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【インタビュー】パリ・オペラ座バレエ教師 アンドレイ・クレム氏に聞く①「パリ・オペラ座スタイルのクラスで、“ダンスすること”を教えたい」

阿部さや子 Sayako ABE

©︎ Tomoko Ishii

パリ・オペラ座バレエで教師を務めるほか、英国ロイヤル・バレエやオランダ国立バレエなど、世界各国のカンパニーに指導者として招かれているアンドレイ・クレム氏が、今夏(2019 731~84)東京でジュニア〜プロフェッショナルまでを対象とした5日間のバレエ講習会「エトワール バレエ ワークショップ in TOKYO 2019」を開催する。

今年はもうひとりの講師として英国ロイヤル・バレエ・スクール校長 クリストファー・パウニー氏を招き、クラス・レッスンやヴァリエーション・クラス、ポワント・ベーシック・クラスなどを実施するという。

プログラム内容
【マスタークラス】

– 上級/プロクラス / 17歳以上 (目安)
アンドレイ・クレムによるクラスレッスンとクリストファー・パウニーによるVaクラス

– 高等クラス / 14-16歳 (目安)
アンドレイ・クレムによるクラスレッスンとクリストファー・パウニーによるVaクラス

– 中級クラス / 11-13歳 (目安)
クリストファー・パウニーによるクラスレッスンとアンドレイ・クレムによるポワントベーシックレッスン

【ジュニア&子どもクラス】(定員満了)
9-11歳 (目安)アンドレイ・クレムによるクラスレッスン

【プライベートレッスン】(定員満了)
アンドレイ・クレムによるプライベートレッスン
受講者の希望内容でのレッスン

※1日限りの大人向けバレエ講習会も併せて開催。詳細はこちら

開催に先駆け、クレム氏に話を聞いた。

***

――今夏の「エトワール バレエ ワークショップ in TOKYO 2019」では、年齢等を目安として、
・ジュニア&子ども (age 9-11)
・中級 (age 11-13)
・高等 (age14-16)
・上級プロ (age 17-)
の4つのレベルが設けていますね。それぞれのレベルを教える時、あなたが重要視すること(つまり生徒たちはどんなことを重点的に教えてもらえるのか)を教えてください。

・ジュニア&子ども (age 9-11)
この年齢で重要視することは基礎のトレーニングです。それは、足のポジション、脚、腕、手先、背中、肩、頭など、上体の全てが正しいポジションで立てるようにするためのトレーニングであり、膝下の正しいターンアウト(*)、お尻から太ももにかけての正しいターンアウトを教えるトレーニングです。
全ての部位が正しいポジションにあれば、脚や上体を支えることができます。基礎!基礎!基礎!です。
*フランスでは膝下をBas de jambes(バ・ドゥ・ジョンブ)と言い、オペラ座はこのBas de jambs=膝下の動きを非常に重要視する。この膝下の動きのためのエクササイズが、他のメソッドと大きく異なることが多い

©︎ タンリエ

・中級 (age 11-13)
9-11歳のレベルで行うトレーニングを継続しながら、よりダイナミックな動きができるように指導します。そして、回転のような、さらに難しい動きを正しく習得できるように、より時間をかけていきます。もちろんテクニックだけに走ることなく、きちんとした基礎を維持した状態で、全ての動きができるように指導を行います。
またこの段階で、生徒自身が何かを表現できるようにしていくことにも注意を払います。バレエというのは「ただテクニックを行うもの」ではなく、「踊り」であると感じてもらえるように。つまり、クラスレッスン中といえども、ただ様々なエクササイズを行うだけではなく、レッスンの段階ですでに「自分たちは踊っているのだ」と理解してもらうようにします。

©︎Maria-Helena Buckley

・高等 (age14-16)
この年代は、9-11歳、11-13歳のレベルのトレーニングを継続し、常に基礎を確認しながら、さらに発展させていく段階です。バー・レッスンに多くの時間を割きますが、センター・ワークもたくさん行います。センター・ワークでは、新しいことを日々習得して、実践します。さらに女子は、たくさんのポワント・ワークも行います。

©︎Maria-Helena Buckley

・上級プロ (age 17-)
9-16歳までのレベルの全てのトレーニングを継続しながら、プロのダンサーが行うのと同じようなレッスンを始めます。ただ、彼らはまだ“学生”であることを忘れてはいけません。難しいテクニックを実践するだけのレッスンにするのではなく、常に基礎を怠らないように指導します。この年齢の生徒を指導する上で重要視するのは「踊ること」を学ぶ、ということです。単にクラシック・バレエの基礎や技術を使うだけ、にならないように。そして生徒たちにたくさんの自信を与えることも大切です。それは彼ら・彼女らの将来にとって、非常に大切なものとなります。

©︎Maria-Helena Buckley

――今回は受講対象となる最低年齢(目安)が9歳ですね。

小さい年齢の生徒を教えることができ、また教えたいと思う教師は、あまり多くありません。どの教師も、すでにある程度ステップを知っていて、準備ができている生徒の指導を好むものです。それゆえ、小さい年齢の生徒のためのクラスを用意している講習会というのも多くありません。例えば16歳以上の生徒や、ほぼプロと呼べるダンサーを指導するよりも、小さい子どもたちを指導するほうが実は複雑なのです。
小さい年齢の生徒を指導するというのは、非常に難しく責任のある仕事ですが、今回のエトワールバレエワークショップでは、そうした幼い生徒たちも学べる機会を設けています。そしてこの講習会ではあらゆる年齢層のクラスを設けていますので、参加してくれた子どもたちの成長を見届けることもできます。受講者の中には、第1回目から参加してくれている生徒もいるんですよ。またこのエトワールバレエワークショップはパリでも開催しているのですが、パリ・オペラ座バレエ学校のような著名な学校の生徒の中には、パリのみならず日本や韓国でのワークショップにまで来てくれる生徒もいます。彼らはもう幼くありませんが、このワークショップで学んだ道や方向性を継続し、成長してくれています。

©︎Maria-Helena Buckley

――他にも「エトワール バレエ ワークショップ in TOKYO 2019」の特徴や、特別な点はありますか?

まず、小さな年齢の参加者は、基礎をしっかり学ぶことができる、というところがスペシャルなポイントだと思います。また、年齢の高い参加者は、ほぼプロのダンサーが行なっているようなトレーニングが受けられるということも特徴ですね。そして全ての参加者が、パリ・オペラ座バレエのクラスのスピリットや、パリ・オペラ座ならではのスタイル、雰囲気といったものに触れることができます。
さらに、常に素晴らしいピアニストに伴奏していただいていることもスペシャルなポイントです。彼らは単に音楽を奏でるだけでなく、我々の指導するプロセスにかかわり、教師と共に生徒の成長させる大きな役割を担っています。ピアニストは、ダンサーを大きく成長させてくれます。ピアニストは教師であるとも言えますね。エトワールバレエワークショップでは、辻徳子というパリ・オペラ座バレエで経験を積んだ、素晴らしいモチベーションを持つピアニストが伴奏を務めてくれています。彼女のおかげで、このワークショップはさらにクオリティの高いレッスンとなっているのです。

©︎Maria-Helena Buckley

――日本人の生徒の特徴、長所(こういうところはもっと伸ばしていくといい、と思われるところ)はどんなところですか? 逆にもっと注意して練習すべきことや、今後改善していくべき課もあれば教えてください。

最も特徴的な長所は、きちんとトレーニングがされていて、非常に注意深いところ。そして教師とバレエに対し、きちんと敬意を持って向き合うところだと思います。また、近年の日本人ダンサー達の全体的なレベルの向上には、目を見張るものがあります。
改善していくべき点としては、テクニックに集中するのではなく、「ダンスすること」「踊るということ」について、もっと深く考えたほうがいい、ということでしょうか。そして、自分自身を表現すること、自分の動きでストーリーを物語るということが重要です。どんな小さなパにも、意味を持たせること。そして、新しいことへの挑戦を恐れず、旅行をしてみたり、世界中のワークショップに参加してみたりするのも良いかもしれませんね。

©︎Maria-Helena Buckley

――今回の講習会では、英国ロイヤルバレエスクールやパリ・オペラ座バレエ学校、オランダ国立バレエ団ジュニアカンパニー等で学ぶチャンスをサポートする特典がたくさん用意されています。
どういう生徒に、それらのチャンスを与えたいと思いますか?
そしてそうした海外で学ぶチャンスを手に入れた生徒には、どういうアドバイスを送りたいと思いますか?

ヨーロッパでバレエを学びたいと希望する参加者の中で、最も素晴らしい生徒にこの機会を贈りたいと思います。このほかにはないチャンスを100%活用して欲しいです。できる限り、たくさんのことを学び、そして忘れないようにしてほしいですね。研修に行く前に英語やフランス語を学んでおくと、細かいニュアンスやスタイルの全てを理解し、習得できますよ。

――クレム先生の考える、“魅力的なダンサー”の条件とは?

ダンスを愛し、感情を表現することを愛するダンサー。理解が早くて頭のよいダンサー。そして自分自身のスタイルを持ったダンサーですね。

©︎Maria-Helena Buckley

講習会情報

エトワールバレエワークショップ in TOKYO 2019

開催日時 2019年7月31日~8月4日
会場 ノアスタジオ都立大(東京都目黒区中根1丁目7-23 STビル)
*講習会に関する問合せは、ノアスタジオではなく主催者(この欄の最下段参照)まで
時間 9時〜19時
プログラム 【マスタークラス】

上級/プロクラス / 17歳以上 (目安)
アンドレイ・クレムによるクラスレッスンとクリストファー・パウニーによるVaクラス

高等クラス / 14-16歳 (目安)
アンドレイ・クレムによるクラスレッスンとクリストファー・パウニーによるVaクラス

中級クラス / 11-13歳 (目安)
クリストファー・パウニーによるクラスレッスンとアンドレイ・クレムによるポワントベーシックレッスン

※クリストファー・パウニーによるボーイズテクニック&Vaクラスも開催

【ジュニア&子どもクラス】*定員満了
9-11歳 (目安)アンドレイ・クレムによるクラスレッスン

【プライベートレッスン】*定員満了
アンドレイ・クレムによるプライベートレッスン
受講者の希望内容でのレッスン

主催・問合せ 日仏舞踊協会 タンリエ
詳細 https://www.grand-stage-etoiles.com/summer-ete-tokyo-2019/

 

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