
撮影:蓮見徹
ヘアメイク:大島智恵美
スタイリスト:秋山貴紀(A Inc.)
2025年6月9日からミュージカル『梨泰院クラス』が開幕。東京建物 Brillia HALLを皮切りに、大阪と愛知の3都市で上演されます。
原作はチョ・グァンジンによる大ヒットウェブトゥーン「梨泰院クラス」。厳しい環境の中でも成功を掴んでいく情熱的な青年パク・セロイの物語は、韓国のみならず日本でもドラマ化され、話題を呼びました。初のミュージカル化となる本作は、主人公パク・セロイを小瀧 望、チョ・イソを和希そらとsara、オ・スアを梅澤美波と川口ゆりなが演じます。振付は、トップアーティストの楽曲を数多く手がけるコレオグラファーのカイル・ハナガミが担当。今回は、セロイの宿敵チャン・グンウォンの弟、チャン・グンス役を演じる新原泰佑さんに、グンス役への思いや、幼少期から習い始めたダンスについて聞きました。
- Story
- 高校生のパク・セロイ(小瀧 望)は、父(浅野雅博)の仕事の都合で引っ越した転入先で、クラスメイトのチャン・グンウォン(秋沢健太朗)が傍若無人にふるまいヒドイいじめを行っている様を見かける。校内の誰もが見て見ぬふりをするが、セロイは彼を許せずに思わず殴ってしまう。グンウォンは父の勤務先でもある国内最大手飲食チェーン「長家」の会長チャン・デヒ(佐戸井けん太)の長男で、揉めたセロイは転校僅か1日で退学、父も会社を辞めることに。数日後、セロイは引っ越し初日に出会って以来気になっていた1日だけの同級生スア(梅澤美波/川口ゆりな)に道で偶然出会い、成り行きで自分の気持ちを打ち明けることになる。だが、そこに父が事故で亡くなったという衝撃的な知らせが入ってきた。グンウォンが乗ったバイクに轢かれたとわかり怒りを止められないセロイは、グンウォンに暴力を振るって刑務所へ収監されてしまう。
─出所から7年後、働いて資金を貯めたセロイは梨泰院で飲食店を開いていた。父の復讐を誓うセロイは、彼に興味を持ち追いかけてきた天才でソシオパスなイソ(和希そら/sara)、セロイによって人生を救われたヒョニ(土井ケイト)とスングォン(吉田広大)、イソに想いを寄せるグンウォンの弟グンス(新原泰佑)ら仲間たちと共に、梨泰院の街で成功を目指して駆け上がっていく─。

新原泰佑 Taisuke Niihara
埼玉県出身。4歳からダンスを習い始め、ヒップホップやジャズなど、様々なジャンルを学ぶ。“日本一のイケメン高校生”を決める「男子高生ミスターコン2018」のグランプリ受賞をきっかけに俳優デビュー。最近の出演作は、テレビ東京系 木ドラ24「25時、赤坂で」、TBS 日曜劇場「御上先生」など。舞台「インヘリタンス-継承-」、舞台「球体の球体」にて第32回読売演劇大賞 杉村春子賞受賞。初の主演映画「YOUNG&FINE」の公開を控えている。
- ミュージカル『梨泰院クラス』に出演が決まった時の気持ちを聞かせてください。
- 新原 世界的な人気のある作品をミュージカル化することに驚きましたし、携わらせていただけることを嬉しく思います。『梨泰院クラス』は韓国の文化や生活感が感じられる作品。今回のキャストで舞台化するうえで、韓国のマナーの講習などもありました。
本作が3年ぶりのミュージカルなので、まだ少し緊張しています。初心にかえって、新たな気持ちで舞台に立ちたいと思います。
- チャン・グンス役を演じるうえで楽しみにしていることは?
- 新原 僕が演じるグンスは作品の起承転結の“転”を担う存在です。グンスをきっかけにさらに物語が動き出します。起爆剤をあちこちに仕込んで、物語にブーストをかけながら組み立てていくのが楽しみです。
- グンスに似ていると感じる部分は?
- 新原 原作で描かれる彼の日常と自分の生活はそんなに似ていません。僕、バイクは乗らないですし(笑)。でも、人間として似ていると感じる部分はあります。好きなものへの向き合い方や、嫌いなものに立ち向かっていく時。自分の行動に、揺るがない意志や譲れない意地みたいなものを強く感じます。グンスの人生を体験してみたいと思ったのも、性格に共通するところがあるからかもしれません。
- 印象に残っている共演者とのエピソードは?
- 新原 ワークショップで、チョ・イソ役を演じるsaraさんの隣でお芝居をする機会がありました。座って台詞を合わせているだけなのに、「イソだ」と思いました。saraさんは役を浸透させる力を持っていらっしゃる方です。

- 今年、第32回読売演劇大賞で新人賞にあたる杉村春子賞を受賞しました。
- 新原 自分のお芝居が結果として受賞という形で返ってきたことがとても嬉しいです。まさか賞をいただけるとは思っていなかったので、授賞式から日が経った今でもあまり現実味がなくて。正直、いつになったら実感ってわいてくるんだろう?という状態です。
それと同時に、自分が想像する以上にみなさんが注目してくださっていたのだと改めて感じました。より一層身の引き締まる思いですし、この『梨泰院クラス』も誠意を込めて大切に演じていきたいです。
- 作品を経て、変化はありましたか?
- 新原 『インヘリタンス-継承-』『球体の球体』二つの舞台との出会いを通じて、役とどう向き合って歩んでいくかを改めて教わりました。僕の役者としての人生観が変わったと思います。それまでは台詞を追いかけ、感情を無理やり再現して、その役を生きることに精一杯。それが二作を通して、ただがむしゃらに演じるのではなく、俯瞰して台本を読み解いた芝居ができるようになりました。自分がもう一つ深いところに潜れたような感覚です。そうやって芝居を追求する術を教えてくださったのが、『インヘリタンス-継承-』の演出をされた熊林弘高さんと『球体の球体』の脚本・演出・美術を担当された池田亮さんでした。
動きの一つひとつに込められた役のマインドや演出に納得し、説得力を持って演じる。その大切さを実感できた、貴重な経験でした。
- 舞台の上で芝居をする時に意識していることは?
- 新原 “生”ということです。コロナ禍で舞台の配信を経験した時も、画面の向こう側にいるお客様を意識していました。やはり、観てくださる方がいてこその舞台。自分勝手に演じるのではなく、客席の空気感をキャッチしながらお芝居をすることを大切にしています。
とくに原作がある舞台作品では、原作をできるだけ読み込んでいます。稽古で長い時間同じ役のお芝居を続けていると、役柄にはない自我のほうが強くなってしまうことも。それがオリジナルの舞台であれば、役の新たな一面に繋がる可能性もありますが、原作のある舞台において、自我はキャラクターとの乖離にもなりかねません。演じながら行き詰ったときは、必ず原作に立ち戻るようにしています。
- 新原さんが感じている芝居のおもしろさとは?
- 新原 素の自分よりも強くなれるところ。役柄に関係なく、役を演じている時はすごく強くいられるんです。それは新原泰佑として普通に生きているのではなく、この人を生きてあげなきゃという責任感に駆られるから。自分の全力を賭して、短い命を燃やしている瞬間がとても楽しいです。

- 新原さんがダンスを始めたきっかけは?
- 新原 4歳から地元のダンススクールでキッズダンスを習い始めました。母が大人クラスを受けていて、その前の時間がキッズクラスだったので、一緒に通っていました。
最初はヒップホップを踊っていて、数年経ってからブレイクやジャズなどさまざまなジャンルを一気に始めました。それから徐々にジャズとコンテンポラリーに落ち着いて、たまにほかのジャンルのダンスも踊っています。
当時は学校が終わったらすぐにダンスに行く生活で、週に7・8クラスを受けていたと思います。幼い頃から負けず嫌いだった僕にとって、ここまで夢中になれるダンスは“手放しちゃいけないもの”になっていたのかも。気がつけば、この年齢までずっと続けていました。
- 新原さんが感じているダンスの魅力とは?
- 新原 僕は踊っている時、お客様の反応だけを感じています。それはきっと、踊っている瞬間は無心になれているということだと思うんです。そのくらいダンスは身体に染み付いているもの。踊りながら、自分に羽が生えているような感覚を楽しんでいます。
- 新原さんは振付の経験もありますが、振付のおもしろいと感じるところは?
- 新原 踊る人をどう美しく見せるか、音楽に浸透するダンスってなんだろう?と考える時間がおもしろいです。とくに歌詞のある曲を使ったダンスは、言葉をより鮮明に伝え、目でも楽しんでもらえるのがいいところ。作品の物語を想像してもらえるような振付を考えるのが好きです。いつかダンスの自主公演を打つのが、僕の目標になっています。
- 『梨泰院クラス』の振付をカイル・ハナガミさんが担当します。カイルさんのダンスの印象は?
- 新原 思わず「うま~!」って言いたくなりました(笑)。ダンスを観ている時は、役者ではなくダンサーの自分が出てきます。とくにストリートダンサーたちは、上手い人を観るとウェーイと盛り上げる風習があるのですが、その仕草が出てしまうくらいカイルさんはすごい方。確立された世界観を持っていらっしゃると感じました。とにかく、カイルさんは歩くだけでも本当にカッコイイ。同じくレジェンドのヤニス・マーシャルさんのヒールダンスもすごく好きです。

- 新原さんから見たバレエの印象は?
- 新原 『インヘリタンス-継承-』の演出・熊林弘高さんは演出のインスピレーションをバレエやオペラから受けていて、稽古中にバレエ作品の映像を何度か見せていただきました。とにかく舞台美術や衣裳による世界観の作り込み方に圧倒されました。そしてバレエには、役者にはできないダンサーの方たちの身体で語るような芝居の魅力がありますよね。
- 最後に読者に向けてメッセージを。
- 新原 すばらしいキャストのみなさまや豪華なクリエイターの方々とともに、『梨泰院クラス』という作品を創りあげる一員になれることをとてもありがたく感じています。みなさまの期待以上のものをお届けできるように、しっかり準備をして稽古に励みます。役者として学びつつも、どんどんグンスという役を深堀していきたいです。観てよかったと感じていただけるように精一杯努めますので、ぜひ劇場にいらしてください!

公演情報
ミュージカル『梨泰院クラス』

東京公演
【日程】2025年6月9日(月)~6月30日(月)
【会場】東京建物 Brillia HALL
大阪公演
【日程】7月6日(日)~11日(金)
【会場】東京建物 Brillia HALL 箕面 大ホール(箕面市立文化芸能劇場)
愛知公演
【日程】7月18日(金)~21日(月祝)
【会場】愛知・アイプラザ豊橋
【スタッフ】
原作:
チョ・グァンジン
「梨泰院クラス」(KAKAO WEBTOON Studio)
脚本:坂口理子
歌詞・構成:イ・ヒジュン
音楽:ヘレン・パーク
演出:小山ゆうな
振付:カイル・ハナガミ
【出演】
パク・セロイ 小瀧 望
チョ・イソ(Wキャスト) 和希そら/sara
オ・スア(Wキャスト) 梅澤美波/川口ゆりな
チャン・グンス 新原泰佑
マ・ヒョニ 土井ケイト
チェ・スングォン 吉田広大
チャン・グンウォン 秋沢健太朗
パク・ソンヨル 浅野雅博
チャン・デヒ 佐戸井けん太
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