【2/21～公開！英国ロイヤル・バレエ「シンデレラ」】ウィリアム・ブレイスウェル インタビュー～シンデレラとの夢のような出会い。王子の喜びをステップにのせて

© 2023 ROH. Photographed by Andrej Uspenski

ロンドンのコヴェント・ガーデンにある歌劇場「ロイヤルオペラ・ハウス」で上演されたバレエとオペラを映画館で鑑賞できる「英国ロイヤル・バレエ＆オペラ in シネマ」。臨場感のある舞台映像はもちろん、開演前や幕間にはリハーサルの特別映像や舞台裏でのスペシャル・インタビューを楽しめるのも、“映画館で観るバレエ＆オペラ”ならではの魅力です。

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2025年2月21日（金）から2月27日（木）までの1週間、TOHOシネマズ日本橋ほか全国の劇場で公開されるのは、英国ロイヤル・バレエによる『シンデレラ』です。

英国バレエの巨匠フレデリック・アシュトン振付の『シンデレラ』が初演されたのは1948年。大人も子どもも楽しめるおなじみのおとぎ話を、叙情的なステップやファンタジックな演出、そして英国人らしいユーモアで織り上げた本作は、物語バレエの名作として、アメリカン・バレエ・シアターや新国立劇場バレエ団など世界中で上演されています。

英国ロイヤル・バレエ「シンデレラ」ウィリアム・ブレイスウェル（王子）©2023 ROH. Photographed by Andrej Uspenski

2022年、ロイヤル・バレエは初演75周年を記念して舞台装置や衣裳を一新。今回上映されるのもこの新たなプロダクションで、舞台装置を手掛けたのは『となりのトトロ』で2023年のローレンス・オリヴィエ賞舞台デザイン賞を受賞するなど世界で注目を集めるデザイナーのトム・パイ、衣裳は映画『オペラ座の怪人』や『アベンジャーズ』、『ネバーランド』、『ドクター・ストレンジ』などで知られるアレクサンドラ・バーン。よりファンタジックでファッショナブルに生まれ変わった舞台美術が、物語世界によりいきいきとした命を吹き込んでいます。

タイトルロールを演じるのはプリンシパルの金子扶生、王子役は同じくプリンシパルのウィリアム・ブレイスウェル。そのほか、夏の精を佐々木万璃子（ファースト・ソリスト）が、道化を五十嵐大地（ソリスト）が踊るなど、日本人ダンサーたちも活躍しています。

前回上映された『不思議の国のアリス』でハートのジャック役を演じ、『シンデレラ』では気品あふれる王子役をみごとに演じきったウィリアム・ブレイスウェルに話を聞きました。

ウィリアム・ブレイスウェル　William Bracewell
ウェールズ出身。11歳でロイヤル・バレエ・スクール（ホワイト・ロッジおよびアッパー・スクール）に入学。2007年にヤング・ブリティッシュ・ダンサー・オブ・ザ・イヤー賞、2010年にユース・アメリカ・グランプリのグランプリを受賞。2010年にバーミンガム・ロイヤル・バレエに入団し、2012年にファースト・アーティスト、2014年にソリストに昇格。2017年にソリストとして英国ロイヤル・バレエに入団し、2018年にファースト・ソリスト、2022年にプリンシパルに就任した。
©Andrej Uspenski

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『シンデレラ』の王子はとても華やかに登場しますが、袖から出る時にどんなことを意識していますか？

ウィリアム　大砲から打ち出されるような気持ちで、最初の一歩を踏み出しています。アシュトンの振付はとても難しいステップの連続。さらに、滑りやすい階段を下りながら微笑みを絶やさずに踊らなければいけません。王子は高貴な存在で、つねに気品にあふれている人です。その姿を表現するために、「音楽に遅れているかも」なんてことは一切考えずに、落ち着いて自分をコントロールする。第一印象でインパクトを与えなければいけないのが難しいところですが、王子の素敵な衣裳にも助けられています。

ウィリアムさんが考えるシンデレラの王子像とは？

ウィリアム　王子はとてもロマンチストでありながら、自分の役割を理解して、真摯に生きています。僕は役作りをする時に現実のことと照らし合わせるのが好きなのですが、王子はいわば、英国王室のウィリアム皇太子に似ているところがあると思う。ウィリアム皇太子がキャサリン妃のことを共に人生を歩んでいく人だと確信した、それと同じ思いを王子もシンデレラに対して抱いたのではないでしょうか。
王子とシンデレラは、夢のように出会います。その瞬間、王子が彼女に対して敬意を持って接しているのが、しぐさの一つひとつから見てとれると思います。まだ出会ったばかりでお互いのことをよく知らなくても、ふたりが対等な存在であることを直感している。扶生さんと一緒に踊りながら、そういった王子の美しい心を表現するように心がけました。

ロイヤル・バレエ「シンデレラ」金子扶生（シンデレラ）、ウィリアム・ブレイスウェル（王子）©2023 ROH. Photographed by Andrej Uspenski

アシュトンの振付の特徴は？

ウィリアム　アシュトンの振付には、王子の持つ気品が繊細に表現されていると感じます。『ロミオとジュリエット』のような、情熱的で時に感情をむき出しにするような荒々しさとはまったく異なります。洗練された振付を通して、王子の品格や誠実な心がにじみ出るように踊りたいと思いました。

パ・ド・ドゥを踊る時、テクニックやパートナーリングで気をつけていることは？

ウィリアム　意識することはリハーサルのなかでも絶えず変化しますが、とくにテクニックの細かい部分を詰めていきます。
アシュトンが振付けたパ・ド・ドゥでは、頭が正しい位置に並んでいるか、お互いのステップが融合しているか……等、二人で一つのムーヴメントを作ることが重要です。小さなことの積み重ねが大きな違いを生むので、アシュトンの振付は難しいと感じます。
そして本番が近づくにつれ、自分の感情を見つけるようにしています。リハーサルでは、しだいにテクニックのことから感情表現に意識が移っていきます。お互いの目をよく見て、心を通じ合わせる。そういったプロセスのなかで、たとえ多少のディテールが失われることがあっても、物語をどのように運んでいくかのほうを優先します。試行錯誤を繰り返しながら、テクニックと表現の絶妙なバランスを見つけることに集中しています。

王子のヴァリエーションを踊る時に心がけていることは？

ウィリアム　このヴァリエーションはとてもチャレンジングです。もともと『シンデレラ』は、アンソニー・ダウエルが初演で踊った作品。「ダウエルが初演の作品はどれも難しい」と言われているのですが、王子は気品を保ちながら力強さも表現しなければいけないので、配役されたダンサーたちは苦労しています。そのようにアンソニーさんに伝えたら、「私はそれを誇らしく思っているよ」と話してくれました（笑）。
テクニックをクリアに見せるのも大切ですが、もっとも重要なのは喜びを表現すること。何よりも、シンデレラという素晴らしい人生のパートナーに出会えた喜びを踊りで伝えなければなりません。王子にとって彼女と過ごす時間は、思わずジャンプしたくなるほどの至福のひと時。弾むようなステップは、彼の嬉しい気持ちを表しています。そういった王子の心の動きをお客様に届けたいと思っています。

©Tristram Kenton

上映情報

英国ロイヤル・バレエ＆オペラ in シネマ 2024/25
ロイヤル・バレエ『シンデレラ』

2025年2月21日（金）～2月27日（木）TOHOシネマズ 日本橋 ほか1週間限定公開
★上映館、スケジュールなど詳細は公式サイトをご確認ください

【キャスト】
シンデレラ：金子扶生
王子：ウィリアム・ブレイスウェル
シンデレラの義理の姉妹：ベネット・ガートサイド、ジェームズ・ヘイ
シンデレラの父：トーマス・ホワイトヘッド
仙女：マヤラ・マグリ
老女に扮した仙女：オルガ・サバドック
ダンス教師：テオ・デュブレイユ
洋服屋：デニソン・アルメイダ
お針子：ハンナ・パーク、マディソン・プリッチャード
美容師：エイデン・オブライエン
宝石商：ハリソン・リー
ヴァイオリン弾き：グレイス・リー、クセニア・べレジーナ
春の精：イザベラ・ガスパリーニ
夏の精：佐々木万璃子
秋の精：ミーガン・グレース・ヒンキス
冬の精：クレア・カルヴァート
道化：五十嵐大地
王子の友人：レオ・ディクソン、ハリー・チャーチス、ルーカス・ビヨンボー・ブレンツロド、ベンジャミン・エラ
求婚者：ハリス・ベル、リアム・ボズウェル

【振付】フレデリック・アシュトン
【音楽】セルゲイ・プロコフィエフ
【指揮】ジョナサン・ロー
【舞台装置デザイン】トム・パイ
【衣裳デザイン】アレクサンドラ・バーン
【照明デザイン】デヴィッド・フィン
【ビデオ・デザイン】フィン・ロス
【特殊効果】クリス・フィッシャー
【ステージング】ギャリー・エイヴィス、ウェンディ・エリス・サムズ
【シニア・レペティトゥール】ギャリー・エイヴィス、サマンサ・レイン
【レペティトゥール】ディアドラ・チャプマン、サマンサ・レイン、サミラ・サイディ
【プリンシパル指導】アレクサンダー・アグジャノフ、リアン・ベンジャミン、ダーシー・バッセル、ラウラ・モレラ、マリン・トゥーズ、クリストファー・サウンダース
【ベネシュ舞踊譜】ダニエル・クラウス

【管弦楽】ロイヤル・オペラ・ハウス管弦楽団
【コンサート・マスター】メリッサ・カーステアズ