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【歌唱披露動画&レポート】山崎育三郎「誰もが自分の原点に立ち返れる物語」~ミュージカル「ファインディング・ネバーランド」制作発表

若松 圭子 Keiko WAKAMATSU

動画撮影・編集:古川真理絵

劇作家ジェームズ・バリによる名作「ピーターパン」の誕生秘話を描いたミュージカル『ファインディング・ネバーランド』。ジョニー・デップ主演の同名映画(邦題『ネバーランド』)と、アラン・ニーによる戯曲『The Man Who Was Peter Pan』を原作に、2015年ブロードウェイで開幕した本作が、2023年5月から日本オリジナル新制作版として上演されます。演出は『ロボット・イン・ザ・ガーデン』『COLOR』などを手掛けた小山ゆうな。主演のジェームズ・バリは山崎育三郎が演じます。
2023年3月27日、東京會舘でおこなわれた歌唱披露とトークセッションの模様をレポートしました。

『ファインディング・ネバーランド』あらすじ
19世紀後半のイギリス。新作戯曲が書けず行き詰っていた劇作家ジェームズ・バリ(山崎育三郎)は、公園で4人の男の子たちを連れた未亡人のシルヴィア(濱田めぐみ)と出逢う。彼らと遊ぶうちに純粋だった昔の気持ちを思い出したバリは、ある物語を考えついて「子どもも楽しめるファンタジー作品を上演したい」と劇場に提案する。
いっぽう、父を亡くしてから純粋な心を閉ざして”大人”になろうとしていた三男のピーターは、バリと交流を深めながら、夢や希望を捨てることが大人になることではないのだと悟っていくのだった。
こうしてシルヴィアや子どもたちと一緒に空想した世界を基に『ピーターパン』の物語を完成させていくバリ。ところが、彼と子どもたちは新たな試練に直面することに……。

歌唱披露

まずは劇中のミュージカルナンバーから3曲を、バリ役の山崎育三郎、シルヴィア役の濱田めぐみ、ピーター役の小野桜介、長谷川悠大(ダブルキャスト)が披露。音楽監督兼ピアノコンダクターの小澤時史による美しいピアノ伴奏も会場を盛り上げました。

♪1「ネバーランド」(山崎育三郎・濱田めぐみ)

山崎育三郎(ジェームズ・バリ役) ©ホリプロ 撮影:宮川舞子

バリが心の拠り所として創り出した「ネバーランド」の世界をシルヴィアに語るナンバー。子守歌のようなメロディを、山崎が伸びのある声でしっとりと聴かせました。後半は濱田とのデュエット。前半と同じメロディを2人でダイナミックに歌い、バリとシルヴィアの心が通じ合う瞬間を表現しました。

♪2「行くべき場所」(濱田めぐみ)

濱田めぐみ(シルヴィア・デイヴィス役) ©ホリプロ 撮影:宮川舞子

シルヴィアのソロ「行くべき場所」は、サビのフレーズが耳に残るパワフルなナンバー。濱田は緩急を巧みに操り、抜群の歌唱力を発揮。不安を乗り越え、今を生きようと決意するまでの気持ちの変化を歌い上げました。

♪3「足元が揺れるとき」(山崎育三郎・小野桜介・長谷川悠大)

右から:山崎育三郎(バリ役)、小野桜介(ピーター役)、長谷川悠大(ピーター役) ©ホリプロ 撮影:宮川舞子

「足元が揺れるとき」はバリとピーター(小野・長谷川のダブルキャスト)が少しずつ距離を縮めていくナンバー。一音一音を大切にていねいに歌う2人のピーターと、それを受け止めるバリの父親のような温かさが滲みでて、会場はあたたかな空気に包まれました。

曲の終わりにピーターを抱きしめるバリ。山崎はトークセッションで「怖い顔をした大人たちがたくさん見ている前でよく歌い切った。緊張したね、偉かったね」と2人を称えました ©ホリプロ 撮影:宮川舞子

トークセッション

歌唱披露のあとはおもな出演者たちが登壇。まずは大人たちが作品の魅力や役柄について語りました。

左から:夢咲ねね、武田真治、山崎育三郎、濱田めぐみ、杜けあき ©ホリプロ 撮影:宮川舞子

ジェームズ・バリ:山崎育三郎(やまざき・いくさぶろう)

ミュージカルの本読みの時に涙を流したのは初めてでした。誰もが自分のストーリーのように感じられる、自分の原点に立ち返れるような物語にとても魅力を感じています。僕は木梨憲武さんや所ジョージさんのような、子ども心や遊び心を忘れない方に憧れていて、おふたりのように生きられたらいいなって思っているんです。バリも、遊び心満載で大人と子どもの境目を行ったり来たりしている人物。僕が「こんな大人になりたい」と感じられるようなバリを演じたいと思っています。

シルヴィア・デイヴィス:濱田めぐみ(はまだ・めぐみ)

お稽古場で子どもたちと演じる時は、頭で考えた嘘(の演技)はできません。今回、大人たちが自分の心の中にいる子どもの部分を、子どもたちが大人の部分をそれぞれ引き出すことで、本当に嘘のない世界を生みだせるんだと気づきました。『ファインディング・ネバーランド』には、勇気を持って自分に素直に生きることの難しさと大切さが描かれています。ぜひ一緒に物語を旅して、誰もが心の中で待ち望んでいたはずの素晴らしい世界を体験していただきたいです。

フローマン(劇場主)/フック船長:武田真治(たけだ・しんじ

本作の最大の見どころはミュージカルナンバーです。状況説明だけの曲はひとつもなくて、美しい日本語に翻訳された歌詞も、それを綴るみなさんの歌声も素晴らしくて涙してしまいます。僕は2012年のミュージカル『ピーターパン』以来、11年ぶりにフック船長を演じるんですが、今回のフックは、バリの創造性が常識を超える瞬間に現れて彼を導くダークサイドという役どころ。この登場が本当にかっこいいんです! ここも見どころとして付け加えさせてください。

メアリー・バリ(バリの妻):夢咲ねね(ゆめさき・ねね)

子どもの頃から「ピーターパン」が好きでした。この舞台に携わることで、ファンタジーの裏側にこんな実話があったんだと感動しています。メアリーはバリの奥さんで、彼が持つ子ども心を理解しようとしてもついて行くことができない。彼と対比する「大人」の立場の役を演じながら、大人になるってどういうことなんだろうと考えていて、この(俳優という)職業に就いたのは、私の根底に子ども心があったからだと気がつきました。素敵な作品に巡り合えたと思っています。

デュ・モーリエ夫人(シルヴィアの母):杜けあき(もり・けあき)

本読みではもちろん泣きましたけれど、先ほども舞台袖で子どもたちとバリさんの歌を聞いて、またひと泣きしてまいりました(笑)。愛がたくさん詰まっていて、それがさざ波のように伝わってくる作品だと感じます。人はいくつになっても成長できるというメッセージも隠れていますし、みなさまも観終えたら確実に心が洗われ、若返っているはずです。そして今回はこんなにたくさん孫がいるので(笑)、孫がいる大変さ、楽しさ、喜びも存分に経験したいと思っています。

前列左から:小山ゆうな、谷慶人、奥田奏太、武田真治、山崎育三郎、濱田めぐみ、小野桜介、長谷川悠大/後列左から:豊田侑泉、生出真太郎、夢咲ねね、杜けあき、越永健太郎、ポピエルマレック健太朗 ©ホリプロ 撮影:宮川舞子

演出:小山ゆうな(こやま・ゆうな)コメント
この作品は、それぞれに深い傷を負った人たちが毎日を生きていくために、想像力で圧倒的ファンタジーを生み出していくという、実話に基づいた物語です。新演出版では、実在していた人物一人ひとりを地に足のついた人物として描き、対照的なファンタジーの世界もしっかりと作っていきたい。2017年の招聘公演で観たオリジナルバージョン(演出:ダイアン・パウルス)は本当に素晴らしかったので、それをしっかりとリスペクトしつつ、今の私たちにできる『ファインディング・ネバーランド』を、カンパニーみんなで作っていければと思っています。

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続いて、シルヴィアの4人の子どもたちを演じる8人が「楽しみなこと、がんばりたいこと」についてコメントしました。頼もしいコメントの数々に出演者をはじめ記者の大人たちはびっくり。大きな拍手がわきました。

ジョージ(長男)

●越永健太郎(こしなが・けんたろう)「舞台で楽器を弾くシーンがあるので、ダンスも芝居も楽器もがんばりたいと思います。兄弟では最年長の役なので、チームワークよくみんなをまとめ上げたいです」
●ポピエルマレック健太朗(ぽぴえる・まれっく・けんたろう)「ジョージはお兄さんだけど、まだやんちゃな部分もあって、そういうところをがんばりたいです。楽しみなことは……やっぱり初日がいちばん楽しみです!」

ジャック(次男)

●生出真太郎(おいで・しんたろう)「ジャックは4兄弟の中でどんな存在なのか(演出の)小山さんに毎日教えてもらったり、台本を見て想像しています。どんなジャックができあがるのか、自分でもとっても楽しみです」
●豊田侑泉(とよだ・うみ)「僕はこれがはじめての舞台で、一緒にがんばっているみなさんと舞台に立てるのがとても楽しみです。ちょっとだけ緊張しますが、元気いっぱい、ジャックになりきりたいです」

ピーター(三男)

●小野桜介(おの・おうすけ)「小さい頃からピーターパンが大好きだったので、この作品でピーター役を演じられることがとても嬉しいです。一生忘れられないすばらしい作品にできるようにがんばります」
●長谷川悠大(はせがわ・ゆうだい)「稽古がすごく楽しくて、だから本番も楽しみです。がんばりたいことは歌です。なぜかというと僕は歌が大好きで、歌を使ってみんなを感動させられたらいいなって思っているからです」

マイケル(四男)

●奥田奏太(おくだ・そうた)「がんばりたいことは、いっぱい拍手をもらいたいので、歌とダンスをがんばりたいです。そして(本物の)犬と一緒に舞台に出られるので、楽しみにしています」
●谷慶人(たに・けいと)「歌がいっぱいあって、それをみんなと歌えるのがとっても楽しみです。はじめての舞台なのでちょっと緊張するけどがんばります。みんな見に来てください」

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最後に、山崎は自身が12歳でミュージカルの子役として初舞台を踏んだことに触れ、「当時の脚本家は、本作の日本語歌詞を手掛けた高橋亜子さん。デビュー当時の先生と再会できたことに運命を感じています」と語りました。そして「今は25年前にミュージカルを仕事にしたいと感じたのと同じ気持ち。この作品を観ていただいたら、みなさんも大切にしているものを思い出したり、なぜ日々を生きているのかといった自分の根本を見つけてもらえると思います。2023年、もっとも泣けるミュージカルです!」と力強く締めくくりました。

公演情報

ミュージカル『ファインディング・ネバーランド』

原作:デヴィッド・マギー脚本によるミラマックス映画作品
アラン・ニーによる戯曲『The Man Who Was Peter Pan』
台本:ジェームズ・グラハム
作詞・作曲:ゲイリー・バーロウ&エリオット・ケネディ
日本版翻訳・演出:小山ゆうな
日本版訳詞:高橋亜子
※上演時間:約2時間40分(途中休憩あり)予定

 

【東京公演】
2023年5月15日(月)~6月5日(月)
会場:新国立劇場 中劇場
詳細・問合せ:ホリプロステージ

【全国公演】
※大阪公演
2023年6月9日(金)~6月12日(月)
会場:梅田芸術劇場 メインホール
詳細・問合せ:梅田芸術劇場

※久留米公演
2023年6月17日(土)~6月18日(日)
会場:久留米シティプラザ ザ・グランドホール
詳細・問合せ:インプレサリオ

※富山公演
2023年6月24日(土)~6月25日(日)
会場:オーバード・ホール
詳細・問合せ:イッセイプランニング

※名古屋公演
2023年6月30日(金)~7月1日(土)
会場:愛知県芸術劇場 大ホール
詳細・問合せ:東海テレビ放送

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