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【来日直前企画】「NDTとはいかなるカンパニーなのか」ポール・ライトフット芸術監督インタビュー

阿部さや子 Sayako ABE

Shoot the Moon(振付:ソル・レオン、ポール・ライトフット) ©️Rahi Rezvani

NDT、ネザーランド・ダンス・シアター。

その名を聞けば、われわれバレエファンはやはり、まずは振付家イリ・キリアンやその作品群を思い起こしてしまうのではないでしょうか。

しかし、その記憶が鮮やかに更新される日が、間もなくやってきます。

6月28日から始まる、NDT来日公演。
彼らがカンパニーとして日本にやってくるのは、2006年以来、じつに13年ぶりだそう。

現在のNDTを率いているのはポール・ライトフット芸術監督。
彼は1980年代後半からNDTのダンサー兼振付家として活躍し、13年前の来日時には自身の作品「Signing Off」も上演。そして2011年、現職に就任しました。

〈バレエチャンネル〉では、このたびの来日公演に先駆けて行われたライトフット芸術監督へのロングインタビューを特別掲載します。

“NDT”とはいかなるカンパニーなのか?
この13年の間に、何が変わり、何が変わらなかったのか?
来日公演で上演する自身の振付作品「Shoot the Moon」「Singulière Odyssée」とは、どのような作品なのか?

――NDTのことのみならず、ダンスやダンスカンパニーの現在と未来、そして“観客”である私たち自身についても考えさせられるインタビュー。
聞き手は、本公演を主催する愛知県芸術劇場のシニアプロデューサー、唐津絵理さんです。

 

ポール・ライトフット Paul Lightfoot

©Rahi Rezvani

芸術監督/専任振付家

英国出身。ロンドンの英国バレエ学校で研鑽を積む。1985年にNDTⅡに入団、87年より2008年まで、NDTⅠにてダンサーとして活躍。当時の芸術監督だったイリ・キリアンの下で振付家の勉強を始める。02年からソル・レオンと共にNDTの専任振付家となる。11年よりNDTの芸術監督を務める。94年ルーカス・ホビング賞、Stichting Dansersfonds’79奨励賞、2002年VSCDのダンス賞金賞受賞など受賞歴多数。19年4月にはパリ・オペラ座バレエ団への振付を行った。

NDTはこうして運営されている

世界中に沢山のバレエ団やカンパニーがある中で、NDTは設立以来、コンテンポラリーの演目のみを上演し続けている非常に先鋭的なバレエ団です。今年設立60年を迎えるということですが、60年にわたって独自の道を進んできたNDTというカンパニーにおいて、ポールさんが現在の芸術監督として果たしている役割について教えてください。
私は2011年からこの役職についており、現在8年目です。芸術監督として芸術的な最終決断をする責任があり、カンパニーを代表していますが、この役職だけではなく、ソル・レオンと共に専属振付家(ハウス・コリオグラファー)という役割も担っています。

ソル・レオン ©️Rahi Rezvani

ソルはアーティスティック・アドバイザーの役割も果たしています。さらにキュレーター兼アーティスティック・プロデューサーのアンダーシュ・ヘルストロン(Anders Hellström)からも同様に多くのサポートを受けています。この二人の存在がないと、私は芸術面での業務を全うすることができません。
通常のカンパニーでは代表は1名ですが、NDTでは常時2名のディレクターを置く体制である点が特徴的です。創設以来ずっと、財務などの実務面のディレクター(マネージング・ディレクター)と、芸術面のディレクター(アーティスティック・ディレクター/芸術監督)の2名体制で運営しています。権限は同等で、どちらかが上に立つことはありません。お互いの仕事を尊重して仕事を進めています。
カンパニーの組織図を見ると、役割がかなり詳細に分かれていることに気がつきます。各々が自らの仕事を集中して行うことができる反面、調整などが難しくなるのではないでしょうか? あらゆる決定は、基本的に“話し合い”によってなされていくのでしょうか?
全てを話し合うわけでなく、私の関与なしに決められることもあります。決断については報告を受けますが、内容によっては私は会議に参加せず、決断を任せている面もあります。マネージング・ディレクターであるジャニーン・ダイクマイヤーも同様です。芸術的な決断は、ジャニーン抜きで私がしますが、彼女は私を信頼して任せてくれています。そうでないと、会議ばかりのカンパニーになってしまいますからね。会議は最低限に抑え、お互いの業務領域に信頼を置き、各自が責任を果たしています。これは簡単ではありませんが、この関係性がカンパニーの美しさでもあるのです。ビジネスばかりを追求するのではなく、創作ばかりに没頭するのでもなく、理論的な部分と“狂気”の部分のバランスが取れる構造になっています。
カンパニー創立以来のシステムということですが、つまりNDTの代名詞とも言えるイリ・キリアン時代そうだったということでしょうか? 日本では、彼が全面的に指揮を執る“キリアン・カンパニー”に見えていたかもしれません。
創設時はベンジャミン・ハルカヴィ(Benjamin Harkarvy)が芸術監督で、カレル・バーニー(Carel Birnie)がマネージング・ディレクターでした。イリ・キリアンが芸術監督となった時も同じです。バーニーはマネージング・ディレクターを長年務め、キリアンと密接に関わりながら仕事をしていました。
私が芸術監督に就任した際、理事会は体制を変更することを考えていましたが、最終的には既存の体制が継続されることになりました。これは子育てをする際に、二人の親が必要であるようなものです。一方が強く、もう一方が弱いと成立しません。両者の力関係が同等で並立しているからこそ、健全な運営に繋がるのです。このカンパニー独自の化学反応は、この体制によって引き起こすことができています。

NDTを創る振付家たち

現在のNDTでは、ディレクターや常任振付家以外に、いま世界的に最も注目度の高い2人のアソシエイト・コリオグラファーが置かれていますね。
現在はクリスタル・パイトマルコ・ゲッケがアソシエイト・コリオグラファーです。今回は、二人の作品も日本で発表できるので、とても嬉しいです。
今回は、いまのNDTに最も深く関わる4人の振付家の作品を持っていけるので、日本の観客のみなさんに、現在のカンパニーを知ってもらえるいい機会になります。13年前の日本公演から、カンパニーは大きく変化しました。いまやマルコとクリスタルは2人とも、現在のダンス界でも極めて重要な存在です。NDTだけでなく、独立したコリオグラファーとして世界に繋がっています。

クリスタル・パイト ©️Michael Slobodian

マルコ・ゲッケ ©️Regina Brocke

おっしゃる通り、クリスタルとマルコはいま非常に注目されている振付家ですが、NDTではかなり早い段階から彼らの才能に注目されていましたね。NDTで素晴らしいダンサーとのクリエイションのチャンスを得たことにより、彼らの才能が開花したような印象を受けています。
特にクリスタルに関しては、彼女が本格的な舞踊作品を創作したのはNDTが初めてでした。2006年にここで創作を始めた時にはまだ無名で、最初は実験的な少人数の作品を創作しましたが、あっという間に彼女独自のスタイルを築き始めました。
マルコは振付家として少なくとも20年の経験があります。シュツットガルト・バレエのダンサーであった当時から作品を創っており、非常に多作な振付家です。
クリスタルは、数少ない作品を大切に創作するタイプ。一方でマルコは量産型で、現在45歳くらいだと思いますが、すでに72作品を創っています。その年齢にしてこの数はとても多いと思います。ソルと私自身は30年間で、60作品を創作しました。私たちは2人で創っていますが、マルコは1人で、しかも私たちより短い期間で、72作品を創っているのです。短期間で次々と作品を創り上げるタイプですが、もちろん質も大切にしています。マルコとクリスタルは、2人ともとても重要な人物です。そしてそれぞれが異なるので、カンパニーに多様性をもたらしてくれています。

The Statement(振付:クリスタル・パイト) © Rahi Rezvani

芸術監督であるポールさんは、マルコとクリスタルのどこに才能を見出したのでしょうか?
クリスタルはすでにカンパニーの一員でした。彼女は発見したのではなく、すでに存在していたのです。芸術監督として重要なのは、有名か無名かではなく、個人そのものを見て採用することです。個人というのは、外的な部分で様々な振付家の影響は受けているでしょうが、コピーをするような人は採用しません。クリスタルもマルコも、幕が開いて30秒もすればそれが誰の作品なのか明確に認識できるような、くっきりとした個性を持っています。英語や日本語、フランス語などという言語のように、どんな舞踊言語を使っているか、独自の振付スタイルがあるのですぐに分かります。それが有名なスターであろうが、無名だろうが構いません。オリジナリティが重要です。画家、作家、作曲家、振付家、どんなクリエイターであれ、作品にはアーティストから出てくる根拠、裏付けが必要です。だからこそ個人を見て、真の独創性かを判断します。

Woke up Blind(振付・マルコ・ゲッケ) © Rahi Rezvani

NDTとはどのようなカンパニーか?

NDTは、カンパニーの内部で新作を創り、それをレパートリーとして再演しているカンパニーといってよいのでしょうか。
NDTは新作を創り続けるカンパニーで、コアビジネスは創作活動です。レパートリーの再演というと、まるで創作に力を入れていないような受け取られ方をすることもありますが、再演が目的なのではなく、どのような活動をしているかを紹介するために再演をしています。私たちは世界各国で公演をしていますが、それはすべて独創性に繋がっています。
“毎年何作品を創る”というノルマはありますか?
独自の目標は立てていますよ。私たちは公的な助成金を受けていて、4年に1度申請をしているので、芸術面からもどのくらいの創作性を持たなければならないか、きちんと計画性を持って実行しています。具体的には、NDT1とNDT2を合わせて、1シーズンあたり約10の新作を発表します。
そうした創作の機会にどの振付家を採用するかは、どのように決めているのでしょうか? どのようにして新たな若手の振付家を探していますか?
私が決めています。振付家を探す際に関しては、芸術班では特にアンダーシュ・ヘルストロンが力になってくれています。忙しいので大変ですが、業界は狭い上、良い振付家となると数が絞られます。好みや趣味に関しては人それぞれであり、“良し悪し”というのは一概に言い切れませんが、どうしても私の個人的な趣味が介入している場合もあるでしょう。芸術監督としては慎重になるべきところですが、あまりそれを考えすぎないようにもしています。考えすぎると、怖くなってしまうからです。しかし、だからこそ、私は芸術監督という役割を任されたのだと思います。私は日々の興味に突き動かされて進むタイプの人間で、あまり長期的に物事を考える方ではありません。芸術面のディレクターというのは、瞬間瞬間を生きる人間の方が向いているという面があります。
NDTは、ヨーロッパで初めて、マース・カニングハムやマーサ・グラハムなどの現代的なアメリカのモダンダンスを学べる場所として機能していたと伺っています。その後も新たな振付家にどんどん新作を委嘱していますね。
過去にはマース・カニングハムやホセ・リモン、少し前ではピナ・バウシュやウィリアム・フォーサイスなどの振付家とも共同作業を行いました。NDTは20年間の長きにわたりキリアンが率いていたので、キリアンのカンパニーだと思われがちですが、それはキリアンの意図とは違いました。NDTが名声を勝ち得た真の理由は、ここが様々なことができる、様々なものを取り揃えているカンパニーだからです。もっと言えば、キリアンこそが、偏ったことを打ち砕くために闘った初めての人物でした。キリアンはカンパニーのために作品を創ったことで有名になりましたが、自分のカンパニーを創ろうとしたわけではありません。
NDTが強化されたのは、多様なスタイルの作品を踊らなければならない状況になっていたためで、ダンサーたちが求められることに必死に食らいついていくうちに、能力が後からついてきたのだと思います。言い方は悪いのですが、ダンサーは強靭な機械になることを求められていた。そういう状況下にあったので、他のコンテンポラリー・ダンス・カンパニーと差別化を図ることができたのです。そしてこうした歴史を持つからこそ、私たちはこれからも、“世界で何が起こっているかを知るためにNDTを観る”というようなカンパニーでありたいと思っています。
ポールさんが芸術監督に就任して以降、過去から変わらず継続しているものと、ご自身の独自性として新たに打ち出してきたものがあれば教えてください。
伝統や過去は、それを使いはしますが、そこから学び前進することが大切です。いままでと違うカンパニーにしたいとは思っていませんが、過去に縛られるのではなく、過去を使うことが重要です。ただ、これだけの名声が打ち立てられていくと、崖から飛び降りるようなことは避けたくなります。リスクだと感じていても、実際はそれほど危険でもない場合が多いのですが。最近、少し視野が狭まってきている傾向を感じることがあります。しかし留まってはいけません。この意志が自分にとって前に進む原動力になっています。
また、私は常に名称にこだわりを持っています。私たちは“ダンス・シアター”という名称を冠した団体なので、そこには2つの要素があります。動き・ダンスを核とする身体性が主ではありますが、演劇性も必要。その2つを備えた人材を探しています。例えば、マルコはピュアな身体性を追求した作品を作りますが、その中に演劇性が存在します。

The Statement(振付:クリスタル・パイト) © Rahi Rezvani

Woke up Blind(振付:マルコ・ゲッケ)© Rahi Rezvani

なぜ、“13年ぶり”なのか

13年ぶりの来日になりますが、ポールさんは日本がとても好きだと聞いています。
ええ、日本は大好きです。私が踊っていた頃は経済状況の良い時代だったので、多くの文化交流が行われ、日本ツアーも長く行われて、私もそれに参加していました。初めてのツアーは7週間。11都市での公演がありました。1990年、1993年、1996年。この時期はカンパニーにとっても本当に大切な時期でした。日本との関係を築く機会になりました。今回の来日公演は本当に久しぶりなので、故郷に帰るようにも思えます。
ただ、この13年の間に経済状況はガラリと変わり、観客のメンタリティも変化したことでしょう。私たちの活動に対する興味も薄れてきてしまっているかもしれません。それは悲しく感じます。それでも私は、個人的な野心として、いつか日本に戻り公演を行うことを強く願ってきました。現在はスマホを通して何でも見ることができますが、実際に劇場に足を運び、その場で舞台を観ることはまた全く違う体験です。もしかしたら、今回のNDT公演が初めて生で観るダンスになるという人もいるかもしれない。私たちのカンパニーが、そうした場として存在しなくてはいけないと思っています。ですから今回カンパニーを日本に連れて行けることに、本当に感謝しています。また、将来に向けて関係性を構築できる機会だとも認識しています。いまの若い世代のダンサーや日本の観客が、より多くのことを発見することもでき、双方が成長できます。そのためにも第一印象が大切だと思います。
ですから、いま、最高のものをお見せできるように準備をしています。成功させることだけでなく、どう人々を触発できるかが重要です。日本で発表する4作品は、別の組み合わせではありますが、他の国でも公演をしました。日本のお客様にも感じてもらえることがあると思います。
NDTは、日本だけでなく、アジアやニューヨーク等での公演も、ここしばらくありませんでしたね。それは“NDT=キリアン”というイメージの影響が少なからずあったからだと思いますか?
日本においては、それは大きな要因だと思います。日本では「このバレエ団といえばこの人・この作品」というように、そのカンパニーを代表する何かが見えないと受け入れられにくい、という面があるからです。スターが不在では受け入れられにくい。それは素敵なことでもありますが、危険でもあります。
私たちのようなカンパニーは、スターを創るわけではありません。しかしこれまで日本で公演をした際は、ほとんどがキリアン作品でした。日本の観客は、キリアンが最高級の振付家だと認識していたところもあるし、それを見たいという観客のニーズもありました。キリアンがいまでも話題に上がるのは素晴らしいことですが、カンパニーを辞任して18年が経っています。大きな存在がなくなったことは、私たちにとっても困難ではありましたが、キリアンこそが、過去にこだわり新たなもの・未知のものへ手を伸ばそうとしない状況を打破しようとした最初の人物です。だからこそ、彼は素晴らしいのです。
NDTでは常に比喩を使います。NDTは常に「流れる川」であるべきです。いつまでも“キリアン・カンパニー”として、時間を止めてはいけません。キリアンは自身の在任中、このままではNDTが「大きな湖」になってしまう危険性があると見抜いていました。私たちはみんな、キリアンがずっと芸術監督でいたいとは思っていないと分かっていました。そしてだからこそ、キリアンは私やソルのような人材育成にも注力しました。ナチョ・ドゥアト、ヨハン・インガーなどの人材をカンパニーから輩出しています。創造性の高い人材を育成しました。

今回の上演作品について

今回の来日公演にあたり、どの作品を選ぶかとても悩みました。久しぶりだからこそ、いまのNDTを代表する振付家の作品をぜひ日本で見て欲しいと思いました。個別の作品の魅力だけではなく、一夜のパフォーマンスとしての組み合わせ、テクニカル的な要素も重要でした。ポールさんとも何度も議論を重ねて選んだのが、今回上演する4つの作品です。
特にポールさんとソル・レオンによる振付作品「Shoot the Moon」は、一番最初に決めた作品です。ダンサーの身体と空間構成の親密性、音楽との親和性、さらにライブでの映像など、大変完成度の高い総合芸術作品で、ぜひとも日本で上演して、ダンス界のみならず、多様な世界の方に見て欲しいと思いました。さらに「Singulière Odyssée」 についてはポールさんからの提案でしたね。「Shoot the Moon」は3組のカップルが出てくる内向的な作品、一方で「Singulière Odyssée」は大勢のアンサンブルが展開される非常にオープンな作品で、とても対照的です。

Shoot the Moon(振付:ソル・レオン、ポール・ライトフット) © Rahi Rezvani

Singulière Odyssée(振付:ソル・レオン、ポール・ライトフット)©️Rahi Rezvani

ソルと私の2つの作品は、どちらも演劇性が高く、視覚的にも訴えるものが大きくなっていますが、非常に対照的です。
「Singulière Odyssée」は広大なスペースで、鉄道の駅からインスピレーションを得ました。ある時、私はスイス国境のバーゼルの駅で、待合室に座っていました。そこは国境駅ですから、ドイツ行き、フランス行き、スイス行きなど様々な列車が交差する。私はフランスに向かう途中でした。EU統一前のことでしたから、パスポートを見せ、入国手続きをしなければなりませんでした。その時に待合室で待っていた経験が「Singulière Odyssée」の元となっています。人々が行き交う中で、移民などに無情さを感じました。戦争中、どれだけの人々が同じようにここで時間を費やしたのかも想像しました。スイスは安全な国であるため、危険から逃れるために来る人もいたでしょう。難民問題もある時期でした。
ソルには政治的にはならないようにと厳しく言われ、詩的な要素を見出しました。ソルは舞台設定は気に入っていたようでしたが、含まれるメッセージは具体的な物語性を持つのではなく、ポジティブなものであって欲しいと言っていました。作品が、決まった物語を提示するのではない形を望みました。「Singulière Odyssée」は、Exceptional Journey (例外的な旅)という意味で、タイトルはフランス語、Odysséeは旅。サングリエールは例外的という意味です。Singular (単一の)journey(旅)、つまり、「ある特別な旅」とも英訳されます。
一方、「Shoot the Moon」は演劇の舞台美術のようでもあるし、閉所恐怖症的です。そしてテーマは、もっと具体的な関係性の中での孤立、孤独です。こちらは内向的であるのに対し「Singulière Odyssée」は外向的です。共に感情的な作品です。日本のお客様はそのような作品を好んでくれると思っていますし、また好奇心を持ってもらえるでしょう。
「Shoot the Moon」のコンセプトは何でしょうか?
それは観に来ていただかなくてはいけませんね。これがカンパニーの美しさでもあります。観客それぞれの解釈が面白いのです。観客は私の考えを知ろうとするべきではない。「Shoot the Moon」はいい例です。よく、観終わった観客から「あれはこういうことだと思ったが、どうなんでしょう?」と聞かれることがありますが、それは観た人の解釈によります。ご自身のためにも知らない方が良いのです。作品には、私がどう思っているか以上の深みがあります
孤独や別離は2人が一緒にいても感じることであり、とても興味深いコンセプトです。悲しさが聞こえてくるような、詩的な作品です。ですが、それは必ずしも語られなくても良いことです。詩歌は様々なところに連れて行ってくれる美しいもので、具体的な説明を必要としません。情感にもたらされる余白をお楽しみください。

公演情報

愛知公演
会場:愛知県芸術劇場 大ホール(愛知芸術文化センター 2階)
日時:2019年6月28日(金)14:00、6月29日(土)14:00
神奈川公演
会場:神奈川県民ホール 大ホール
日時:2019年7月5日(金)19:00、7月6日(土)14:00
上演作品

1.「Singulière Odyssée
サンギュリエール・オディセ
振付:ソル・レオン、ポール・ライトフット、音楽:マックス・リヒター

2.「The Statement
ザ・ステイトメント
振付:クリスタル・パイト、音楽:オーエン・ベルトン

3.「Woke up Blind
ウォーク・アップ・ブラインド
振付:マルコ・ゲッケ、音楽:ジェフ・バックリィ

4.「Shoot the Moon
シュート・ザ・ムーン
振付:ソル・レオン、ポール・ライトフット、音楽:フィリップ・グラス

詳細 http://taci.dance/ndt/

 

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