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【D.LEAGUE 25-26】新シーズン開幕!ROUND.1観戦レポート〜2ブロック制&新ルール始動。首位はCyberAgent LegitとFULLCAST RAISERZ

村山 久美子

2025年10月25日、D.LEAGUE 25-26開幕戦(BLOCK HYPE)オープニングの様子 ©D.LEAGUE 25-26

ダンスのプロリーグ「D.LEAGUE(Dリーグ)25-26」が、2025年10月25日に幕を開けました。今シーズンより新たに2チームが加わって全16チームとなったことに伴い、〈レギュラーシーズン〉は8チームずつに分けた2ブロック制で実施。そして各ブロックの上位3チームずつ、計6チームが〈チャンピオンシップ〉(2026年5月31日開催)に出場し、シーズン王者が決まります。
今季も各ラウンドのもようを観戦レポート。寄稿は自身も複数ジャンルのストリート系ダンスを踊りこなす舞踊史家・舞踊評論家の村山久美子さんです。

25-26シーズンの新ルールについて

ダンスのプロリーグ、D.LEAGUEの25-26シーズンが開幕した。
同リーグは2020年の設立以来、毎シーズン何かしらのルール改訂等を行いアップデートし続けているが、今季も大きなルール変更がなされている。
とくに重要なのは【2ブロック制の導入】【「獲得項目数」ではなく「獲得割合」で勝敗決定】の2点である。

2ブロック制の導入

今季より新規2チームが加入し(「LDH SCREAM(エルディーエイチ スクリーム)と「M&A SOUKEN QUANTS(エムアンドエーソウケン クオンツ)」)、D.LEAGUEの参画チームは全16チームとなった。

これに伴い、レギュラーシーズンの各ラウンドは8チームずつに分けた2ブロック制(野球のセ・リーグとパ・リーグのような形)で実施、試合も2日間にわたって開催されることになった。
2つのブロックの名称は「BLOCK HYPE」「BLOCK VIBE」。ブロック編成は以下の通り。

《BLOCK HYPE》
avex ROYALBRATS
Benefit one MONOLIZ
CyberAgent Legit
dip BATTLES
KOSÉ 8ROCKS
LDH SCREAM
List::X
Medical Concierge I’moon

《BLOCK VIBE》
CHANGE RAPTURES
DYM MESSENGERS
FULLCAST RAISERZ
KADOKAWA DREAMS
LIFULL ALT-RHYTHM
M&A SOUKEN QUANTS
SEGA SAMMY LUX
Valuence INFINITIES

「獲得項目数」ではなく「獲得割合」で勝敗決定

先シーズンまでは、〈テクニック〉〈コレオグラフィー〉〈ステージング〉〈エース〉〈シンクロ〉〈オーディエンス〉の6項目のうち何項目を獲得するかで勝敗を決していた。
変わって今季からは、下記6つの審査項目の評価をそれぞれパーセンテージで算出して積算。合計100%のうち、より多くのシェア(%)を獲得したチームが勝利となる。これに伴い、SWEEP(6-0の完封勝利)制度は廃止となった。

※以下、[ ]内は評価割合(その項目の評価が、合計100%のうち何%を占めるか)を表す
※各項目について誰がどのような観点でジャッジするのか等、詳細はこちら 

①テクニック[12.5%]
→〈リズム&グルーブ〉〈スキル〉〈フィジカル〉の3要素を審査

②コレオグラフィー[12.5%]
→〈ミュージカリティー〉〈クリエイティブ〉〈ステージング〉の3要素を審査

③シンクロパフォーマンス[12.5%]
→アーティスティックスウィミング審査員経験者ジャッジ、テクニックを評価するダンサージャッジ、コレオグラフィーを評価する振付師ジャッジの計9名が、それぞれの観点で審査

④エースパフォーマンス[12.5%]
→〈テクニック〉〈演出〉〈個性〉の3要素を審査

⑤会場ジャッジ[25%]
→ROUND本編中に、D.LEAGUE オフィシャルアプリにて「チェックイン」機能を作動しているユーザーによるオーディエンスジャッジの評価

⑥配信ジャッジ[25%]
→ROUND本編中に、D.LEAGUE オフィシャルアプリにて「チェックイン」機能を作動していないユーザーによるオーディエンスジャッジの評価

獲得割合で勝敗が決まることにより、ある項目で負けたとしても、これまでのように単純に「0」にはならず、獲得したパーセンテージ分が積み上がって最終スコアに反映されるようになった

また、今季より一般のオーディエンスによる審査・投票(⑤会場ジャッジ+⑥配信ジャッジ)が評価全体の50%を占めることになった。これはつまり、プロフェッショナルのジャッジによる「専門的視点」と、一般ファンの「民意」が、同等の重みを持つということになる。

D.LEAGUEは2020年の発足当初から、「ダンスの民主化」というキーワードをヴィジョンとして掲げてきた。上記の新ルールは、「ダンスを評価する権限はプロのジャッジだけにあるのではなく、観客にも同じだけある」とするスタンス、あるいは「振付や技術や表現がどれだけ優れていても、観客に伝わらなければ“プロ”として成立するのは難しい」というスタンスを、より明確に打ち出したものと言えるだろう。

文責:バレエチャンネル編集部

ROUND.1 BLOCK HYPE(10/25)の各MATCHレポート

1st MATCH

1st MATCHは、昨シーズン優勝のポッピン、ロッキン、ブレイキンをメインとするCyberAgent Legitと、ヒップホップをメインとするList::Xの対戦。

前者は、情感ある曲での力みのないジャズヒップホップ風の動きから入り、ポッピン、フロアのブレイキン、ロッキンへとダンススタイルを変えていった。その移行の滑らかさ、音楽の感じ方や、心の通じ合いから自然に生まれるようなシンクロ感が魅力だった。

後者は新メンバーの名ダンサーYuseiのダンスのカラーでの創作で、カラフルな色合いの衣裳を着て道化のように滑稽でかわいらしいダンスを見せた。速い小刻みな動きが続いたが、Yuseiのソロをはじめ全員が身体のブレがなく、この体幹の強さは高く評価したい。

結果は前者が68.7%、後者が31.3%で、CyberAgent Legitの勝利。List::XはYuseiのエースパフォーマンスのみが前者を上回るかたちとなったが、コレオグラフィーの面白さも、負けていなかった。
昨シーズン優勝の人気チームであるCyberAgent Legitは、観客の支持率が高く、List::Xの3倍近くの票を観客から得た。今シーズンは、会場および配信の観客の票が50%と高い割合になったので、各チームの、多くのファンに支持されるための努力が、これまでよりも重要性を帯びるかもしれない。

2nd MATCH

2nd MATCHは、これまではエピソード的なユーモラスな作品で独自性を出していたavex ROYALBRATSと、新規参入チームでEXILEのHIROがオーナー、NAOTOがディレクターを務めるLDH SCREAMの対戦。

前者は、今回はエピソードではなく、所どころマイケル・ジャクソン風のイメージがある大人の雰囲気のスタイリッシュなダンス。エースかばおのロッキンのソロは、ユニークで味があったが、作品全体としては、振付の流れにもう少し緩急があったほうが面白かったように思う。白に黒のラインが入ったスーツも、彼らをカッコよく見せているか疑問。もっと尖った雰囲気が出る衣裳のほうが、作品が映えたのではないだろうか。

後者は、平均年齢17歳という若さでエネルギーを爆発させたヒップホップのダンス。前半は音楽も振付にもあまり新鮮味が感じられなかったが、終盤、急速なテンポになった時の音楽と細部まで作り込んだ振り、そして、最後のフロアワークの全員シンクロした動きは見ごたえがあった。エースを務めた16歳の武蔵は、高い実力がわかるダンスだったので、エースパフォーマンスの前後も際立たせてソロをもっと長く見せ、上手さをアピールしたら、作品としてもより良くなったように思う。

結果は、前者が47.0%、後者が53.0%でLDH SCREAMの勝利。審査項目ごとに優劣が入れ替わるシーソーゲームだったが、会場オーディエンスのジャッジポイントがSCREAMのほうに約2倍入ったことが大きかった。

3rd MATCH

3rd MATCHは、コンテンポラリーダンス風の作品で勝負した女性性を強調するチームBenefit one MONOLIZと、昨シーズンに続いてまたメンバーを何人も入れ替え、メインジャンルを変えた女性チームMedical Concierge I’moonの対戦。

前者は『暁』というテーマで、男女同じフリルの装飾の白い衣裳と金色の大きな布を用い、美しいポーズの上方高いリフトを多用した作品。ドラマ性と美しさを重視しているが、ドラマの表現の内容があまり明確に伝わってこなかったのが残念。

後者は、新メンバーのメインジャンルのロッキンとパンキンを主としたダンス。エースのソロを踊ったMEMEは、今年の日本での世界大会WDCのワッキン部門で優勝した実力派で、彼女をはじめとして、全体に踊りの上手さが光った。

結果は、46.3対53.7でMedical Concierge I’moonの勝利。ただ、「シンクロ」はBenefit one MONOLIZの振り自体の美しさも踊りも印象深かったので、もっと高く評価されてよいように思われた。

4th MATCH

4th MATCHは、全員ブレイキンをメインとするKOSÉ 8ROCKSと、ポッピン、ハウス、ブレイキンで作品を構成したdip BATTLESの対戦。

前者は、オリンピックにも出場し非常に高いスキルをもつShigekixをエースに、まったく力みのない柔らかく気持ちのよい床の踏み方のステップ、アクロバットを見せた。
Shigekixの複雑かつ精確で音楽と融和したパワームーヴのすばらしさだけでなく、全員の技の安定感——精密な角度の倒立やフットワークが際立った。

後者は、急速なテンポで通した作品で、たたみかけるような高揚感があった。ただ、ハウスと同じテンポの急速なポッピンが軽い動きになっていて、このジャンル特有の抑えの効いた強い筋肉の引っ張りがあまり見えてこなかったのは残念。足裏の使い方や屈伸の仕方の問題で、床の踏みが対戦相手に比べ弾力感が弱いことや、パワームーヴの倒立の角度が甘かったことも、今後の課題になるように思う。

結果は、51.2対48.8でKOSÉ 8ROCKSの勝利。ジャッジポイントを項目ごとに細かく見ると、〈テクニック〉〈コレオグラフィー〉〈シンクロ〉〈エース〉の合計は両チームとも25.0%でまったくの互角。会場と配信のオーディエンスのポイントのみの差での結果となった。

BLOCK HYPEの最優秀ダンサーMVDはKOSÉ 8ROCKSのShigekix。トータルランキング第1位はCyberAgent Legit

ROUND.1 BLOCK HYPEのMVDに輝いた、KOSÉ 8ROCKSのShigekix ©D.LEAGUE 25-26

ROUND.1 BLOCK VIBE(10/26)の各MATCHレポート

1st MATCH

1st MATCHは、ロックダンサーのYu-mahが新たにディレクターに就任したDYM MESSENGERSと、昨シーズン2位で今回3人の新メンバーが出場したKADOKAWA DREAMSの対戦。

前者は、今回のエースダンサーFOOLがメインジャンルとする急速なステップのビバップを多用し、そこに挿入されるロッキンやワッキンほかも、同じスピードで行われた。熟練した名ダンサーの集団であるため、確かな動きでスピードに乗り切り、様々なジャンルのダンスが織り込まれた疾走感のある奔流が作り出せていた。
とくにエースFOOLの細かい超速のステップと爪先立ちでの突然のストップは、強く印象に残った。

後者は、これまでの彼らの作品でも何度か使われている和のテイスト。障子の屏風のような4枚の衝立を、開閉や移動させてダンサーの登場を多様にしたのが、興味深かった。アニメーションの名手KELOと颯希を中心に、身体をブレなく固めた「静」とバイブレーションやヒップホップのステップ、アクロバットなどの「動」の部分の配合が巧みだった。

結果は、41.4対58.6でKADOKAWA DREAMSの勝利。過去のシーズンの連続の好成績で、会場で応援するファンが多いのか、会場の観客のポイントが高かったことと、演出振付のアイデアが高く評価された結果が大きい。

2nd MATCH

2nd MATCHは、ヒップホップをメインとする今シーズンから新たな名前になったCHANGE RAPTURESと、メッセージ性の強いエピソードの作品を創作するLIFULL ALT-RHYTHMの対戦。

前者は『侵入者』というテーマで、机に座ってパソコンのキーボードをたたく男のまわりを、何本ものゴムを張った可動式の壁から侵入してきたダンサーたちが取り囲んで踊りが始まる。ゲーム内の生き物のような、あるいは奇妙な姿の宇宙人かのように、両腕両脚を横に広げた体勢での動きが、ユニークでかわいらしい。音楽は打楽器がメイン。
エースのAYUMIのソロは、くねくねと柔らかくかつパワフルなヒップホップで、身体が広い空間に広がり、見ていて気持ちがいい。ゴムの壁に吸い込まれるような彼女の退場も効果的だった。

後者は、『HERO』というテーマで、台詞や歌詞が内容を物語る。妻が突然産気づき倒れると、救助するために戦隊レンジャーたちが現れる。その後、夫も変身し、妻を救うヒーローとなる。いつもながらの愛の優しさにあふれるエピソード。ただ、ロッキンほかで内容を表現しようとする踊りが、動き方が少々雑で、踊りの見せ場があまりないのが残念だった。

結果は、64.1対35.9でCHANGE RAPTURESの勝利。エースパフォーマンスはLIFULL ALT-RHYTHMのcalinの方が高い評価だったが、前述したように、CHANGE RAPTURESのAYUMIのソロはすばらしかった。

3rd MATCH

3rd MATCHは、新規参入チームM&A SOUKEN QUANTSと、D.LEAGUEが発足した最初のシーズンからクランプを貫いているFULLCAST RAISERZの対戦。

前者はアニメーションをメインとした作品で、柔らかいシャツとパンツの衣裳が、多用するバイブレーションで美しく揺れ効果的。
直立する女性たちが背後の見えないサポートで後ろにゆっくり倒れ、その後床で仰向けになったダンサーたちが床の上をすべるように進むシーンは、かつてパントマイム集団「水と油」の演出で話題になった、舞台の垂直軸を90度変える手法を想起させたが、巧に不思議な感覚を醸し出していた。
作品の流れにもう少し起伏をつけることと、細かいリズムでの身体のストップの連続(ストロボやキッキング)やアラベスクのポーズでのバランスなどを、もっと音楽をぎりぎりまで使ってクリアにすると、作品の面白さがより見えてくるように思う。

後者は、昨シーズン中は新な境地を求めて封印していたかのような、パワーを炸裂させたクランプの舞台。腕の速い動きまでも非常に力強い。終盤は、衣裳のタンクトップを引きちぎるように脱ぎ、全員で筋肉隆々の上体を見せながら、他のチームでは不可能な膨大なエネルギーを舞台に充満させる、クランプの攻撃的ダンスを展開した。

結果は31.2対68.8でFULLCAST RAISERZの勝利

4th MATCH

今ラウンドの最終となる4th MATCHは、ヒップホップの人気者たちSEGA SAMMY LUXと、ヒップホップ、ブレイキン、ハウスで踊る名舞踊手たちの集団Valuence INFINITIESの対戦。

前者は、戦国武将のような衣裳で和のテイストの音楽で踊った。直立したダンサーが3段の高さを作る人間ピラミッドや、舞台全体に広がる群舞など、空間を縦横大きく使用した演出。全体の総合のエネルギーで攻めるシーンが多い舞台だった。

後者は、速いテンポのドラムやピアノの粋なジャズを用い、名舞踊手たち全員の個々のスキルがブンブンうなるような舞台。始まりの急速から終盤の息詰まるような超速まで、しっかり音楽を描くタメも余裕で入れながら、精確な美しい妙技の連続を展開した。嵐を思わせる迫力のブレイキンのパワームーヴを見せた、世界大会で大活躍のHIRO10のソロをはじめ、長短織り交ぜられたどのソロも素晴らしかった。

結果は43.0対57.0でValuence INFINITIESの勝利

BLOCK VIBEの最優秀ダンサーMVDはFULLCAST RAISERZのKTR。トータルランキング首位に立ったのもFULLCAST RAISERZ

BLOCK VIBEのMVDを獲得したFULLCAST RAISERZのKTRは、同チームのディレクターも務めている ©D.LEAGUE 25-26

前述したように、今シーズンは会場と配信のオーディエンス票が50%を占めるという新しい採点方式。今後それがどのような結果をもたらすかを見守りたい。

★2025年11月18日・19日に開催されたROUND.2の観戦レポートは近日公開!

この記事を書いた人 このライターの記事一覧

早稲田大学大学院博士課程満期終了。ハーバード大学大学院、ロシア国立プーシキン記念外国語大学留学。 早稲田大学、工学院大学、東京経済大学、青山学院大学、青山学院大学大学院で非常勤講師として、舞踊史、ロシア・バレエ史、ロシア語の講義、ストリートダンスの実技を担当。 舞踊評論家として、読売新聞、日経新聞、ダンスマガジン、各種公演プログラム等々に、舞踊評論を1980年代前半から寄稿。 文化庁芸術選奨推薦委員、東京新聞全国舞踊コンクール、さいたま全国舞踊コンクール現代舞踊部門審査員、まちだ全国バレエコンクール審査員。 著書に、「バレエ王国ロシアへの道」(東洋書店新社、2022年)、「二十世紀の10大バレエダンサー」(東京堂出版)、「知られざるロシア・バレエ史」(東洋書店)他。訳書に、「ワガノワのバレエレッスン」(新書館)他。論文に、「マリウス・プティパの創作の変遷」「F・ロプホーフのダンスシンフォニー『宇宙の偉大さ』」他多数。 バレエを東京バレエ団元バレエ・ミストレス友田弘子、ボリショイ・バレエ団元プリンシパルでモスクワ国際バレエコンクール第一回優勝者ゲンナージー・レージャフ他、コンテンポラリーダンスをネザーランド・ダンス・シアターの元中心的ダンサー中村恩恵、ストリートダンスを国際ダンスバトル世界チャンピオンSHUHOとGO GOBROTHERSのReiに師事。舞踊歴約60年現役。

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