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【インタビュー】英国ロイヤル・バレエ シネマ「リーズの結婚」フランチェスカ・ヘイワード×マルセリーノ・サンベ~リボンは恋人たちの未来の象徴

若松 圭子 Keiko WAKAMATSU

英国ロイヤル・バレエ「リーズの結婚」フランチェスカ・ヘイワード(リーズ役)©ROH 2016. Photographed by Helen Maybanks

ロンドンのコヴェント・ガーデンにある歌劇場「ロイヤル・オペラ・ハウス」で上演されたバレエとオペラを映画館で鑑賞できる「英国ロイヤル・バレエ&オペラ in シネマ」。臨場感のある舞台映像はもちろん、開演前や幕間にはリハーサルの特別映像や舞台裏でのスペシャル・インタビューを楽しめるのも、“映画館で観るバレエ&オペラ”ならではの魅力です。

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2026年1月16日(金)から1月22日(木)までの1週間、TOHOシネマズ日本橋ほか全国の劇場で公開されるのは、英国ロイヤル・バレエによる『リーズの結婚』です。のどかな田園を舞台に、村娘のリーズと農夫コーラスの恋を英国流のユーモアであたたかく描いた本作は、振付家フレデリック・アシュトンにより1960年初演。以後長年にわたり親しまれてきました。リーズとコーラスのリボンを使ったダンスをはじめ、アシュトン作品ならではのテクニカルな振付が盛り込まれています。
リーズを演じるフランチェスカ・ヘイワードとコーラスを演じるマルセリーノ・サンベに、ツーショットインタビューを行いました。

英国ロイヤル・バレエ「リーズの結婚」フランチェスカ・ヘイワード(リーズ役)、マルセリーノ・サンベ(コーラス役)©2025 Alice Pennefather

プロフィール
フランチェスカ・ヘイワード Francesca Hayward
2003年ロイヤル・バレエ・スクール(ホワイト・ロッジおよびアッパー・スクール)に入学。2011年に英国ロイヤル・バレエ入団。2013年ファースト・アーティスト、2014年ソリスト、2015年ファースト・ソリスト、2016年プリンシパルに昇格。
マルセリーノ・サンベ Marcelino Sambé
リスボン国立コンセルヴァトワールを経て、16歳でロイヤル・バレエ・スクール(アッパー・スクール)に入学。2012年に英国ロイヤル・バレエ入団。2014年ファースト・アーティスト、2015年ソリスト、2017年ファースト・ソリスト、2019年プリンシパルに昇格。

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おふたりは、リーズとコーラスのキャラクターをどう解釈していますか?
ヘイワード 私はリーズが大好き。魅力的で生命力にあふれていて、みんなが共感できる女の子だと思います。私と近いところもあるので、リーズを演じる時は自分自身でいられるんです。プリンセスとは違って、自然体で演じられるのも好きなところです。

サンベ 僕もコーラスには自分と近いものを感じています。彼は愛情をいっぱい抱えた、明るい光のような青年。そのイメージをリハーサルを重ねて深めていく作業はとても楽しいです。フランチェスカと僕は親しいので、あれこれ考えなくてもリーズとコーラスの関係をナチュラルに表現できている気がします。

ヘイワード 踊りながらマルセリーノの目を見るたびに、彼と私は本当に仲のいい友人なんだなと感じます。生まれる感情が本物だから、彼と役同士の関係性を組み立てるのは難しいことではないんですよ。

フランチェスカさんとマルセリーノさんは多くの作品でペアを組んでいますね。パートナーシップを築くために意識していることはありますか?
ヘイワード 私たちは9年前、初めて『リーズの結婚』を踊りました。それまでにも小さなガラ公演で一緒に踊ったことはありましたが、これがふたりで組んで踊った初めての主役でした。当時は、コーチにパートナリングをかなり鍛えてもらいましたから、ふたりで一緒に学んできたという思いがあります。あれから9年間、お互いにいろいろな経験を経て、再びこの作品を一緒に踊れることはとても幸せです。

今回は、協力して作り上げるためにどうすればいいか、たくさん話し合うようにしています。「私はもう少しこうやりたいけれど、あなたはどう思う?」「あなたがやりたいことについて、私に手伝えることはある?」と。この作品は各々が自分の役を解釈して演じるだけではだめ。トリッキーなパートナリングも多く、それらはバレエ・スクールで習うパ・ド・ドゥとはわけが違うんです。

サンベ そして愛情をもって進めていくには、なによりもコミュニケーションが大事だと思っています。フランチェスカと話していると、彼女が何に影響を受けてきたのかよくわかるし、僕自身も彼女から多くのインスピレーションをもらっています。パートナーシップにおいて大切なのは、役や作品への価値観が同じほうを向いていること。その感覚を共有できている点が、僕たちの関係のいちばん好きなところです。

英国ロイヤル・バレエ「リーズの結婚」©ROH 2016. Photographed by Helen Maybanks

アシュトン作品の魅力や楽しさ、難しいけれどやりがいのあるポイントはどこですか?
サンベ 僕はイギリスに来て初めてアシュトン・スタイルに触れ、「これは今までに学んできたクラシック・バレエとは違う」と感じました。身体や腕の表現がより豊かで、アシュトンが1960年代初頭のモダンダンスから多くのインスピレーションを得ていたのが想像できます。クラシック・バレエをより情感のある作品にすること、それが彼の振付の原動力だったのかもしれませんね。

ヘイワード アシュトン作品の大きな特徴に、豊かな音楽性があります。一つひとつの音のニュアンスが細かく取り入れられているので、音を細かいところまで聞くことで、動きもスッと理解できるようになります。初めは少し難しいけれど、それがいったん身体の中に入ってしまうと、ほかの動きは想像できないほど自然なものに感じられるんです。それこそがアシュトン作品を踊る喜びです。ただし、そのためには多くの練習をしなくてはなりませんし、自分の思考を少しだけ解放して、頭の中の配線を組み替えてみるような作業も必要になります。

英国ロイヤル・バレエ「リーズの結婚」

リーズとコーラスがリボンを使って踊るシーンがとても印象的です。
ヘイワード あの場面は、正直に言うととても緊張します。リボンを操りながら踊ると、音楽や振付の中の物語に集中したくても、なかなかうまくいきません。リボンはこの作品の中で“登場人物のひとり”のような存在なのですが、本番の舞台の上で予想外の動きをすることがあるんです。そうしたらもう、その事態を受け入れるしかありません。焦らなければ、そのハプニングもまるで素敵な物語の一部のように見せることができますから。もちろん冷静さを取り戻すのは簡単ではありませんけれど(笑)。

サンベ そう、だから悪いことが起こりませんように、と心の中で祈るしかない(笑)。ふたりで力を合わせて、集中していかないとね。

ヘイワード リボンは簡単ではないので、本当にたくさん練習をして臨みます。夜、ベッドに入ってからも、ドアにどう結びつけるか、どう扱うかを頭の中で確認しているほどです。

サンベ 神経を使うけれど、とにかくお互いの目をよく見て、この先の動きを読みながら踊ろうと意識しています。リボンは、ふたりの絆や彼らの未来の象徴。とても感動的で、意味のある大事な場面です。

英国ロイヤル・バレエ「リーズの結婚」フランチェスカ・ヘイワード(リーズ役)、マルセリーノ・サンベ(コーラス役)©2025 Alice Pennefather

フランチェスカさんに質問です。リーズが「もし自分が結婚したら……」と想像するマイムは、どんな気持ちで演じていますか?
ヘイワード あまり考えすぎないように演じています。感動的なシーンではありますけれど、感情を込めすぎないで、決められたマイムだけを淡々と演じます。マイムがすべてを語っているので、無理に面白く演じようとすると成立しなくなってしまうんです。お客様の反応も毎回違います。笑ってくださる時は嬉しいですし、そうでない時もありますが、心に響いたのなら嬉しいな、と。客席の反応を意識しすぎないことも大事です。
マルセリーノさんは、コーラスのヴァリエーションを踊る時、どんなことを意識していますか?
サンベ コーラスのヴァリエーションは、テクニックはもちろん、アシュトン・スタイルと呼ばれる型をはっきりと示さなくてはなりません。音楽性の高さや小道具を操りながら踊ることも含めたら、『海賊』や『ドン・キホーテ』のように超絶技巧満載のヴァリエーションよりもずっと高い技術を身に付けなくてはいけません。まさに“真の技巧”が必要な踊りですね。これもアシュトンの天才性が生んだものだと感じます。

英国ロイヤル・バレエ「リーズの結婚」©ROH 2016. Photographed by Helen Maybanks

『リーズの結婚』のいちばんの魅力はどこだと感じますか?
ヘイワード 誰もが物語や登場人物に共感しやすいところです。『眠れる森の美女』のようなおとぎ話ではないので、リーズとコーラスの未来も自然に想像できるんです。結婚し、家庭を築いて、ともに農場を営んでいく。時には喧嘩もするけれど、愛し合っているから乗り越えられるはず……と、幕が下りたその後までも感じさせてくれる。そういうところが大好きです。
最後のパ・ド・ドゥのフィニッシュで、コーラスの肩の上に乗るリフトがあるのですが、高いところから客席を見下ろす瞬間は、お客様と一緒にひとつの旅を終えたような感覚で胸がいっぱいになります。感情を作ろうと意識しなくても、自然と気持ちが湧き上がってくる、それも『リーズの結婚』だからこその魅力だと思っています。
このシネマを、そして2026年の来日公演を楽しみにしている日本のファンに向けてメッセージをお願いします。
サンベ 『リーズの結婚』が日本の映画館で上映されることを大変嬉しく思います。このバレエはきっとみなさまの心を明るくし、喜びで満たしてくれることでしょう。

ヘイワード いつもあたたかい応援をありがとうございます。日本のお客様のバレエへの情熱は、私たちにとっても大きな励みになっています。この素敵な作品を日本の舞台でも踊れる日を楽しみにしています。

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上映情報

英国ロイヤル・バレエ&オペラ in シネマ 2025/26
ロイヤル・バレエ『リーズの結婚』LA FILLE MAL GARDÉE

2026年1月16日(金)~1月22日(木)TOHOシネマズ 日本橋 ほか1週間限定公開
★上映館、スケジュールなど詳細は公式サイトをご確認ください

(2025年11月5日上演作品/上映時間:2時間41分※休憩、解説+インタビューを含む)

【キャスト】
シモーヌ(金持ちの未亡人):ジェームズ・ヘイ
リーズ(シモーヌの娘):フランチェスカ・ヘイワード
コーラス(リーズに恋する若い農夫):マルセリーノ・サンベ
トーマス(裕福なブドウ畑のオーナー):クリストファー・サウンダーズ
アラン(トーマスの息子):ジョシュア・ジュンカー

雄鶏:リアム・ボズウェル
鶏:マディソン・ベイリー、キム・ボミン、レティシア・ストック、マリアンナ・ツェンベンホイ

リーズの友人たち:ミーシャ・ブラッドベリ、アネット・ブヴォリ、レティシア・ディアス、ハンナ・グレンネル、桂千理、前田紗江、佐々木万璃子、シャーロット・トンキンソン
村の公証人:アイデン・オブライエン
村の公証人の事務官:リアム・ボズウェル
ポニーのオスカー

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振付:フレデリック・アシュトン
音楽:フェルディナン・エロール
編曲:ジョン・ランチベリー
台本:ジャン・ドーベルヴァル
美術:オズバート・ランカスター
照明デザイン:ジョン・B・リード
ステージング:クリストファー・カー
主演指導:アレクサンダー・アグジャノフ、スチュアート・キャシディ、ジャン・クリストフ・ルサージュ、イザベル・マクミーカン
シニア・レペティトゥール:サマンサ・レイン
レペティトゥール:シアン・マーフィ

指揮:ジョナサン・ロー
首席ゲストコンサートマスター:ヴァスコ・ヴァシレフ
管弦楽:ロイヤル・オペラ・ハウス管弦楽団

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