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【動画付Interview】矢上恵子メモリアルガラ2025 #5 木下嘉人～僕にとって2度目の矢上作品。緊張感と楽しさを胸に挑みます。

2025.02.13 若松圭子　Keiko WAKAMATSU

本編撮影・編集：星野一翔、ティーザー：福田紘也

2025年2月15日（土）にティアラこうとう大ホールで上演される1日限りのステージ「踊れ、その身体がドラマになるまで～矢上恵子メモリアルガラ2025 in TOKYO」。1990年代から2010年代にかけて数々の作品を生み出し、国際的にも高く評価されながら、57歳の若さでこの世を去った振付家・矢上恵子の作品に、教え子であり矢上作品を身体で知り尽くす福岡雄大や福田圭吾、新国立劇場バレエ団プリンシパルの小野絢子、米沢唯、柴山紗帆、ファースト・ソリストの池田理沙子、木下嘉人などの人気ダンサーたちが挑みます。

公演に向けてのリハーサルの合間に、出演ダンサーのみなさんへインタビューを行いました。
第5回目は木下嘉人さん。新国立劇場バレエ団ファースト・ソリストとして活躍中です。

京都府出身。寺田バレエ・アートスクールでバレエを始め、キーウ国立バレエ学校で学ぶ。ドネツク・バレエ、チューリンゲン・バレエ、ライプツィヒ・バレエ、ザルツブルク州立劇場バレエ団を経て、2015年新国立劇場バレエ団に入団。16年ソリスト、21年ファースト・ソリストに昇格。こどものためのバレエ劇場「シンデレラ」の主役、「ロメオとジュリエット」マキューシオ、「マノン」レスコー、「不思議の国のアリス」ルイス・キャロル／白ウサギなど主要な役を踊る。　©Ballet Channel

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木下さんが矢上恵子作品に出演するのは今回で2回目とか。: 木下　昨秋、K★BALLET STUDIOのコンサートで『Multiplex Personality（多重人格）』を踊らせていただきました。それまでも客席では何度か観ていましたが、実際に踊ってみて、初めて矢上恵子作品の難しさを感じました。

どういう点が難しかったのでしょうか？: 木下　まずは振付ですね。音符一つひとつに全部振りが入っているような作品なので、一個でも間違えたらすべてが崩れてしまいます。それに、完璧に振りを追っただけでは、矢上作品を表現できたことにはならない。作品が持つテーマをしっかり踊りに組み込み、お客さまに伝えるためには、かなりの身体能力やセンスが必要なんです。そのハードルの高さを知ってしまったから、本音を言えば、今回の舞台に立つ怖さは拭えません。

今回は『FROZEN EYES～凍りついた目～』と『Toi Toi』に出演します。: 木下　バレエ団の公演もやっと一段落したので（※編集部注：取材は1月中旬）、『Toi Toi』はこれから本格的な仕上げに入ります。『FROZEN EYES』は（福岡）雄大さんに指導してもらいながら、矢上恵子メソッドをひとつずつ理解しているところです。

『FROZEN EYES』は心が壊れてしまった少女と、彼女に寄り添う男性のパ・ド・ドゥ。相手役は米沢唯さんです。: 木下　パワフルなリフトがたくさんあるのですが、矢上恵子作品ならではのスピード感でポーズを決めなくてはいけません。ふたりで話し合って、一つひとつのリフトの支え方やタイミングなどをいろいろな方法で試してみています。素晴らしいプリマバレリーナである米沢さんと踊るのは緊張しますが、すごく話しやすい方なので、楽しくリハーサルさせていただいています。

©Ballet Channel

どのバレエ公演でも印象的な演技を見せている木下さん。コンテンポラリー作品では、キャラクターの感情表現や演技的なアプローチは意識していますか？: 木下　クラシック・バレエの場合、主軸が物語なので、僕なら『ジゼル』だったらヒラリオン、『白鳥の湖』ならベンノなど、物語の登場人物を演じることが必要になります。いっぽうコンテンポラリーを踊るのに大事なのは、振りそのものや音楽をどう表現するか。なかでも身体表現が最優先に求められる恵子先生の作品は、アプローチの方法や優先順位も大きく違うと感じています。

木下さんも多くの振付作品を発表していますが、発想の源になるものは？: 木下　音楽から作品のイメージが浮かぶことが多いので、気になった曲はいつでも聴けるようにストックしています。海外経験も長いので、そこから得たものも大きいです。向こうではコンテンポラリーが盛んですから、新しい作品作りに関わったりしながら多くのインスピレーションを得ることができました。

振付をする視点から見た、矢上恵子作品の魅力とは？: 木下　一つひとつの音に組み込まれた振りがムーブメントを生み、大きなパワーを作り出す。経験の浅い僕からすると、尊敬のひと言です。

©Ballet Channel

公演中に意識して取り入れているメンテナンス方法はありますか？: 木下　家ではバレエのことはあまり考えず、気分転換するようにしています。とくに演目がディープな内容だったりバットエンドだったりすると、毎日その役を演じきるたびに、精神的な負担が重なって辛くなってきます。いちばん大事にしているのは睡眠。熟睡できるように、自分に合った枕を選んで使っています。またバレエ団には、マッサージや鍼治療など体のメンテナンスをしてくださるスタッフの方がいて、必要だと感じた時にはお願いしています。