
前列右から フィリップ・ドゥクフレ、藤原竜也、森田望智、池田成志
後列右から 駒木根葵汰、宮尾俊太郎、富田望生、島村龍乃介 ©Ballet Channel
舞台『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』が、2026年1月より東京芸術劇場プレイハウスで開幕する。同作は、村上春樹氏による同名の長編小説を舞台化した作品。世界初演となる東京を皮切りに、宮城・愛知・兵庫・福岡の6都市で上演され、4月からは海外4ヵ国(シンガポール、中国、イギリス、フランス)でツアーが予定されている。
“世界の終り”と“ハードボイルド・ワンダーランド”という異なる二つの世界が並行して描かれる作品。演出・振付を手がけるのは、振付家フィリップ・ドゥクフレ。出演は、“ハードボイルド・ワンダーランド”の主人公・私役の藤原竜也をはじめ、森田望智、宮尾俊太郎、富田望生、駒木根葵汰/島村龍乃介(Wキャスト)、藤田ハル、松田慎也、池田成志らが名を連ねる。そのほか10名のダンサーも出演する。
2025年11月下旬、フランス大使公邸で製作発表が行われた。
はじめにジェレミー・フォラ=ジェムフランス大使館公使が挨拶。フランスでも人気を集める村上春樹作品の舞台化への喜びを語り、制作陣とキャストたちへ熱いエールを送った。続いてホリプログループ会長の堀義貴がワールドツアーへの意気込みを語り、後ろに設置されたスクリーンには、シンガポール、中国、イギリス、フランスの各劇場から送られたビデオメッセージが放映された。
続いて演出・振付のフィリップ・ドゥクフレ、出演者の藤原竜也、森田望智、宮尾俊太郎、富田望生、駒木根葵汰、島村龍乃介、池田成志が登壇。それぞれに作品や役、意気込みなどを語った。
フィリップ・ドゥクフレは本作を「演劇でもなく、バレエでもなく、ミュージカルでもなく、しかし同時にそのすべてでもあるような作品です。新しくて特別な何かをみなさんに届けられたら」と紹介。「私たちが生きている世界は今、いろいろなものが失われつつあります。今回の舞台はハイブリッドにさまざまな世界が組み合わさっていて、それは現実の世界にも似ています。一角獣や怪物が登場する世界で、失われた愛を求めていくという物語は、視点を変えると普遍的なお話なのではないか」と語った。

「日本に来られる機会なので飛びついた」とフィリップ・ドゥクフレ氏。「私の娘は一角獣が好きなので、作中に一角獣が登場するこの作品に携われるのは素敵なこと」と笑顔を見せた ©Ballet Channel
“ハードボイルド・ワンダーランド”の私を演じる藤原竜也は、村上春樹作品に出演するのも、フランスでのパリ公演もはじめてとのこと。「この世界的文学作品で、フランスをはじめ世界の人たちにも受け入れてもらえるような芝居を作っていきたいと思います。みんなでいい舞台にしたいという目標に向かい、フィリップさんの期待に応えられるように稽古に励んでいきたいです」と意気込みを語った。

15歳で演劇の世界に入った当初から、蜷川幸雄氏に「村上作品を読め」と言われていたそう。「我々の細胞をよみがえらせ、目覚めさせてくれるような作品にドキドキさせられていました」 ©Ballet Channel

談笑するふたり ©Ballet Channel
“ハードボイルド・ワンダーランド”の司書と“世界の終り”の彼女という二役を担う森田望智は、それぞれの役を「“彼女”は藤原さん演じる“私”が失ったものを体現している存在で、“司書”は彼女を彷彿とさせるような現実の世界に生きている女性ではないか」と分析。「どちらもそれぞれの世界の“私”と“僕”が惹かれている一人の女性だと思うので、同じ人なのか違う人なのか捉えどころのない、観る人にとって余白の残る人物を演じられたら」。

「はじめての舞台出演で、みなさんから学びながら、刺激的な毎日を送っています」と稽古のようすについて語った森田 ©Ballet Channel
「日本で制作したものが海外で上演できるというのは、やはりすごいことで、演者としてはとても嬉しい」と語ったのは、“世界の終り”の影を演じる宮尾俊太郎。「ずっと僕はバレエダンサーとして言語のない世界で表現させていただいてきましたが、筋肉を使って空気を振動させて表現するということに、身体的な部分で大きな違いはないと思っています。言語というのは伝える相手がいて成立するものですが、舞踊はひとりでも成立するもので、より自分の内側に向いていて、より本能的で、精神性があると感じています」。影という役については、「“私”の深層心理の世界に入っていくので、自己の対話で言語を使ってどのように精神性や本能的な部分を表現できるのかを模索しています」と述べた。

「今回はシャトレ劇場での公演もある。かつてディアギレフが率いたバレエ・リュスのように、フランスからフィリップさんにお越しいただいて日本のアーティストとともに作品をお届けするというのは、感慨深いものがあります」と宮尾 ©Ballet Channel
“ハードボイルド・ワンダーランド”のピンクの女役は富田望生。「小説の世界観やこの役に対しての印象は、読んだ方によってそれぞれ違うのではないでしょうか。稽古を進めていく中で、私自身が感じていた小説に対する思いや“ピンクの女”に対する思いが、みなさんといい意味で違ったりしていて。今、いろんな角度からスパイスと潤いを与えていただいています。まだ“ピンクの女”としてどう生きるかの答えは見つかっていないのですが、キャストやダンサーのみなさんとフィリップさんの頭の中を覗きながら、きっと彼女の冒険、“私”との冒険を見つけることができるのではないかとワクワクしています」。

富田が着用した衣裳にもピンクが効果的にあしらわれていた ©Ballet Channel
“世界の終り”の僕役は駒木根葵汰と島村龍乃介がWキャストで演じる。
駒木根は初舞台で、1つの役を二人で演じるのもはじめてとのこと。「島村くんと一緒に意見を出し合いながら、より良いキャラクターになるように日々精進しています。“世界の終り”の大佐役の池田成志さんにも意見をいただき、みんなで作品をつくり上げていることを体感しながら、『舞台ってこういうものなんだな』と感じています」と稽古の手ごたえを語った。

「稽古場で自分が出ていないシーンを観ていると、こんなに美しいものができるんだなと思い、完成が楽しみです」と駒木根 ©Ballet Channel
島村は、「はじめて海外の公演にも立たせていただくので本当に緊張していますが、海外で僕がどう見られるのかとワクワクしています。言葉や文化は日本とまったく違っても、舞台の物語を届ける力は世界共通だと考えているので、言葉だけではなく、しぐさや振付を通して、みなさんにこの素敵な物語をお届けできたらと思います」と意気込んだ。

「公演を通して、来年の自分がどう成長するかが楽しみです」と話す島村 ©Ballet Channel
“ハードボイルド・ワンダーランド”の博士と“世界の終り”の大佐の二役を演じる池田成志。博士については「科学に対して純粋な人。“私”と“僕”がふたつの世界でこうなる現象を作ってしまった張本人ですが、どうしてこうなってしまったんだろう?と無邪気に追求していきます」と説明。いっぽう大佐は、「世界の終りに住んでいて、すべてを捨てて安らぎの中に生きながらも、“僕”に出会って心を動かされている人物」。どちらも繊細な二人だと語った。

「フィリップさんが作る美しい舞台と、村上さん原作の不思議な世界ですが、私は普段非常に雑で大雑把な芝居をやっているので、その繊細さをどう表現すればいいんだろうと今苦しんでいます。その結果をぜひご覧いただければ」と笑いを誘った ©Ballet Channel
舞台『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』は、2026年1月から3月にかけて国内5都市を巡り、4月からは海外4ヵ国で上演される。
公演情報
舞台『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』
協⼒:新潮社・村上春樹事務所
企画制作:ホリプロ
国内ツアー公演
〈東京公演〉
2026年1⽉10⽇(⼟)~2⽉1⽇(⽇)
会場:東京芸術劇場プレイハウス
主催:ホリプロ
特別協賛:Sky株式会社
共催:東京芸術劇場(公益財団法⼈東京都歴史⽂化財団)
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〈宮城公演〉
2026年2⽉6⽇(⾦)〜8⽇(⽇)
会場:仙台銀⾏ホール イズミティ21
主催:仙台放送
共催:仙台市市⺠⽂化事業団
お問い合わせ:仙台放送事業部 022-268-2174(平⽇11:00〜16:00)
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〈愛知公演〉
2026年2⽉13⽇(⾦)〜15日(⽇)
会場:名古屋⽂理⼤学⽂化フォーラム(稲沢市⺠会館)⼤ホール
主催:メ〜テレ、メ〜テレ事業
共催:⼀般財団法⼈稲沢市⽂化振興財団
お問い合わせ:メ〜テレ事業 052-331-9966(平⽇10:00〜18:00)
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〈兵庫公演〉
2026年2⽉19⽇(⽊)〜23⽇(⽉祝)
会場:兵庫県⽴芸術⽂化センター 阪急 中ホール
主催:梅⽥芸術劇場/兵庫県、兵庫県⽴芸術⽂化センター
お問い合わせ:梅⽥芸術劇場 0570-077-039(10:00〜13:00、14:00〜18:00)
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〈福岡公演〉
2026年2⽉28⽇(⼟)〜3⽉1⽇(⽇)
会場:J:COM北九州芸術劇場 ⼤ホール
主催:インプレサリオ/RKB毎⽇放送
提携:北九州芸術劇場
お問い合わせ:インプレサリオ 092-600-9238(平⽇11:00〜15:00)
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海外公演
〈シンガポール公演〉
2026年4月
会場:エスプラネード・シアターズ・オン・ザ・ベイ
〈中国公演〉
2026年7月
〈イギリス公演〉
2026年10月
会場:バービカン・センター
〈フランス公演〉
2026年10月
会場:シャトレ劇場