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【動画付きレポート】バレエの街プロジェクト発信中! 江東区森下文化センター公開講座・冨田実里×米沢唯「チャイコフスキーの魔法」

若松圭子 Keiko WAKAMATSU

動画撮影・編集・写真撮影:Ballet Channel

バレエのある街づくり”に取り組んでいる、東京都・江東区。その中心となって「バレエの街プロジェクト」を展開している森下文化センターでは、区民にバレエの魅力を伝えるべく、バレエに関するイベントや講習会を次々と開催しています。
前回に引き続き、2022年3月に開催した講義イベント「チャイコフスキーの魔法」をレポート。ぜひ動画でもお楽しみください。

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公開講座「チャイコフスキーの魔法」

今回の講師は、新国立劇場バレエ団指揮者の冨田実里さん。誰もが知っているバレエ音楽の作曲家チャイコフスキーについて、即興のピアノ演奏を交えながら楽しくレクチャーしました。

©︎Ballet Channel

チャイコフスキー作品4つの魅力

まずはチャイコフスキー作品が愛される理由として
1:馴染みやすく覚えやすいメロディー
2:シンプルなのに変化に富んだハーモニー
3:オリジナルのまま残されているオーケストレーション
4:全幕をとおして統一感がある音楽の基本構成
を挙げ、チャイコフスキーのバレエ音楽独自の部分を解説しました。

2つ目の「ハーモニー(伴奏)」について、冨田さんはチャイコフスキーの「管弦楽組曲第3番」第4楽章を用いたバレエ『テーマとバリエーション』の冒頭を演奏したあと、「このメロディーに、もしも作曲家のミンクスが伴奏を付けたとしたら?」と、同じメロディーを即興でミンクス風にアレンジ。『パキータ』『ドン・キホーテ』など踊りやすいメロディーが特徴のミンクスですが、音楽だけを聴いてみると、確かに少し単調な印象も。「チャイコフスキーの音楽は和音の種類と数の多さも特徴のひとつ。伴奏の和音に上手く変化をつけて、従来の作曲家にはなかった魅力を生んでいます」(冨田さん)。

三大バレエの世界を音楽の視点から!

続いてはチャイコフスキー三大バレエを、さまざまな視点で深掘りするコーナー。
まずは三大バレエを振付けたマリウス・プティパが「この場面ではこういう音楽を書いて欲しい」とチャイコフスキーに渡した作曲注文書について、『眠れる森の美女』の第1幕・オーロラの登場シーンを取り上げました。注文書の内容を読んだ上で、音楽だけを聴いてみると……プティパが注文した“歯切れのよいコケティッシュな四分の三拍子”から、まさに生き生きした16歳のプリンセスの姿が鮮やかに浮かび上がってくるよう! チャイコフスキーが細かな指示を見事に音符に落とし込んで作曲しているのがよく分かります。

また、『白鳥の湖』については第2幕のグラン・アダージオに注目して、音楽と振付の関係についてレクチャー。この場面、「オデットのソロはヴァイオリンの独奏」「コール・ド・バレエ(白鳥たち)の踊りはヴァイオリンと木管楽器の合奏」というように、楽器の重なりがそのまま振付になっているとのこと。オデットが王子と心をかよわせるところでは、低く落ち着いたチェロの音色が、ヴァイオリンの音に重なります。「ふたりが踊りながら愛を深めていく時に、チェロとヴァイオリンもデュエットしているんですよ」と冨田さん。素敵です……!

左から:冨田実里さん、米沢唯さん ©︎Ballet Channel

「見える音楽」と「聞こえるバレエ」

この日のゲストは新国立劇場バレエ団プリンシパルの米沢唯さん。「チャイコフスキーのバレエ音楽は、音楽の中に情景描写や役の表情、セリフまでもが描かれているのが魅力。ダンサーとして、音楽から感じるイメージを膨らませることもたくさんあります」と話します。『くるみ割り人形』の金平糖の精の踊りについてのレクチャーでは、「作曲注文書は”噴水の水が跳ねる音のように”と書かれています」という冨田さんの解説について、米沢さんが「私はポワントの先からトントントン、トントントン……と音があふれてくるイメージで踊っています」とコメント。日ごろオーケストラピットと舞台の上で共演することも多く、信頼関係の強いおふたり。冨田さんは指揮者として「見える音楽」を、米沢さんはダンサーとして「聞こえるバレエ」を目指していると語りました。

白鳥になってみんなで羽ばたいてみよう!

今回の講座では『白鳥の湖』の白鳥の羽ばたきを米沢さんみずからが指導するコーナーも!
米沢さんいわく、「大きな羽ばたきも小さな羽ばたきもポイントは同じ」とのこと。

◎腕を上に伸ばしたときには、かならず手の甲側の手首と手首を合わせること
◎腕は指先からでなく、肘から上げ下げすること
◎肘からおろすのにあわせて手首を回すこと

米沢さんの動きに合わせて、受講者全員でやってみることに……。

動画では2分8秒から米沢さんの動きと解説を見られます ©︎Ballet Channel

©︎Ballet Channel

会場は白鳥たちでいっぱいになりました!
子どもも大人も、男性も女性も、思い切り腕を伸ばして白鳥の羽ばたきを体験。
鑑賞経験のない人も楽しくバレエに触れられる90分間のイベントでした。

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ビッグサプライズゲストの登場?!

講義の最後にはサプライズが。
この日に観客として来ていた新国立劇場バレエ団ファースト・ソリストの福田圭吾さんが、客席からステージ上へ。「白鳥の羽ばたきのテクニックを初めて学びました」と会場の笑いを誘いました。
さらに、バレエの街プロジェクトのPRに一役買っているのらくろくんが『白鳥の湖』のジークフリード王子の姿で登場。福田さんの指導で、カッコよく王子のポーズを決めると会場は大きな拍手がおきました。

©︎Ballet Channel

のらくろくんの意外なコスチュームにびっくりして、笑いが止まらなくなってしまった米沢さん。冨田さんは「バレエとキャラクターの交わりはアニメ・コミック文化が盛んな日本ならでは。面白い!」とコメント。福田さんも「高価そうで本格的。手が込んでますね!」と驚いていました。

右から:冨田実里さん、米沢唯さん、福田圭吾さん ©︎Ballet Channel

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編集部は見た👀のらくろ王子の豪華な衣裳の秘密!

©︎Ballet Channel

のらくろくんの着ているジークフリード王子の衣裳は、東京シティ・バレエ団の衣裳担当さんによる「一点もの」。依頼を受けた時は、想像したこともなかった「形」と「サイズ」に頭を抱えたそう。できるだけ本物のバレエ衣裳に近づけようとプロがこだわったポイントを、いくつかご紹介します。

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衣裳に施された美しい模様や飾りたち。デザインを書き起こし、 その上にブレード(手芸用のテープ状のひも)やビーズ一つひとつを縫い付けていきます。 ひとつのパーツセットをボンドで貼るだけで1日がかりという気の遠くなる作業です。

宝石のような大きなビーズは普通の衣裳では使わない超ビッグサイズ! 「生地とビーズのあいだにチュールレースを挟んで衣裳に馴染むように工夫しています」

何年使っても生地がケバ立たないように端まで丁寧に処理。「衣裳は今だけじゃなくて、ずっと綺麗じゃないといけない」というプロのこだわりがつまっています。

身体が大きいのらくろくん。両脇にほどこされたデコレーションも今回ならではの工夫。

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