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【動画レポ&インタビュー】牧阿佐美バレヱ団「サマー・バレエコンサート2020」リハーサルレポート&ダンサーインタビュー

若松 圭子 Keiko WAKAMATSU

Videographer:Kenji Hirano
リハーサル写真:Ballet Channel
プロフィール写真 :ASAMI MAKI BALLET TOKYO
舞台写真:©スタッフ・テス(株)

新型コロナウイルスの影響による自粛要請のため2020年3月と6月の公演が中止となっていた牧阿佐美バレヱ団が、「この時期にも上演が可能であるバレエ公演を」と、急遽サマー・バレエコンサート2020」の開催を決定した。
公演日は2020年8月11日の一夜限り。クラシック・バレエの名作から橘秋子・牧阿佐美振付による財産的オリジナル作品まで、近年上演の機会がなかったレパートリーを鑑賞できるラインナップが用意されている。

また、今回は同団として初の“全編リアルタイム生配信”をするという。距離的な問題や健康上の不安などから会場に足を運べない人も、「ライブ配信チケット」を購入すれば自宅で鑑賞が可能。バレエ団にとって今回のガラコンサートは、新しい公演のかたちを築くための大きな挑戦の一歩でもある。

公演まで20日余りとなった7月下旬。牧阿佐美バレヱ団ではリハーサルが大詰めを迎えていた。
リハーサルは2部屋を使用して交互に実施することにより“密”を防止。入口の扉も窓も開放し、ダンサーたちはマスクを着用して……と、あらゆる感染防止対策を厳密に守りながら、限られた時間のなかで熱の入った稽古が行われていた。

「ラ・バヤデール」幻想の場より  中川郁・清瀧千晴

出演者インタビュー 

青山季可(「海賊」より グラン・パ・ド・ドゥ)

青山季可(あおやま・きか)

バレエ団のスタジオに戻れたとき、やっぱり自宅とは広さも床を踏む感覚もまったく違っていて、自由に動けることが嬉しかったです。今回は3月・6月とふたつも公演が中止になってしまって、昨年末に上演した『くるみ割り人形』以来、8か月ぶりに舞台に立つことになります。ですから、今はとにかく踊りに集中したいと思っています。

『海賊』はガラ公演でもよく上演される華やかな作品で、バレエファンにも人気ですね。私は気品あるメドーラを踊りたいと思っています。今回は和洋とバラエティーに富んだプログラムになっているので、きっと皆様に楽しんでいただけると思います。

久しぶりに舞台に立てることで緊張もありますが、すごくワクワクしています。そのパワーを皆様にお届けできるように頑張りたいと思うので、その熱気を受け取って楽しんでいただけたら幸せです。

水井駿介(「海賊」より グラン・パ・ド・ドゥ)

水井駿介(みずい・しゅんすけ)

今回の公演はライブ配信も行われるので、遠方に住む人にも見てもらいたい。僕の地元は新潟県の佐渡で、舞台を見に東京へ来るとなると、移動時間だけでも大変なんです。全国の人にも気軽に見ていただいて、今の環境では難しいですけれど、いつか生の舞台を見たいと思ってもらえたら嬉しいですね。

『海賊』では、バレエ団の大先輩である青山季可さんと組ませていただきます。ちょっと緊張していますが、ふたりの空気感をうまく合わせて、もっと深いところまで表現できたらと思っています。僕の踊るアリは、ダンサーによって役の捉え方も表現もだいぶ違っています。男の力強さを表現する人もいるし、中性的なセクシーさを魅せる人もいる。牧阿佐美先生がおっしゃっていたのですが、アリは力強さが前面にでると、どうしても威張っているように見えてしまう、と。動きにしなやかさがあることで、コンラッドの奴隷であるアリと、メドーラとの関係性が際立つのではないかというお話を聞いて、なるほどと思いました。手の動きとか、目線ひとつにしても表現するのはとても難しいですが、追求し続けたいと思います。

中川郁(「ラ・バヤデール」 幻想の場より)

中川 郁(なかがわ・いく)

公演が決まって久しぶりにスタジオに戻ったときは嬉しかったです。
これで思い切り踊れると思ったんですけれど、自粛期間のあいだに体力が落ちてしまい、当初は思ったよりも動けなくて、少しもどかしい気持ちもありました。最近になって、やっと調子が戻ってきたかなと感じています。

今回『ラ・バヤデール』を踊ることになってから、いろいろなバレエ団のバージョンの映像を見ているのですが、どのダンサーの方の演技も素晴らしくて勉強になります。歩き方ひとつをとっても、足を踏み出す第一歩目から感情がこもっているんです。今回の「幻想の場」では、たとえば相手を”見る”ときでも直視はせず、あえて視線をちょっとそらせたり、ソロルの手を取るときも現実的な触れ合いに見えないように、など工夫しています。テクニック的にも表現的にも難しいですが、今は練習したり、作品について研究したりすることが楽しいんです。もちろん大変だけれど不思議と辛くはなくて、公演のリハーサルができることが、すごく嬉しいですね。

清瀧千晴(「ラ・バヤデール」 幻想の場より)

清瀧千晴(きよたき・ちはる)

自粛期間は、実家の方にあるスタジオに行き、ひとりでレッスンをしていました。身体のことを考えて無理をせず、自分のペースで。自粛期間があけると、バレエ団が“密”を避けるためにも人数や時間を細かく分けるという体制を取ってくださったことで、スタジオで直接先生のレッスンを受けられるようになりました。それまでとは全く違いましたね!すごく気持ちがよかったです。広さや高さを気にすることなく開放的に伸び伸びと動けました。

みんなもそうだと思うけれど、ずっとひとりだったから、スタジオで誰かと同じ空間にいるだけでも、なんとなくホッとするんです。バレエ団のみんなとは、家族よりも長い時間を一緒に過ごしてきたからでしょうね。

外部の舞台での経験はありますが、『ラ・バヤデール』をこのバレエ団の公演で踊るのは初めてです。歴代の素晴らしいダンサーがたくさん踊ってきた作品ですから嬉しいですね。今回お見せする「幻想の場」は特に好きなシーンで、この良さを更にわかっていただくために、本当は全幕を見ていただきたい。お客様にもいつか全幕を劇場で見てみたいな、と思ってもらえるようなパフォーマンスをしたいです。

阿部裕恵・光永百花 (「角兵衛獅子」第2幕)

阿部裕恵(あべ・ひろえ/妹役)

光永百花(みつなが・ももか/姉役)

ドラマティックな作品ですが、踊っていていかがでしょうか?
光永(姉役) この『角兵衛獅子』は、見終わったあとに客席が涙を流すような作品だ、と言われているそうです。お客様に伝えなくてはいけない、と、牧阿佐美先生からいつもご指導いただいています。

阿部(妹役) 私たちが演じる姉妹は、いつか親に会えるかもしれないと思い、必死に角兵衛獅子を踊り続けるという役どころなので、客席に、一生懸命踊っているのが伝わるように演じています。普段は、自分が一生懸命踊っていることをお客様に伝えるということはないですから、それも新鮮に感じます。踊りについては、クラシック・バレエとは違う動きが多く、たとえば長いさらし布を両手に持ったまま、床につけないように踊ります。長いこと振り続け、疲れがでてくる最後の最後に持ったままフェッテをしたり。かなり体力も必要です。

この作品のポイントやみどころを教えてください。
阿部 角兵衛獅子について色々と調べてみて、どんな踊りだったのかを知りました。この作品の姉妹のような厳しい境遇は、現代ではなかなか体験できませんが、姉妹は「踊っていれば、もしかしたらお母さんといつか逢えるかもしれない、だから一生懸命踊らなくちゃいけない」っていう状況で踊っているんですよね。私の演じる妹は10歳ぐらいの設定ですから、考えると本当に切ないんですけれども、ただただ一生懸命、親に逢えるかもしれないっていう気持ちをもって踊っているということが、バレエとしてだけではなく表現として、お客様に伝われば嬉しいと思います。

光永 姉も妹も、角兵衛獅子として踊るときは本当に必死です。毎日、命を懸けて踊らないと生きていけないという仕事なんですね。そのなかで姉は、第1幕で出会う虚無僧に、ほのかな恋心を抱いています。今回は第2幕のみの上演なので、その虚無僧と再会し、パ・ド・ドゥが始まるところからなのですが、そのシーンをご指導いただいているところです。普段は角兵衛獅子として、獅子を頭に付けて踊っているんですけれども、虚無僧に会うときには獅子頭を取るんです。これがないと生きていけない、でもそれを置いて相手のところへ行く、という心情の変化を演じるのは難しいです。獅子頭を置く瞬間や、虚無僧のもとへ走っていくときの姉の気持ちや心の葛藤など、細かいところにも気を配って演じたいです。今回の公演でお芝居の要素があるのは『角兵衛獅子』だけだと思うので、踊りだけではなくストーリーもお客様にお伝えしたいと思っています。

【Column】「角兵衛獅子」とは?
角兵衛獅子とは、新潟県月潟村を発祥の地とする郷土芸能。もとはちいさな獅子頭を頭につけた子どもたちが、親方につれられて国じゅうを巡る大道芸の一団だった。貧しい家の子どもや、人さらいにあった子どもを親方が買い取り、芸を仕込んで披露させていたという。

第2幕は年に一度の地蔵祭で、赤いさらしを手に角兵衛獅子たちが踊る場面。
牧阿佐美バレヱ団での初演は1963年。妹役を森下洋子、姉役を大原永子がつとめた。今回は42年ぶりの再演となる。

「角兵衛獅子」©︎エーアイ 撮影:塩谷武

「角兵衛獅子」©︎エーアイ 撮影:塩谷武

上演プログラム
<第1部>
●『ゴットシャルクの組曲』より
振付:牧阿佐美 出演:菊地研 他
●『カルメン』より カルメンの踊り
振付:牧阿佐美 出演:織山万梨子
●『コサックの歌』
振付:ニコライ・アンドロソフ 出演:濱田雄冴/山本達史
●『シェヘラザード』より パ・ド・ドゥ
振付:ミハイル・フォーキン 出演:日髙有梨/ラグワスレン・オトゴンニャム
●『ラ・バヤデール』幻想の場より
振付:マリウス・プティパ
出演:中川郁/清瀧千晴  茂田絵美子/三宅里奈/佐藤かんな
●『海賊』より グラン・パ・ド・ドゥ
振付:マリウス・プティパ 出演: 青山季可/水井駿介
●『トリプティーク(青春三章)』(音楽:芥川也寸志)
振付:牧阿佐美 出演:米澤真弓/坂爪智来 他

<第2部>
●『角兵衛獅子』第2幕(音楽:山内正)
振付:橘秋子 出演:阿部裕恵/光永百花 他

公演情報

牧阿佐美バレヱ団『サマー・バレエコンサート2020』

公演日程 2020年8月11日(火)17:00 開演
会場 文京シビックホール 大ホール
ライブ配信 2020年8月11日(火) 17:00 配信開始
アーカイブ配信期間

8月12日(水)17:00~8月15日(土)23:59

料金:3,000円
ライブ配信チケットご購入はこちら
お問い合わせ 牧阿佐美バレヱ団公演事務局 03(3360)8251
牧阿佐美バレヱ団ホームページ https://www.ambt.jp/

 

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