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【動画レポ】主役リハーサル&インタビュー② 奥村康祐×米沢 唯

阿部さや子 Sayako ABE

新国立劇場バレエ団6月公演「アラジン」
主役(アラジンとプリンセス)を務める3組のダンサーたちのリハーサル&インタビューを、1組ずつ動画でお届けします。

第2回目は、6月16日と最終日の23日に主演するアラジン役・奥村康祐さんとプリンセス役・米沢 唯さんです。
手と手が触れ合った瞬間の心の動き。相手への思いが伝わってくる背中。
「アラジンがすることの一つひとつが、プリンセスにとっては新しい世界への扉」ーーこの作品がもつ魅力の核心にはっと気づかせてくれるようなインタビューも、ぜひお読みください。

音楽:カール・デイヴィス「アラジン」/使用楽譜:Faber Music
Videographer : Kenji Hirano

JASRAC 許諾番号9012264003Y45040

※この動画は著作権上の都合により、2019年6月30日までの限定公開となります

※2019.07.03 追記
上記の期限満了をもって、動画の公開を終了しました。たくさんのご視聴ありがとうございました。

主演ダンサーインタビュー

アラジン  奥村康祐
プリンセス 米沢 唯

――続いてアラジン役の奥村康祐さんと、プリンセス役の米沢唯さんにお越しいただきました。まずはお二人にとって、この『アラジン』という作品の魅了とは?

私が『アラジン』に出会ったのは、新国立劇場バレエ団に入団して1年目のファーストシーズンで、その時はソリスト役を踊らせていただきました。それが2011年で、ちょうどあの震災があった年だったんですね。震災後すぐの公演がキャンセルになり、そのあと劇場の幕が再び開いたのが、この『アラジン』でした。オーケストラが奏でる前奏曲が流れてきた瞬間、思わず涙しそうになったのを覚えています。希望のあふれる音楽で、キラキラしていて、その中から“私たちが生きていく”というエネルギーが感じられて。そして物語も、若い2人が困難を乗り越えて希望に向かって生きていくという作品だな……とその時に思ったんです。観た人が幸せな気分になって、「よし、頑張ろう!」と前を向ける作品だなと思うので、私自身もそういう風に踊れたらと思っています。
僕はまず、男性ダンサーがタイトルロールというのはなかなかめずらしい作品だと思うんですね。それを新国立劇場がレパートリーに持っているというのも素敵なことだと思いますし、その作品を踊れることがとても幸せ。映画的でもあるし、ミュージカル的でもあるし、お芝居的でもあるし、もちろんバレエ的でもある。エンターテイメント性も芸術性もどちらも強い。踊っているほうもやりがいがあるし、観ている方もすごく満足できるんじゃないかなと思います。

――ご自身の役をどのような人物像として捉えていらっしゃいますか?

街のいたずら者でどうしようもない男の子だったアラジンが、ランプを手に入れるという課題を与えられ、プリンセスに恋をして、困難に立ち向かいながら大人になっていく。その成長の過程を見せるのがアラジンという役だと思っています。
プリンセスも、アラジンとともに成長していくのだと思います。最初はアラジンのほうが少し子どもっぽくて、しっかり者のプリンセスが彼に寄り添いながらサポートしているような感じなんですね。その後、危機に陥った時にアラジンに助けてもらったり、それまで大事に大事に育てられてきた彼女が、自分の力で困難に立ち向かわなくてはいけないという経験をしていきます。だからアラジンとのパ・ド・ドゥにしても、第2幕の結婚式で踊るものと、第3幕の最後に踊るものとでは、プリンセスが少し違う気がするんです。ただ寄り添っているだけだったのが、愛する男性を心から信頼して、彼に身を預けるという風に変わっていく。

――この作品は振付もとても独特ですね。

とても難しいです。女性は女性でしっかり立っていなくてはいけないけれども、そこから男性が、両方の体重をうまく使って流れるように見せるとか。スリルがあって、ドキドキします。踊りながら「ああ、できたー!」と(笑)。
失敗してしまうリスクもゼロではありません。
本当にドキドキします。でもそのドキドキが、ビントレー作品の醍醐味でもあると思う。ダンサーたち自身がすごくドキドキわくわくしながら踊るっていうのが、ビントレー作品の魅力であり特徴なのかな、と思います。
「うん、大丈夫!」という安心感はないですね(笑)。
ビントレーさん自身がそれを好まないのだと思います。私たちがちょっとできたかなと思うと、振りを変えられたりするので。いつも「できるかな?」というスリルを感じながら、二人で一緒に向かっていくような踊り方になります。

――この作品には素敵な踊りがたくさんありますが、特に好きなものはありますか?

本当に全部好きなので難しい……。唯ちゃんは何かある?
自分が踊ったパートはどうしても思い入れがあって……。そうだ、第2幕でアラジンとプリンセスが結婚する前に、ジーンとアラジンのお付きの人たちがみんなで一斉に踊る場面があるんです。曲も最高に盛り上がりますし、思わず一緒に踊りたくなってしまうような振付。あそこはぜひ楽しんで観ていただきたいと思います。
ちょっとインド映画みたいです(笑)。
そう! ジーンの見せ場でもあるし、女性たちも逆さまになって、普通のバレエでは絶対やっちゃダメな振りがあったりして(笑)、すごく可愛くて楽しいです。
そういう意味で言うと、僕はライオン・ダンスが好きです。結婚式のパ・ド・ドゥの後に獅子舞みたいなのが出てきて踊るところ。
2人で1つの獅子になって。目をパチパチパチってさせて、足で顔をカイカイカイってやるのね(笑)。あとは、私は完全に「宝石」推しです。宝石のディヴェルティスマン。もう、大好きですね。幕が開いて、洞窟が出現した瞬間にまず感動します。でも、それは見ていただかないとわからないと思う。あの魅力は見ないと絶対にわからない。

――文字通り、幕が開いた瞬間に息を呑むシーンです! アラジンとプリンセスの場面で、「ここはとくに大切に演じたいな」と思っているところはありますか?

さっき唯ちゃんも言っていたのですが、第3幕の終盤、プリセンスを救って大団円も迎えた後、最後に踊るパ・ド・ドゥがあるんです。普通のクラシック作品だと“結婚式で終わり”というパターンが多いと思うのですが、この作品は逆で、結婚してから困難が襲ってきて、それを乗り越えて愛がより深まっていく。最後のパ・ド・ドゥはそういう踊りなので、そこに独特の美しさというか人間らしさがあって、すごくいいなと思います。音楽の雰囲気もガラリと変わって、素敵なパ・ド・ドゥです。その代わり、上手くいくかひやひやします。でもそれも含めてひとつの見どころなのかな、と。
アラジンと一緒に踊るところはどれも、同じ関係性ではないんですね。全部、ちょっとずつ変わっていく。最初は若い二人が結婚できた幸せ。2つ目は「この人が私を助けてくれる。もう大丈夫」っていうパ・ド・ドゥ。そして最後はやはり、少し大人になった二人の踊り。その一つひとつを違う二人で踊りたい、ということがあります。それから私は、アラジンとプリンセスがいちばん最初に出会う場面ですね。姫が出てきて、人々がみんなザーッと顔を伏せるのですが、その中でスッと立ち上がった男の人と、パッと目が合う瞬間。そのシーンはすごく大事にしたいです。アラジンって、姫にとってはものすごく異次元の世界の人だと思うんです。今まで触れたこともない世界を持っている人。だから彼が何かするたびに、彼女はいつもびっくりする。それが姫にとっては、新しい世界への扉なのだと思うんです。彼が私に向かって投げた林檎を受け止めた時も、「何だろう、これ!」っていう感じがする。何度やっても、そう感じます。その感覚をすごく大事にしたいなと思います。

★【動画レポ】主役リハーサル&インタビュー③ 福田圭吾×池田理沙子 は6月6日公開予定です

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