VIDEO
ロンドンのコヴェント・ガーデンにある歌劇場「ロイヤルオペラ・ハウス」で上演されたバレエとオペラを映画館で鑑賞できる「英国ロイヤル・バレエ&オペラ in シネマ」 。臨場感のある舞台映像はもちろん、開演前や幕間にはリハーサルの特別映像や舞台裏でのスペシャル・インタビューを楽しめるのも、“映画館で観るバレエ&オペラ”ならではの魅力です。
2024/25シーズンのラインアップはこちら
2025年1月17日(金)から1月23日(木)までの1週間、TOHOシネマズ日本橋ほか全国の劇場で公開されるのは、英国ロイヤル・バレエによる『不思議の国のアリス』 です。
バレエのみならず数々のミュージカルも手掛ける振付家クリストファー・ウィールドンと、映画音楽の作曲家として知られるジョビー・タルボットがタッグを組み、トニー賞受賞者のボブ・クロウリーが美術を担当。ユニークなキャラクターたちの活躍や独創的な舞台美術なども楽しい、世界中で愛されている大ヒット作です。
英国ロイヤル・バレエ「不思議の国のアリス」
主演は映画『ロミオとジュリエット』でもパートナーを組んだ2人のプリンシパル、フランチェスカ・ヘイワード とウィリアム・ブレイスウェル 。これまで数々の作品で高い演技力を評価され、今回の上演でも不思議の国で冒険するアリスを表情豊かに演じた、フランチェスカ・ヘイワード に話を聞きました。
フランチェスカ・ヘイワード Francesca Hayward 2003年ロイヤル・バレエ・スクール(ホワイト・ロッジおよびアッパー・スクール)に入学。2009年にリン・シーモア賞受賞、2010年にヤング・ブリティッシュ・ダンサー・オブ・ザ・イヤーに選ばれる。同年、ジェニー国際バレエコンクールで銀賞および観客賞を受賞。2011年に英国ロイヤル・バレエ入団。2013年にファースト・アーティスト、2014年にソリスト、2015年にファースト・ソリスト、2016年にプリンシパルに昇格した。© Andrej Uspenski
Story
オックスフォードにある大学教授の娘アリス一家の自宅でガーデンパーティが開催されようとしている。アリスは仲良しの庭師のジャックに贈られた薔薇のお礼に、ジャムタルトをプレゼントする。だが、タルトを盗んだとアリスの母に責められてジャックはクビになってしまう。悲しむアリスを一家の友人である数学者ルイス・キャロルが慰めて写真を撮ろうとしたところ、彼は白うさぎに変身する。追いかけたアリスがうさぎ穴を降りてたどり着いたのは、アリスの母にそっくりで暴虐の限りを尽くすハートの女王が支配する不思議の国だった。ここでも女王のジャムタルトを盗んだ罪で処刑されそうになっているハートの騎士ジャックを救おうと、アリスの奇想天外な冒険が始まる。
♥️
全幕を通して大活躍のアリスですが、演じながら心躍るシーンは?
この作品にはマシュマロやカップケーキを食べる場面があります。食べているフリをしているように見えるかもしれませんが、じつは本当に食べているんです! 実際にアイシングを舐めたりもしています。砂糖を食べているのでエネルギー補給にはなるのですが(笑)、食べ過ぎると踊っていて気持ち悪くなってしまうことも。とくにマシュマロは口の中に残りやすいんですよ。バレエダンサーとして実際に食べながら踊るという経験はなかなかないので、アリスを演じることを心から楽しんでいます。
アリスを演じるうえで心がけていることは?
物語の主人公として話の筋を通すことを大切にしています。不思議の国では、突拍子もないことがたくさん起こります。シーンからシーンへと移り変わる時に、まさにたった今起こったこととして、アリスのリアルな反応を見せることが大切です。舞台では同じシーンでもタイミングやダンサーたちが次々と変わるので、毎回新鮮な気持ちで演じています。
アリスをどんな人物だと解釈していますか?
アリスはとても若いキャラクター。好奇心旺盛で勇敢なところがあって、いろいろな場所を探検しながら、はじめての経験を積み重ねていきます。ときには怖い思いもしますが、彼女は自分の中の恐怖心を克服していく。そんなアリスを私はとても尊敬しています。
ご自身とアリスが似ていると思うところはありますか?
アリスは時々自分の感情を正直に出すことがあります。たとえば、白ウサギに対して怒る時など。怒りや悲しみを抑えこみすぎないところがいいなと思っています。探検するなかでアリスが争いの仲裁に入ることがありますが、そんな時にリーダーシップを発揮するところは、自分に似ていると感じます。
英国ロイヤル・バレエ「不思議の国のアリス」 ©BC20141224_ALICE_153
この作品は、コミカルで楽しいシーンに複雑なパ・ド・ドゥやソロが織り込まれているのも特徴のひとつ。踊りの面で意識していることは?
難しい振付なので、とにかくリハーサルを重ねてディテールを正確に踊るよう努力しています。クリストファー・ウィールドンの振付は、一見クラシックに見えますが、実際はクラシックの約束通りではないところもたくさんあります。思うようにいかない動きがあっても、彼が指定した通りに踊らないと振付がバラバラになってしまう。さらにターンアウトもいつも以上に意識しています。3時間踊り続けると疲れも出てきますが、クリーンに見せることをつねに心がけています。
全幕を通して、いちばん好きなシーンは?
第3幕の裁判の場面のパ・ド・ドゥです。ここでもアリスは勇気を持って自分の思いを告白していて、本当に感動的なパ・ド・ドゥだと思っています。それと同時に、この場面は最後の大きな見せ場なので、このパ・ド・ドゥを踊ると「やっとここまで来られた」と安心するんです。
『不思議の国のアリス』の中で好きな衣裳は?
それはもちろん、アリスが不思議の国を訪れた時に着ている美しい紫のドレス! 本格的なヴィクトリア朝のスタイルで、デザイナーのボブ・クロウリーが素晴らしい仕事をしてくれました。私は踊るときに広がる紫のスカートの動きが大好きなんです。第1幕でハートのジャックが置いていくバラの花を大事にしまっておけるように、特別なポケットまでついているの!
初代アリスを演じたのは、シネマ版でハートの女王を務めているローレン・カスバートソンさん。彼女のアリスを観たことは?
私がアーティストとして入団した直後の2011年、ローレンがアリス役を演じた舞台を観ることができました。彼女のアリスは遊び心があってとても大胆。この“不思議の国”は演じる側にとってあまりにも複雑な世界ですが、すべてのことに喜びを見出していました。
アリスのキャラクターを理解するために、ローレンの演技を何度も観て研究しました。
英国ロイヤル・バレエ「不思議の国のアリス」 ©BC20141224_ALICE_403
アリスの冒険を通して、ジャックとの関係性も変化していきます。冒頭は大学教授の娘と仲良しの庭師だった関係が、不思議の国ではアリスとハートのジャックに変化し、最後には恋人どうしになります。シーンごとに意識的に表現していることはありますか?
ラストシーンでアリスとジャックは現実の世界に戻ります。でもそこは、冒頭の場面よりもずっと後の時代。時が流れ、現代的なファッションやスマートフォンが登場するなど、人々の生活様式も変わっています。社会的な制約から解放された二人は、リラックスしていますよね。全幕を通して同じアリスという人物を演じながらも、ジャックに対するロマンティックな感情の変化をていねいに見せるように意識しています。
ジャックを演じたウィリアム・ブレイスウェルさんとは、たびたびパートナーを組んでいますね。フランチェスカさんにとって彼はどんな魅力をもったダンサーですか?
彼はカリスマ性を持った素晴らしいダンサーで、あたたかいエネルギーにあふれています。スタジオの中ではゲラゲラと笑い合ったりすることも多いのですが、舞台の上では信頼できるパートナーです。とても疲れている時でも、彼がいると安心して踊ることができます。彼と一緒に踊ることをいつも心から楽しんでいます。
フランチェスカさんが感じる『不思議の国のアリス』の魅力とは?
この作品は誰もが知っている不思議な物語で、いまもなおアリスだけでなく、マッドハッターやハートの女王など多くのキャラクターが愛されています。クリストファー・ウィールドンの美しい振付によってキャラクターに命が吹き込まれ、原作に新たな魅力を与えていると感じます。
ぜひ、バレエダンサーを目指している子どもたちにメッセージをお願いします。
踊ることすべてに喜びを感じてほしいです。ひたむきに練習を積み重ねて、テクニックを磨くのは大変ですが、少しずつ上達していくのが実感できると嬉しいと思います。
そして大切なのは、舞台への愛。シリアスになりすぎるのではなく、踊ることを心から楽しんでください。そうすれば、お客様もあなたの踊りから喜びや愛を感じてくれるはずです。
英国ロイヤル・バレエ「不思議の国のアリス」
上映情報
英国ロイヤル・バレエ&オペラ in シネマ 2024/25
ロイヤル・バレエ『不思議の国のアリス』
2025 年1月17日(金)~1月23日(木)TOHOシネマズ 日本橋 ほか1週間限定公開
★上映館、スケジュールなど詳細は公式サイト をご確認ください
【キャスト】
アリス:フランチェスカ・ヘイワード
庭師ジャック/ハートのジャック:ウィリアム・ブレイスウェル
ルイス・キャロル/白うさぎ:ジェームズ・ヘイ
アリスの母/ハートの女王:ローレン・カスバートソン
アリスの父/ハートの王様:ベネット・ガートサイド
手品師/マッドハッター:スティーヴン・マックレー
ラジャ/イモ虫:ニコル・エドモンズ
公爵夫人:ギャリー・エイヴィス
牧師/三月うさぎ:中尾太亮
聖堂番/眠りねずみ:ソフィー・アルナット
料理女:クリステン・マクナリー
召使/魚:レオ・ディクソン
召使/カエル:五十嵐大地
アリスの姉妹:マリアンナ・ツェンベンホイ、ボミン・キム
執事/首切り役人:ケヴィン・エマートン
3人の庭師:ハリー・チャーチス、ジョシュア・ジュンカー、マルコ・マシャーリ
俳優:レイン・デ・ライ・バーネット、ダミアン・リー・スターク、ダニエル・スワン
【振付】クリストファー・ウィールドン
【音楽】ジョビー・タルボット
【指揮】クン・ケッセルズ
【編曲】クリストファー・オースティン、ジョビー・タルボット
【美術】ボブ・クロウリー
【台本】ニコラス・ライト
【照明デザイン】ナターシャ・カッツ
【映像デザイン】ジョン・ドリスコル、ジェマ・キャリントン
【演出】クリストファー・サウンダーズ、エリザベス・トゥーヒー
【ゲスト主役演出家】ジリアン・ヴァンストーン
【シニア・レペティトゥール】ギャリー・エイヴィス、サマンサ・レイン
【レペティトゥール】シアン・マーフィー
【プリンシパル指導】サミラ・サイディ、エドワード・ワトソン、ゼナイダ・ヤノウスキー
【管弦楽】ロイヤル・オペラ・ハウス管弦楽団
【プリンシパル・ゲスト・コンサート・マスター】ヴァスコ・ヴァシリエフ