※辻?本知彦氏の「辻?」は1点シンニョウ
動画撮影・編集:Ballet Channel
スタジオジブリのアニメーション『千と千尋の神隠し』(監督:宮﨑駿/2001年公開)は、2020年までの19年間にわたり日本歴代興行収入記録を更新しつづけた人気映画。
その「舞台演劇版」が、2022年3月から東宝株式会社の創立90周年記念作品として上演される。翻案・演出はミュージカル『レ・ミゼラブル』世界初演で潤色・演出を手掛けたジョン・ケアード。豪華キャスト・スタッフ陣の中に、振付としてイデビアン・クルーの井手茂太が参加、「カオナシ」役にはダンサーの菅原小春と辻?本知彦がダブルキャスト出演することでも話題になっている。
2021年11月9日、舞台版『千と千尋の神隠し』の製作発表会見が、ザ・プリンスパークタワー東京 コンベンションホールで開催された。
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登壇とスタッフ挨拶
橋本環奈、上白石萌音がパネルに掛かったベールを引くと、それぞれの千尋をイメージした、巨大なポスタービジュアルが顔を出した。映画『千と千尋の神隠し』の音楽が流れる中、主要キャストとスタッフが登壇。会場が一気に華やいだ。
舞台『千と千尋の神隠し』2種類のポスタービジュアル。左:橋本環奈、右:上白石萌音
まずはスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーが登壇者にエールを送ったのち、『千と千尋の神隠し』の舞台化決定までの経緯が説明された。
演出のジョン・ケアードはスタジオジブリの大ファンで、とくに演劇性を感じた『千と千尋の神隠し』を自分の手で舞台化したいと熱望。上演許可を得るため、みずから宮﨑と鈴木のもとを訪ねた。絶対にOKはもらえないだろうと思っていたところ、宮﨑はあっさりと上演を許可。鈴木はその時のようすを聞かれてこう述べた。
「宮﨑の最初のひと言が『いいよ』だったんです。こんなに多くの人に支持されたんだから『千と千尋の神隠し』はもう僕のものではなく、みなさんのものだ、と。」
映画版の音楽を担当した久石譲も、楽曲の使用を快諾。舞台版は久石のオリジナルスコアをもとに、『ナイツ・テイル―騎士物語―』でケアードとタッグを組んだブラッド・ハークが編曲する。
主要キャストによる挨拶
続いて主要キャストを演じる13名の俳優たちが、作品への思いや意気込みを語った。
千尋役:橋本環奈(はしもと・かんな)&上白石萌音(かみしらいし・もね)
右から:橋本環奈「1歳年上の萌音ちゃんは、一緒にいるとすごく安心する」、上白石萌音「お互い、まったく違う千尋になると思います。環奈ちゃんの稽古からいろいろなものを得たい」 ©️Shoko Matsuhashi
橋本(環) 今回が初舞台になります。まだ右も左も上も下もわからない状態で……みなさんの背中を見ながら何でも吸収していきたい。そしてみなさんを少しでも引っ張っていけるように変わっていけたらと思っています。どういう作品になるのかまだ想像できないのですが、新鮮に楽しく挑戦していけたら。役を演じるのではなく、千尋に命を吹き込んで「生きた千尋」をお届けしたいです。
上白石 7歳で原作映画を初めて観て、怖くてオイオイ泣きながらも世界観に惹きこまれました。心に刻まれた大好きな作品の舞台に立てるという巡り合わせを、とても嬉しく感じています。プレッシャーをぬぐうことはできないと思うので、心地よく味方に感じながら、リスペクトと覚悟と責任をもってしっかり演じさせていただきたいです。ジョンの頭の中には、素敵なアイディアがたくさん詰まっているはずなので、それを体現できるように、精一杯、千尋のように勇敢に頑張りたいです。
ハク役:醍醐虎汰朗(だいご・こたろう)&三浦宏規(みうら・ひろき)
右から:醍醐虎汰朗、三浦宏規 ©️Shoko Matsuhashi
醍醐 世界から愛される作品に参加できることを幸せに思います。昨夜お風呂の中で「明日、何を喋ろうかな」って考えていたんですけれど、いざこの場に立ったら緊張で全部忘れちゃいました(笑)。プレッシャーは感じますが、素晴らしい方々に胸を借りながら、僕にできることを精一杯やりたいです。
三浦 素晴らしい作品の初の舞台化に、ハクという役で携われて光栄です。僕自身もわくわくしていて、とくに(ハクが姿を変える)龍は舞台でどうやって表現するんだろうと。僕が龍に変身するのか、他の龍が登場するのか……すごくすごく楽しみです! みなさまの期待を裏切らないように演じたいと思います。
カオナシ役:菅原小春(すがわら・こはる)&辻?本知彦(つじもと・ともひこ)
左から:菅原小春、辻?本知彦 ©️Shoko Matsuhashi
菅原 あちこちで「小春がカオナシ役? カオナシの動きってキレキレなの?」と聞かれます。ジョンさん、どうなの? と私も聞きたいところですが、人物なのか動物なのか、宇宙なのか世界のなのかも分からない存在である「カオナシ」を、身体表現を最大限に活かして、毎公演ひとりでも多くの人に“生(なま)もの”としてお届けできればいいなと思います。
辻?本 ワークショップで美術や衣裳の構想を聞き、井手茂太さんの振付を見てワクワクしました。知恵がいっぱい詰まったジョンさんの演出を受けていると、子どもに戻ったような気持ちになります。
5歳の時に観たジブリ作品『風の谷のナウシカ』は、今も僕の人生の一部。この舞台『千と千尋の神隠し』も、お客さまの“人生の一部”になったらいいなと思いながら演じたいです。踊りについてのプレッシャーはありません。でも今回は技術ではなく、カオナシの存在に“哀しみ”を表現できた時に、違う身体表現が生まれるのかなと思うんですよ……思いつきなんですが、この日がここにいるみなさんの“人生の一部”になってもらえたらと思うので、ちょっと踊ってもいいですか?
(ここで辻?本が、カオナシと千尋の有名なワンシーンを、即興パフォーマンスで披露した)
千尋とカオナシのワンシーン。パフォーマンスのもようは動画でどうそ! © 2001 Studio Ghibli・NDDTM
ジョン・ケアードは感想を聞かれ、「カオナシをどうやればいいか思いつかなかったけれど、今、わかった。これがヒントだ!」と即答。場内は笑い声と拍手に包まれた。
リン/千尋の母役:咲妃みゆ(さきひ・みゆ)&妃海風(ひなみ・ふう)
左から:咲妃みゆ、妃海風 ©️Shoko Matsuhashi
咲妃 幼少期からスタジオジブリ作品の大・大・大ファンです。どうしてもこの作品に携わらせていただきたい一心でオーディションに挑み、こうしてこの場に立たせていただいていることが、本当に夢のようで興奮しています! こんな状態ではいけないので地に足をつけて心を整えて……現実世界を生きる千尋の母、そして千尋をしっかり後押しできる、心強い存在であるリン役を演じたいと思います。
妃海 会場に入ってからずっと感動し続け、共演者のみなさまに圧倒され続けています。考えてきたはずのスピーチも可愛く表現できないほど興奮していますが(笑)、この先もっとたくさんの興奮が待ち受けているのかと思うとわくわくします。“夏木マリさんと朴璐美さんのもとで働く”、そして“橋本環奈さんと上白石萌音さんの面倒をみる”、こんな経験は人生で二度とないと思います。それがとても嬉しいです!
釜爺役:田口トモロヲ(たぐち・ともろを)&橋本さとし(はしもと・さとし)
田口 歴史ある帝国劇場の舞台に立つ緊張、世界中にファンを持つ作品に出演する緊張、ここだけでダブル緊張なんですけれども、さらにジョン・ケアードという素晴らしい演出家のコラボレーションを受けるという緊張、これでトリプル緊張です。この三つ巴(みつどもえ)の緊張を自分の味方にして最後まで完走できたらと思っています。初日には、釜爺の6本の腕が生えているかどうか、ぜひご覧いただきたいと思います。
橋本(さ) ジョンは、稽古が始まる時に「Let’s play!」って言うんです。“Play”って言葉には(演じるという意味の他に)遊ぶっていう意味もある。彼は僕たち役者を遊ばせる庭を用意するのがとても上手なので、演出を信じ、責任を持ってお客様が楽しめるようなエンターテイメントにしたいです。本番までにはあと何本か手を生やせるように頑張ります。必ず生えてくると思いますので、期待していてください!
兄/千尋の父役:大澄賢也(おおすみ・けんや)
大澄 現在、上白石萌音さんと一緒に、ジョン・ケアード演出の『ナイツ・テイル―騎士物語―』に出演中です。ジョンはいつもジョークを忘れない人です。どんなことがあっても穏やかで、年齢とかキャリアとか関係なく誰に対しても平等に接し、僕たちを導いてくれます。そんな彼と引き続き一緒に作品を創ることができて本当に光栄です。楽しみにしております。
湯婆婆/銭婆役:夏木マリ(なつき・まり)&朴璐美(ぱく・ろみ)
左から:夏木マリ、朴璐美 ©️Shoko Matsuhashi
夏木 ジョンとは『レ・ミゼラブル』(1997~1998年)以来の再会です。今回は彼が『千と千尋の神隠し』の世界をどのように創ってくれるのか、とても楽しみにしています。思い起こせば、映画で湯婆婆/銭婆の声をやらせていただいたのは20年前。まさか20年後に実演が叶うとは思ってもみませんでした。今回は舞台ですから、フレッシュな気持ちで取り組ませていただきます。エネルギーを注いで、みんなでいい作品にしたいと思います。
朴 オーディションで「湯婆婆は矛盾を抱えた存在だけれども、璐美のすべてを出してみて」とジョンに言われた時、「この瞳の奥にだったら、私は飛び込んでいける!」と思い、精一杯演じさせていただきました。湯婆婆/銭婆役で出演が決まり、今も胸が躍っていますし、ジョンの演出を受けるのが楽しみです。ここにいる出演者のみなさんもすごく燃えていると思いますので、私もその熱に負けないように、劇場を“油屋”に変えていきたいと思います。
『千と千尋の神隠し』出演者・スタッフ 前列右から:朴璐美、夏木マリ、鈴木敏夫(スタジオジブリ プロデューサー)、橋本環奈、上白石萌音、ジョン・ケア―ド(翻案・演出)、今井麻緒子(共同翻案)/後列右から:妃海風、咲妃みゆ、辻?本知彦、菅原小春、醍醐虎汰朗、三浦宏規、田口トモロヲ、橋本さとし、大澄賢也 ©️Shoko Matsuhashi
記者による質疑応答(一部抜粋)
※読みやすさのために一部編集しています
- 映画『千と千尋の神隠し』の面白さと、どんな気持ちをこめて千尋を演じたいと思っているか聞かせてください。
- 橋本 小学校1年生のころ、家族でドライブしている時に「このトンネルを抜けたら『千と千尋』の世界に入っちゃうんじゃないかな」と考えたことがあるんです。実体験したくなるような空間が広がる作品ですね。千尋を演じることになって映画を観直しましたが、あの世界から受ける感覚は子どもの時と同じ新鮮なままです。初舞台ですし、経験を重ねていく千尋にも近いものを感じています。千尋と心を通わせ、作品を通して成長したいです。
上白石 何度も観ていて面白いと感じたのは、夢のような世界観なのに、登場人物はあくまでも淡々と日常を生きているみたいに描かれているところです。千尋も怖がったり勇気を出したりするけれど、どこかアッサリさっぱりしているところがあって、それが子どもの潔さでもあるのかなと感じます。舞台では『千と千尋』の世界観を信じ、一つひとつの出来事に新鮮に驚きながら、まっすぐに演じたいと思っています。
- クリエイティブ・スタッフによるワークショップを開催したと聞きました。新しい発見はありましたか?
- ジョン・ケアード スタッフのワークショップはロンドンで1回、東京で2回おこないました。『千と千尋の神隠し』には龍をはじめ、神様たちもたくさん出てきますよね。美術は『ナイツ・テイル―騎士物語―』のジョン・ボウサー、パペットデザイン・ディレクションは『ウォー・ホース~戦火の馬~』で「馬」を動かしたトビー・オリエに協力してもらい、イメージを具体化させています。
僕は2次元の世界で描かれた原作を、舞台上でどうやるか試していく過程が大事だと思っています。観客と一緒に世界を創っていくのは、舞台公演だからこそできること。大人が10歳の子ども役を演じても、半透明のようなキャラクターを表現しても、舞台上の世界では信じられます。釜爺役の2人も、たくさん腕を生やさなくたって大丈夫(笑)。想像力豊かな動きを、振付家の井手茂太さんが生み出してくれていますし、先ほどの辻?本さんのパフォーマンスで、カオナシの新しいイメージも掴めました。こういう要素を一つひとつ集め、編みあげていこうとしているところです。
上演を許可してもらった時、鈴木敏夫さんは「何かいいことをやって」、宮﨑駿さんは「楽しんで」と言ってくれました。制作途中なので“いいこと”ができるかは未だ分かりませんが、“楽しい”ということだけは保証できます!
© 2001 Studio Ghibli・NDDTM
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公演情報
舞台『千と千尋の神隠し』
原作:宮﨑駿(スタジオジブリ)
翻案・演出:ジョン・ケアード(英国ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー 名誉アソシエイト・ディレクター)
製作:東宝株式会社
【東京公演】
2022年3月2日(水)~3月29日(火)
※プレビュー公演:2022年2月28日(月)~3月1日(火)
会場:帝国劇場
【全国公演】
※大阪公演
2022年4月13日(水)~4月24日(日)
会場:梅田芸術劇場 メインホール
※福岡公演
2022年5月1日(日)~5月28日(土)
会場:博多座
※札幌公演
2022年6月6日(月)~6月12日(日)
会場:札幌文化芸術劇場 hitaru
※名古屋公演
2022年6月22日(水)~7月4日(月)
会場:御園座
【詳細・問合せ】
東宝テレザーブ TEL:03-3201-7777
◎東京公演一般前売開始:2021年12月18日(土)
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