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【動画レポート】ミュージカル「ミス・サイゴン」製作発表~市村正親「”これで最後”とは言いません!」

若松 圭子 Keiko WAKAMATSU

動画撮影・編集/写真:Ballet Channel

『ミス・サイゴン』はベトナム戦争末期のサイゴンを舞台に、ベトナム人の少女キムとアメリカ兵のクリスの儚い愛と別れ、そして再会を描いた作品。日本初演は1992年、以来ここまでの通算上演回数は1463回にものぼる大ヒットミュージカルだ。

2020年に予定されていた公演はコロナ禍のため稽古半ばで中止となったものの、本年7月~11月に『ミス・サイゴン』日本初演30周年記念公演が決定! 東京の帝国劇場を皮切りに、大阪、愛知、長野、北海道、富山、福岡、静岡、埼玉と全国の劇場を回る。

2022年2月7日に東京會舘で開催された製作発表には、エンジニア役の市村正親、駒田一、伊礼彼方、東山義久と、キム役の高畑充希、昆夏美、屋比久知奈の計7名が登壇。感染防止対策のため、登壇者は「30/Miss Saigon」とプリントされたオリジナルマスクを着けての会見となった。

エンジニア役 右から:市村正親、駒田一、伊礼彼方、東山義久

キム役 左から:高畑充希、昆夏美、屋比久知奈

エンジニア役キャストの挨拶

エンジニア(通称)はフランス系のベトナム人で、サイゴンのキャバレーを経営している男、という役どころ。「アメリカン・ドリーム」を追い求め、キャバレーで知り合うアメリカ兵の助けを得てアメリカへ渡りたいと思っている。『ミス・サイゴン』のもう一人の主役でもある。

エンジニア役:市村正親(いちむら・まさちか)

市村「傾斜舞台だった演出がフラットに変わったので、半永久的にエンジニアをやれる。車椅子になってもしがみつく。この役は離すものか! これこそエンジニアの精神です」

初演を振り返り、「30年前、僕は44歳で脂ののったいい役者だったんです。今はすっかり枯れきっておりますが……誰か『そんなことない』って言わなきゃ!」と市村。
伊礼がすかさず「そんなことない!」と応えて会場は笑いに包まれた。
過去の上演時に幾度か「市村正親のエンジニア役はこれで最後」と銘打たれてきた市村だが、「僕は今回も“これが最後”とは言いません」ときっぱり。「足腰が立つ限りエンジニアをやっていきたいと思っています」と宣言した。

エンジニア役:駒田一(こまだ・はじめ)

駒田「僕は市村さんにはなれない。僕だけの“何か”を作らなきゃいけないと教えていただいています。すごい先輩であり、師匠であり、そして仲間です」

『ミス・サイゴン』を観て「絶対にエンジニア役を演じたい!」と熱望したものの「オーディションに落ちまくって、三度目の正直でやっと受かった」という駒田。同役を演じるのは2014年・2016年に続き今回が3回目。「大先輩の市村さんは本当にお元気で、僕はその背中をずっと見てきました。(2020年の時は)全体を見回しながら、もっとチャレンジできると思っていた時に公演中止になってしまった。今回はその時のメンバーがほぼ再集結。みんなで作り上げていかなければならないなと。今、背筋がピシっとなっております!」

エンジニア役:伊礼彼方(いれい・かなた)

伊礼「僕はいま、市村さんが初演でエンジニアを演じた時とちょうど同じ年代。もし市村さんが本当に車椅子に乗って登場する時には、それを押させていただきたい」

2020年公演に初めてエンジニア役を演じる予定だった伊礼。当時の製作会見でエンジニア役のナンバー「アメリカン・ドリーム」を市村の隣で歌い、感動したという。「今回も(テレビ報道用の収録のために)一緒に歌わせていただいて、市村さんの厚みと包容力を感じて、まだ始まっていないのに、ちょっとウルウルしちゃいました。前回は稽古場でお会いする前に中止になってしまったので、今回は大先輩の背中を存分に見せていただきたいと思っています」。

エンジニア役:東山義久(ひがしやま・よしひさ)

東山「僕は舞台『ニジンスキー』でも市村さんと同じ役を演じました。市村さんのニジンスキーは狂気を宿していました」

東山も2020年初参加の予定だったメンバー。「エンジニア役に決まって夢のようなスタートだったのに、本当に夢のように終わってしまった。心にぽっかり穴が開いてしまったようでした」と当時を振り返った。「日本初演30周年という素敵な機会に公演に参加できることを感謝しています。市村さんを筆頭に、すべてのキャストとスタッフのみなさんで一丸となって、千秋楽まで走っていきたいと思います」

キム役キャストによる挨拶

『ミス・サイゴン』のヒロインであるベトナム人のキムは17歳。エンジニアの営むキャバレーで働くことになり、アメリカ兵のクリスと出会う。戦火のなか永遠の愛を誓うも、サイゴン陥落により離ればなれに。のちにクリスとの間に生まれた息子タムを抱いて歌うナンバー「命をあげよう」は、キムの決意と愛を感じさせる名曲。

キム役:高畑充希(たかはた・みつき)

高畑「市村さんはいつもポジティブな言葉をかけてくれる。一緒に舞台に立っているとワクワクします。親しくさせていただいていて、メールをすると直ぐに返してくれるんですよ」

2020年のオーディションでキム役に選ばれていた高畑。その公演が中止になった時のことを思い返し「せっかくこんなに楽しく稽古が始まったのに、バラバラになっちゃうのか……もっとこの稽古場にいたいな、と思いました」。昨年の12月で30歳を迎えたことに触れ、「30歳になったことだし、パワフルな公演にしたいなと思ってます。みなさんと一緒に楽しく稽古して、いい舞台にしたい。頑張ります」と笑顔を見せた。

キム役:昆夏美(こん・なつみ)

昆「初めてキムを演じた時、市村さんから、キムが息子を『タム!』と呼ぶセリフにはいろいろな表現があるのだと教わりました」。市村「あのひと言が『ミス・サイゴン』のテーマを背負っているんだよね」

2014年からキム役で参加している昆は『ミス・サイゴン』の長年のファンで、帝国劇場の客席から市村のエンジニアを鑑賞していたという。「2020年の時は、稽古場でキム役を演じるメンバーそれぞれの役づくりが垣間見えたところで中止になってしまって残念でした。でもその時の稽古を思い出し、より深めながらそれぞれのキム役を作って、お客様に楽しんでいただける作品にしたいと思います」。

キム役:屋比久知奈(やびく・ともな)

屋比久「『屋根の上のバイオリン弾き』では、市村さんと父娘を演じました。今度はまったく違う関係性なので、演じるのが楽しみです」

「30周年という節目に、キムを演じるチャンスをもう一度いただけたのが本当に嬉しい」と声を弾ませる屋比久も、2020年に初のキム役に挑戦する予定だったメンバー。「2年前、わくわくしながら想像したキム役への思いを、全部形にしたいと思っています。真摯に役に向き合って、『ミス・サイゴン』を作り上げていく過程に今からわくわくしています」。

記者による質疑応答

※読みやすさのために一部編集しています

30年間連続出演の「ミスター・サイゴン」市村さんが『ミス・サイゴン』出演の歴史の中で印象に残っている思い出やエピソードベスト3を聞かせてください。
市村 初演当初は、劇場の規模の関係で帝国劇場でしか上演できないと言われて、次の予定がなかなか立ちませんでした。1つ目はその再演が決定した時ですね。帝国劇場と同じくらいの規模をもった九州の博多座で上演が決まったときは本当に嬉しかったです。例えるなら心臓が口から飛び出るぐらい。
2つ目は演出が新しくなって、いろいろな劇場で上演できるようになった時。広島の郵便貯金ホールでの公演をすごく覚えています。『ミス・サイゴン』の冒頭はヘリコプターの音で始まるのですが、広島の地でヘリコプターの音が鳴った瞬間は震えましたね。ああ、新演出になって良かった! と感じました。
そして3つ目。30年前は週に1回の休演日にマッサージに行ってケアをしていたんですが、今は週に3回行かないと身体がもたなくなってきたことです(笑)。
観客としても作品のファンだったという駒田さんと昆さんが思う『ミス・サイゴン』の魅力はどこでしょうか。
駒田 個人的にはもう何といっても楽曲のすばらしさだと思うのです。先ほどキム役のお三方が(歌唱披露の収録で)「命をあげよう」を歌ったときも涙が出てきちゃって。「アメリカン・ドリーム」を歌っていても、泣く曲じゃないのにグッとくるんです。

 当時ミュージカルファンとして観た時は衝撃的でした。1幕が終わったあとの休憩時間には、トイレに行きたいのに立てなかったくらい。作品のもつパワーがお客様を取り囲むような作品だと思います。

新キャストの伊礼さん、東山さん、高畑さん、屋比久さんに伺います。自分が演じるキャラクターの魅力的なところ、好きだなと思う部分は?
伊礼 エンジニアの人間くさいところが好きですね。いやらしさや貪欲さなど表に出るイメージがありますが、僕には彼がとても寂しいひとりぼっちの男の子みたいにも感じられるんですね。そこがすごく魅力的な役。もっと掘り下げていきたいです。

東山 夢を掴む、もぎ取るエネルギーが、エンジニアの最大の魅力だと思います。彼の人間力には惹かれるものがあるし、演じるうえでも探求していきたい。市村さん、駒田さん、伊礼さんとはまた違う僕のエンジニアを探求していきたいと思っています。

高畑 2年前、自分なりに考えたキムは、青い炎や静かな湖の中にボコボコと燃えるマグマが隠れている、そんなイメージでした。このイメージが、今回の稽古場でみなさんと話すなかで、最後にどういう人物像へと変化していくかが楽しみです。

屋比久 歴史を勉強していくうちに、彼女のいろんな層が見えてきました。ただの純愛物語としてではなくて、あの時代を生きたひとりの女性がしなければならなかった選択。キムに精一杯向き合って、強さも弱さも、美しいところも汚いところも、全部表現したいです。

公演情報

ミュージカル『ミス・サイゴン』

オリジナル・プロダクション製作:キャメロン・マッキントッシュ
作:アラン・ブーブリル/クロード=ミッシェル・シェーンベルク
音楽:クロード=ミッシェル・シェーンベルク
演出:ローレンス・コナー
歌詞:リチャード・モルトビー・ジュニア/アラン・ブーブリル

製作:東宝株式会社

【東京公演】
2022年7月29日(金)~8月31日(水)
※プレビュー公演:2022年7月24日(日)~7月28日(木)
会場:帝国劇場

【全国公演】
※大阪公演
2022年9月9日(金)~9月19日(月)
会場:梅田芸術劇場 メインホール

※愛知公演
2022年9月23日(金)~9月26日(月)
会場:愛知県芸術劇場 大ホール

※長野公演
2022年9月30日(金)~10月2日(日)
会場:まつもと市民芸術館

※北海道公演
2022年10月7日(金)~10月10日(月)
会場:札幌文化芸術劇場 hitaru

※富山公演
2022年10月15日(土)~10月17日(月)
会場:オーバード・ホール

※福岡公演
2022年10月21日(金)~10月31日(月)
会場:博多座

※静岡公演
2022年11月4日(金)~11月6日(日)
会場:アクトシティ浜松 大ホール

※埼玉公演
2022年11月11日(金)~11月13日(日)
会場:ウェスタ川越 大ホール

【詳細・問合せ】
東宝テレザーブ TEL:03-3201-7777

◎東京公演一般前売開始:7月公演2022年5月7日(土)/8月公演2022年5月21日(土)
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◎ミュージカル『ミス・サイゴン』特設ページはこちら

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