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【D.LEAGUE 24-25】第3ラウンド(11/20)観戦レポート〜抜群のセンスが光ったavex ROYALBRATS、トータル首位はMedical Concierge I‘moon!

村山 久美子

ダンスのプロリーグ「D.LEAGUE(Dリーグ)24-25」の5年目のシーズンが、2024年10月13日に幕を開けました。2025年5月22日までの約半年間をかけて合計14ラウンドが行われる〈レギュラーシーズン〉と、その成績上位6チームが出場して今シーズンの覇を競う〈チャンピオンシップ〉(2025年6月19日開催)の観戦レポートをお届けしていきます!
寄稿は自身も複数ジャンルのストリート系ダンスを踊りこなす舞踊史家・舞踊評論家の村山久美子さんです。

究極の技術で見せるのか、それとも多様性で見せるのか

Dリーグ14チームのなかには、自分のメインとするダンスジャンルが、ほぼ同じか2種類程度のダンサーのチームと、様々なジャンルのダンサーの混合のチームがある。

前者は、たとえばブレイクならブレイクをほぼ全員長年追究してきたダンサーたちであるため、作品を構成する技術は非常に高い。しかし、もっぱら音楽を視覚化する作品である場合、毎回作品の印象を変えることはなかなか難しい。それに対し、後者のチームは、カメレオンのように全く異なるカラーの作品を創ることができるが、長年同じジャンルを追究してきたダンサーの技術に匹敵するダンサーを8名そろえることは容易ではない。

作品の、全体としての技術の究極の高さとラウンドごとの多様性のバランスは、難しい問題である。今回のラウンドでは、dip BATTLES、Medical Concierge I’moon、CyberAgent Legit、DYM MESSENGERSが、前回と作品のジャンルを変えていた。

第3ラウンド(11/20)の各MATCHレポート

1st MATCH

1st MATCHは、dip BATTLESKOSÉ 8ROCKSの対戦。

前者は、第2ラウンドでは力強く筋肉をはじくヒットをメインにしたポップの作品だったが、今回は、6人のメンバーを入れ替えてハウスとブレイクをメインとしたダンス。ハウスのステップのユニークさや美しさ、フォーメーションの展開の面白さは充分ではないようにも思われたが、超速のステップの怒涛のような流れはエネルギッシュだった。

先攻のdip BATTLES。作品テーマは「FLOWERS」©D.LEAGUE 24-25

ブレイクのチームである後者は、これまでのたたみかけるような勢いのダンスと打って変わって、一人の逆立ちのポーズの長い静止(フリーズ)で始まり、全員の逆立ちのポーズでの静止で終わる、フリーズの高い技術をアピール。

後攻のKOSÉ 8ROCKS。作品テーマは「climb over」©D.LEAGUE 24-25

結果は3-3で引き分けだった。

2nd MATCH

2nd MATCHは、avex ROYALBRATSLIFULL ALT-RHYTHMの対戦。

前者は、得意のエピソード的な創作で、新聞配達人をハウスとヒップホップで描いた。おしゃれな小気味よいジャズテイストの音楽で、タップダンスのような軽やかなハウスを主に、センスのよいリズムのすくい取り方で緩急をつけた、コミカルで可愛らしい作品。エースパフォーマンスのハウスダンサーJUMPEIのステップも非常に美しく、彼は、今ラウンドの最も際立ったダンサーMVDを受賞した。

先攻のavex ROYALBRATS。作品テーマは「For You」©D.LEAGUE 24-25

後者は、コンテンポラリーダンスにロックやワックをまじえて、心の叫びを描いたような作品。強い感情表現ではあるが、ドラマの展開が明確でないために、説得力がもう一つだったのは残念。技術面も、ほかのチームに比べ、シンプルだったのが、評価につながらなかったのではないだろうか。

後攻のLIFULL ALT-RHYTHM。作品テーマは「Future」©D.LEAGUE 24-25

結果は、6-0とavex ROYALBRATSの完全勝利だった。

3rd MATCH

3rd MATCHは、Valuence INFINITIESMedical Concierge I‘moonの対戦。

前者は、ヒップホップとブレイクをメインに、身体を投げ出すようなアクロバティックな大技を随所に入れながらの、肩の力が抜けたカッコよさのあるダンス。音楽のとり方も、遅どりや裏拍からの入りなどを多用し、音楽性が高く洗練されている。

先攻のValuence INFINITIES。作品テーマは「Foundation」©D.LEAGUE 24-25

後者は、前回のハウスとは打って変わってソウルやポップ、ロック等々のオールド・スクールをメインに構成した作品。

後攻のMedical Concierge I‘moon。作品テーマは「ELEGANT LADY」©D.LEAGUE 24-25

結果は1-5とMedical Concierge I‘moonが大差をつけて勝利した。今シーズンから重視されている「動きがピタっと揃う」ダンスが、彼女たちのダンスのジャンルから行いやすいというために高い評価が出ているように思われる。ただ、メインのジャンルではない、たとえばポップの「フレズノ」の動きなど、ヒットやストップが弱めで形だけを行っていたように思われ、長年とことんポップに向き合ってきたダンサーたちが他チームに数多くいるなかで、そういう部分がどのように評価されていたのかは気になった。

4th MATCH

4th MATCHは、FULLCAST RAISERZList::Xの対戦。

強い感情を込めた戦いのダンスであるクランプのチームである前者は、基本的に筋骨たくましい身体とダンスのパワーをアピールしてきたが、前回も今回も、落ち着いた雰囲気で内面の叫びをどこまで強く表現できるかに挑戦しているかのようだった。この試みは、クランプのジャンルを、今後成熟した大人のダンスとしてどのように発展させていけるかの、実験であるように思われる。今回は、身体のパワーを誇示しなくても、内面の表現はかなり強く伝わってきた。

先攻のFULLCAST RAISERZ。作品テーマは「Unshakeable」©D.LEAGUE 24-25

後者は、前回とはまったく異なるヒップホップで、近年人気のあるスタイルの、大きなうねりを思わせる弾力のあるダンス。動きの上下差を大きくつける脚力と床を踏む足裏の巧みな使い方が際立つ。紐や透かしのネットで動きとともに揺れが出る衣裳も、興味深かった。

後攻のList::X。作品テーマは「natural killer cells the battle continues」©D.LEAGUE 24-25

結果は1-5でList::Xの勝利

5th MATCH

5th MATCHは、SEPTENI RAPTURESCyberAgent Legitの対戦。

前者は専らヒップホップで作品を発表しているチーム。今回も音楽の強い音のビートを効果的に使って身体をヒットさせる、ポップに近いスタイル。毎回ほぼ同様のダンススタイルを追究している観があり、作品の新鮮味は薄いが動きの質は高い。

先攻のSEPTENI RAPTURES。作品テーマは「青い血」©D.LEAGUE 24-25

いっぽう後者は、これまでポップやロックでの作品が多かったが、今回はヒップホップをメインとした。身体が静かで雑音がない、しかし、随所に効果的な強いインパクトが入る、高度なダンスだった。しかし、結果は6-0で、前者の圧勝だった。

後攻のCyberAgent Legit。作品テーマは「CONTRAST」©D.LEAGUE 24-25

6th MATCH

6th Matchは、SEGA SAMMY LUXKADOKAWA DREAMSの対戦。

両者ともヒップホップがメインのチームだが、ダンススタイルはまったく異なる。前者は、全員ステッキをもって、回したり床に立てたりして操りながらのおしゃれなダンス。難しい扱いもミスなくこなし、Dリーグの舞台では新鮮さのある楽しい作品だった。

先攻のSEGA SAMMY LUX。作品テーマは「MAGIC STICK」©D.LEAGUE 24-25

後者は、先のSEPTENI RAPUTURESと類似する、音楽の強い音のビートを効果的に使って身体をヒットさせるスタイルにアクロバットを加えたもの。作品の印象もSEPTENI RAPUTURES同様毎回類似している観がある。舞台に充満するパワーはあるが、新鮮味はあまり感じられなかった(ただし、審査員は交代制で毎ラウンド審査するわけではないため、新鮮味がないとは感じないかもしれない)。

後攻のKADOKAWA DREAMS。作品テーマは「PRIDE」©D.LEAGUE 24-25

結果は2-4でKADOKAWA DOREAMSの勝利

7th MATCH

7th MATCHは、DYM MESSENGERSBenefit one MONOLIZの対戦。

前者は、メンバーを前回から半分入れ替えて、ソウル、ロック、ブレイクなどを、非常に心地よいグルーヴで、大気を揺らして踊った。味わい深い成熟したダンスだった。

先攻のDYM MESSENGERS。作品テーマは「Good Music Good Dance」©D.LEAGUE 24-25

後者は、「マネキン」をテーマに、ヴォーグなどをメインに踊った。前半の人形振りは、体の固め方に少々甘さを感じたが、後半のヴォーグの全員が整然と大気を揺らさずに動いた一体感は、見事だった。

後攻のBenefit one MONOLIZ。作品テーマは「MannequiN」©D.LEAGUE 24-25

結果は3-3の引き分け

前ラウンドに続いて今ラウンドも、「動きがピタっと揃う」ダンスの重視は気になるところだった。すばらしいグルーヴや魅力的な脱力の、音楽と遊べる非常に高度なダンスを身に着けているダンサーたちが、充分に評価されない危険性があるように思う。

しばらくもっぱら音楽を視覚化する作品が多かったなかで、楽しいエピソードを描くことが得意なavex ROYALBRATSが、そのスタイルの秀作を出してくれたのはうれしかった。今ラウンドの最も魅力的な作品だった。

avex ROYALBRATSの作品でエースパフォーマンスを担当したJUMPEIが、今ラウンドの最優秀ダンサー(MVD)に選ばれた ©D.LEAGUE 24-25

3ラウンド終了段階で、Medical Concierge I‘moonがトータルランキング首位に立った。

次回、第4ラウンドは2024年12月5日(木)開催!

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早稲田大学大学院博士課程満期終了。ハーバード大学大学院、ロシア国立プーシキン記念外国語大学留学。 早稲田大学、工学院大学、東京経済大学、青山学院大学、青山学院大学大学院で非常勤講師として、舞踊史、ロシア・バレエ史、ロシア語の講義、ストリートダンスの実技を担当。 舞踊評論家として、読売新聞、日経新聞、ダンスマガジン、各種公演プログラム等々に、舞踊評論を1980年代前半から寄稿。 文化庁芸術選奨推薦委員、東京新聞全国舞踊コンクール、さいたま全国舞踊コンクール現代舞踊部門審査員、まちだ全国バレエコンクール審査員。 著書に、「バレエ王国ロシアへの道」(東洋書店新社、2022年)、「二十世紀の10大バレエダンサー」(東京堂出版)、「知られざるロシア・バレエ史」(東洋書店)他。訳書に、「ワガノワのバレエレッスン」(新書館)他。論文に、「マリウス・プティパの創作の変遷」「F・ロプホーフのダンスシンフォニー『宇宙の偉大さ』」他多数。 バレエを東京バレエ団元バレエ・ミストレス友田弘子、ボリショイ・バレエ団元プリンシパルでモスクワ国際バレエコンクール第一回優勝者ゲンナージー・レージャフ他、コンテンポラリーダンスをネザーランド・ダンス・シアターの元中心的ダンサー中村恩恵、ストリートダンスを国際ダンスバトル世界チャンピオンSHUHOとGO GOBROTHERSのReiに師事。舞踊歴約60年現役。

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