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【レポート】バレエ・クロストーク講演会「振付家・矢上恵子の世界」~矢上恵子メモリアルガラ出演者が登壇!

加藤 智子

振付家・矢上恵子さんが他界して約6年。1月13日に東京・文京区森下文化センターで行われた、バレエ・クロストーク講演会「振付家・矢上恵子の世界」では、2月の公演「踊れ、その身体がドラマになるまで~矢上恵子メモリアルガラ2025 in TOKYO」の出演者の中から、新国立劇場バレエ団プリンシパルの小野絢子さん、福岡雄大さん、ファースト・ソリストの池田理沙子さん、木下嘉人さんと、元ファースト・ソリストで、本公演の芸術監督を務める福田圭吾さんが登場。矢上恵子作品の魅力、公演への意気込みを語りました。

森下文化センターは“バレエのある街づくり”に取り組む江東区の中心となって「バレエの街プロジェクト」を展開中。バレエに関するイベントや講習会を次々と開催しています。 ©Ballet Channel

バレエ・クロストーク講演会「振付家・矢上恵子の世界」

当日の会場はほぼ満席。ナビゲーター・阿部さや子バレエチャンネル編集長の声がけでダンサーたちが登壇、挨拶すると、場の雰囲気は一気に華やかに。まずは矢上さんの愛弟子の一人、福田さんが、本公演実現の経緯を説明しました。
「コロナ禍のとき、バレエチャンネルさんの企画で矢上恵子についてのイベントをオンラインでやっていただきました(2021年)。それが好評で、東京で公演をできないかという話が持ち上がったんです」(福田さん)

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同じく、大阪のK★BALLET STUDIOで矢上さんの薫陶を受けた福岡さんも、矢上作品を知り尽くしたダンサー。
「みなさんが矢上恵子の作品を観たいと思い、舞台に繋げていただいて本当に感謝していますが、半面、踊り手としては『えっ?マジか?!』と引きますね」(福岡さん)
なぜ?と問われた福岡さんは、間髪入れずに「つらいんです。音符の一つひとつに振りがある。形も複雑で体現するのが難しくて」。昨年、大阪で矢上恵子作品に初挑戦したという木下さんは、「初日からド緊張でした。身体の使い方もメソッドもわからない状態でしたから、これは間違った仕事を受けたと(笑)」と語りつつ、福岡さん、福田さんに「食らいついていくしかない」と意欲的です。

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矢上作品初挑戦の小野さんも、「音符の一つひとつに振りが、と言われましたが、その間の軌跡も決まっていて、楽譜以上の情報量がある」と、矢上恵子作品の難易度の高さを指摘。同じく初挑戦の池田さんも、「矢上さんの作品を踊れる嬉しさはありましたが、怖さもあります」と明かします。
福田芸術監督は、「長年ともに踊ってきた信頼できるダンサーにお願いしたかった。恵子先生は毎公演観に来るほどの新国立劇場のファン。小野さん、米沢さんのことは『いつか私の作品を踊ってほしい』と言っていたんです」。同バレエ団プリンシパルの米沢唯さんは、木下さんとともに『FROZEN EYES〜凍りついた目〜』を踊り、矢上さんの願いを叶えます。

ソロ作品やパ・ド・ドゥ、大人数での作品など、様々な作品が二部構成で上演される本公演。「矢上作品をいろんな角度から観ることができるラインナップです」と福岡さん。

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今回上演される作品の一部が映像で紹介されると、みな、スクリーンに釘付けに。たとえば『Witz』の映像には、2003年のローザンヌ国際バレエコンクールで大喝采を浴びる16歳の福田さんの姿が。今回再びこの作品にのぞむ福田さんは、「いろんな方に認知していただいた、僕にとっては名刺がわりのような作品です」。

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7人の女性による『Cheminer(シュミネ)』は、本公演のためのリハーサル映像が映し出されました。音楽はラヴェルの〈ボレロ〉、小野さんが踊るのは当初、矢上恵子さん自身が踊ったポジションだそう。当時、矢上さんの内弟子だった6人が踊ったというパートは、今回、新国立劇場バレエ団の柴山紗帆さん、池田理沙子さん、五月女遥さん、川口藍さん、金城帆香さん、橋本真央さんが担います。

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また福岡さんが踊る『Bourbier(ブルビエール)』は、ご本人の舞台映像。「在籍していたチューリッヒ・バレエから帰国し、ヴァルナ国際バレエコンクールに挑戦する際に振付けられた作品。海外でホームシックになったり役がつかなかったりという当時の僕を投影するようにして振付けてくださったと思うんです」(福岡さん)。

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映像に圧倒されたようすの池田さんは、「言葉を失ってしまう。ダンサーが魂を込めて踊り切った後に出る、言葉にできない何かが宿っていると感じます」。小野さんも、「ダンサーとしてはフィジカルや振りのことに意識が行きがちですが、観客として観ると、最後に印象に残るのはそういう部分では絶対にない。映像ですらすごく緊張感があり、自分は踊っていないのに心臓がバクバクに。これを逃したら機会はないと出演をお受けしましたが、いろんな経験を積んだ上で矢上作品に出会えて、とても嬉しいです」。

最後は、『Toi Toi』を踊る矢上恵子さん本人と19歳の福岡さんの映像。踊り手としての才能がぶつかり合い、ヒリヒリするほどですが、福岡さんは「いや、これを踊っていた時も、あくまでも“先生と生徒”でした! めっちゃ怖かったです(笑)。この舞台は、チューリッヒに行く前のこと。恵子先生からのプレゼントであり、喝でもあったと思います」と、師匠・矢上さんの厳しさ、優しさを懐かしみました。同作品はダンサーが大勢登場する20分ほどの大作。今回はこのパートを、福岡さんと、同じくK★BALLET STUDIOで学び現在は矢上作品の指導も担う石川真理子さんが踊ります。

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その後、様々な質問にダンサーたちが「○」「×」で答えるトークコーナーを経て、最後はダンサーたちがあらためて舞台への意欲を表明。福田さんは、「今日は4人しか紹介できませんでしたが、みな同じ思いで臨んでくれるでしょう。ダンサーが命を削って踊る姿に圧倒されるはず。残席は僅少になっていますが、席が後ろの方でも、充分満足していただける公演になると思います」と、芸術監督の顔に。会場は、公演への期待がこもった熱い拍手に包まれました。

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公演情報

「踊れ、その身体がドラマになるまで
〜矢上恵子メモリアルガラ2025 in TOKYO〜」

【日時】
2025年2月15日(土)14時〜

【会場】
ティアラこうとう 大ホール(東京都江東区住吉2-28-36)

【出演(予定)】
小野絢子
米沢唯
柴山紗帆
福岡雄大
池田理沙子
木下嘉人
五月女遥
川口藍
宇賀大将
金城帆香
橋本真央
(以上、新国立劇場バレエ団)

福田圭吾

石川真理子
井本星那 ほか

【演目】
『Witz』
Multiplex Personality(多重人格)
『FROZEN EYES 〜凍りついた目〜』
『Butterfly』
『Bourbier』(ブルビエール)
『Cheminer』(シュミネ)
『Toi Toi』

【芸術監督】
福田圭吾

【監修】
矢上久留美

【主催】
株式会社 新書館

【企画・制作】
矢上恵子メモリアルガラ実行委員会

【協力】
公益財団法人江東区文化コミュニティ財団 ティアラこうとう

【特別協力】
K★BALLET STUDIO
株式会社 代地

【メディアパートナー】
バレエチャンネル

【公演事務局・問合せ】

矢上恵子メモリアルガラ公式ホームページ

◆公演詳細はこちら

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