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【インタビュー】舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」ドラコ役・宮尾俊太郎~バレエと演劇、その違いは感情表現にある

若松 圭子 Keiko WAKAMATSU

©HIRO KIMURA

映画も小説も有名なJ.Kローリング作「ハリー・ポッター」シリーズの19年後の物語を描いた舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』が世界各地で上演中です。
日本人キャストによる公演は2022年7月に開幕。TBS赤坂ACTシアターは1年前から大規模な改修をおこないハリー・ポッター専用劇場にリニューアルされ、すでに来年5月までのロングラン公演が決定しています。
主要キャストのひとり、ドラコ・マルフォイ役にキャスティングされたのは、Kバレエカンパニーのプリンシパルとして活躍した宮尾俊太郎(みやお・しゅんたろう)さん。バレエ・ダンサーから俳優としての活躍の幅を広げ、ミュージカルやドラマを経て、ダンスや歌のないせりふ劇の舞台に初めて挑む宮尾さんにお話を聞きました。

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『ハリー・ポッターと呪いの子』STORY
ハリー、ロン、ハーマイオニーが魔法界を救ってから19年後。かつての暗闇の世を思わせる不穏な事件が相次ぎ、人々を不安にさせていた。魔法省で働くハリー・ポッターはいまや3人の子の父親。今年ホグワーツ魔法魔術学校に入学する次男のアルバスは、英雄の息子である自分の運命にあらがうように、父・ハリーに反抗的な態度をとる。幼いころに両親を亡くしたハリーは、父親としてうまくふるまえず、アルバスとの関係を修復できずにいた。そんな中、魔法学校の入学式に向かうホグワーツ特急の車内で、アルバスは偶然1人の少年と出会う。彼は、ハリーと犬猿の仲のであるドラコ・マルフォイの息子・スコーピウスだった。2人の出会いが引き金となり、暗闇による支配が加速していく。時空を超え、過去と現在が不気味に交錯するなかで新たな暗い影が忍び寄る。

左:アルバス(福山康平)、右:スコーピウス(斉藤莉生) ©宮川舞子

6月16日に始まったプレビュー公演を経て、無事に初日を迎えての心境を聞かせてください。(※取材は2022年7月中旬)
宮尾 ここまで長かったですね。稽古は今年の4月から始まり、それからほぼ毎日、朝10時から夜10時までという過密スケジュールをこなしたのち劇場入りしました。プレビュー公演のあいだも、公演前や終演後の時間を使って綿密なリハーサルをかさねてきましたから、初日が明けてやっと自分のことをする時間がとれるようになりました。
プレビュー公演中も稽古やリハーサルがあったとは驚きです。
宮尾 舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』は演出にいろいろな仕掛けがあるので、一歩間違うと危険なことも潜んでいます。お客さまを楽しませるためには舞台スタッフだけでなく、俳優たちもリハーサルを綿密におこない、きちんと準備しておかなければいけない。時間はかかりましたが、クオリティの高い舞台をお届けできているのではないでしょうか。お客さまに見せる魔法ひとつとっても、こんなにすごい作品はほかにないと思いますよ!
舞台ではさまざまな魔法が見事に再現されていて、本棚や電話ボックスに吸い込まれる仕掛けなどにはびっくりしました。そのいっぽうで、スピード感ある場面転換や魔術は、俳優たちがダンス風の動きやマイムで演じるところが多いですね。
宮尾 そこも素晴らしいところです。演技についてはとくに新しいことをしているわけじゃない。奇をてらわず、舞台演劇が今までにおこなってきた身体表現の数々を、本当にうまく組み合わせていると思います。
宮尾さんが演じるドラコ・マルフォイは、ハリー・ポッターのライバルともいえる人気キャラクターのひとりです。原作ファンからもイメージどおりのキャスティングだと話題になりました。
宮尾 じつはオーディションを受けることになってから初めて原作と映画に目をとおしました。繊細な人だな、というのが彼の第一印象です。
物語は「ハリー・ポッター」シリーズ最終章から19年後。ハリーもドラコも父親になり、それぞれが思春期をむかえた息子との関係に悩んでいます。ドラコはひとり息子のスコーピウスが、マルフォイ家の悪い噂で傷つかないようにと、つねに気を配っていますね。
宮尾 登場シーンからずっと息子のことしか話していませんからね。舞台でドラコが取る行動は、すべて息子のためを思ってのことなんです。彼も厳格な父・ルシウスとの関係に悩み、それが反面教師になっているからだと思います。ちなみに僕は「可愛い子には旅をさせる」タイプ。ドラコとは真逆ですね。

©HIRO KIMURA

宮尾さんがセリフを中心とした演劇に出演するのは初めてですね。台本を読んでどう感じましたか?
宮尾 ドラコを演じるために大事だなと思ったのは、描かれていない19年間で彼にどんな事件がおこり、気持ちの変化があったのかを想像することでした。舞台稽古以外に演出家と主要キャストのワークショップがあったのですが、そこで一緒に台本を読み解く時間を持てたのは良かったです。
台本を読み解く、とは具体的にどんな作業なのでしょう?
宮尾 台本にないところで起こったことや、前のシーンからの時間経過を一つひとつ丁寧に掘り下げて、疑問をなくしていく作業です。『呪いの子』の台本は時系列どおりに進行しないので、これはとても役に立ちました。俳優を始めてからいろいろな稽古に参加しましたが、毎回「“言葉のある世界”では、こういうふうに役を作っていくものなのか!」と発見があります。
宮尾さんはどのような方法で役作りをしているのか教えてください。
宮尾 自分の中から似たものを引っ張り出して参考にします。例えば僕自身に子どもはいませんが、自分が大切にしている何かへの思いはわかります。それがなければ想像力で補う。体験したことがないことでも、想像力で人を納得させられる演技ができるのはそういうことですね。そして僕はキャラクターの「感情」には自分を重ねず、その感情の理由を探します。
理由、とは?
宮尾 そのシーンでは、なぜその感情が必要なのか、という理由です。もちろん僕の感情をそのまま使う方法もなくはない。でも大切なのは、『呪いの子』で僕が演じるストーリーは僕のものではない、ということです。あくまでもそれはドラコのストーリーであり、彼の人生なのだ、ということなんです。

右から:ハリー(藤原竜也)、ジニー(馬渕英里何)、ロン(竪山隼太)、ドラコ(宮尾俊太郎)、ハーマイオニー(早霧せいな) ©宮川舞子

ドラコを演じるうえでとくに意識していることはありますか?
宮尾 「原作がある」ということですね。少なくともドラコについては、僕個人を出しすぎてはいけないというか、それは許されないと感じています。自分の個性を生かして新たなキャラクター作りに挑戦する方もいるとは思うのですが、僕はどの舞台もキャラクターとして生きていることが重要だと思います。
「キャラクターの感情には理由がある」ということですが、その感情を言葉ではなく動きだけで表現することもありますか? たとえばドラコが親子の距離を縮めていくようすは、スコーピウスへの触れ方の変化で表現しているように感じました。最後、息子の肩に指を一本一本添えていき、ギュッと抱きしめる場面は印象的でした。
宮尾 それは良かったです。そこは演出家の指示ではなく、僕が考えました。ドラコとしてスコーピウスを見守っているうちに、自然とそういう動きになっていきました。

左から:宮尾俊太郎、藤原竜也 ©渡部孝弘

バレエと演劇の両方に関わっている宮尾さんから見て、その2つが大きく違うと感じる部分はどこでしょうか。
宮尾 感情表現の方法ですね。バレエは人間の感情という根源的なものを、究極までシンプルにそぎ落としたかたちで、ストレートに伝えます。いっぽう演劇は、感情を表現するまでの間に思考というワンクッションを挟むんです。湧き上がった感情を、いったん頭で考えて、言葉に変換するわけですから。日常、人って頭で考えてからものを言いますよね。その意味では、演劇のほうが表現としてはよりリアルに近いのかもしれない。『呪いの子』はファンタジーとリアリズムのバランスがとてもいいので、きっとバレエファンの方もお楽しみいただけると思います。
最後に「ハリー・ポッター」シリーズにちなんだ質問をさせてください。舞台となるホグワーツ魔法魔術学校には「グリフィンドール」「スリザリン」「レイブンクロー」「ハッフルパフ」と4つの寮があります。もし宮尾さんご自身がホグワーツ魔法魔術学校に入学するとなったら、どの寮になると思いますか?
宮尾 それは寮の決定権をもつ“組み分け帽子”に直接聞いて欲しいです(笑)。じつは同じ質問を、最初のリハーサルで演出家にも聞かれたんですよ。僕は純血のマグル(魔力を持っていない人間)だから、ホグワーツには入学できそうにありませんが、今はドラコの人生を生きているから、ぜひドラコやスコーピウスと同じ、スリザリンを選んでほしいですね。

©HIRO KIMURA

宮尾 俊太郎  Shuntaro Miyao
北海道生まれ。14歳よりバレエを始める。2001年カンヌ・ロゼラハイタワー(フランス)に留学を経て、2004年Kバレエカンパニーに入団。多くの作品で主演を務め、15年プリンシパルに昇格。20年よりゲストアーティスト。現在はダンサー・振付家として活躍するいっぽう、俳優として舞台やドラマなど活動の幅を広げている。21年のNHKBSドラマ『カンパニー~逆転のスワン~』ではバレエダンサーの高野悠役を務めた。ミュージカルの出演も多く、主な作品に13年『ロミオ&ジュリエット』、18年『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』、21年『マタ・ハリ』『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』などがある。

公演情報

舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』

©宮川舞子

オリジナルストーリー:J.K.ローリング
脚本・オリジナルストーリー:ジャック・ソーン
演出・オリジナルストーリー:ジョン・ティファニー
振付・ステージング:スティーヴン・ホゲット
美術:クリスティーン・ジョーンズ
衣裳:カトリーナ・リンゼイ
音楽&編曲:イモージェン・ヒープ
照明:ニール・オースティン
音響:ギャレス・フライ
イリュージョン&マジック:ジェイミー・ハリソン

キャストスケジュールはこちら

※上演時間 上演時間 3時間40分(休憩含む)

【公演日程】
プレビュー公演:2022年6月16日(木)~7月7日(木)
本公演:2022年8月8日(金)~ロングラン
※2023年1月~5月公演は2022年7月販売開始

会場:TBS赤坂ACTシアター

2023年5月公演チケットまで発売中

【詳細・問合せ】
ホリプロチケットセンター TEL:03-3490-4949
◎舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』特設ページはこちら

※公演については必ず主催者サイトをご確認ください。

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