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ミュージカル「どろんぱ」真琴つばさインタビュー~生きていくのが大変なのは、人間だけじゃない

青木かれん Karen AOKI

真琴つばさ ©はぎひさこ

2026年3月16日から開幕するミュージカル『どろんぱ』。日本青年館ホールを皮切りに、東京・大阪で上演されます。

同作は、「日本発のオリジナルミュージカルを世界へ」をテーマに、ワタナベエンターテインメントと劇作家・末満健一がタッグを組んだMOJOプロジェクト(Musicals of Japan Origin project)の第2弾となる作品。妖怪を題材に親子の愛と絆を描いた、書き下ろしの新作です。

今回は人形神(ひんながみ)を演じる元宝塚歌劇団月組トップスターの真琴つばささんにインタビュー。本作への意気込みや役作りのこと、舞台への思いを聞きました。

真琴つばさ Tsubasa Makoto
元宝塚歌劇団月組トップスター。1985年宝塚歌劇団入団、花組に配属。1997年「EL DORADO」で月組主演男役に就任。「風と共に去りぬ」のスカーレットや「ミー&マイガール」のジャッキーなどの女役も好演。2001年「愛のソナタ/ESP!」で退団後は舞台、テレビ、ラジオと多方面に活躍している。2026年3月から、ミュージカル「どろんぱ」に人形神役で出演予定。©はぎひさこ

『どろんぱ』の台本を最初に読んだ時の感想は?
真琴 読んですぐに「私、この作品に出たいです!」と言いました。そのくらいおもしろかったんです。想像の世界に生きる妖怪たちも、人間と同じような悩みを抱えているかもしれない。そう思わせてくれる内容でした。
出演が決まって、いざビジュアル撮影の日に、あろうことか作・演出の末満さんに「あの台本、おもしろかったんですけど、どなたが書いたんですか?」と聞いてしまったんですよ。書いたご本人だというのに(笑)。でもそのくらい台本そのものに惹かれました。
本作は日本の妖怪を題材にした作品ですね。
真琴 じつは10年ほど前、妖怪になった夢を見たことがあって。なぜか目の前に大きなファスナーがあって、私はそれをバッとあけて人間界をのぞいていたんです。そこには人間たちが普通に生活している世界が広がっていました。きっと妖怪のいる場所から人間の世界がどうなっているか覗いてみたかったんでしょうね。
作品名にもなっている「どろんぱ」は、現世から《どろん》と消えてしまった妖怪たちが、再び現世に《ぱ》と現れるための年に一度の祈願祭《どろんぱ》のこと。もしかしたら、私が見たあの夢は、《どろんぱ》の《ぱ》の瞬間だったのかもしれません!
妖怪を演じることについての思いは?
真琴 妖怪は想像の世界の住人なので、自由に演じられるのが嬉しいですね。なぜか妖怪役は“人間じゃなくていい”という安心感があります。
あと、キャラクターのビジュアルも、誰が誰だかぱっと見ではわからないじゃないですか。それがまたおもしろいと思うんですよ。ぜひお客さまには誰がどの妖怪を演じているのか、舞台を観て答え合わせをしていただきたいですね。みんな強烈なビジュアルですが、とても愉快なキャラクターたちです。
真琴さんが演じる人形神(ひんながみ)について教えてください。
真琴 人形神は墓場の土で作られた妖怪で、願いを叶えてあげる代わりに人間を地獄に落とします。調べたところ、地域によっても違うらしく、なまはげのようなものもあれば、藁でできているものあるようで、富山県に伝わるものが一番怖そうな印象でした。ちなみに私が演じる人形神の羽織には、たくさんの髑髏(どくろ)がついています。この髑髏の一つひとつを含めて衣裳さんや小道具さんの手作りで、スタッフの方々の熱量も感じています。
人形神はどんな性格の妖怪だと思いますか?
真琴 『どろんぱ』に登場する妖怪たちの中では、いちばん怨念が強いのだろうなと思っています。それはきっと、人形神がたくさんの霊が結集して生まれた妖怪だからでしょうか。でも人形神は寂しくて人間の欲望につけこむことで、自分のそばにおきたかったのかもしれない。それだけ、寂しがり屋の妖怪なのではとも感じました。

©はぎひさこ

歌稽古が始まったと聞きましたが、楽曲の印象は? ※取材は1月中旬
真琴 『どろんぱ』の曲は現代的な音楽と和のテイストが融合していて、すごくおもしろいですよ。テーマ曲は祭囃子になっていて、お祭り好きな私はそのメロディーを聴くたびにわくわくしています。
私の声は男性でも女性でもない中間の高さで、みなさんとなかなか合わないんですよ。だからこうしてミュージカルに出演できる機会は貴重ですし、何よりも自分に嘘偽りのない声で歌えることが嬉しくて。今回は天邪鬼(相葉裕樹)とのデュエットがあるのですが、私が下のパートなんです。それがもう最高に嬉しいし、相葉さんと合わせるのを楽しみにしています!
人形神が歌うのはどんな曲ですか?
真琴 人形神の曲は、ひと言でいうと“自己アピール”系。「私を崇め奉れ(あがめたてまつれ)。さすれば、どんな願いも叶えてやろう」というメッセージを前面に押し出した歌詞になっています。メロディーは少しおどろおどろしい雰囲気があって、髑髏だらけの衣裳をまとった人形神にぴったり。私に合わせて作ってくださったのは嬉しい限りです。
共演者とのエピソードはありますか?
真琴 滑瓢(ぬらりひょん)役の吉野圭吾さんとは、15年前にミュージカル『スーザンを探して』の恋人役で共演しました。今回は久しぶりの共演です。『どろんぱ』のチラシを見ると、私たちは妖怪の総長とその妻みたいにも見えますよね(笑)。でも全然ないんですよ、絡みが。それが少し寂しいですね。
座敷童子(ざしきわらし)役の生駒里奈さんとは2017年の『あさひなぐ』で共演しました。声に説得力がありますよね。言葉が全部、身体に入ってきます。
主人公の烟々羅(えんえんら)役の小池徹平さんとは、彼がデビューして間もない頃に番組でご一緒したことがあります。たぶん小池さんは忘れていると思うのですが、当時からとても可愛らしい方で人間的な魅力をお持ちでした。今度稽古場でお会いするのは20年ぶりとなるわけですが、可愛らしさがどれだけ残っているか楽しみです。

※ここで突然、どこからか「起きろー」という低い声が……

この声は……?
真琴 (慌ててスマホを止めながら)これ、私の声です! 「え?」という違和感で起きるように、わざと自分の声をアラームに設定していて。消し忘れていたみたいで、恥ずかしいです……。これが病院の待合室にいた時、急に流れたこともあるんですよ(笑)。私、じつはおっちょこちょいなのかもしれない。クールに見えるのはただぶっきらぼうなだけで、結構天然です。例えば先日キャロットケーキを作って、一口食べたら何か物足りなくて。あれ?と思って冷蔵庫を開けたら、にんじんがしっかりそのまま残っていました(笑)。

©はぎひさこ

もし、人形神にお願いをするなら?
真琴 「朝、起きられるようにしてください!」。私はほんとうに朝が弱いんです。よく、年齢を重ねていくとみんな勝手に起きてしまうと言うじゃないですか。私は一度寝たら起きないし、アラームも聞こえなくて。黒電話の音や目覚ましの音では気づかないので、先ほどのような自分の声にしています。でも地獄には落とさないでほしいです。
これまで妖怪っぽいと言われたことはありますか?
真琴 「緑の血が通っている」と言われたことがあります。きっと冷たそうに見えたんでしょうね。でも、私を知っている人たちが「めっちゃピンクだよ~!」「可愛い血が流れてるよ!」と言ってくれて(笑)。ピンクなのは、おっちょこちょいだけれど人間っぽさがあるからだそうです。
ミュージカル『どろんぱ』にキャッチフレーズを付けるなら?
真琴 「生きていくのが大変なのは人間だけじゃない」。
妖怪は想像が生み出したものだから、人々の想像によってしか存在できないわけで。誰にも思われなくなったら、その妖怪は消えてしまいますよね。
作中の最後のほうで天邪鬼が言うセリフも自分の中でのキャッチフレーズにしています。よく聞く言葉なのですがとても新鮮に聞こえました。

©はぎひさこ

真琴さんのことについても聞かせてください。宝塚歌劇団に入りたいと思ったきっかけは?
真琴 小学5年生の時に『ベルサイユのばら』を観て、宝塚に入ると決めて宝塚音楽学校を受験しました。
その後1985年に宝塚歌劇団に入団、1997年に月組トップスターに就任。ターニングポイントとなった作品は?
真琴 1994年の月組公演『ローン・ウルフ』です。この時にはじめて狼男を演じて、私は人間じゃない役のほうが自然と入り込めるのかもしれないと感じたんです。自分の中に眠っていたものが呼び覚まされるような不思議な感覚でした。音楽を聞くと、腕がぶわっと狼の毛に覆われて、メキメキと鋭い爪と牙が生えてくる。でもその裏側には人間の自分がいて、変身していくのを冷静に俯瞰していました。当時の感覚をこれだけ鮮明に覚えているということは、もともと私は変身願望が強かったのかもしれませんね。
退団後も多方面で活躍中の真琴さん。舞台でエネルギーを放つ秘訣は?
真琴 つねに自分自身と闘っていることかもしれません。不安に打ち勝つために、必死になる。不器用な自分に負けたくないという熱量が、エネルギーとしてお客さまに伝わっているのかなと思います。
舞台に立つ時に心がけていることは?
真琴 私にとって、劇場にいらしたお客さまも舞台を作る共演者です。公演ごとに客席の空気感が必ず変わるので、開場前は「今日はどんな方が来るんだろう」と楽しみにしています。そして幕が開いたら、いち早くその空気を自分の中に取り込むように意識していますね。とくに休演日明けは、劇場も人間も一日休んでいたからまだ少し眠っているんです。いつもと同じテンポでも台詞や音楽が少しゆっくり聞こえたり早く聞こえたりするので、その日の空気を感じながら、お客さまは気づかないような細かいところを、人知れず調整してやっていくのが好きなんです。
ところで、真琴さんは最近バレエのレッスンに通っていると聞きました。
真琴 1・2年前から、近所に住む宝塚時代の後輩たちとたまにバレエのレッスンに通っています。バレエの動きはあらゆるダンスの基礎と言っても過言ではありませんよね。それと同じく日舞もまた、舞踊の基礎だと思います。これから両方体験してみたいですね。
これまで観たバレエ作品で印象的なものはありますか?
真琴 最近観たバレエ公演で印象的だったのは、K-BALLET TOKYOの『ラ・バヤデール』。終盤に岩が降って来る演出(神殿崩し)が、客席にも降りかかってくるような迫力があってとてもリアルでした。
私、バレエを観た日は、家に帰ってバレエダンサーになりきるんです。ダンサーのように美しく歩こうとするのですが、うまくできないので気持ちだけ。でもどうやら私は男性ダンサーのような歩き方を意識して、部屋中を歩き回りながら楽しんでいるようです。
観客へメッセージを。
真琴 ゆかいな妖怪たちが、みなさんを劇場でお待ちしています。ミュージカル『どろんぱ』で、日本の“和”と“祭り”を楽しんでください!

©はぎひさこ

ヘアメイク:土屋裕子(マハロ)
スタイリング:山下 由(コンテンポラリー・コーポレーション)

公演情報

MOJOプロジェクト -Musicals of Japan Origin project- 第2弾
ミュージカル『どろんぱ』
supported by にしたんクリニック

あらすじ
煙の妖怪である烟々羅(小池徹平)は人間の姿に化けて、遠野爽子(屋比久知奈)というひとりの女性に憑りついていた。爽子に「自分の夫・遠野薫」だと思いこませた烟々羅は、彼女とともに神隠しの伝承が残る深い森へとやってくる。爽子は行方不明となった自分の娘をさがすうちに、森へと足を踏み入れたが、そこは神隠しの森などではなかった。時代の流れとともに信仰や畏怖する心が失われた現世から追いやられた妖怪たちの吹き溜まりの森であった。
森の様子はなにやら慌ただしい。現世から《どろん》と消えてしまった妖怪たちが、再び現世に《ぱ》と現れるための年に一度の祈願祭、《どろんぱ》がまもなく催されようとしていた。福の神である座敷童子(生駒里奈)、日本全国に伝承が残る河童(東島京)、ひねくれ者の猫又(木内健人)、欲望のままに行動する犬神(加治将樹)、神聖さすら漂わせる九尾狐(土井ケイト)、得体の知れない天邪鬼(相葉裕樹)、墓場の土から生まれた人形神(真琴つばさ)、そして妖怪たちの総大将である滑瓢(吉野圭吾)。烟々羅と爽子を待ち受ける運命とは。今宵、妖怪たちの百鬼夜行がはじまろうとしていた。

〇東京公演
2026年3月16日(月)~3月29日(日)
会場:日本青年館ホール

〇大阪公演
2026年4月3日(金)~7日(火)
会場:SkyシアターMBS

【キャスト】
小池徹平 屋比久知奈
生駒里奈 木内健人 東島京 加治将樹 土井ケイト 相葉裕樹
吉野圭吾 真琴つばさ ほか

【スタッフ】
作・演出:末満健一
作詞:森雪之丞
作曲・編曲・音楽監督:深澤恵梨香
ゲストコンポーザー:和田唱

【公演に関するお問合せ】
ワタナベエンターテインメント03-5410-1885(平日11:00~18:00)

公式サイトはこちら

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