2022年7月24日(日)、パリ・オペラ座バレエ教師ジル・イゾアールによる、大人バレエ向けの講習会が開催されました。パリ・オペラ座スタイルならではの足さばき、エレガントなアームス、上体の使い方をたっぷり学べたレッスンのもようを、写真とともにレポートします。
写真撮影:バレエチャンネル編集部
バー・レッスン
受講したのは18歳以上の男女20名。「みなさんと時間をともに過ごせることを楽しみにしていました。今日は、オペラ座で行っている内容を少しシンプルにしたクラスを行いたいと思っています。でも、シンプルなことが簡単だとは限らないので注意してくださいね」とジル先生。まずは足ならしのウォーミングアップからレッスンがスタートしました。
「床とのコンタクトを感じて。指先からつま先まで、大きなスペースをイメージして身体をすみずみまで伸ばしてレッスンしてください」
美しいお手本とともに、ジル先生からいくつかの大事なアドバイスが。
「カウントは数えるけど、音楽をしっかり聴いて動くように。ダンスは音楽とともにイメージを共有する芸術です。ポール・ド・ブラをする時も、あなたの中で何かをイメージして。自分の感情を出して、スピリットを持って踊るようにしましょう」
「フォンダンショコラの中にフーっと入るような、深くて柔らかいプリエを目指しましょう」
「タン・リエをする時、顔は体重を乗せているほう、つまり重心があるほうに向けましょう。顔をつけることで、重心をしっかり意識した体重移動ができるようになりますよ」
「気をつけてほしいのは、プリエする時も、脚を出す時も、感情に身を委ねて踊っている時も、肩と肩甲骨の位置が歪まないようにキープすること。このラインを保つことができれば、ジャンプなど動きが大きくなっても崩れることはありません」
「ドゥミ・ポワントで身体を引き上げ、バランスをコントロールして体幹を整えたら、その引き上げと体幹を意識したまま床に下りてください。すごくシンプルだけど軸を作るために大事なことです」
デガジェは、ジル先生の恩師であるアレクサンドル・カリウジュニが、パリ・オペラ座バレエのクラスでよく行っていたというトレーニング。シンプルな動きを反復するエクササイズは、心臓を鍛える効果があるとのこと。
ロン・ド・ジャンブ・ア・テール、フォンデュ、フラッペ、グラン・バットマン……どのエクササイズでも一貫して、音楽に耳を傾けるようにと指導するジル先生。例えばフラッペの音の取り方も、最初の8回は〈外取り〉、後半の8回は〈中取り〉と、アクセントに変化を加えて音楽性を鍛えていました。
ピアノ演奏は国内外のバレエ団で活躍するバレエピアニストの小泉直美さん。「くるみ割り人形」「眠れる森の美女」「白鳥の湖」のほか、ミュージカルナンバーをアレンジした楽しい曲も!
センター・レッスン
センター・レッスンはタンデュから。バー・レッスンのタンデュと同じアンシェヌマンで行われました。
時おり飛び出す「イチ、ニ、サン、シ……」「イキマショウ!」という意外なほど(?!)流暢な日本語に、受講者が思わず笑顔になる場面も
しきりに「音楽を感じて、音楽と一緒に呼吸してください!」と指導するジル先生
受講生には、パリ・オペラ座バレエの契約ダンサー三輪涼介さんの姿も。模範的な美しい踊りでクラスを引っ張ってくれました
「アダージオはいつ写真を撮られてもいいように。最後の最後までつま先を伸ばして!」とジル先生。ぴったり呼吸の合った受講生の踊りにジル先生からも「ブラボー!」の声が
ピルエットでは、アン・ドゥオール(外回り)とアン・ドゥダン(内回り)の回転の違いについて、とてもわかりやすいアドバイスも。
「右のアン・ドゥオールは右手でドアを開けるイメージ。右のアン・ドゥダンは右手でドアを閉めるイメージ。そのイメージを持てば、回転する方向も混乱しないですよ」
「ピルエットは肩が内側に入らないように気をつけて。ルティレの時にバーで作った肩と肩甲骨の位置を意識して上体を保てば、美しいピルエットが回れますよ」とジル先生
ピルエットのあとは、プティ・ソテと2種類のアレグロ。アレグロでは「ジュテ→ジュテ→ポイント→グリッサード・ジュテ→アッサンブレ→スートゥニュ」と受講者と一緒にアンシェヌマンの流れを声に出して復唱する場面も。テンポの速さについ慌てがちなアレグロも、ステップの順番を声に出してみると、一つひとつのパを落ち着いて積み重ねていけるようです。
グラン・ワルツのあとは、全員でレヴェランス。いつのまにか終了予定時刻を10分もオーバーして(!)、大充実のクラスは終了しました。
最後のレヴェランスはジル先生と一緒に。一つひとつの腕の運びが丁寧でエレガンス。どの瞬間も美しいジル先生のお手本にうっとりする100分間でした
レッスンの最後に全員で記念写真をパチリ。ジル先生が一人ひとりにポーズをつけてくれました!
- レッスン終了後、ジル先生からのメッセージ
プロでも若い学生でもアマチュアでも、私が教える時の根本的な方向性は同じです。それは、ダンサーたちが常に初心に返ることのできる場所を作るということ。「自分は今どこにいるのか」「自分はなぜ今日も踊るのか」……ダンサーたちがその答えを導き出せるように、日々のレッスンを行っています。
幸運なことに、私たちには「音楽」があります。音楽を介して、自分の感情を出すことができる。音楽と動き、そしてピュアでクリアなラインが調和した時、観客は美しいと感じる。モーツァルトが2つの共鳴する「音」を探求したように、私も2つの愛し合う「動き」を求めます。
バレエは美の芸術です。完全にアン・ドゥオールができなくても、大事なのは動きの中に美しさを見つけること。例えば、正しいポジションに脚を出す。それは身体が要求することであり、ダンサーにとって心地が良いと感じられることなのです。自分の身体の反応をよく見て、よく理解して、怪我のないようレッスンに励んでください!
【イベントDATA】
講師:ジル・イゾアール(パリ・オペラ座バレエ教師)
ピアノ:小泉直美
通訳:四方泉(日仏舞踊協会 タンリエ)
会場:愛里バレエスタジオ
企画・主催:バレエ専門WEBメディア〈バレエチャンネル〉×バレエショップフェアリー
協力:日仏舞踊協会 タンリエ
Association le temps lié – l’art chorégraphique franco-japonais
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