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【レポート】新国立劇場2022/2023シーズン ラインアップ説明会①

阿部さや子 Sayako ABE

新国立劇場2022/2023シーズンラインアップ説明会にて。右から:小川絵梨子演劇芸術監督、大野和士オペラ芸術監督、吉田都舞踊芸術監督 ©︎Ballet Channel

2022年3月1日、新国立劇場2022/2023シーズン ラインアップ説明会が開催された。会場は新国立劇場オペラパレス ホワイエ。オペラ芸術監督の大野和士、舞踊芸術監督の吉田都、演劇芸術監督の小川絵梨子が登壇し、舞踊、演劇、オペラの順に、上演する演目や企画意図、見どころ、意気込みなどを説明した。

2022年9月より始まる当該シーズンは、1997年に開場した新国立劇場にとって25周年となる。「将来にわたって安定的持続的に事業を展開していくという決意を込めて、開場25周年にあたる2022/2023シーズンの公演を実施したい」と村田直樹新国立劇場総務部・制作部常務理事。2022/2023シーズンの上演演目のうち、各芸術監督が直接関わる公演4本と、5年ごとの再演が定番となっているオペラ『アイーダ』を加えた5公演が、「新国立劇場開場25周年記念公演」と銘打って上演される。

写真すべて:©︎Ballet Channel

吉田都舞踊芸術監督による舞踊ラインアップ説明

2022/2023シーズン バレエラインアップ
【2022年10月】『ジゼル』〈新制作〉☆新国立劇場 開場25周年記念公演

【12月〜2023年1月】『くるみ割り人形』

【2023年1月】「ニューイヤー・バレエ」
『A Million Kisses to my Skin』〈新制作〉/『シンフォニー・イン・C』/ 未定

【2023年2月】『コッペリア』

【2023年4〜5月】「シェイクスピア・ダブルビル」
『夏の夜の夢』〈新制作〉/『マクベス』〈新制作・世界初演〉

【2023年6月】『白鳥の湖』

【2023年6月】エデュケーショナル・プログラムvol.2『白鳥の湖』

2022/2023シーズン ダンスラインアップ
【2022年11月】新国立劇場バレエ団『春の祭典』

【2023年3月】新国立劇場バレエ団「DANCE to the Future 2023」

【2023年6月】日本の洋舞100年・第4弾「ダンス・アーカイヴ in JAPAN 2023」

各演目についての吉田都芸術監督の説明は以下の通り。

吉田都 舞踊芸術監督

ダンス

【2022年11月】新国立劇場バレエ団『春の祭典』
「11月25日から『春の祭典』『半獣神の午後』の2作品を上演します。『春の祭典』は平山素子さん・柳本雅寛さん振付の作品の再演で、今回はオーディションで選ばれた新国立劇場のダンサーたちが出演します。『半獣神の午後』は新作で、ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」を使用した、20分程度の男性中心の作品となる予定です」

【2023年3月】新国立劇場バレエ団「DANCE to the Future 2023」
「2023年3月24日から全4回、小劇場での上演となります。「DANCE to the Future」はダンサーたち自身が振付けた作品を上演する企画。そこで発表された作品がオペラパレスで上演される機会も出てきています」

【2023年6月】日本の洋舞100年・第4弾「ダンス・アーカイヴ in JAPAN 2023」
「〈日本の洋舞100年〉ということで、日本独自の創作舞踊のパイオニアたちの作品を復元上演する公演の第4弾です。モダンダンスの第一人者として活躍された3名の女性舞踊家の代表作を上演します。出演は中村恩恵さんや平山素子さん等です」

バレエ

「まずは2022年7月に、〈こどものためのバレエ劇場〉として『ペンギン・カフェ』を上演します。上演の前に、成島悦雄先生というNHKラジオ「子ども科学相談室」の回答者としても人気の先生をお招きして、20分ほどのトークショーを行います。成島先生はトキの保護をされていたり、動物図鑑の監修をされていたりと、このプログラムにぴったりの先生。子どもたちに、絶滅危惧種というのはどのくらいいるの? ある種の動物が絶滅するとどうなるの? 私たちにできることは何なのかしら? 等といったことを、映像や写真を交えながらお話しいただく予定です。そうしたトークを踏まえた上で、かわいらしい動物たちが出てきて踊る『ペンギン・カフェ』を子どもたちに観てもらったら、より深く心に残るのではないかと。とても素晴らしい〈こどもバレエ〉になると思います」

【2022年10月】『ジゼル』〈新制作〉☆新国立劇場 開場25周年記念公演
『ジゼル』を新制作します。こちらは2022年10月21日からの9回公演で、私自身の演出となります。改訂振付は英国ロイヤル・バレエ等に作品を作っているアラスター・マリオットさん。新制作といっても、オーソドックスなものになると思います。『ジゼル』は本当にいろいろな解釈があり、新国立劇場ではセルゲイエフ版を上演してきました。しかし年を重ねるごとに世界中から先生がいらしてくださってどんどんミックスになっていき、最初のものが守られてないところが気になりなかなか上演できませんでしたので、ここで新しく作りたいと思っています」

【12月〜2023年1月】『くるみ割り人形』
「クリスマスシーズン恒例の『くるみ割り人形』ですが、今シーズンは初チャレンジで年末年始も上演しました。やはり年末年始のお休みにはご家族のみなさんで劇場に来てくださるのだなということを実感しましたので、来シーズンもまた年末からお正月にかけても上演することにいたします。こうして日本でもホリデーシーズン(にバレエを観るという習慣)が定着するといいなと思います」

【2023年1月】「ニューイヤー・バレエ
『A Million Kisses to my Skin』〈新制作〉/『シンフォニー・イン・C』/ 未定
「『くるみ割り人形』からすぐの公演でリハーサル期間は短くなりますが、2023年1月13日から「ニューイヤー・バレエ」をオペラパレスで4回公演いたします。私が芸術監督就任して最初のシーズンに上演する予定だったもののコロナで延期になってしまった『A Million Kisses to my Skin』は、クラシカルなフォルムとコンテンポラリーが融合した踊り。振付のデヴィッド・ドウソンさんご自身に来日していただき、ご指導いただく予定です。ダンサーにとってとても貴重な体験になりますので、今度こそ実現するといいなと思っています。バランシン振付『シンフォニー・イン・C』はすでに新国立劇場でしばしば上演されている作品です。これら2作品に加え、新春らしい作品を何かひとつ入れたいなと考えています」

【2023年2月】『コッペリア』
「2月23日からは、ローラン・プティの『コッペリア』を上演いたします。これは昨年コロナでキャンセルとなり、代わりに無観客でライブ配信を行って、本当にたくさんの方にご覧になっていただいたものです。今回はぜひ生でご覧いただきたいなと思います」

【2023年4〜5月】「シェイクスピア・ダブルビル」
『夏の夜の夢』〈新制作〉/『マクベス』〈新制作・世界初演〉
「4月29日よりシェイクスピアのダブルビルを上演します。ひとつはアシュトン振付『真夏の夜の夢』。これも延期になってしまったものの再チャレンジであり、新国立劇場では初お目見えとなります。もうひとつは世界初演となる『マクベス』です。こちらはジェラルディン・ミュシャさんのバレエ音楽をご紹介いただいたことがきっかけで新制作をすることになりました。『マクベス』を振付けていただくなら誰が良いかと考えた時に、ウィル・タケットさんだと。タケットさんは昨年上演された渡辺謙さん主演の『ピサロ』や、日本のPARCO劇場での演劇なども演出しています。シェイクスピアの『マクベス』にはとても良いのではないかとお願いしたところ、なんと偶然にもその年の春に日本で『レディ・マクベス』の演出をする予定だそうです」

【2023年6月】『白鳥の湖』
「6月10日からは『白鳥の湖』。今シーズンのオープニングに新制作したピーター・ライト版です。今シーズンの上演時、毎公演ダメ出しを重ねて、回を追うごとによくなってきていたので、できるだけ早いうちに再演して、ダンサーたちの体にもっとなじませたいと考えました。回数を追うごとにダンサーたちも気付くことも多いと思うので、こうして早速また上演できるのはとても良いことだと考えています」

【2023年6月】エデュケーショナル・プログラムvol.2『白鳥の湖』
※このプログラムについては質疑応答を参照

演劇ラインアップ

2022/2023シーズン 演劇ラインアップ
【2022年9〜10月】『ガラスの動物園』☆海外招聘公演

【2022年10月】『レオポルトシュタット』☆新国立劇場 開場25周年記念公演

【2022年11月】《未来につなぐもの》新作Ⅰ『私の一ヶ月』

【2022年12月】《未来につなぐもの》新作Ⅱ『夜明けの寄り鯨』

【2023年4〜5月】『エンジェルス・イン・アメリカ』☆フルオーディション Vol.5

【2023年6月】《未来につなぐもの》新作Ⅲ『楽園(仮題)』

【2023年7月】長塚圭史新作

プロジェクト
こつこつプロジェクト―ディベロップメント―
ギャラリープロジェクト

演劇の2022/2023シーズンは、2020年に招聘予定だったもののコロナ禍の影響により2度の延期を余儀なくされたフランス・パリ国立オデオン劇場からの招聘公演『ガラスの動物園』で開幕。続く10月はトム・ストッパードの新作『レオポルトシュタット』を、小川絵梨子演劇芸術監督自らの演出により上演する。「この作品はユダヤ人であるストッパードが自身の出自を辿っていくようなお話。ユダヤの迫害など悲しい歴史、理不尽な苦しみのなかで、それでも日々の生活をたくましく生きていく家族の姿は、日本を含めてどんな文化でも心が通じるものではないかと信じています」(小川監督)。

小川絵梨子 演劇芸術監督

シリーズ【未来につなぐもの】として上演される3作は、3人の日本人劇作家が新作を書き下ろす。ユニークなのは、作家も、担当する演出家も、全員が30〜40代であること。「我々の世代が、過去から何を引き継いで、未来に何を残していくことができるだろうか。それを物語にして自分たちに問いかけつつ、未来に少しでも貢献していくことをテーマにした作品」だという。

そのほか、2023年4〜5月には、「20世紀で最も重要な戯曲のひとつ」とも言われるというトニー・クシュナーの『エンジェルス・イン・アメリカ』二部作を、すべての出演者をオーディションで決める「フルオーディション企画」で一挙上演。夏休みにかけては、「こどもも大人も楽しめる」シリーズとして長塚圭史の新作が上演される予定。

オペララインアップ

2022/2023シーズン オペララインアップ
【2022年10月】『ジュリオ・チェーザレ』〈新制作〉

【2022年11月】『ボリス・ゴドゥノフ』〈新制作〉☆新国立劇場 開場25周年記念公演

【2022年12月】『ドン・ジョヴァンニ』

【2023年1〜2月】『タンホイザー』

【2023年2月】『ファルスタッフ』

【2023年3月】『ホフマン物語』

【2023年4月】『アイーダ』☆新国立劇場 開場25周年記念公演

【2023年5〜6月】『リゴレット』〈新制作〉

【2023年5〜6月】『サロメ』

【2023年6〜7月】『ラ・ボエーム』☆新国立劇場 開場25周年記念公演

ラインアップ説明に先駆けて、大野和士オペラ芸術監督はまず「外国人の新規入国制限」下にあった今シーズン2022年1月と2月に上演した『さまよえるオランダ人』『愛の妙薬』について語った。招聘予定だった指揮者や歌手が入国制限措置によって出演が叶わなくなるという事態のなか、急遽オーディションで才能ある日本人歌手を見出すなどして公演を実現。「オペラ部門としては、コロナ禍1年目に遭遇してしまったあの“5演目連続キャンセル”ということがないように、どんなかたちであってもとにかく公演を続けたかった。その結果、お客様には大変熱狂的に迎え入れていただくことができた。頑張ってくれた日本人歌手のみなさんや、助けてくれた指揮者のガエタノ・デスピノーサさん、新国立劇場のお客様に対する完璧なコロナ対策があって、この1月2月を乗り切ることができました」と感謝を述べた。

大野和士 オペラ芸術監督

そして新たな2022/2023シーズンでは10演目を予定。大野監督自身が指揮をする『ボリス・ゴドゥノフ』『ラ・ボエーム』、そして1998年の開場記念公演として制作されて以来5年ごとの再演が定番となっている『アイーダ』が、開場25周年記念公演として位置付けられている。また、『ジュリオ・チェーザレ』『ドン・ジョヴァンニ』『ホフマン物語』『サロメ』はコロナ禍の影響により中止を余儀なくされ当該シーズンに延期となったもの。このことについて大野監督は「公演が中止となり出演者をキャンセルして、次シーズンでは新たな出演者と契約をするとなると、ギャランティが二重に発生することになり経済的に大きな負担となる。それを防ぐために、世界の劇場ではできるだけ公演を『延期』して同じキャストで上演することを心がけている」と説明した。

また、大野監督は2018年の就任以来1シーズンに4演目を新制作することを掲げてきたものの、パンデミック発生以来の経済的負担を考慮して、次シーズンは新作の数を3演目に。「就任1年目からやってきたような、より積極的なプログラミングは、2023/2024シーズンからまたみなさんの元に届けられるのではないかと思います」(大野監督)。

2022/2023シーズンにおいては唯一“新演出”での上演となる『ボリス・ゴドゥノフ』について「セットはこんな感じなんです」と立ち上がって説明し、記者たちを沸かせた大野監督

記者との質疑応答

各芸術監督からのラインアップ説明に続いて、質疑応答が行われた。主な質問と回答(一部要約)は以下の通り。

吉田都芸術監督に伺います。バレエの指揮をしているアレクセイ・バクランさんがウクライナ出身で、現在キエフにいると聞いています。何か思いがあればお聞かせください。
吉田 先週はバレエ団の2つの公演が立て続けにキャンセルになり、それまでダンサーたちがかなりハードなリハーサルを重ねていただけに、私としては本当に悲しく残念に思っていました。けれどもウクライナがこういう状況になって、もうすべてが吹き飛びました。バクランさんにも通訳の方を通して連絡は取れています。バクランさんは、ご両親がロシア人とウクライナ人。本当に、起こるとは思わなかったことが起きてしまいました。私自身すごく記憶に残っていることがあります。(1991年に)湾岸戦争が始まったその日、私たちはロイヤル・オペラハウスで『白鳥の湖』を上演していたんです。「戦争が始まったのに。こんなことをしてる場合じゃないのに」と思ったことや、そう思いながらも『白鳥の湖』の公演を行っていた、あの時の状況を思い出しました。でも私たちは、私たちにできることをするしかないと思っております。
現在の情勢を受けて、指揮者のゲルギエフが解雇になったり、ロシア人アーティストたちが自らの立ち位置を明らかにすることを強いられるなど、さまざまな圧力が起きています。芸術と社会のあり方、国の平和のあり方について、いまの思いをお聞かせください。
大野 劇場の理事から、「新国立劇場では、いま政治的に起きていることと芸術分野の出来事は分離して考える」という話を受けています。ゲルギエフは(プーチン)大統領と非常に仲の良い関係にありとくに難しい立場にあったと思いますが、他のロシア人のアーティストがそのまま閉じ込められて良いのかというと、それは絶対に良いわけがありません。芸術家とは、心の自由を人々に与えるためにその才能を磨くという使命を受けた人たちの集団です。ですから当然、国という政治的な区切りを遥かに超えたところに存在しているわけで、そこは絶対に弁えていかなくてはいけないと思います。

じつは昨日、ショスタコーヴィチの交響曲第10番の指揮をしました。ショスタコーヴィチは第9番を書いた時に、それがベートーヴェンの第9番のような大作とは違う小編成の曲だったという、ただそれだけの理由で当局に批判されました。そこから10番を書くまでの8年間という時間のなかで、彼が人生で背負ってきた重みが膨れ上がって膨れ上がって、作品の中で爆発していく。途中では諧謔的なことも書き、第2楽章のあの速くて攻撃的な曲は時の為政者(スターリン)を表現したのではないかという説もあるわけですが、終楽章はギャロップにしてすべてを笑い飛ばしているんです。

演奏前には、当時の為政者と現在の(ロシアの)大統領の姿が重なって、演奏するのに少し心が重いという楽団員さんたちも多かった。しかし満員の聴衆の前で演奏した時、ショスタコーヴィチが現実の中で背負ってきた葛藤が音楽の中に昇華され、爆発的なエネルギーとなって飛んでいき、最後は彼の言葉でギャロップになって笑い飛ばすという、その音楽の内容が浮かび上がってきたんです。そして「ああ、やってよかった」という空気に変わりました。芸術の世界とはそういうもの。現実的な、特定の枠組みの中で論じられるべきものではないというのが私の考えです。

小川 こんなことが現在でもあるのか、繰り返されていくのかということが個人的にも非常にショックで、学ばなくてはいけないことがたくさんあると感じています。同時に、ロシアの国内で、一般の人たちがSNS等で戦争反対の声を上げていること。一つひとつは小さいかもしれませんけれども、自分もその声と一緒にいたいと思います。そしてその思いを、芸術、エンターテインメント、作品という形にして、みなさんと共有していくことが私たちの仕事ではないかと思っています。

吉田 このようなことが目の前で起こったということに、誰もが衝撃を受けていると思います。けれども、いままでもずっと戦争や内戦は起こっていて、それでもやはり(人は)生き続けてきたし、みんなと進んできたわけです。ですから私たちはとにかく、進むのみだと思っております。

2月のバレエ公演が中止になり、その理由として「公演準備が間に合わない」という説明がありました。それはリハーサル室が足りないために代役キャストの練習時間が充分に取れないといったことも背景にあるのではないかと推察しています。未だコロナ禍の終息が見通せず、今後も公演中止などを強いられる可能性もあるなかで、リハーサル室の増設や感染予防体制の強化など、展望を聞かせてください。
村田常務理事 公演関係者に感染が確認されると、周囲にいた人も一定期間自宅に待機していただかなくてはいけません。そうするとリハーサルそのもの、あるいは公演の組み立てそのものが非常に厳しい状況になるという意味で、「公演準備が整わない」という表現をさせていただいております。もちろんリハーサル室の使い方等々についても、陽性者が出れば当然消毒をして、夜中のうちに手配をして朝一番で消毒が入るという形で、公演準備に極力支障がないように努めています。ウイルス検査も念入りに行うことも、我々としては最大限に、みなさんの協力を得てウイルス検査を迅速に行って、その結果を早く出す、そして対応を考えるといったことを続けてきています。現在のオミクロン株の流行においてはこれまで保健所が行っていた疫学調査がなくなってしまい、我々自身が過去の事例あるいは専門家のご意見を踏まえながら、ケースバイケースで判断していっております。職員もかなり疲弊していますが、お客様に公演を楽しんでいただくと同時に出演している公演関係者に安心してリハーサルや公演を実施していただくために、今後とも今申し上げたような取り組みを徹底していく。今はそれしかないのだと思っております。
観客をどういうふうに集めようと考えて、このような新シーズンラインアップにしたのかを教えてください。
大野 『ジュリオ・チェーザレ』は何と言っても当初バロック・オペラシリーズの第1弾として計画したもの。ぜひ、バロック・オペラをまだご覧になったことない方に観ていただきたいと思います。盛大なプロダクションであります。それから『ボリス・ゴドゥノフ』は、かなり現代的な演出で見せるという、新しくて鋭角的な作品になるのではと。『リゴレット』は新国立劇場がすでにレパートリーとして持っていてもよかったはずの作品と言えます。そのほかもすべて私たちが誇るレパートリーでありまして、それぞれに選りすぐった指揮者、歌い手さんたちに来ていただくべく交渉しています。この交渉をしている時がいちばん難しい時期ですが、それでもこの1年にふさわしいラインアップを揃えました。

吉田 質問していただいてありがとうございます。というのも、私は先ほど「エデュケーショナル・プログラム」のことをお話しし損ねていました。英国のバーミンガム・ロイヤル・バレエで「ファースト・ステップス」、つまり新たなお客様に向けた企画として、『白鳥の湖』を1時間くらいにまとめたものが上演されています。バレエはどういうものなの? オーケストラはどうなっているの? といったことを言葉で説明したり、マイムを一緒にやってみたりしながら、バレエでいちばん有名な『白鳥の湖』を紹介するプログラムです。その日本版を上演しようと思っております。
あとは全幕だけでなく小品、そしてコンテンポラリーももっと入れていきたいと思っています。初めてバレエを観る方から、バレエファンの方、そして新国立劇場のファンの方向けのプログラムを考えています。

小川 例えば『ガラスの動物園』は戯曲自体が非常に有名なものですが、主演として来てくださるイザベル・ユペールさんや、演出家のイヴォ・ヴァン・ホーヴェさんも、世界的に非常に人気のある方。映像や映画がお好きな方とか、今まで新国立劇場に足を運んだことがなかったお客様にも、つながりをもたらしてくれるのではないかと思っております。また「【未来につなぐもの】」シリーズは先ほど申し上げた通り作家も演出家も30代40代ですので、同世代の方々や、さらに若い方々にもぜひ見ていただきたいなと思います。そして長塚さんの「こどもも大人も楽しめるシリーズ」は、未来のお客様である子どもたちに、演劇の楽しさを頭ではなく体で、感覚で知っていただきたい、身近に感じてもらいたいという思いで続けているシリーズです。中高生のためのワークショップも夏にやっており、作り手としても、そして演劇人としても、若い方たちと一緒に学ぶことがたくさんありますので、良い共有体験の場、知識のシェアの場として続けていこうと考えています。

★2022/2023シーズンラインアップ説明会終了後に行われた、吉田都舞踊芸術監督を囲んでの記者懇談会のレポートはこちら

新国立劇場 2022/2023シーズンラインアップ

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「パネルを“右肩上がりバージョン”でも撮ってもらおう!」と大野監督が呼びかけるひと幕も

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