現在来日中のパリ・オペラ座バレエ。
輝かしいエトワールたちを頂点としたすべてのダンサーたちが、鍛え上げられたステップを礎に、ふくらみのある表現力で物語を紡いでいます。
シンプルにシュ・スーで立った時の、第5ポジションに丁寧に重ねられた脚の美しさ。
小刻みに空を打つ膝下〜足先の動きの明快さと力強さ。
ポワント(つま先立ち)からア・テール(踵を床につける)へと滑らかに降りてくる動作のエレガントさ。
ステップの一つひとつがすみずみまで盤石にコントロールされているからこその、ゆたかなポール・ド・ブラ、優美この上ないプレゼンテーション……。
こうした”パリ・オペラ座スタイル”の踊りはどのように育まれるのか?
その秘密にせまり、エッセンスを学ぶために、小社ではこれまでに3種類の〈パリ・オペラ座バレエ〉のレッスンシリーズDVDを撮影・収録してきました。
- ドロテ・ジルベール パリ・オペラ座エトワールのバレエ・レッスン〈上・下巻〉
- パリ・オペラ座エトワール マチュー・ガニオのノーブル・バレエクラス
- パリ・オペラ座エトワールが教えるヴァリエーション・レッスン
これらのDVDでモデルを務めてくれているのは、今回の日本公演で主役や準主役を踊っているエトワールなど、トップダンサーたちです。
この来日の機会に、これらのDVDの企画・撮影に携わった際のエピソードなども思い出しながら、あらためて”オペラ座スタイル”の踊りやダンサーたちの素晴らしさ、映像の魅力をご紹介してみたいと思います。
ドロテ・ジルベール パリ・オペラ座エトワールのバレエ・レッスン〈上・下巻〉
現在のパリ・オペラ座を代表するエトワール、ドロテ・ジルベール。こちらの映像は、彼女自身がモデルを務め、普段のクラスで行っている内容を完全収録したレッスンDVDです。
上巻(ウォーミング・アップ&バー・レッスン)は、ガルニエ宮の舞台奥にある〈フォワイエ・ド・ラ・ダンス〉で撮影されています。
フォワイエ・ド・ラ・ダンスとは、出番前のダンサーたちがウォーミングアップをするのに使われるスペース。19世紀にはオペラ座の年間予約会員となった富裕客たちが出入りを許され、贔屓のバレリーナを見つける場所としても使われたことでも有名です。
黄金色に輝く壁、荘厳なシャンデリア。天井からはサン=レオンやマリー・タリオーニなどレジェンドたちの肖像画がこちらを見下ろしていて、歴史の重みがズンと体に響いてくるよう。
仄暗くて、映像や写真を撮影するにはどうしても苦労したものの、オペラ座のダンサーたちのあの誇り高いダンスは、こんな雰囲気に日常的に身を浸しているからこそなのかもしれない……と、そんな風に感じました。
いっぽう下巻(センター&ポアント・レッスン)は、上階のリハーサルスタジオに場を移して撮影。オペラ座で代々受け継がれてきたポワント・ワークのエクササイズや、さまざまなポジションでの回転&ジャンプなど、基礎的な動きから応用的なテクニックまであらゆるステップを網羅しています。
指導・解説は、オペラ座のダンサーたちが絶大な信頼を寄せるバレエ教師のジル・イゾアールです。彼の組むアンシェヌマンは、リンバリングのようなエクササイズでさえとても優美。それをジルベールが実演すると……もう、充分に言い表せる言葉が見つかりませんので、ぜひこちらのサンプル映像でご覧ください!
★サンプル映像①:ドロテ・ジルベール パリ・オペラ座エトワールのバレエ・レッスン〈上巻〉
- 【上巻】
- ●ウォーミングアップ
●バー・レッスン(プリエ/タンデュ/ジュテ/ロン・ド・ジャンブ・ア・テール/フォンデュ/ロン・ド・ジャンブ・アン・レール/プティ・バットマン/アダージオ/グラン・バットマン ほか)
●特典映像
インタビュー:ブリジット・ルフェーヴル、ジル・イゾアール、トゥーヴ・R・ラトヴォンドラエティ
ドロテ・ジルベール 美しさの秘密
●モデル:
ドロテ・ジルベール(パリ・オペラ座バレエ エトワール)
アレッシオ・カルボネ(パリ・オペラ座バレエ プルミエ・ダンスール)※現在フリー
●指導:
ジル・イゾアール(パリ・オペラ座バレエ 教師)
●ピアノ:
トゥーヴ・R・ラトヴォンドラエティ(パリ・オペラ座バレエ ピアニスト)
- ●DVD、本編58分+特典45分、日本語字幕、2011年収録
5,720円 (税込)
★サンプル映像②:ドロテ・ジルベール パリ・オペラ座エトワールのバレエ・レッスン〈下巻〉
- 【下巻】
- ●センター&ポアント・レッスン
パ・ド・ポアント/タンデュ/アダージオ/ピルエット/プティ・ソー/グラン・ソー/トゥール・アン・レール/グラン・パ・ド・ポアント/デサント・ド・ポアント/トゥール・ア・ラ・スゴンド/グラン・ジュテ・マネージュ/グラン・フェッテ/ピケ・マネージュ/レヴェランス
●特典映像:
インタビュー:ドロテ・ジルベール&アレッシオ・カルボネ
『ロミオとジュリエット』第1幕よりジュリエットのヴァリエーション
ドロテ・ジルベール、トウシューズを語る
●モデル:
ドロテ・ジルベール(パリ・オペラ座バレエ エトワール)
アレッシオ・カルボネ(パリ・オペラ座バレエ プルミエ・ダンスール)※現在フリー
●指導:
ジル・イゾアール(パリ・オペラ座バレエ 教師)
●ピアノ:
トゥーヴ・R・ラトヴォンドラエティ(パリ・オペラ座バレエ ピアニスト)
- ●DVD、本編45分+特典28分、日本語字幕、2011年収録
5,720円 (税込)
パリ・オペラ座エトワール マチュー・ガニオのノーブル・バレエクラス
パリ・オペラ座バレエの美しき貴公子、マチュー・ガニオ。
世界が認める”ダンスール・ノーブル”(美しい容姿と高貴な雰囲気を兼ね備えた、「王子」役の似合うダンサーのこと)である彼の、気品に満ちた踊りはいかにして作られるのか?
もちろん持って生まれた身体条件や天賦の才はあるとして、しかしマチューの踊りには、例えば5番ポジションのシュ・スーに立つだけでも、こちらがハッと息をのんでしまうほどの美があります。
彼はいったい、日頃どのような鍛錬を積んでいるのか……その秘密に迫るべく企画されたのが、このDVDです。
本DVDでは、マチューの優美な動きの秘訣である5つのポイント=「①足」「②脚」「③バランス力」「④腕」「⑤プレゼンテーション」を軸に、レッスン内容が紹介されています。
それぞれの要素を磨き上げていくにはどのような訓練が有効なのかを、パリ・オペラ座バレエ教師のジル・イゾアールが、くわしく解説しながら指導しています。
撮影はパリ郊外のナンテールにあるパリ・オペラ座バレエ学校で行われました。第2学年(卒業学年のひとつ下)でオペラ座バレエ学校に編入学したマチュー。「建物も街の景色もあの頃と変わらないけど、やはり感じ方は少し違いますね。懐かしいです」。
撮影中、いちばん印象に残ったのは、レッスンに臨むマチューの”姿勢”でした。
撮影が行われた2013年当時、マチューはすでにエトワール在任9年というキャリアがありました。それでも、イゾアールのアドバイスに一生懸命耳を傾けるその眼差しは、まるで十代の生徒のように真っ直ぐで、真摯そのもの。傍目から観ると完璧なのに、自分自身が納得いかなければ悔しそうな表情を浮かべて何度でもやり直す姿に、トップに上り詰めるダンサーの、バレエに対する謙虚さと凄まじいまでの執念を垣間見た気がしました。
そして女性のモデルを務めてくれたのは、バレエ団期待の若手アリス・カトネ。
文字通り、絵画から抜け出たような可憐さで、彼女の周りには少し霞がかかったように見えました……。人柄も物静かで心優しく、現場の雰囲気を和ませてくれたことも記憶に残っています。
見どころだらけのDVDですが、〈⑤プレゼンテーション〉のチャプターでは、マチューがヌレエフ版『白鳥の湖』の王子のソロを披露しています! このソロだけで、ストーリーがぱあっと広がっていくような、素晴らしいデモンストレーションです。
もうひとつだけ、小さなこぼれ話を。
このDVDの撮影が行われた日、マチューは29歳の誕生日を迎えました。それをみんなでお祝いした様子なども、ちらっと収録されています。
★サンプル映像③:パリ・オペラ座エトワール マチュー・ガニオのノーブル・バレエクラス
- 【パリ・オペラ座エトワール マチュー・ガニオのノーブル・バレエクラス】
- ●モデル:
マチュー・ガニオ(エトワール)、アリス・カトネ(カドリーユ)
●指導:
ジル・イゾアール(パリ・オペラ座 バレエ教師)
●ピアノ:
ローラン・シュクルン(パリ・オペラ座バレエ学校 ピアニスト)
●特典映像:
マチュー・ガニオ スペシャル・ロングインタビュー
マチュー・ガニオ/ジル・イゾアール/アリス・カトネ
パリ・オペラ座バレエ芸術監督(当時)ブリジット・ルフェーブル
パリ・オペラ座バレエ学校校長 エリザベット・プラテル ほか
- ●DVD、2013年、本編約107分+特典59分、日本語字幕
5,720円 (税込)
パリ・オペラ座エトワールが教えるヴァリエーション・レッスン
パリ・オペラ座バレエのエトワールとして活躍したバンジャマン・ペッシュが、ガラ公演やコンクール等で人気のヴァリエーションをコーチングしたDVD。
フランス・バレエのエッセンスを盛り込みつつ、テクニックや表現のポイントを丁寧に指導・解説しています。
こちらの映像でモデルを務めているのは、国際コンクール等でも輝かしい受賞歴を誇るプルミエール・ダンスーズのオニール八菜と、新世代の貴公子ジェルマン・ルーヴェ。ジェルマンはこの映像の撮影時にはスジェでしたが、その後またたく間に昇進し、現在はオペラ座のいまを担うエトワールとして活躍しています。
撮影はガルニエ宮にて。丸窓が印象的な広い稽古場を借り切って、2日間かけて収録しました
このDVDのために選んだヴァリエーションは5曲。どれもオペラ座が財産的レパートリーとして大切に上演し続けている作品です。
- 『眠れる森の美女』第3幕より オーロラ姫のヴァリエーション
- 『白鳥の湖』第3幕より ジークフリート王子のヴァリエーション
- 『グラン・パ・クラシック』より 女性ヴァリエーション
- 『ジゼル』第2幕より アルブレヒトのヴァリエーション
- 『ラ・バヤデール』第2幕より ガムザッティのヴァリエーション
収録でとくに心に残っているのは、『グラン・パ・クラシック』の女性Vaと、『ジゼル』第2幕のアルブレヒトのVaです。
バレエは前・横・後ろ・斜めの8つの方向を意識しながら踊りますが、『グラン・パ・クラシック』のあのソロでは、8つの方向に鏡があると想像する、と。そしてそこにひとつずつポーズを映すようなつもりで踊るのだという極意を教わったのは、大きな学びでした。
またアルブレヒトのソロは、随所随所でエネルギーをスパン!と発散させることによって、あの踊りのエモーションが生まれるのだということを教わりました。
特典映像は「八菜&ジェルマンのパリ・オペラ座案内」。ふたりの素顔、飾らない言葉が楽しめます。ぜひご覧ください!
★サンプル映像④:パリ・オペラ座 エトワールが教えるヴァリエーション・レッスン
- 【パリ・オペラ座 エトワールが教えるヴァリエーション・レッスン】
- ●指導:
バンジャマン・ペッシュ(パリ・オペラ座バレエ 元エトワール)
●モデル:
オニール八菜(パリ・オペラ座バレエ プルミエール・ダンスーズ)
ジェルマン・ルーヴェ(パリ・オペラ座バレエ スジェ)※現在はエトワール
●ピアノ:エレーナ・ボネイ(パリ・オペラ座バレエ ピアニスト)
●内容:
「眠れる森の美女」第3幕より オーロラ姫のヴァリエーション
「白鳥の湖」第3幕より ジークフリート王子のヴァリエーション
「グラン・パ・クラシック」より 女性ヴァリエーション
「ジゼル」第2幕より アルブレヒトのヴァリエーション
「ラ・バヤデール」第2幕より ガムザッティのヴァリエーション
●特典映像:
バンジャマン・ペッシュ インタビュー
『眠れる森の美女』第3幕より グラン・パ・ド・ドゥ(アダージオ)
八菜&ジェルマンのパリ・オペラ座案内
- ●DVD、本編91分+特典映像50分、カラー、2016年、日本語字幕
5,060円 (税込)