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【動画つき】新国立劇場バレエ団「ラ・バヤデール」特集➁個性派ぞろいのキャラクター紹介&インタビュー

青木かれん Karen AOKI

動画撮影・編集:古川真理絵(バレエチャンネル編集部)

2024年4月27日(土)~5月5日(日)、新国立劇場バレエ団牧阿佐美版『ラ・バヤデール』を上演します。

インドを舞台に、寺院の舞姫ニキヤと騎士ソロルの恋と、複雑な人間関係が織りなす物語。登場するキャラクターたちにもそれぞれに際立つ個性があります。

今回は、ハイ・ブラーミンラジャー黄金の神像マグダヴェヤつぼの踊りの5人のキャラクターをピックアップ。それぞれの役を演じるダンサーたちのリハーサルとコメントを動画でお届けします。下記インタビューと合わせてお楽しみください。

Interviews
◆ハイ・ブラーミン(中家正博)
◆ラジャー(中家正博)
◆黄金の神像(奥村康祐)
◆マグダヴェヤ(宇賀大将)
◆つぼの踊り(原田舞子)

ハイ・ブラーミン

インドの寺院の最高位である大僧正。寺院の舞姫ニキヤが仕えている。

写真左からハイ・ブラーミン、ニキヤ 撮影:瀬戸秀美

ハイ・ブラーミン:中家正博インタビュー

ハイ・ブラーミンの役柄をどう解釈していますか?
中家 第1幕の冒頭から登場し、「聖なる炎を崇めよ」とファキール(苦行僧)たちに指示を出します。ハイ・ブラーミンは宗教上のトップで位が高いので、つねに周りの人々が彼に対して気を配っています。彼は、命令する時もいちいち相手のことを見ていません。スッと立ち、手の動きだけで命令しても、周りが動いてくれるような存在です。プライドの高い人間でふだんは冷静沈着ですが、どうしても手に入れたい存在が現れた瞬間に感情を爆発させます。その変わりようが少し気持ち悪いなと感じますが(笑)、そんな彼の人間らしさを観ていただけたらと思います。
ハイ・ブラーミンを演じるときに意識していることは?
中家 人前にいる時は聖職者としてふるまいながら、自分の本心を出した瞬間に豹変する。その豹変ぶりがハイ・ブラーミンを演じるうえで大切だと思います。ふだんは「ゴゴゴゴゴ……」と漫画のふきだしが出るような威圧感で立っている。そんな彼が“一人の男”になる瞬間のギャップを表現したいです。過去にローラン・プティの『ノートルダム・ド・パリ』で演じた司教フロロと同じように二面性があるキャラクターなので、今回もその経験を活かせると考えています。
注目の場面は?
中家 第1幕の序盤でハイ・ブラーミンがニキヤに求愛する場面は、大僧正から“一人の男”に変わる最初の見どころです。そのあとに、ニキヤとソロルが愛を誓い合うのを目撃し、「ソロルを殺してやる」と決意する場面。ここでも豹変ぶりが見えると思います。

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ラジャー

インドを治める王。ガムザッティの父。戦士ソロルが隊長として王に仕えている。

写真左からガムザッティ、ラジャー、ソロル 後列ハイ・ブラーミン 撮影:瀬戸秀美

ラジャー:中家正博インタビュー

ラジャーの役柄をどう解釈していますか?
中家 ラジャーは王様で、ハイ・ブラーミンと立場こそ違えど同じように人を従えていて、指示をする時に相手の顔は見ていません。僕は今回ハイ・ブラーミンとラジャーの二役を演じるので、両者のちょっとした違いを丁寧に表現できるようにリハーサルに励んでいます。決められた振付を守りつつ、自由に演技できる場面やほかのキャストとの掛け合いの中で、その瞬間に生まれる感情をのせて演じたいです。
ラジャーを演じるときに意識していることは?
中家 王様としての威厳を保ち、小さくならないように堂々と立つこと。それからお辞儀の仕方も。『ラ・バヤデール』には独特な挨拶のマイムがあって、額と胸に指先を添える仕草をしますよね。その挨拶をするとき、ほとんどのキャラクターはきちんとお辞儀をするのですが、ラジャーは深くお辞儀をしないように意識しています。なぜなら、王である彼はお辞儀をするよりもされることのほうが多いから。とくに指定されているわけではないのですが、位の高い人であればそんなに頭は下げないはず。そう考えて表現しています。
注目の場面は?
中家 ラジャーは政治上のトップであり、ハイ・ブラーミンは宗教上のトップ。ふだんのラジャーは大僧正のハイ・ブラーミンに敬意を払っていますが、彼に対して強く物を言い、権力を持つ男性同士ぶつかり合う場面もあります。ふたりの立場が逆転し、ラジャーが怒りに達する瞬間など、細かな部分までぜひ注目してお楽しみください!

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黄金の神像

第2幕、ガムザッティとソロルの婚約をお祝いするキャラクターとして登場。

黄金の神像 撮影:瀬戸秀美

黄金の神像:奥村康祐インタビュー

黄金の神像の役柄をどう解釈していますか?
奥村 この役は、踊るシヴァ神の像をイメージしたような振付が印象的。物語を動かすキャラクターではありませんが、作品全体をオリエンタルな雰囲気に包むような役だと思います。
踊るうえで難しいと感じることは?
奥村 手の使い方が独特で、バレエのポジションにはない形をしています。それをキープしながら踊るのが大変です。脚の動きもプリエとルルヴェの中間で、伸ばしきったり曲げきったりしない振付がたくさん出てくるんです。そういったこともあって1曲しか踊らないのに、普通の踊りよりも疲労感があります。黄金の神像はよく知られているキャラクターですし、男性ダンサーにとってはやりがいのある役です。
『ラ・バヤデール』のみどころは?
奥村 第3幕の影の王国と、幕切れに神殿が崩れるシーンでしょうか。僕が新国立劇場バレエ団に入団して、はじめてこの作品を観たとき、影の王国の美しさに感動しました。神殿が崩れる場面は、転換が大掛かりなので、その場面に出演していないダンサーたちは袖にいてはいけないんです。そのくらい迫力のある場面ですから、僕は舞台稽古中に客席から観て、心底圧倒されました。あの場面を正面から観られるのは貴重なこと。ぜひみなさまに体感していただきたいです。

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 マグダヴェヤ

寺院のファキール(苦行僧)たち のリーダー。

宇賀大将(マグダヴェヤ) ©Ballet Channel

マグダヴェヤ:宇賀大将インタビュー

マグダヴェヤの役柄をどう解釈していますか?
宇賀 『ラ・バヤデール』の物語の中でも、キーパーソンとなる役ではないかと思います。寺院の苦行僧でありながら、舞姫のニキヤとソロルのために手助けをしている。マグダヴェヤはソロルの手下でもなければ、ハイ・ブラーミンの手下でもない存在。実はニュートラルで、難しい位置にいる役どころだと感じています。
注目の場面は?
宇賀 『ラ・バヤデール』の幕が開いた瞬間、舞台上にいるのはマグダヴェヤただひとり。聖なる火を讃える場面に登場し、ファキールたちと力強く踊ります。お客様を作品の世界に引き込む重要な役なので、大切に演じたいです。物語が展開するきっかけとなるような掛け合いのシーンにも登場するので、ぜひご注目ください。
今回の公演のみどころは?
宇賀 今回、マグダヴェヤは4人のキャストがいて、4組のニキヤとソロルにそれぞれのマグダヴェヤがついています。一人ひとり異なる味わいを楽しんでいただけたら嬉しいです。

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つぼの踊り

第2幕、ガムザッティとソロルの婚約式で余興として踊られる。

つぼの踊り 撮影:瀬戸秀美

つぼの踊り:原田舞子インタビュー

つぼの踊りで意識していることは?
原田 この踊りは、頭にのせたつぼが落ちるか落ちないかというスリルを楽しむもの。頭を大きく動かしてもつぼの重さが感じられませんし、かといって背中をまっすぐに伸ばしすぎても踊っているように見えません。観る人が本当に落ちてしまわないかとドキドキするような踊り方を心がけています。つぼから手を離している時の表情もポイントです。
この踊りには、子役も2人登場しますね。
原田 大切なのは、3人でお話ししながら踊っているように見せること。きちんと視線を合わせて、お互いの顔を見るようにしています。子どもたちが本当に可愛らしくて、踊りながらのかけ合いがとても楽しいんですよ。それぞれが美しく見えるように、フォーメーションや通り道、スカートの持ち方などにも気を配っています。
つぼの踊りのみどころは?
原田 ドロドロとした展開が繰り広げられるなかで、つぼの踊りは舞台がパッと明るくなる場面。この踊りを観ている間は重々しい雰囲気から解放されて、楽しいひと時を味わっていただきたいです。そしてつぼの踊りだけでなく、『ラ・バヤデール』は衣裳の美しさも大きなみどころ。ぜひご注目ください!

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【特集】新国立劇場バレエ団「ラ・バヤデール」➀初役対談!廣川みくり(ニキヤ)×直塚美穂(ガムザッティ)はこちら

公演情報

新国立劇場バレエ団『ラ・バヤデール』

日程

2024年

4月27日(土)14:00

4月28日(日)13:00

4月28日(日)18:30

4月29日(月・祝)14:00

5月3日(金・祝)14:00

5月4日(土・祝)13:00

5月4日(土・祝)18:30

5月5日(日・祝)14:00

会場

新国立劇場 オペラパレス

詳細・問合せ

新国立劇場 公演サイト

その他 イベント

●バックステージツアー

4月29日(月・祝)、5月3日(金・祝)開催

●クラスレッスン見学会

5月3日(金・祝)開催

イベント詳細はこちら

 

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