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【リハーサル動画集】新国立劇場バレエ団「くるみ割り人形」①米沢唯×井澤駿/振付家ウェイン・イーグリング/指揮者アレクセイ・バクラン

阿部さや子 Sayako ABE

2019年12月14日(土)より開幕する新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』
同団が上演するのは、ダンサーたちが「難易度が高くてとてもハード!」と口をそろえる、ウェイン・イーグリング版です。

バレエチャンネルでは、今回も本番直前で佳境を迎えたリハーサル現場を取材
いろいろな動画を撮ってきましたので、順次公開していきます。

本日は、

  1. 初日を飾る、米沢唯×井澤駿のリハーサル&インタビュー動画
  2. 振付のウェイン・イーグリング氏自身によるリハの様子&インタビュー動画
  3. 指揮者アレクセイ・バクラン氏のリハーサル&インタビュー動画(Q&Aコラム付き!)

の3つをどうぞ!

Videographer:Kenji Hirano, Kazuki Yamakura

🎄 🎄 🎄

米沢 唯(クララ)×井澤 駿(王子) リハーサル&インタビュー

🎄Interview🎄
米沢 唯(クララ/こんぺい糖の精)× 井澤 駿(ドロッセルマイヤーの甥/くるみ割り人形/王子)

――イーグリング版『くるみ割り人形』リハーサルを拝見しました! 何というか、トリッキーなステップがたくさん詰まっていて、難しそうですが見応えたっぷりですね。

米沢 本当にハードなバージョンだと、私たちダンサーもみんな思っています。主役だけでなく、コール・ド・バレエもソリストも、全員が全力を尽くさないと踊れないという、相当ハードな『くるみ』です。とくに男性主役のくるみ割り人形と王子は同じダンサーが両方を演じるのですが、もう「これでもか!」というくらい女性を持ち上げ、回し、引きずり……(笑)。
井澤 引きずり(笑)。
米沢 もちろん女性も大変ですけれど、男性は本当に大変だろうなと思います。

――と、米沢さんがおっしゃっていますが、井澤さんいかがですか?

井澤 そうですね、唯さんがおっしゃった通りです。振りがたくさん詰まっているので、それ自体がもう本当に難しい。それでも、その振付にどう応えていくか、日々課題を持ちながら挑んでいます。

――男性はさらに“ドロッセルマイヤーの甥”という役どころもあって一人三役ですが、それぞれに演じ方や表現も変えていますか?

井澤 昨年まではそれほど意識はしていなかったのですが、今回は、人形と王子の差を見せられたらいいかなと考えています。
米沢 確かに今回の駿さんは、何か踊り方を変えてきているな……というのは感じました。
井澤 最初にイーグリングさんが振付けられたとき、「人形のときはこうしてくれ」みたいなことは、何もおっしゃらなかったんですね。ですので、もしかすると僕ら自身のほうで、少しずつ変化をつけていってもいいのかなと。今回はイーグリングさんご自身がまた指導に来てくださっているので、直に相談しながら稽古しているところです。

――女性のほうも、この版では同じダンサーがクララとこんぺい糖の精の両方を演じますね。

米沢 第1幕の最初のほうで、本当に十代の女の子がクララ役を踊っているのを見るたびに、「ああ、この子が夢を見て大きくなったのが私なんだな」というのはすごく感じます。なので、最初の登場シーンでは、体は大きくなっているけれどもそれは“おとなの女性”ではなく、心は子どものままで夢を見ているーーそんなふうに舞台を作れたらいいなと思っています。

――おふたりが思うイーグリング版『くるみ割り人形』の魅力とはどんなところでしょう?

井澤 踊りはもちろんのこと、舞台装置の豪華さは、やはり大きな魅力だと思います。ツリーが大きくなるところや、気球に乗って旅をするところ、そして気球が降りてくるところ。とても幻想的で、夢があります。

ツリーはただ大きくなるだけでなく、観客も魔法にかけられて、目の前がくらくら〜と揺れるような感覚になる仕掛けが!

米沢 イーグリングさんって、とてもユーモアのある方だと思うんです。この『くるみ』はとくに、“かしこまって観るバレエ”というよりも“おもしろがって観るバレエ”を作っていらっしゃる感じがします。ダンサーたちが楽しんで踊ること。たとえなかなかできなくても、挑戦していくことを楽しむこと。ただまじめにきちんと踊るだけではなくて、すべきことをきちんとしながらも、ダンサーたちがいかにおもしろがりながら踊れるかーーそこに、イーグリング作品ならではの色があるように思います。こんなにも難しい振付、音の取り方、そしてもちろん各キャラクターの演じるべき個性。それら全部をダンサーたちがおもしろがって、楽しんで踊ることができたら、イーグリングさんらしい世界が現れるのではないかと、いままさに感じているところです。

唯さんのいう通り、例えばこんなに怖い(?)ネズミの王様も振付はユーモアたっぷりで、何かちょっとかわいいです……

――毎年、『くるみ割り人形』の季節になると必ず思い出すことはありますか?

米沢 私は、小さい頃から「花のワルツ」「こんぺい糖のパ・ド・ドゥ」の曲が大好きで。まだ『くるみ割り人形』というバレエを知らなかったときから、家でずっと「花のワルツ」から「こんぺい糖のパ・ド・ドゥ」までの曲を流して、ひとりで踊っていた記憶があります。その2つの曲は、いま聴いても、何か喜びに満ちているような、でも悲しみがあるような、本当にチャイコフスキー独特の美しさがあると感じます。それをいまこうして、こんなにも美しい劇場で、踊れているなんて……本当に嬉しくて、踊るたびに「ああ、幸せだな」って思います。もちろん、とくにこのイーグリング版の「金平糖のパ・ド・ドゥ」は、体力的にはものすごくハードです。駿さんも私も、毎回もうあと一瞬で死にそうなところまでいっています(笑)。それでも頭のどこかでは、いつも「ああ、それでも幸せだな」と思うんです。
井澤 この時期になると、新国立劇場がある初台駅の電車の発着メロディが『くるみ割り人形』になるんです。それを聞くと、楽しみな気持ちになる……というか、最近では楽しみ半分、つらさ半分というのが、正直なところです(笑)。でも、つらさを感じるくらい難しくてハードだからこそやりがいがありますし、「よし、体力づくりをしないといけないな」と、身が引き締まるような気持ちにもなります。『くるみ』は、作品も音楽も、本当に大好きなので。

――全幕のなかで、とくに好きなシーンはありますか?

米沢 私、気球に乗っているのがすごく好きで。3メートル以上の高さから降りてくるので、上にいるときは客席がバーッと見渡せるくらい高くて、本当にちょっと怖いんです。でも「うわ、怖い!」と思うと同時に、「楽しい!」って思います。あのスリルが大好きです。
井澤 僕は、雪のシーンのコール・ド・バレエが、幻想的ですごく綺麗だなと思います。自分が王子役を踊っているときはもちろんあまり見られないのですが、雪が降りしきるなか――たまに雪量がやけに多いこともありますが(笑)――本当に美しいなと感じます。
米沢 群舞がピシッと揃っているのが、本当に素敵。私は、いちど2階席から観たことがあるんです。コール・ドがぱぁっと広がったり集まったりするのが本当に雪の結晶みたいで、「ああ、こういうふうになっているんだ……」と感動しました。

舞台写真撮影:鹿摩隆司

振付 ウェイン・イーグリング氏リハーサル&インタビュー

指揮 アレクセイ・バクラン氏リハーサル&インタビュー

教えて、マエストロ!バレエ音楽「くるみ割り人形」3つのQ
Q 1 音楽家であるバクランさんが、『くるみ割り人形』のなかでとくに素晴らしいと思う曲はどれですか?

チャイコフスキーが生涯で3つだけ書いたバレエ音楽のうち、『くるみ割り人形』はいちばん最後に書かれたものです。つまり、彼が作曲家としても人間としても非常に成熟した時期に書かれた作品ですので、とても色彩ゆたかで、本当に素晴らしい音楽だと思います。そのなかで私自身がとくに好きな曲はというと、まずは幕開きで演奏する序曲。それからいわゆる白のアダージオと呼ばれる、雪の場面でクララとくるみ割り人形が踊るパ・ド・ドゥの、あのフレンチホルンのソロが入る曲も好きですね。そしてもちろん、第2幕のこんぺい糖と王子のパ・ド・ドゥの曲。とにかくスコアを見ると、どの曲をとっても非常に素晴らしい曲ばかりが散りばめられています。自分の好みですら優越をつけるのはとても難しい。チャイコフスキーという天才に対して、頭を垂れるしかありません。心から尊敬の念を感じますね。

Q2 指揮をするのが難しい曲はどれですか?

音楽的に演奏するのがいちばん難しいといえば、第1幕の客間のシーン。あの、子どもたちが遊んだりプレゼントを見せ合ったりするところや、くるみ割り人形が壊れる場面ですね。つまり、ねずみと兵隊たちの戦いが始まる前までのところです。あのくだりは音を構成している要素がとても複雑に絡み合っていて、演奏するのがとても難しいんですよ。

Q3 バクランさんの思う“音楽性のゆたかなダンサー”あるいは“音楽的な踊り”とは?

ダンサーにはそれぞれの個性があります。同じ曲を踊っていてもそれぞれ少しずつテンポが違ったり、間の取り方が違ったりするものです。バレエ指揮者はそうした個性を事前に確認しておいて、彼ら・彼女らができるだけ踊りやすいように演奏することを心がけるわけですけれども、何かダンサーが踊りにくいといったときに、バレエ団によっては、「マエストロ、ここはテンポをちょっと上げてください」「ここはもう少しテンポを落としてください」等と、テンポのことだけを問題にされる場合があります。でも、たとえばこの新国立劇場バレエ団の場合には、そうではありません。ダンサーたちは常に「その曲を歌うように踊りなさい」「音楽の移り変わりに、自分の動きを調和させて踊りなさい」と求められており、実際そのように踊っています。私は、それこそが音楽を重視するということ、音楽的に踊るということだと思います。

 

公演情報

新国立劇場バレエ団「くるみ割り人形」

期間 2019年12月14日(土)〜12月22日(日)
会場 新国立劇場オペラパレス
詳細 https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/nutcracker/

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