍者のイメージを入れた作品。振りの動きが興味深いものが多く、「シンクロパフォーマンス」の部分で、全員の蛍光色ラインの美しさが際立った。
SEPTENI RAPTURES「夜襲」©D.LEAGUE 24-25
結果は、1-5でSEPTENI RAPTURESの勝利。
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最も優れたパフォーマンスのダンサーMVDは、KELO。2ラウンド連続で6-0の完全勝利SWEEPとなったKADOKAWA DREAMSは、今ラウンド終了時点でのトータルランキング単独1位となった。
2ラウンド連続でチームを完全勝利(SWEEP)に導き、自身も2回連続MVDに輝いたKELO ©D.LEAGUE 24-25
筆者が今ラウンドで優れている舞台と思われたのは、LIFULL ALT-RHYTHM、KOSE 8ROCKS、Valuence INFINITIES、MedicalConcierge I’moon、CyberAgent Legit、SEPTENI RAPTURERS。とくにSEPTENI RAPTURERSは、これまで作品にマンネリ化を感じていたため、今回の舞台の面白さは嬉しい驚きだった。
★次回、第6ラウンドは2025年1月9日(木)開催!