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【D.LEAGUE 24-25】第14ラウンド(5/22)観戦レポート〜CyberAgent Legitがレギュラーシーズン3連覇!I’moonやBATTLESの躍進、ルール変更などもあった今季を振り返る

村山 久美子

ダンスのプロリーグ「D.LEAGUE(Dリーグ)24-25」の5年目のシーズンが、2024年10月13日に幕を開けました。2025年5月22日までの約半年間をかけて合計14ラウンドが行われる〈レギュラーシーズン〉と、その成績上位6チームが出場して今シーズンの覇を競う〈チャンピオンシップ〉(2025年6月19日開催)の観戦レポートをお届けしていきます!
寄稿は自身も複数ジャンルのストリート系ダンスを踊りこなす舞踊史家・舞踊評論家の村山久美子さんです。

今シーズン優勝をかけて争うチャンピオンシップ(CS)の前の、レギュラーシーズン最後のラウンド。CSには6チームが出場できるが、これまでのスコアですでに5チームがCS出場を決めており、残り1チームの出場が決まるラウンドだった(実際には、MedecalConcierge I’moonが6-0の完全勝利(SWEEP)とならなければ、その時点でKOSÉ 8ROCKSのCS出場が決まるというスコアの状態)。しかし、CSに出場できないことが決定しているチームも、観客の前に立つ今シーズン最後の舞台であるため、熱の入れ方は様々だった。

第14ラウンド(5/22)の各MATCHレポート

1st MATCH

1st MATCHは、力がありながら順位低迷に苦しむクランプのチームFULLCAST RAISERZと、エピソード的な作品が多いが今回はダンスの音楽表現で勝負してきたavex ROYALBRATSの対戦。

前者は、銀色のジャケットとパンツで、白いラインの照明を使い、凍りついたものをクランプの力強いダンスで割っていくようなイメージ。クランプは力を込めた筋肉をアピールするが、筋肉の形はそれぞれが異なるため、「シンクロ」パフォーマンスの際、整然とした絵面は出にくいのが不利であるように思われた。

FULLCAST RAISERZ「Switch」©D.LEAGUE 24-25

後者は、黒の上下のスーツ、ハット、白いシャツで粋なヴォーカル曲を使って、スタイリッシュなジャズ、ポップなどのダンスを展開。ポップを踊った「エース」パフォーマンス(Daiki)の、動きの安定感も印象に残った。

avex ROYALBRATS「Inside」©D.LEAGUE 24-25

結果は、2-4でavex ROYALBRATSの勝利

2nd MATCH

2nd MATCHは、今回6-0で圧勝(SWEEP)すればCS出場に望みを繋げることができるMedical Concierge I’moonと、自由さを重んじるスタイルを堅持しているDYM MESSENGERSの対戦。

前者は、ヒールにスパッツのぴったりした衣裳で、感情をはらんだヴォーカル曲を使い、セクシーな雰囲気のスローなダンスを展開。スローな音楽をすべてスローなリズムで踊ったため、全体として起伏に欠けた印象を与えてしまったのは残念。

Medical Concierge I’moon「Felidae」Felidaeとは“ネコ科(の動物)”という意味 ©D.LEAGUE 24-25

後者は肩の力を抜いたイメージのスローな音楽で、フリースタイルやソウルのスタイルでの緩やかなダンス。こちらも踊りの流れが単調。どこかにポイントとなるシーンが欲しかった。

DYM MESSENGERS「TIME」写真中央はエースパフォーマーを務めたTakuya ©D.LEAGUE 24-25

結果は3-3の引き分けで、Medical Concierge I’moonはCS出場を逃した。

3rd MATCH

3rd MATCHは、ヒップホップのチームList::Xと、今回はポップをメインに作品を構成したdip BATTLESの対戦。

前者は、「イニシエノタミ」というテーマで、和太鼓の音楽で古代の儀式のようなイメージを描いた。ヒップホップのパイオニア的存在のMOCCHINをゲストダンサーに迎え、いつもよりも、ジャズヒップホップやコンテンポラリーダンスに近い、動きの美しさや祈りの精神性を見せた舞台だった。

List::X「イニシエノタミ」©D.LEAGUE 24-25

後者は、たたみかけるような電子音の音楽で、急速なポッピンやロッキンを使った。次々とソロを交代した部分で、ソロの踊りの雰囲気に合わせて照明の色を変えたり、衣裳にラインを入れて、踊りでラインが作る図形の面白い変化を見せたりと、工夫を凝らした演出。最後の加速する盛り上げも、見事だった。

dip BATTLES「結(むすぶ)」©D.LEAGUE 24-25

結果は、1-5でdip BATTLESの勝利。これほどの差は感じられず、どちらが勝ってもおかしくはない対戦だったように思う。

4th MATCH

4th MATCHは、感情をはらむ作品を見せることが多いLIFULL ALT-RHYTHMと、ヒップホップの若手のチームSEPTENI RAPTURESの対戦。

前者は、英語の語りから始まるドラマティックな音楽で、強い思いをぶつけた作品。ジャズやシアターダンスでの表現のなかにワッキンやロッキンがしばしば現れるが、ワッキンやロッキンの腕の動きは感情表現ではなく形の表現になるため、全体の激しい感情のなかで、違和感を生じてしまう。その動きの雑さも気になった。
今回も含め、これまでの多くの作品に言えることだが、強い感情が何に対するものかを、もっと明確にすると、より胸に響くドラマが創り出せるように思う。

LIFULL ALT-RHYTHM「Energy Never Dies」©D.LEAGUE 24-25

後者は、マイムに近いような戯画的な動きのヒップホップ。動きのアイデアが豊富で、しっかり身体のコントロールが出来ているために、個々の動きの戯画的な面白さがクリアに浮かび上がった。テーブルを3段の高さまで用いてその上でダンサーが踊り、上方空間をかなり高くまで使ったのも効果的だった。

SEPTENI RAPTURES「宣誓」©D.LEAGUE 24-25

結果は、2-4でSEPTENI RAPTURESの勝利

5th MATCH

5th MATCHは、アニメーションを多用したKADOKAWA DREAMSと、ヒップホップとブレイクのジャンルをメインにしたValuence INFINITIESの対戦。

前者は、KELOと颯希(SATSUKI)のアニメーションでの、体内の筋肉での対話とも言える素晴らしいダンスシーンで始まり、そこに、女性の柔軟性を生かしたポーズなどが加えられてゆく。その古(いにしえ)の建造物を想起させるような装飾的・立体的な構図がユニーク。その後も、全員が、無駄な動きのない穏やかな身体で、かつ、しっかりエネルギーを放出しているのが、気持ちよかった。今シーズンは、チーム全体のダンスのレベルがさらにアップしていて、感心させられた。

KADOKAWA DREAMS「序曲 OVERTURE 天詠みの唄」写真中央手前が颯希、その後ろがKELO ©D.LEAGUE 24-25

後者は、このチームには珍しいエピソード的な作品で、追う者と追われる者の追跡のダンス。物語の表現にこだわったためか、選曲の問題か、彼らの最大の魅力である、巧みな音楽表現と高度な技があまり見られなかったのは残念。身体での演技力が足りないために、追跡の緊迫感も充分に出ていなかった。

Valuence INFINITIES「♾️(インフィニティ)」©D.LEAGUE 24-25

結果は、5-1でKADOKAWA DREAMSの勝利

6th MATCH

6th MATCHは、ブレイクのジャンルを極めているKOSÉ 8ROCKSと、本来のメインのジャンルのヒップホップで勝負したSEGA SAMMY LUXの対戦。

前者は、パリ五輪で活躍したShigekixを登場させ、彼のソロに加えて全体としても、非常に安定した力みのないブレイキンを見せた。技の正確さゆえのデュオやトリオ、カノンの動きの自然の一致が、とても心地よかった。

KOSÉ 8ROCKS「techUnique」©D.LEAGUE 24-25

後者は、白シャツとネクタイにジャンパー、キャップ姿で、スタイリッシュとラフなイメージをブレンドしたような作品。エースのソロを踊ったベテランCanDooをはじめとして、四肢を長く使うスケールの大きな動きが目立った。CanDooのソロは相変わらず奇異な動きが楽しかったが、全体としては、やや特徴に欠ける振付だったように思う。

SEGA SAMMY LUX「Reflection」©D.LEAGUE 24-25

結果は、5-1でKOSÉ 8ROCKSの勝利。エースポイントはSEGA SAMMY LUXのCanDooが獲得した。

7th MATCH

7th MATCHは、ヴォーグをメインにしたBenefit one MONOLIZと、ロック、ポップのジャンルを織り交ぜたCyberAgent Legitの対戦。

前者は、前半は黒のコートで男性的な力強いカッコよさを強調するダンスを見せ、後半コートを脱いて赤のエナメルの衣裳になると、Dリーグで比肩するチームがない柔軟性や色気を強調する踊りに一変。このチームの誇るカラーを、あらためて強調した。

Benefit one MONOLIZ「I AM ME」©D.LEAGUE 24-25

後者は、彼ら本来の、音楽を表現するダンスでの真向勝負。全員のロッキン、ポッピンの正確さ、上手さが、ダンス全体の美しさを作り上げる。速度や強さの緩急の演出も巧みで、とくに終盤、全員ハットを遠くに粋に投げ捨ててからのユニゾンのテンションの盛り上がりには、興奮させられた。

CyberAgent Legit「Keep shining」©D.LEAGUE 24-25

結果は、0-6でCyberAgent Legitの完全勝利(SWEEP)

今回のラウンドで、レギュラーシーズンの優勝チームが決まった。優勝に輝いたのは、CyberAgent Legit。Legitはこれで3年連続のレギュラーシーズン優勝となる。
今ラウンドで最も活躍したダンサーMVDには、CyberAgent Legitenaが選ばれた。

D.LEAGUE史上初のレギュラーシーズン3連覇を成し遂げたCyberAgent Legit。写真左から4番目が、今ラウンドのMVDに輝いたena。写真右端は同チームディレクターのFISHBOY ©D.LEAGUE 24-25

今シーズンの優勝を決めるチャンピオンシップには、

  • CyberAgent Legit
  • KADOKAWA DREAMS
  • SEPTENI RAPTURES
  • Valuence INFINITIES
  • dip BATTLES
  • KOSÉ 8ROCKS

が出場する。

©D.LEAGUE 24-25

今シーズンの特徴としては、大幅なメンバーの入れ替えで、Medical Concierge I’moonやdip BATTLESが驚くほどの力の伸びを見せたこと。そしてルールの改変で、ソロの「エース・パフォーマンス」とユニゾンの「シンクロ・パフォーマンス」を作品に入れることが義務づけられ、その部分の審査得点が設けられたことが挙げられる。「エース」は、比較部分として甲乙がわかりやすくなり、優れたルールであると思われるが、「シンクロ」には疑問が残る。これまで何度も書いたように、各ダンサーの個性、独創性がストリートダンスの重要な部分であるにもかかわらず、個性を殺すシーン(=シンクロ)を無理に作らせて審査するのは、まったく納得できない。不本意だが踊らなければならない「シンクロ」の部分で、突然慎重になり、単純な動きを行うチームが多いのも、作品の流れを壊す弊害でしかなかった。

今シーズンの王者を決める頂上決戦、チャンピオンシップは2025年6月19日(木)開催!

この記事を書いた人 このライターの記事一覧

早稲田大学大学院博士課程満期終了。ハーバード大学大学院、ロシア国立プーシキン記念外国語大学留学。 早稲田大学、工学院大学、東京経済大学、青山学院大学、青山学院大学大学院で非常勤講師として、舞踊史、ロシア・バレエ史、ロシア語の講義、ストリートダンスの実技を担当。 舞踊評論家として、読売新聞、日経新聞、ダンスマガジン、各種公演プログラム等々に、舞踊評論を1980年代前半から寄稿。 文化庁芸術選奨推薦委員、東京新聞全国舞踊コンクール、さいたま全国舞踊コンクール現代舞踊部門審査員、まちだ全国バレエコンクール審査員。 著書に、「バレエ王国ロシアへの道」(東洋書店新社、2022年)、「二十世紀の10大バレエダンサー」(東京堂出版)、「知られざるロシア・バレエ史」(東洋書店)他。訳書に、「ワガノワのバレエレッスン」(新書館)他。論文に、「マリウス・プティパの創作の変遷」「F・ロプホーフのダンスシンフォニー『宇宙の偉大さ』」他多数。 バレエを東京バレエ団元バレエ・ミストレス友田弘子、ボリショイ・バレエ団元プリンシパルでモスクワ国際バレエコンクール第一回優勝者ゲンナージー・レージャフ他、コンテンポラリーダンスをネザーランド・ダンス・シアターの元中心的ダンサー中村恩恵、ストリートダンスを国際ダンスバトル世界チャンピオンSHUHOとGO GOBROTHERSのReiに師事。舞踊歴約60年現役。

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