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【インタビュー】英国ロイヤル・バレエ シネマ「シンデレラ」ジェームズ・ヘイ~ロイヤル・オペラ・ハウスの舞台の上で、僕の人生は始まった

若松 圭子 Keiko WAKAMATSU

英国ロイヤル・バレエ「シンデレラ」金子扶美(シンデレラ役) ©2023 ROH. Photographed by Andrej Uspenski

ロンドンのコヴェント・ガーデンにある歌劇場「ロイヤル・オペラ・ハウス」で上演されたバレエとオペラを映画館で鑑賞できる「英国ロイヤル・バレエ&オペラ in シネマ」。臨場感のある舞台映像はもちろん、開演前や幕間にはリハーサルの特別映像や舞台裏でのスペシャル・インタビューを楽しめるのも、“映画館で観るバレエ&オペラ”ならではの魅力です。

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2026年2月13日(金)~2月19日(木)には、英国ロイヤル・バレエによる『シンデレラ』がTOHOシネマズ日本橋ほか全国の劇場で公開されます。英国ロイヤル・バレエ創立メンバーであるフレデリック・アシュトン振付による本作は、1948年の初演からバレエ団のレパートリーとして愛されてきました。今回上映される2024年の上演作品は、初演75周年を記念してリバイバルされ、舞台装置や衣裳も一新した新プロダクション。シンデレラを金子扶生、王子をウィリアム・ブレイスウェル、仙女をマヤラ・マグリ、シンデレラのふたりの義理の姉たちをベネット・ガートサイドとジェームズ・ヘイが演じています。
今回は、義理の姉たちの妹を演じているジェームズ・ヘイにインタビュー。卓越したテクニックと演技力を併せ持つヘイさんに、作品についてや役作りの秘訣、初めてロイヤル・オペラ・ハウスに立った時の思い出などを聞きました。

ジェームズ・ヘイ James Hay
8歳でロイヤル・バレエ・スクールのジュニア・アソシエイトとして入学し、11歳からはロイヤル・バレエ・スクール(ホワイト・ロッジ)で教育を受ける。在学中に2006年ヤング・ブリティッシュ・ダンサー・オブ・ザ・イヤー、2007年リン・シーモア賞、2007年ローザンヌ国際バレエコンクールプロフェッショナル賞受賞。2008年デイム・ニネット・ド・ヴァロワ最優秀卒業生賞を受賞し、英国ロイヤル・バレエに入団。2011年ファースト・アーティスト、2012年ソリスト、2015年ファースト・ソリストに昇格。

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『シンデレラ』の登場人物の中でも、シンデレラのふたりの義理の姉たちはユーモアのある役どころです。ジェームズさんが演じた義理の妹からは“現代の女の子”のような親しみやすさも感じられましたが、あなたは彼女をどんな女の子だと考えていますか?
ヘイ 面白い感想ですね。もしかしたら僕の顔立ちが華奢だからそう見えたのかもしれません。僕の頭の中の彼女のイメージは、インスタグラムなどのSNSに強く影響を受けている女の子です。モデルやインフルエンサーに憧れていて、彼女たちみたいになりたい!と表面的なことばかりを気にしています。そして彼女はまだ若く、純粋すぎるくらい純粋でもあります。恋に恋しているだけで、愛について考えられるほど大人じゃない。だから第2幕の舞踏会で求婚者に出会うと、一瞬で恋に落ちてしまうんです。「こんな美しい男の人を見るのは生まれて初めて……!」ってね(笑)。
見た目のコミカルさだけでなく、キャラクターの人間味まで感じさせる役作りの秘密を聞かせてください。どんなことを意識して取り組むのですか?
ヘイ どの役を演じる時でも、キャラクターを理解するための時間を大事にします。そのキャラクターが存在する意図、つまり物語の中でどんな役割を持つのかをつねに頭の隅に置き、そのキャラクターがどこから来て何を求めているのかを、自分なりに分析します。今回、彼女のことを理解するまでには結構な時間がかかりました。でも、わかってしまえばもう大丈夫。彼女の喜び、悲しみ、恐れ、不安といったすべての感情が、僕の中でリアルに感じられるようになる。あとは彼女の人生を一緒に生き、彼女の物語を追いかけていくだけです。

英国ロイヤル・バレエ「シンデレラ」左:ジェームズ・ヘイ ©2024 ROH. Photographed by Andrej Uspenski

あなたのお姉さん役を演じているベネット・ガートサイドさんとは、どのようなコミュニケーションを取っていますか?
ヘイ ベネットはプライベートでも仲の良い友人で、同僚としても18年ほどの長い付き合いです。お互いの信頼関係ができていますから、相手がいま何を考えているか、次に何をするかもわかるんです。互いにアイディアを出し合って話し合うこともしています。「このジョークはうまくいくかな」「ここでこんな動きをしたらどう?」「じゃあ、こちらはこのタイミングでやってみるよ」といった具合に。
最初に役作りをしたのはずいぶん前なので、細かいところはあまり覚えていないのですが、一緒にキャラクターを作り上げていく過程はすごく楽しかった。お互いにワークショップを開いて、いろいろな方法を試してみたんですよ。ベネットは僕より少し大柄で存在感がある。動きもダイナミックだから、どちらかというと控えめな僕とのあいだに対比が生まれます。この姉妹というキャラクターでは、ふたりのエネルギーの違いを効果的に活かすことができるんですよ。

英国ロイヤル・バレエ「シンデレラ」©2024 ROH. Photographed by Andrej Uspenski

妹は階段で転んでしまったり、ダンスがあまり得意ではないキャラクターです。ジェームズさんはとても高度なテクニックをお持ちなので、あえて不器用に見せるのは難しかったのでは? どうやってテクニックと演技表現のバランスを取っているのでしょうか?
ヘイ いい質問ですね。もちろんどんな作品でも、バレエのテクニックはつねに不可欠です。そして、バレエにおける演技とは全身を使って表現するものです。もしキャラクターが少し不器用なら、その要素を身体の中に取り込まなければいけません。階段で転ぶ場面も、僕はいつ起きるかを知っているので準備はできます。でも、観客にとっては「予想外」であることが重要なんですね。それがいいタイミングであれば笑いを誘い、観客はそれを“お芝居”として受け取ってくれます。ダンスについては「踊りがあまり上手ではない人」でありつつ、それを大げさに演じてみせないようにする。そのバランスが難しかったです。彼女だって失敗したら恥ずかしいし、笑ってもらいたくはないでしょうからね。やりすぎず、キャラクターにとって自然に見えることを意識しました。
音楽と一体化しているようなパフォーマンスにいつも圧倒されます。その音楽性はどうやって培われたのでしょうか。
ヘイ 僕は、舞踊とは音楽を表現するものだと考えています。とくに『シンデレラ』のようにアシュトンの振付作品の場合は。僕にとって重要なのは、音楽とどう関係を結び、それを身体でどう解釈するかです。音楽の中で、自分の身体を別の楽器として奏でているような感覚でしょうか。身体は音楽の延長線上にある。レッスンでも意識しているのはその部分ですね。テクニックに関して言うと、着地や回転などの基礎を身に付けるためにはあまり苦労しなかったんです。だからこそ基礎をしっかり磨く。これがすべての鍵になると思っています。音楽性への理解と、確かなテクニックの土台。この2つがあれば、ダンサーにとって非常に良い基盤が築けると思います。

英国ロイヤル・バレエ「シンデレラ」

ところで、ジェームズさんはロイヤル・バレエ・スクールで学び、子どもの頃からロイヤル・オペラ・ハウスの舞台に立っていましたね。初めてあの舞台に立ったときの景色を覚えていますか?
ヘイ 最初にロイヤル・オペラ・ハウスの舞台に立ったのは、1999年の劇場リニューアルの時だったと思います。当時、僕は10歳でした。その時にバレエ団員とロイヤル・バレエ・スクール生が全員で舞台に立つ機会があり、そこで僕はジュニア・アソシエイトの代表、つまり英国ロイヤル・バレエの未来を象徴する存在としてそこに立つことができました。美しい劇場のステージから客席を見渡した瞬間、ここから自分の人生が始まると感じました。ここが僕の「家」になる場所なんだ、と。10歳であの体験ができたことは本当に特別でした。そして36歳になったいまも、僕はあの時と同じ舞台に立ち、同じ客席を見ています。その変わらぬ美しさにいつも感動しながら、幸せを噛み締めています。
プロのダンサーとなったいま、過去を振り返って思うことは?
ヘイ 僕は最初からとても恵まれていたと思います。僕に「ロイヤル・バレエ・スクールのジュニア・アソシエイトを受けてみたらどう?」と勧めてくれたのは、当時習っていた地元のバレエ教室の先生でした。そこからホワイト・ロッジへ進み、8年間ロイヤル・バレエ・スクールで学んだ結果、幸運なことにバレエ団と契約することができたんです。振り返ると、とてもシンプルな道のりだったと思いますが、僕の周りにはいつも、正しい方向を示してくれる人がいた。それが本当に幸運でした。いまとなってはもう、この世界を離れる自分が想像できません。ロイヤル・オペラ・ハウスはいまでも僕の「家」であり、いつまでも大切な居場所。たとえ一時的に離れることがあっても、ロイヤル・バレエというファミリーの一員として、かならず戻って来たいと思っています。

英国ロイヤル・バレエ「シンデレラ」©2024 ROH. Photographed by Andrej Uspenski

いままでにあなたが大きな影響を受けたダンサーは?
ヘイ ヨハン・コボーです。彼は役をリアルに演じるために、人間の心の奥の複雑なところまで妥協なく徹底的に探っていく。そこに強烈な印象を受けました。彼と一緒に仕事ができ、学ぶことができたのは幸運でした。テクニックも、引退したいまもなお信じられないくらい素晴らしい。僕がエリック・ブルーン賞で『ゼンツァーノの花祭り』を踊った時に直接指導してくれたのですが、彼から学んだデンマーク・テクニック(ブルノンヴィル・スタイル)は、僕の踊りに対する視野を大きく広げてくれました。
英国ロイヤル・バレエは今年7月に来日しますね。日本ではかならず行くお気に入りの場所はありますか?
ヘイ はい、日本が大好きです。とくに好きなのは東京。赤坂には素晴らしいレストランがたくさんあってどの食事も美味しいですね。それから温泉も。日本のカルチャーの中でも、温泉は本当に特別なものだと思います。日本にいると、なぜか故郷にいるような気持ちになる。だからいるだけでも嬉しいんですよ。
日本のファンに一言メッセージをお願いします。
ヘイ このシネマをみなさんに楽しんでもらえたら嬉しいです。7月にはぜひ東京でお会いしましょう。

英国ロイヤル・バレエ「シンデレラ」

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上映情報

英国ロイヤル・バレエ&オペラ in シネマ 2025/26
ロイヤル・バレエ『シンデレラ』Cinderella

2026年2月13日(金)~2月19日(木)TOHOシネマズ 日本橋 ほか1週間限定公開
★上映館、スケジュールなど詳細は公式サイトをご確認ください

(2024年12月10日上演作品(再上映)/上映時間:2時間38分※休憩、解説+インタビューを含む)

【キャスト】
シンデレラ:金子扶生
王子:ウィリアム・ブレイスウェル
シンデレラの義理の姉妹:ベネット・ガートサイド、ジェームズ・ヘイ
シンデレラの父:トーマス・ホワイトヘッド
仙女:マヤラ・マグリ
老女に扮した仙女:オルガ・サバドック
ダンス教師:テオ・デュブレイユ
洋服屋:デニソン・アルメイダ
お針子:ハンナ・パーク、マディソン・プリッチャード
美容師:エイデン・オブライエン
宝石商:ハリソン・リー
ヴァイオリン弾き:グレイス・リー、クセニア・べレジーナ
春の精:イザベラ・ガスパリーニ
夏の精:佐々木万璃子
秋の精:ミーガン・グレース・ヒンギス
冬の精:クレア・カルヴァート
道化:五十嵐大地
王子の友人:レオ・ディクソン、ハリー・チャーチス、ルーカス・B・ブレンツロド
求婚者:ハリス・ベル、リアム・ボズウェル

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振付:フレデリック・アシュトン
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ

舞台装置デザイン:トム・パイ
衣裳デザイン:アレクサンドラ・バーン
照明デザイン:デヴィッド・フィン
ビデオ・デザイン:フィン・ロス
特殊効果:クリス・フィッシャー
ステージング:ギャリー・エイヴィス、ウェンディ・エリス・サムズ
シニア・レペティトゥール:ディアドラ・チャップマン、サマンサ・レイン、サミラ・サイディ
レペティトゥール:シアン・マーフィー
プリンシパル指導:アレクサンダー・アグジャノフ、リアン・ベンジャミン、ダーシー・バッセル、
ラウラ・モレラ、マリン・トゥーズ、クリストファー・サウンダース
ベネシュ舞踊譜:ダニエル・クラウス

指揮:ジョナサン・ロー
ロイヤル・オペラ・ハウス管弦楽団
コンサートマスター:メリッサ・カーステアズ
特別解説:ギャリー・エイヴィス

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