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【レポート】吉田都舞踊芸術監督を囲む記者懇談会〜新国立劇場2022/2023シーズンラインアップ説明会②

阿部さや子 Sayako ABE

記者懇談会で質問に答える吉田都 新国立劇場舞踊芸術監督 ©︎Ballet Channel

2022年3月1日、新国立劇場2022/2023シーズン ラインアップ説明会が開催された。大野和士オペラ芸術監督、吉田都舞踊芸術監督、小川絵梨子演劇芸術監督によるラインアップ説明のあとは、各ジャンルに分かれての記者懇談会となった。

新国立劇場2022/2023シーズンラインアップ説明会のレポートはこちら

舞踊の記者懇談会は中劇場ホワイエに場所を移して行われた。登壇者は吉田都舞踊芸術監督新国立劇場バレエ団チーフプロデューサーの伊東信行氏。記者たちからは次々と手が挙がり、約1時間にわたる活発な質疑応答となった。内容は以下の通り。

写真すべて:©︎Ballet Channel

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記者1 2022/2023シーズンも12月から1月にかけて『くるみ割り人形』が実施されます。今シーズン、昨年12月末から年明け1月1日・2日にかけて上演するという初めての試みがなされましたが、その公演に対する観客の反応、関係者・スタッフ・キャストの年末年始公演に対する反応、そして吉田監督自身が得た今後への期待や希望について、実際の集客状況も含めて聞かせてください。
吉田 この年末年始に行った『くるみ割り人形』は、蓋を開けてみないとわからないという不安もありながらの公演でした。けれども実際にやってみたところ、公演を追うごとにどんどんお客様が増えていき、お正月の三が日がいちばん多かったと思います。(チケット販売率は)97%ほどだったでしょうか。おそらくですが、みなさん大掃除も済ませてほっとして、おうちでゆっくりできるのが年末年始の数日間なのだなあと。そうしてリラックスした気持ちで劇場に来ることを楽しんでいただけたのだと、チケットの売上からも、いろいろなお声もいただくことでも感じました。

劇場側としても、コロナが少し落ち着いていたこともあり、クリスマスデコレーションをするなどの工夫もしました。そうしたことも、私はとても大切だと思うんですね。公演を楽しむだけでなく、劇場を楽しむ。その日、その夜を楽しむということ。ホットワインや、大晦日には年越し蕎麦なども徐々にサーブできるような状態になっていたので、総合的に楽しんでいただけたのではないでしょうか。今後も季節ごとに盛り上げていきたいなということも強く思いました。

ダンサーやスタッフに関して言えば、それまで年末年始はお休みだったのでなかなかハードではありましたけれども、私たちの仕事とはそういうことだと。お休みは違う時期にシーズンブレイクとして取ってもらうとして、やはり一般のお客様がお休みの時期に公演を楽しんでいただくということがとても大切だと思っています。

そして、あれだけの公演数(編集部注:今シーズンの『くるみ割り人形』は全12回公演を実施)を続けていると、やはり質が上がっていくんですね。毎公演山ほどのダメ出しをして、翌日にそこを修正して、というのを繰り返すので、みんなどんどん良くなっていく。やはり同じ作品を同じ時期に数多く続けるというのが重要です。それもあって、『白鳥の湖』もなるべく早い段階で再演したいと考え次シーズンも上演することにしました。

記者2 王道の古典バレエだけでなくコンテンポラリーにも力を入れていこうとのことですが、招聘したい振付家など具体的にあれば聞かせてください。
吉田 実現するかわからないので具体的な名前を答えるのは難しいのですが、このコロナ禍という状況においては、チャレンジすることが難しいんです。確実に集客力のある作品を選ばなくてはいけなかったり、なるべくお金をかけないようにしなくてはいけなかったり。そうした状況のなかで、ダンサーにとってコンテンポラリー作品を踊ることはもちろん大切ですけれど、まずは(様々なスタイルのダンスを)先生方から直に教わるということが重要だと考えています。いま現在、ここのダンサーたちが、コンテンポラリーの動きにどのくらい瞬時に反応できるのか。それは日々の訓練の積み重ねがないとなかなか難しいのではないかと思います。例えばロイヤル・バレエのダンサーを見ていると、例えばウェイン(・マクレガー)の作品を踊るとなり、彼が動きを指示したら、本当に瞬時にそれを完全コピーできるんですね。「やっぱりそこはこう変えて」と言われたら、すぐにその場でその通りにできてしまう。ですからたとえ作品の上演はできなくても、まずはワークショップ等を行って、そうした踊りに反応できる身体を作ったり、踊りのボキャブラリーを増やしていくことが大切ではないかと。そういう取り組みもやっていきたいと思います。
記者2 クラスレッスンでコンテンポラリーも取り入れるのでしょうか?
吉田 それはありません。ただ、このところリハーサルをしていたのは主にクラシック作品でしたけれども、こういう状況ですのでキャストチェンジなども頻繁に起こり、凄まじい状態だったんです。例えば検査結果は陰性だったとしても自宅待機になるダンサーが出たりすると、じゃあその人の場所に誰が入る?となって、キャストがパズルのようにどんどんずれていく。本当に毎日のようにキャストチェンジしながらリハーサルをしていたのですが、そうした状況下でのダンサーたちの対応力が素晴らしかった。昨日とは違う場所にパパパパッと入って、新たなことを習って覚えて、というふうに。
このバレエ団はリハーサルの期間も舞台稽古の時間も充分に取った上で本番に向かえるので、とても恵まれてはいるけれど、逆に言えば何かが起きた時にみんながすぐに反応できないのではないか? そういう不安を、じつはずっと感じていました。しかしこの2週間くらいで、私はダンサーたちの底力を見せてもらった気がします。残念ながら公演はキャンセルになってしまいましたけれども、みんなの力がついてきているのを感じ、とても勇気づけられました。

写真左:伊東信行チーフプロデューサー

記者3 昨年は元CAの根岸結衣さんが採用されるなど、実力があれば出自関係なく採用するという吉田監督体制の多様性を感じました。いっぽうで今シーズンが始まる前に昇格が発表されていたダンサーが急に辞めるといったこともありましたが、それはどういう経緯だったのでしょうか。
伊東 それは極めてプライバシーの問題に立ち入ることになりますので、申し訳ありませんがお答えできません。
記者3 ダンサーが働いていく上での待遇について、吉田監督はどのように考えていらっしゃいますか?
吉田 ダンサーたちの待遇改善は、私が就任した時から目指していることであり、今後も続けていきたいと思っています。もちろんそこには本人の選択もありますが、やはり海外のダンサーには組合などがあることに比べると、日本のアーティストたちはとても弱い立場にあると言えます。ですからその辺りは考慮して接しているつもりではいます。
記者3 先日発表された(昭和音楽大学バレエ研究所の)調査結果によると、日本のバレエ人口は減少していると。いい人材を得ていくためにはバレエダンサーが憧れの存在であるべきで、「新国立劇場」である以上は率先して待遇を整えていくべきではないでしょうか。
吉田 そうですね。それは本当に早急に実現したいことです。待遇改善、環境改善のことをお話ししますと、例えば医療関係。これまでは個人任せだったものを、病院とホットラインで繋がって、ケガの予防や診断、治療、リハビリなどを指導してくださるドクターに入っていただけるようになりました。日々のケアをしてくれるトレーナーにも新たに入っていただくなどダンサーたちが安心して踊れるような体制にしましたし、他にもセミナーの実施等、医療関係はとてもいい感じに進んでいると思います。レストルームでトレーニングマシーンも使えるようになりました。

あとは、新スタジオの増設が、おそらく年内にはどうにか整うのではないかというところです。リハーサルできるスタジオがひとつ増えるので、新人キャストを入れたり、2キャストを3キャストに増やしたりと、キャスティングにおいてももう少しチャレンジしていけるようになるのではと。これは本当に大変なところを(隣の伊東チーフプロデューサーを見て)頑張ってくださって(笑)、ようやく実現できそうです。バレエ団にとって本当に大きいことなので、とても嬉しく思っております。

待遇改善に関しては、まずお給料の面などを変えていくために改善が進んでいるところです。ただ、イギリスのようにダンサーたちの組合が作られるようなところまでは、少し時間がかかるのではないかと思います。

記者3 例えば怪我や病気をした場合、ダンサーは契約や登録から外れるのでしょうか?
吉田 外れません。ドクターのアドバイスに従って休み、リハビリをして戻ってくるまでは他のダンサーが代役を務めて、復帰したらまた同じ役に戻れるというかたちです。
記者3 バレエ団は女性が多いわけですが、妊娠・出産した場合はどうなりますか?
吉田 この2月の公演で、お母さんバレリーナ第一号が舞台に戻ってくる予定だったんです。それが中止になってしまって本当に残念だったのですが。彼女の場合、出産のためにお休みしていた間は登録ダンサーになってもらい、カムバックしたら(次の契約更新のタイミングで)契約ダンサーに戻ってもらいます。つまり次のシーズンから再び契約ダンサーになるのですが、この2月の公演が実施されていたら、さっそくカムバックの舞台が踏めることになっていました。ダンサーが妊娠・出産を経てもキャリアを続けるかどうかは、本人のやる気次第です。子ども産んで戻ってきて、ちゃんと子育てもしながら舞台の穴を開けずにできるかどうか。もちろんダンサーとしてのレベルを保てているかにもよります。でも私としては、ダンサーが子どもを産んでもちゃんと戻ってこられるようにしたいです。
記者3 憧れのバレエ団であり続けてもらいたいので、期待しています。
吉田 日本のダンサーたちに「新国立で踊りたい」と思ってもらえるような、海外に行かなくても日本で踊れるような環境づくりを、引き続き目指していきます。

記者4 2つ質問があります。1つは『ジゼル』についてです。先ほどのシーズンラインアップ説明で「時を経て、いろいろな先生に指導していただくなかで、オリジナルからは変わってしまったところがある」という旨のお話がありました。それは具体的にはどういう部分でしょうか? つまり、吉田監督は次シーズンの新演出で、どういうところに手を入れる予定ですか?
吉田 具体的にどこと言うのは控えますが、やはり作品というのは変わっていくものではあるんですね。例えばアシュトンの『シンデレラ』にしても、いま(監修・演出の)ウェンディ(・エリス・サムス)さんとマリン(・ソワーズ)さんが毎日向こうの夜中ですがオンラインでリハーサルをしてくださっていて、時には「こうしたほうがいい」とおっしゃって、動きを少し変えていくこともあります。そのようにどんどん変わっていくのは当たり前のこと。ただ『ジゼル』の場合は、(新国立劇場バレエ団が上演していた版の)大元の先生がいらしていなかったのが気になっていたところです。元の先生がいらして、「ちょっとここを変えましょう」というのであれば、もちろん何の問題もありません。
記者4 2つめの質問は、中止となり本当に残念だったエデュケーショナル・プログラム vol.1「ようこそ『シンデレラ』のお城へ!」公演についてです。これは何もない舞台にセットが入ったり、それが転換する仕組みを見せたりと、「舞台を作る仕事」にもスポットを当てる企画なのではと期待していました。近年はいわゆる裏方さんの高齢化や若手人材の不足なども問題になってきていますが、そうした舞台スタッフの次世代育成について、お考えがあれば聞かせてください。また「ようこそ『シンデレラ』のお城へ!」を延期というかたちで上演する計画はありますか?
吉田 「ようこそ『シンデレラ』のお城へ!」は、せっかくここまで作り上げたものであり、監修・演出のウェンディさんもとても喜んでくださっていたので、どこかのタイミングで、どうにかして上演できたらと思っています。そして裏方さんの件も、やはり育てていくというのはとても大切なことで、それは劇場に関わるすべての仕事について言えます。私がとても気になっているのは、例えばバレエ指揮者ですね。そういう方たちをどんどん育てていかなくてはいけないと感じていますし、劇場としても今後やっていくべきだと思っています。
記者5 吉田監督は就任時に「海外から優れた指導者を招聘したい」と話していました。コロナ禍のために難しい状況が続いていますが、次シーズンでは誰か招聘する計画はありますか?
吉田 『ジゼル』に関しては、振付家のアラスター・マリオットさんに一から作ってもらうので、彼に実際にこちらへ来ていただく予定です。あとはプティの『コッペリア』の時に、できたらフリオ・ボッカさんをお招きしてリハーサルを見ていただきたいので、いまそのお願いをしています。また『A Million Kisses to my Skin』でも、振付家のデヴィッド・ドウソンさんにいらしていただくということが、この作品を上演するにあたって私の中ではとても大切に考えている部分です。彼に直接指導してもらうことが、ダンサーたちの刺激になりますから。現在は先生にZoomで見ていただくことも多く、どの方も本当に熱く教えてくださるのですが、それでもやはり実際に目の前で見ていただくのとは違います。
記者6 来年度のエデュケーショナル・プログラム『白鳥の湖』についてもう少し詳しく教えてください。また、本公演と同じ6月の上演となっていますが、それはつまり何らかのかたちで本公演とも絡めていこうという計画があるのでしょうか?
吉田 はい、本公演と同じタイミングで上演します。エデュケーショナル・プログラムのほうは全幕をぎゅっと1時間にまとめているようなかたちです。3幕はほとんどそのままやるのですが。「ようこそ『シンデレラ』のお城へ!」は舞台の仕組みを観ていただくような内容だったのですが、こちらは『白鳥の湖』という作品がどういうものかを説明するのが主です。そして「一緒にやってみましょう」という参加型の部分もあります。ただ、イギリスですとみんな返事もしてくれるし一緒にやってくれるのですが、日本だとどうなのかな……というところはあります(笑)。ですから日本向けに少しアレンジしなくてはとも思っていますが、バレエをご覧になったことのない方にわかっていただけるようなプログラムです。
記者6 対象は小さな子ども、あるいは中高生などを想定していますか?
吉田 そうですね、子どもたちが一緒に参加できるような感じのプログラムです。でも「ファースト・ステップス」なので、大人の方でもご興味があればぜひ、と思います。これがバレエの入口になって、次に本公演も観ていただけたら。そのようにつながったらいいなと思います。

記者7 新国立劇場バレエ団が創立された当初は頻繁にゲストダンサーが招聘されていましたが、現在はゲストなしでも充分な集客が得られているように見えます。次シーズンもクラシック演目に関してはゲストダンサーを招かず団員だけで上演していく予定ですか?
吉田 ゲストダンサーについては、演目によって「ぜひ来てほしい」と思う方がいらしたら、お招きしたい気持ちはあります。お客様にも喜んでいただけますし、ダンサーにとっても刺激になりますので。ただ、公演は「1回」がとても貴重なので、それをゲストにお願いするのか、それとも新人にチャレンジしてもらうのかは悩ましいところ。バランスですね。でもやはり、できたら時にはゲストをお招きして、ダンサーたちに刺激を与えていただけたら
ここのダンサーたちは、みんなとても真面目に踊ってくれるのですが、もう少し想像力豊かに、もっと解放されて踊ってほしいなと思う面があります。そういった意味で、素晴らしいゲストダンサーとお稽古場で一緒に練習して、その踊りを目の前で見ると、受ける刺激がぜんぜん違います。私自身もロイヤル・バレエ時代、世界中からいらしたいろんなゲストダンサーと同じスタジオで一緒に踊ったり目の前で見たりすることで、多くの刺激を受けました。そういう機会をここのダンサーたちにも持たせてあげたいなとも感じます。
記者7 もうひとつお聞きします。現在新国立劇場バレエ研修所長人事が「所長代行」という発表になっていますが、その状態はもう少し続くのでしょうか?
伊東 新国立劇場バレエ団にはバレエ研修所から良いダンサーがいつも入団してきていますが、これからもそうあってほしいと吉田監督もいつもおっしゃっています。所長人事については現在研修所のほうで検討されていますが、代行がいつまで続くかはバレエ団のほうではわかりません。
記者8 『ジゼル』について、先ほど「オーソドックスな演出になる」という言葉がありましたが、「オーソドックス」とは具体的にどのようなものでしょうか?
吉田 マッツ・エックの『ジゼル』みたいにはならないということです(笑)。もちろんそのようなチャレンジもできたらバレエ団としては本当に素晴らしいのですが、私たちはまだその段階にはないと思っています。『ジゼル』は私自身も思い入れのある作品で、出演するダンサーによっていろいろな解釈ができます。そうした幅を持たせた演出にして、ダンサーたちに「演じる醍醐味」みたいなものをまた感じてもらいたいと思っています。『ジゼル』は本当に大切な作品で、いろいろな演出版があり得ますけれど、まずはオーソドックスなところから……と思っています。
記者9 2つ質問させてください。1つ目は同じく『ジゼル』について。やはり今回の新演出にはこの役で名演を見せてきた吉田監督のカラーが出るのでしょうか?
吉田 今回なぜ(改訂振付に)アラスター(・マリオット)を選んだかと言いますと、私が求めるものをわかってくださるというところも大きくて。他のクリエイティブで言えば(美術・衣裳を)ディック・バードさんがデザインしてくださるのですが、振付にしてもセット・衣裳にしても、プロにはそれぞれ(のアイディアやこだわりが)あるなかで、私の意向に沿って下さる方を選び、話し合いをしながら作っているところです。その意味で、私のカラーは、かなり入ると思います。でも、(一般的な演出版から)それほどガラリと変わるものではないと思います。
記者9 もうひとつは先ほどのラインアップ説明会の質疑応答で、吉田監督は「私たちにできることをやるしかない」とお話しされました。この状況下でバレエ団やアーティストにできることとは、どういうことだと考えますか?
吉田 ダンサーたちは、とにかく日々の稽古をして、リハーサルをして、次の舞台に向かっていくということ。それしかないということです。この2月の公演キャンセルにしても、みんな精神的にかなり厳しいことを乗り越えてきています。それでも、ダンサーたちはとにかく踊り続けているんですよ。あれだけリハーサルをしてきたことが、無になってしまい……やはり私は、ダンサーたちがすごく可哀想です。自分がダンサーだった時のことを考えると、この状況でみんな本当によく頑張ってるなと思いますし、とにかく、可哀想だなっていうことしかありません。けれどもみんな本当に健気で、例えば自分は感染していなくても自宅待機しなくてはならない時も、自分でちゃんと身体を管理して戻ってきてくれるんです。身体も大変ですけど、おそらく精神的にはもっと大変。そんな中でも前に進めているのは、本当に偉いなと感心しています。

私たちは良い舞台を作っていく。本当にそれだけだと思います。この世界情勢の中においても、やっぱり私たちにできることは、真摯にバレエに向き合って、本物の作品作りに励むこと。大変なのはもちろんダンサーだけではありませんので、他にも苦しんでいる方がいるなかで、心に残るような舞台を作って、それをご覧いただけたら、私たちにとってこんな嬉しいことはありません。

記者10 例えば「World Ballet Day」などでも、いま世界のバレエ団がクラスレッスンをライブ配信等で公開しています。新国立劇場バレエ団もクラスを配信してみようという気持ちはありますか?
吉田 そういう機会もあるかもしれません。「World Ballet Day」に関しては、私たちはオーストラリア・バレエのゲストというかたちなんです。

伊東 オーストラリア・バレエのゲストカンパニーとして枠をもらっていて、その時間内に配信できるというかたちです。「World Ballet Day」は現在ロイヤル・バレエとボリショイ・バレエとオーストラリア・バレエという3つのカンパニーがメインでやっていて、アイディアとしては、時差がありますのでまずオーストラリアから朝が始まって、だんだん西へと明けていく。それで、メインカンパニーのオーストラリア・バレエがやっている時に、その友達カンパニーとして、日本の新国立劇場バレエ団が参加する、というかたちでやっています。

記者11 2022年4〜5月の「シェイクスピア・ダブルビル」について。『マクベス』にはジュリエットやオフィーリアと違ってかなり強烈な女性が出てきますが、どうしてその作品を選んだのかということと、ダンサーにとってはとても大きな挑戦になると思うので、そのあたりについて教えてください。
吉田 短い作品になりますので、物語のどこをどうピックアップするかによっても変わってくると思います。この作品については、最初に音楽から入りました。高松宮妃殿下に「まだ世界でも上演されていないバレエ音楽があるのですが、興味はありますか?」と紹介していただいたかたちです。それで実際に聴いてみたら、確かに動きが見えるような音楽で。もちろんバレエ音楽として作られているので、これで新作を作れたらいいのではないか、というところからスタートしました。そしてやはり『マクベス』ならば……と考えていってたどり着いたのは、ウィル・タケット。いま世界で活躍されていますし、彼ならばきっと興味深い作品を作ってくださるのではないかと思い、オファーしました。
記者12 伊東チーフプロデューサーにお聞きします。プロデューサーの立場から、吉田監督がこの劇場のディレクションをしている意義をどのように捉えていますか。これまでの監督たちとは違うキャリア、知名度、ファンを持っている吉田都さんがこの劇場の芸術監督を務めている。そのことによって何が得られたのか。それを総括していただけますか。
伊東 吉田監督は世界を知っている、ワールドクラスの方だというのはすごくあると思います。稽古場での指導も、常にスタッフと連携して細かいところまで指示を出していますし、監督自身が先ほど「山ほどのダメ出し」と言いましたけれども、そのダメ出しの繰り返しでダンサーたちを確実に変えていく。そういう粘り強さもあります。ロイヤル・オペラハウス、そしてロイヤル・バレエという非常に攻めているというか最先端を走っている劇場から振付家を呼んでくることも、先ほどのスタジオ増設のこともそうですが、本当にビジョンがクリアであり、強いリーダーシップもあります。

新国立劇場 2022/2023シーズンラインアップ

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