バレエを楽しむ バレエとつながる

  • 観る

【リハーサル動画あり】新国立劇場バレエ団「ドン・キホーテ」➂森の女王役に抜擢!中島春菜/吉田朱里/内田美聡インタビュー

青木かれん Karen AOKI

撮影・編集:古川真理絵(バレエチャンネル編集部)

2023年10月20日(金)に新国立劇場バレエ団『ドン・キホーテ』が開幕します。同作は10月29日(日)まで新国立劇場オペラパレスにて、11月3日(金祝)・11月4日(土)に愛知県芸術劇場で上演されます。

注目は、いずれも初役の3名が抜擢された森の女王役。トリプルキャストを務めるのは、中島春菜さん、吉田朱里さん、内田美聡さんです。
3人に、森の女王役の魅力や演じる上でのこだわり、バレエをはじめたきっかけ等について聞きました。

10月上旬に取材した第2幕の夢の場のリハーサル映像と共にお楽しみください。

中島春菜 Haruna NAKAJIMA (ファースト・アーティスト)
10/21 昼、10/22 夜、10/29、11/4

中島春菜 ©Ballet Channel

森の女王はキャリアを積んで踊れる役というイメージがあったので、配役が発表された時は嬉しい反面、不安もありました。今回配役された3人は私も含め初役ですが、吉田都芸術監督やミストレスの方々の熱のこもったご指導のもと、毎日必死に稽古しています。

私が目指すのは、優しさと愛の溢れる森の女王です。踊りだけでなく、マイムや佇まいからあたたかい空気が出せるように。そしてポワントワークが難しい振付だからこそ、脚を一歩出すところから丁寧に見せることを心がけて、お客様を夢の場へとお連れできたらと思います。

バレエを始めたのは3歳の時です。私は幼い頃から道端で踊っているタイプだったらしく、いまでも実家に帰省すると、近所の方に「あの、踊ってた子?」と声をかけられるんですよ(笑)。習い始めてからは、できないことができるようになるのがどんどん楽しくなりました。私が通っていた教室には同年代の子も多く、負けたくない、上手になりたいという気持ちで続けてきました。

『A Million Kisses to my Skin』 撮影:鹿摩隆司

バレエ団に入団し、プロとして歩み始めて間もない頃に怪我をしました。当時は踊れないことが何よりも辛かったのですが、いまとなっては身体の使い方を見つめ直すきっかけになったと感じています。これまでの舞台で印象に残っているのは、2023年1月の「ニューイヤー・バレエ」の『A Million Kisses to my Skin』。コーチ陣の要求に応えようと無我夢中で踊ったことで、あらゆるムーヴメントに挑戦できるのだと気づき、自分の殻をひとつ破れたと思いました。限界を決めてはいけないのだと身をもって知った体験でした。

私は、バレエを通してたくさんのご縁に恵まれていると感じます。バレエ団一丸となって最後まで踊りきった時の達成感は、何物にも代えがたい喜び。お客様から拍手をいただくと踊っていてよかったと感じます。

踊りを見た人が自然と動き出してしまうくらい、身体から音楽を感じられるダンサーに憧れています。課題は山積みですが一つひとつクリアにして、踊る楽しさを忘れずに頑張りたいです。

©Ballet Channel

 

吉田朱里 Akari YOSHIDA ファースト・アーティスト)
10/20、10/22 昼、10/27、10/28 昼、11/3

吉田朱里 ©Ballet Channel

第2幕の夢の場は、『ドン・キホーテ』の中でも好きな場面。いちばん踊りたいと思っていたのが森の女王役だったので、率直に嬉しかったです。

この役の魅力は、ほかのキャラクターにはない、森の妖精たちの頂点に立つ強い存在感。脇の下から地面に向かって力を押し出して、立ち姿だけで森の女王だと分かるように表現したいです。そして、女王らしさの中に優しいぬくもりを感じてもらえるような踊りができたらと考えています。

小さい頃から、一つひとつの動きに言葉や情景をあてはめて考えるのが好きです。
今回なら、第2幕の冒頭でドゥルシネア姫に続いて森の女王がゆっくり動きだすシーンは、霧がだんだん晴れていくイメージで。またマイムで片手を差し出すところは、1回目は手からキラキラした粉が出ているように、2回目はドン・キホーテに対して「夢の世界ですよ」と語りかけるように……というふうに、一つひとつの違いがお客様にも伝わるように演じたいと思っています。

『白鳥の湖』オディール 撮影:長谷川清徳

バレエを始めたのは、シンガポールにいた5歳の頃です。当時は”習い事のひとつ”という感覚だったのですが、テニスを習っていた兄の「テニスプレーヤーになる!」という言葉を聞いて、目標があることを羨ましく感じるようになって。それ以来、「私はバレエを頑張ろう」とバレリーナを目指す気持ちが芽生えました。

私は本番の舞台で踊っている瞬間だけでなく、リハーサルそのものが好きです。2023年6月の『白鳥の湖』で急きょオデット/オディールの代役を務めた際は、別日の主役キャストの方がリハーサルをしている時も脇で見学させていただき、一緒に踊っていました。稽古場にずっといられるのが幸せで、「この時間が終わってほしくない!」と思っていたほど。リハーサルがない時は、もっと踊りたいのに……と物足りなさを感じることもあります。
これからも稽古を積み重ねて、テクニックや身体の使い方、表現力をもっと磨き、お客様がもう一度見たいと思ってくださるようなダンサーを目指したいです。

©Ballet Channel

内田美聡 Misato UCHIDA アーティスト)
10/21 夜、10/24、10/28 夜

内田美聡 ©Ballet Channel

キャスト表を見た時は、本当にびっくりしました。アプレンティスからアーティストになって半年しか経っていないタイミングで、こんなチャンスをいただけると思っていなかったので、とても嬉しかったです。

ドゥルシネア姫を見守り、みんなを引っ張っていく、おおらかな雰囲気の森の女王――今回はそんなイメージで演じられたらと思っています。マイムのシーンも、手を動かしただけでその場の空気をすべて揺らせるように、大きく表現したいです。ヴァリエーションはゆっくりとした音楽で流れるような印象ですが、強さも表現しなければいけません。のびやかに踊りつつも止めるところは止めてメリハリをつけ、身長を活かしたラインの美しさを見せたいです。

写真提供:新国立劇場バレエ団

10歳の時、クラスメイトに誘われて教室に行ったのがきっかけでバレエを始めました。最初は趣味のような感覚で、あまり身が入らなくて……。始めたのが遅かったぶん、身体が硬く、筋肉もつきにくかったのでとても苦労しました。でもバレエを嫌いになったことは一度もありません。

高校生の時にコンクールで賞をいただくようになって、だんだんと「私にはバレエしかない」と思うようになりました。大きな転機は、ワガノワ・バレエ・アカデミーに留学したこと。担任の先生がとても熱い方で、はじめはあまりの厳しさに毎日泣いていたのですが、真摯に教えてくださったことで、かなり体つきが変わりました。きっと留学期間がなかったら、プロにはなれなかったと思います。

いまは、毎日のクラスレッスンが大好きです。いつも「今日はここを意識してみよう」と自分に課題を課しながら稽古しています。日々の積み重ねで身体の感覚が変わっていき、できることが増えた時の喜びはひとしおです。

吉田都芸術監督の指導は本当に的確で、パッと見ただけで踊りやすさのヒントをくださいます。いただいた注意は「ああ、これか!」と腑に落ちることばかり。身体の使い方から、音の取り方、客席からの見え方、表現の仕方など、細かい部分に至るまで教えてくださいます。
バレエ団の先輩方のようにたくさん経験を積んで、さまざまな役を踊りこなせるダンサーに成長したいです。

©Ballet Channel

公演情報

新国立劇場バレエ団『ドン・キホーテ』

日程

2023年

10月20日(金) 19:00

10月21日(土) 13:00

10月21日(土) 18:30

10月22日(日) 13:00

10月22日(日) 18:30

10月24日(火) 13:00【貸切】

10月27日(金) 14:00

10月28日(土) 13:00

10月28日(土) 18:30

10月29日(日) 14:00

予定上演時間 約2時間45分(休憩含む)

会場

新国立劇場 オペラパレス

詳細・問合せ

新国立劇場 公演サイト

その他

【愛知公演】

2023年

11月3日(金・祝)14:00

11月4日(土)14:00

愛知県芸術劇場 大ホール

詳細はこちら

【イベント】

バックステージツアー 10月24日(火)開催

 

この記事を書いた人 このライターの記事一覧

類似記事

NEWS

NEWS

最新記事一覧へ