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小林十市 連載エッセイ「南仏の街で、僕はバレエのことを考えた。」【第26回】Noism × 小林十市「A JOURNEY〜記憶の中の記憶へ」を終えて。

小林 十市

ベジャール・バレエ・ローザンヌ(BBL)のスターダンサーとして世界中の舞台で活躍。
現在はBBL時代の同僚であった奥様のクリスティーヌ・ブランさんと、フランスの街で暮らしている小林十市さん。

いまあらためて、その目に映るバレエとダンスの世界のこと。
いまも色褪せることのない、モーリス・ベジャールとの思い出とその作品のこと−−。

南仏オランジュの街から、十市さんご本人が言葉と写真で綴るエッセイを月1回お届けします。

🇫🇷

Noism Company Niigata × 小林十市『A JOURNEY〜記憶の中の記憶へ』ゲネプロ、そして本番!

【10月15日】

ご存じの通り、ここ2ヵ月間「南仏の街で……」ではなく「横浜の街でバレエのことを考えた」となっております。「新潟の街で……」こっちでもいいかもしれない(笑)。

バレエチャンネルではDance Dance Dance @ YOKOHAMA 2021」の関連記事をたくさん掲載していただきました(「特集:DDD2021」参照)。そしてそのフェスティバルもいよいよクロージングを迎えることとなり、10月13日からKAAT神奈川芸術劇場ホールに入りました。

相変わらず写真が撮れないですね、ずーっと踊っているから(笑) 。

当たり前なんでしょうけど、振付家は照明にも詳しくないと自分の作品なんて創れないでしょうね。穣くんはかなり詳しいのではないでしょうか? 客席からの指示の出し方に舌を巻いてしまいます。

舞台に立ち照明が入ると、これはまたスタジオとは状況が異なるわけで、身体のバランス感覚を踊りながら確かめて、何度も動いてみる。その繰り返しです。
この確認作業時間がもう数日あればいいなとは思うけれど、これを書いている今は15日、ゲネプロの日です。今日から本番が終わるまでの3日間、その瞬間、瞬間をしっかり味わいたいと思います。

こうした機会がないと使うことがないので、今月7日に亡くなられた、祖父のお弟子さんで人間国宝の柳家小三治師匠にお願いして作った暖簾! 

前回使用したのは6年前、近藤良平さんの『モダンタイムス』の時でした。
普通、暖簾とかは贈り物として受け取るのでしょうけど、僕は小三治師匠に直接お願いをしました。小三治師匠の自然体でポッとそこにいる存在感の大きさが大好きでした。いつも思うのですが、今後自分が歳を重ねれば重ねるほど「死」ということに向き合わねばならないんだな……と。(みなさんそうだと思います、もちろん)

そんなことを感じながらゲネプロ、踊ってきました。今日は今日の踊りを!と。
踊り終わり、自分の中でカウントダウンが始まり……ああ、あと2回か……。
踊る喜び、終わる寂しさ、両方を感じながら。

【10月16日】

初日が開けました。とても温かいお客様だった……まあ、穣くんの作品が評価されるのは当然なんだけど。そしてもちろんNoism Company Niigataのダンサーたちも! 僕は、なんというか、正直いうと「やはり自分は今、こういう大舞台に立つにはパワー不足なのではないだろうか?」ということがずーっと頭をよぎっていて、膝が調子悪くて全力で行きにくいとか、そんなの言い訳にしか聞こえないけど、けれどそれも含め結果的にそういうことなんじゃないか?と。
緊張というオブラートに包まれながら楽しんで踊ったことには間違いないけれど。
それでも明日は最後なので、まだ燃え尽きることが可能なわけなので落ち込んでないで明日に備えます。

年齢と比例して劇場も小さく……なんだろうか?
「エリア50代」がちょうどいい空間なのか!?!

とか

考えちゃう。

そういう意味で、俺は冒険をしているんだなあ……って。
自分が楽しんじゃうだけじゃダメなんだろうけどさ!(すみません) 

©️瀬戸秀美

この写真好き♪

【10月17日】

ということで、Noism Company Niigata × 小林十市『A  JOURNEY~記憶の中の記憶へ』が終わり、Dance Dance Dance @ YOKOHAMA 2021が閉幕しました。

このコロナ禍でいろいろな不安要素はありましたけど、こうして多くのお客様に来ていただき、企画した内容も喜んでいただけたようでホッとしています。本当にありがとうございました!! 1年半以上かけて企画案を一緒に考えてきた横浜アーツフェスティバル実行委員会のみなさま、山本康介くん、その他にもたくさんの方にサポートをしていただきました。そして参加してくれたアーティストのみなさん! こうして実現し無事に終えることができましたことを心から感謝しています。

さて、今日の感想……大きな空間を支配するは強い身体!だと思いました。僕はもう強くない、本当に「エリア50代」の空間が心地よいのです。

燃え尽きるつもりが、燃え尽きる前に力尽きたというのが現実で、やはり大舞台に立つには続けていなければいけない。毎日、カンパニーでのレッスン、リハーサル、舞台、と続けていなければいけないんだと痛感した次第です。作品を作ってくれた穣くんには本当に感謝しています。大好きな作品だけれど自分がイメージしたレベルまで自分を持っていけなかった歯痒さが自分の中には残ってしまいました。今回、僕の舞台復帰を喜んでくれた人々にも感謝です。でもお客様はお金を払って観に来てくれているわけで、プロならばあってはいけない状態だとも思いました。そういう意味では、今回の企画を受け入れてくれた横浜アーツフェスティバル実行委員のみなさん、穣くん、とKAAT神奈川芸術劇場、みなさんの力をお借りし、自分は冒険をさせてもらったなと、思います。

実際、Noismのみんなといた時間は刺激的でした! 

今後、踊り続けていきたいとは思っていますが、選ぶべきは「作品」でしょうね……と、終演後みんなに言ったら、穣くんが「何言ってるの!? ここまでできたんだから!!」と。それに対し僕が「まあギリギリだったけど」と言った時には穣くんがちょっと微妙な表情を見せていたように感じました……きっと自分の心の反映かもしれない(笑)。
ちょっと自分的には悔しさが残りましたが本当に良い経験をさせていただきました。これも既に過ぎてしまった人生の一部で新たな記憶になってしまったけれど、旅の道中で出会ったみんなとの時間は一生の宝として残ります!

そして、
もしも「再演」の話があれば……鍛えてもう一度チャレンジしたい気持ちは、あります!
でもやるなら早めに実現してね(誰に言っているんだ!?!)

東京バレエ団『中国の不思議な役人』のリハーサル指導をしています

終わってホッとする間もなく翌日から、11月に東京バレエ団が上演する『中国の不思議な役人』の指導に入りました。今回帰国してから空いている日にちを見つけて、既に何回か抜き稽古はしたのですが、全体の稽古は今回が初めてで、配役もなるべく穣くんの新作『かぐや姫』と重ならないようにと配慮してのキャスティングで、今回初めて作品を踊るダンサーが半分以上もいて、稽古時間がとても短く難しい状況です。

『中国の不思議な役人』は、ただ音楽に合わせて踊るのではなく、その「役」としていかに舞台上に立ち、いかにその瞬間を舞台上で生きられるか? その時の生の感情だったり反応が必要になる作品なので、まずはもちろん振りを覚えてもらうけど、あとはダンサー各自が「役」になり役が置かれた心境だったり起こっていることを観察し、刺激され、思考、行動を起こしていく。そして人間臭さ、それも暗い部分が露呈されるような作品です。観客のみなさんにも「何だか解らなかったけど面白かった!」と思っていただきたい、そんな作品だと自分は思っています。

©️松橋晶子

演劇的アプローチと言いますか、ダンサーたちにも音楽のきっかけで動くのではなく、思考して出る感情反応で動いてくれと伝えながら稽古をしています。なので一緒に状況を観察し、ここではこういう感情が働きその行動に出るのでは? というように、音楽の中で「役柄」の対人関係や状況に応じて動くというやり方です。そうすることによって音楽そのものが「台詞」として見えてくる、音楽を立体化した音楽劇として見られるのではないでしょうか? それがこの作品の魅力だと自分は思うのです。

©️松橋晶子

ダンサーたちもコツがつかめれば演じる楽しさを味わえるはずです。

写真左は中国の役人役を踊る大塚卓くん ©️松橋晶子

あと個人的な(いつもそうだけど……)感想ですけど、この歳になってやっと指導者らしくなれたのでは? と今回教えながらふと感じた瞬間がありました。
『中国の不思議な役人』に関しては2004年の東京バレエ団の初演の頃から指導をさせていただいていますが、再演の度に自分も年齢を重ね振りを動いて見せられなくなってきている。なので逆に言えば以前はダンサーとしての感覚が強かったと思うのです。それで今回何か感じるところがあったのかなと。
それと自分で言うのもなんですが、やはりベジャールさんの創作現場を共にし、その時ベジャールさんが意識していたことや実際ダンサーに言ったことを覚えている人ってそんなにいない気がするので……ほら、僕ってわりと笑顔で自由人で威厳無いし過小評価されがちだから……。

はい。
これ以上は言わない……察して(笑)。

では、11月6日と7日、東京文化会館でお会いしましょう!

今月もお読みいただきありがとうございます!

小林十市

★次回更新は2021年11月27日(土)の予定です

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元ベジャール・バレエ・ローザンヌ、振付家、俳優。 10歳より小林紀子バレエシアターにてバレエを始める。17歳で渡米し、スクール・オブ・アメリカン・バレエに3年間留学。20歳でスイス・ローザンヌのベジャール・バレエ・ローザンヌに入団。以後、数々の作品で主役をはじめ主要な役を踊る。2003年に腰椎椎間板変性症のため退団。以後、世界各国のバレエ団でベジャール作品の指導を行うほか、日本バレエ協会、宝塚雪組などにも振付を行う。また舞台やテレビ、映画への出演も多数。

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