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【D.LEAGUE 25-26】ROUND.2(11/18-19)観戦レポート〜「オーディエンス評価50%」のインパクトが表れた対戦も。トータル首位はRAISERZとLegit!

村山 久美子

いつもステージの端でさりげなく、しかし明らかに“ダンスが上手い人”の挙動を見せるD.LEAGUEの公式マスコットキャラクター「DANCE_K(ダンスケ)」©D.LEAGUE 25-26

ダンスのプロリーグ「D.LEAGUE(Dリーグ)25-26」が、2025年10月25日に幕を開けました。今シーズンより新たに2チームが加わって全16チームとなったことに伴い、〈レギュラーシーズン〉は8チームずつに分けた2ブロック制で実施。そして各ブロックの上位3チームずつ、計6チームが〈チャンピオンシップ〉(2026年5月31日開催)に出場し、シーズン王者が決まります。
今季も各ラウンドのもようを観戦レポート。寄稿は自身も複数ジャンルのストリート系ダンスを踊りこなす舞踊史家・舞踊評論家の村山久美子さんです。

今シーズンから採用された新ルールの詳細はこちら

ROUND.2 BLOCK VIBE(11/18)の各MATCHレポート

ROUND.2 BLOCK VIBEの全編動画はこちら

1st MATCH

1st MATCHは、今シーズン好調な出だしを見せたクランプをメインとするFULLCAST RAISERZと、ヒップホップメインで20歳前後の若手メンバーをそろえたSEGA SAMMY LUXの対戦。

前者は、昨シーズンよりも全体の統制のとれたシーンを、しかも非常にパワフルな動きで何ヵ所も作り、全体として「シンクロ」を意識したパフォーマンス。この傾向がストリートダンス界に益をもたらすかどうかは別として、今回の作品では、とりわけ大きな個のパワーが、一丸となって客席に投げかけられ、強力なインパクトが生み出された。2つ入れられたソロも、身体が予期しない方向の空間に大きく広がった意外性のあるものと、エースINFINITY TWIGGZの鋼の身体のような硬質のダンスで、強い印象を残した。

後者は、マジックミラーのパネルを使って、鏡の内と外の世界の入り交じりをダンスにした作品。内側に映っている役のダンサーが外に出、あるいはその逆で、全員が鏡の同じ側でシンクロの動きを見せる。演出のアイデアは優れている。ただ、奇妙な世界に遭遇していることに対する感情がもっといろいろ表現されると、不思議なドラマがより明確に伝わるようにも思われた。加えて、パントマイムのような腕の引っ張り等々の動きが、より粘りがあるくっきりしたものになると、ダンスとしてさらに面白さが見えてくるだろう。シンクロは全員での横の長いラインを強調し、美しさがあった。

結果は、62.9対37.1でFULLCAST RAISERZの勝利。コレオグラフィーが11.4対1.4のスコアだったが、これほどに差があったとは思われない。

2nd MATCH

2nd MATCHは、Valuence INFINITIESDYM MESSENGERS。スタイルの異なるヒップホップの対決だった。

前者は、初めてゲストではなく正規のメンバーとして参加したMAiKAがエース。たたみかけるスピード感をアピールしてきたこのチームには珍しく、MAiKAのダンススタイルを取り入れたような弾力のあるテンポの遅めのヒップホップ。身体の各部の力強いアイソレーションを見せたMAiKAのソロは見ごたえがあった。しかし、いつもとは異なり音楽のリズムが単調なために構成の面白さが生み出せず、音楽が遅いために、優れたハウスダンサーKEINのステップも精彩を欠いていたのは残念。「シンクロ」も、Dリーグの審査員が評価するような整然とした空気はなかった。

後者は、仲間が公園で集まって楽しく遊び、ダンスが自然発生的に起こってくる様子で、その自由な雰囲気がとてもヒップホップらしい。ISSUGIのラップにダンスで協奏する振付も優れていた。昨シーズンまでは、「シンクロ」はあまり重視したくない傾向があるように思われたチームだが、今回は、Valuence INFINITIESよりは動きをそろえることに気を配った観があった。

結果は、46.4対53.6でDYM MESSENGERSの勝利

3rd MATCH

3rd MATCHは、ヒップホップとアニメーションをメインに男女4人ずつが出場したKADOKAWA DREAMSと、男性のみで、GENERATIONS from EXILE TRIBEの筋骨たくましい中務裕太をゲストに加え、ヒップホップをメインにしたフリースタイルのダンスを見せたCHANGE RAPTURESの対戦。

前者は、すばらしい身体コントロールの颯希の、腕から体内に流入してゆくようなウェーブのアニメーションに始まり、男性のアクロバティックで力が炸裂するようなシーンと女性のスプリットやブリッジなどの柔らかいシーンを巧みに配合した作品。終始美しく、ダンスとしての魅力に満ちていた。「シンクロ」は、シーンの入りに全員の倒立前転と側転を入れるという、他のチームがやっていない挑戦をしたため、得意の統一性にやや乱れが出てしまったのは惜しまれる。

後者は、スポーツジムでの風景。鉄棒やウェイトリフティング、筋肉トレーニング、エアロビクスなどを行いながらのダンス。力強さとコミカルさは観客にアピールしたかもしれないが、動きは粗削りの観がある。個々の動きを丁寧にダンスの動きとして磨き上げると、より魅力が増すだろう。

結果は49.8対50.2でCHANGE RAPTURESの勝利。人気芸能人の客演のためもあったのか、オーディエンスのポイントは会場と配信を合わせて8.8%ほど勝利者が高かった。しかし審査員のポイントの合計は、KADOKAWA DREAMSが50%中29.2%、CHANGE RAPTURESが20.8%である。今シーズンからの観客のポイントが50%を占める勝敗の決め方に、パフォーマンスの質の高さやダンサーの実力がきちんと反映されていくのか、しっかり見守っていく必要がある。

4th MATCH

4th MATCHは、アニメーションをメインとするM&A SOUKEN QUANTSと、ジャズダンスやワッキン、ロッキンでショーダンス的に見せたLIFULL ALT-RHYTHMの対戦。

前者は、衣裳の袖の銀色の部分などで全員で図形を作るアイデアは興味深い。ただ全体として、多用するバイブレーションやヒットのパワーが、他チームに比べまだ少々弱いように思われるので、ダンスの基礎作りをがんばってほしい(どのレベルのダンサーにとっても、基礎に立ち返ることは重要)。筆者が言うまでもなく、それは遠回りのようで、ダンスが変わる一番の近道である。とはいえ、エースのRIRIAの渾身のバイブレーションは、迫力があった。

後者は、3人のゲストを交えての作品。ゲストのワッカーDanzelのシェネなどの急速な回転やジャンプが美しく、目を引いた。ペアダンスやノリのよいソウルダンスも入れ、踊る楽しさが観客の観る楽しさにつながっていた。「シンクロ」は、8.3対4.2と差とつけられたが、ソウルの腰の巧みな動きの引っ張りで全員のダンスのラインを作り、ポーズもカッコよく、魅力的だった。

結果は、39.2対60.8でLIFULL ALT-RHYTHMの勝利

BLOCK VIBEの最優秀ダンサーMVDはValuence INFINITIESのMAiKA
ここまでのトータルランキング第1位はFULLCAST RAISERZ

ROUND.2 BLOCK VIBEのMVDに輝いた、Valuence INFINITIESのMAiKA。選手入場でチームメンバーを肩車して登場し、冒頭からパワーと気迫を印象づけた ©D.LEAGUE 25-26

ROUND.2 BLOCK HYPE(11/19)の各MATCHレポート

ROUND.2 BLOCK HYPEの全編動画はこちら

1st MATCH

1st MATCHは、これまであまりなかったヒップホップをメインにし、ポッピンやアクロバットを加えたdip BATTLESと、平均年齢17歳の、ヒップホップをメインとする新参入チームLDH SCREAMの対戦。

前者は、たくましいポッパーたちが多く、すべての動きの力強さが気持ちよい。そして、たとえばダンサーの滑る滑り台のように光が背後に入ってくるなど、まるで登場人物のひとりであるかのようにダンサーと絡む照明デザインが、興味深かった。

後者は、全身黒で前・後ろ共に骸骨の絵が描かれた衣裳で、骸骨がダンスをしているように見せた作品。骨の腕が何人分もつながった動きなど、面白いシーンもあったが、身体が細く頼りなく見え、エネルギーがあまり感じられなかった。衣服に描かれた骸骨で「シンクロ」の部分の動きを完全にそろえるのも、困難である。

結果は、70.1対29.9でdip BATTLESの勝利。「コレオグラフィー」が8.3対4.2だったが、LDH SCREAMの演出のアイデアは、もっと評価してあげたい。

2nd MATCH

2nd MATCHは、4人が体調不良で急遽出演メンバーを変えたブレイキンのチームKOSÉ 8ROCKSと、男性的なヒップホップを見せたList::Xの対戦。

前者は、急遽のメンバー交代のためか、全員よりも2~3人での動きが目立った作品。各人のスキルが高いため、舞台のレベルは全く落ちていなかった。エースRyo-spinのソロも、複雑な技の構成で見ごたえがあった。

後者は、彼ら本来のヒップホップのスタイルと言える、弾力のある屈伸のパワフルな動きの連続。ただ、大きな屈伸を続けたため、リズムの変化にやや乏しい観も否めない。とはいえ、エースTATSUKIのソロは、大きなリズムのなかに細かいステップを巧みに入れ、優れたパフォーマンスだった。

結果は、53.3対46.7でKOSÉ 8ROCKSの勝利プロフェッショナルの審査員が評価する4項目(テクニック、コレオグラフィー、シンクロ、エース)はすべてList::Xのほうが高く、オーディエンスの評価は会場・配信の合計で14.8%KOSÉ 8ROCKSがリードした。

3rd MATCH

3rd MATCHは、ロッキン、ソウル、ハウスなどによる構成のCyberAgent Legitと、「Mirage」のテーマでエキゾティックな雰囲気を作ったBenefit one MONOLIZの対戦。

前者は、おしゃれなノリ、強い体幹が生む粘りのある気持ちのよいソウルの動き、ダンスの上手さで、圧巻のパフォーマンス。

後者は、人間でトンネルを作るなどの高さのある隊形の面白さ、ヴォーグの腕の動きを上手く利用して生み出したエキゾティシズムは、好感がもてた。エースCheriのソロのワックの腕の伸び、振りの速さも魅力的。

結果は81.4対18.6でCyberAgent Legitの勝利。Benefit one MONOLIZは、目を引く演出の工夫の前に、個々のダンサーのレベルを地道に上げる努力が、勝利につながるかもしれない。

4th MATCH

4th MATCHは、演技がチャーミングなavex ROYALBRATSと、女性のみでワッキンの振付を踊ったMedical Concierge I’moonの対戦。

前者は、男性のピンクやラメの派手なスーツやネクタイ、濃いメーキャップで、ダンスでのコミカルな演技を見せた。振付が粋で、“演技のダンス”のやり取りの息がぴったり。エースJUMPEIのハウスのステップも、非常になめらかだった。

後者は、演出にはあまり凝らず、とにかく全員のワッキンの技術の上手さを見せた作品。今年の国際バトルWDCのワッキン部門で優勝したMEMEのソロの腕の振りの迫力と体幹の強さ、そして終盤の全員でのたたみかけるような激しいワッキンのシーンは、圧倒的な素晴らしさだった。

結果は、36.7対63.3でMedical Concierge I’moonの勝利。「コレオグラフィー」がMedical Concierge I’moon 11.1%に対しavex ROYALBRATSが1.4%だったが、演出振付はavex ROYALBRATSのほうがアイデア豊かで工夫を凝らしていた。

BLOCK HYPEの最優秀ダンサーMVDはCyberAgent LegitのChris Ackey。(筆者にとってのMVDはMedical Concierge I’moonのMEME)。
同ブロックの現時点でのトータルランキング1位もCyberAgent Legit

BLOCK HYPEのMVDを獲得した CyberAgent LegitのChris Ackey ©D.LEAGUE 25-26

★2025年12月17日・18日に開催されたROUND.3の観戦レポートは近日公開!

この記事を書いた人 このライターの記事一覧

早稲田大学大学院博士課程満期終了。ハーバード大学大学院、ロシア国立プーシキン記念外国語大学留学。 早稲田大学、工学院大学、東京経済大学、青山学院大学、青山学院大学大学院で非常勤講師として、舞踊史、ロシア・バレエ史、ロシア語の講義、ストリートダンスの実技を担当。 舞踊評論家として、読売新聞、日経新聞、ダンスマガジン、各種公演プログラム等々に、舞踊評論を1980年代前半から寄稿。 文化庁芸術選奨推薦委員、東京新聞全国舞踊コンクール、さいたま全国舞踊コンクール現代舞踊部門審査員、まちだ全国バレエコンクール審査員。 著書に、「バレエ王国ロシアへの道」(東洋書店新社、2022年)、「二十世紀の10大バレエダンサー」(東京堂出版)、「知られざるロシア・バレエ史」(東洋書店)他。訳書に、「ワガノワのバレエレッスン」(新書館)他。論文に、「マリウス・プティパの創作の変遷」「F・ロプホーフのダンスシンフォニー『宇宙の偉大さ』」他多数。 バレエを東京バレエ団元バレエ・ミストレス友田弘子、ボリショイ・バレエ団元プリンシパルでモスクワ国際バレエコンクール第一回優勝者ゲンナージー・レージャフ他、コンテンポラリーダンスをネザーランド・ダンス・シアターの元中心的ダンサー中村恩恵、ストリートダンスを国際ダンスバトル世界チャンピオンSHUHOとGO GOBROTHERSのReiに師事。舞踊歴約60年現役。

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