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【インタビュー】鈴木竜&柿崎麻莉子〜DaBYパフォーミングアーツ・セレクション in Tokyo~

阿部さや子 Sayako ABE

全国7都市をツアー中のパフォーミングアーツ・セレクション2022が、2022年11月1日(火)・2日(水)、東京の吉祥寺シアターで上演される。

コロナ禍で数々の公演が中止や延期になった2021年においても、多くの作品を創作してきた横浜のダンスハウスDance Base Yokohama(DaBY)。今回の東京公演では、愛知県芸術劇場での初演やKAAT神奈川芸術劇場での再演を経た作品の中から抜粋した下記3作品を一挙上演する。

◇◆◇

●『When will we ever learn?』
演出・振付:鈴木竜(Dance Base Yokohama)
出演:飯田利奈子、柿崎麻莉子、鈴木竜、Ikuma Murakami
ドラマトゥルク:丹羽青人 (Dance Base Yokohama)
衣裳:渡辺慎也 

●『never thought it would』
演出・振付:鈴木竜(Dance Base Yokohama)
出演:柿崎麻莉子[11/1 19:00・11/2 18:00]、鈴木竜[11/2 14:00]
音楽:tatsukiamano
ドラマトゥルク:丹羽青人(Dance Base Yokohama)
舞台美術:宮野健士郎
衣裳:渡辺慎也
照明コンセプト:武部瑠人 

●『瀕死の白鳥』/『瀕死の白鳥 その死の真相』
『瀕死の白鳥』
原型振付:ミハイル・フォーキン
改訂:酒井はな
チェロ:四家卯大
音楽:サン=サーンス「動物の謝肉祭」から「白鳥」 


『瀕死の白鳥 その死の真相』
演出・振付:岡田利規
出演:酒井はな
編曲・チェロ:四家卯大
音楽:サン=サーンス「動物の謝肉祭」から「白鳥」よりアレンジ 

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これら3作品のうち、『When will we ever learn?』『never thought it would』の演出・振付を手がけて自身も出演する鈴木竜と、出演の柿崎麻莉子に話を聞いた。

【Interview #1】鈴木竜

鈴木竜 ©️Takayuki Abe

今回の公演では、僕が演出・振付を担当した作品のなかから『never thought it would』『When will we ever learn?』の2つを上演します。共通点は、どちらも「コレクティブな手法で創作された」ということ。コレクティブとは「集合的な、組織的な」という意味で、ひとつの作品を創るために様々な専門分野からクリエイターが集まって、それぞれの能力や技術を持ち寄り、協働するかたちでクリエイションを行う方法です。自分の内なる表現欲求だけを爆発させるのではなく、たくさんの人の思考や経験が持ち寄られたなかから何を選び取っていくのか。そういう創作方法に、いま大きな喜びを感じています。

『When will we ever learn?』は、人と人とのコミュニケーションにおける「非対称性」を問う作品。タイトルは本作で使用している楽曲の歌詞から取った言葉で、日本語に訳すならば「私たちはいつになったら学ぶのだろう?」という意味です。例えば僕は、英国のバレエ学校に留学していた頃に人種差別的な扱いを何度も経験したいっぽうで、自分は男性であり、いまは演出・振付家という立場でもある以上、この社会やダンス環境において自分の意思とは関係なく「強者」の側に立ってしまっている可能性が大いにある。そういう僕が弱者の立場に立って強者を一方的に糾弾するのは違うと思うし、かといって当事者でなければ問題に対して声を上げてはいけないとも思いません。ただ「自分はどうだろう?」と、僕自身も含めて誰もが自らに問いかけるような作品を作りたい。そう考えたのが創作の発端です。

いっぽう『never thought it would』は、とても個人的な作品です。それこそ英国で学んでいた当時の僕は、将来は世界一流のカンパニーで踊って、ダンサーとして輝かしいキャリアを築きたい等、自分なりに思い描いていた未来像がありました。しかし実際には、想像とはまったく違っていたけれどもそれはそれで豊かな経験をたくさん経て、気がついたら今こうしてここにいる。まるで蛍光灯の周りをぐるぐる回り続ける蛾のように、あるいは宇宙空間に落ち続ける惑星のように、いつ終わりがくるのかもわからないまま、僕は踊り続けています。『never thought it would』、つまり「まさかこんなことになるなんて」。それが僕のダンサー人生の実感なのです。この作品は、踊る人がダンスとどう付き合っているのかをあぶり出す装置のようなもの。今回、僕とダブルキャストの柿崎麻莉子さんが踊った時に何が出てくるのか? それを観るのがとても楽しみです。

『never thought it would』鈴木竜 ©Naoshi HATORI 提供:Dance Base Yokohama

鈴木竜 Ryu Suzuki
DaBY アソシエイトコレオグラファー。横浜出身。英国ランベール・スクールで学ぶ。これまでにアクラム・カーン、シディ・ラルビ・シェルカウイ、フィリップ・デュクフレ、インバル・ピントアブシャロム・ポラック、平山素子、近藤良平、小㞍健太などの作品に出演。横浜ダンスコレクション2017コンペティションⅠで「若手振付家のためのフランス大使館賞」など史上初のトリプル受賞するなど大きな注目を集めており、作品は国内外で多数上演されている。

【Interview #2】柿崎麻莉子

柿崎麻莉子 ©️Naoshi HATORI

今回踊らせていただく2作品はどちらも鈴木竜くんの振付ですが、彼と二人三脚で作っているドラマトゥルクの丹羽青人さんの力もすごく感じていて。竜くんだけの感覚で作っていくことが許されないような創作手法で、いつも一人で作品を作る私には絶対無理と思うくらい大変そうなのに、竜くんと丹羽さんは(傍から見る限りは!)すごく楽しそうです。「これは正しいよね」「うん、正しいと思う」なんて、私自身はクリエイションのなかで使ったことのないような言葉も飛び交っています(笑)。

『When will we ever learn?』は、そんな二人のギミックがいっぱい詰まっている作品です。内容やテーマも練り上げられているし、照明の使い方やキャストの動かし方などにも工夫が凝らされている。そして、とくにバレエファンのみなさんに新鮮に楽しんでいただけるのではと思うのは――バレエ、とくに古典作品では男女の役割が明確に分かれていて、それがひっくり返ることはなかなかありませんよね。男性がプリンセスの役を演じることはないでしょうし、女性が男性をサポートしたりリフトしたりすることも基本的にはないと思うんです。でも、この『When will we ever learn?』では、そういうことが起こります。男女の役割が、どんどん交代していくんです。また、この作品には今回4人のダンサーが出演するのですが、それぞれがまったく違う身体性の持ち主であるところも、きっとおもしろいと思います。一人ひとり身体も違うし、踊り方も全然違うけれど、みんながそれぞれに美しい。美のありようがひとつではないところも、大きな魅力だと感じていただけるのではないでしょうか。

『never thought it would』は、竜くんが踊っているのを観た時に、動きが動きを呼ぶような振付がとても彼らしいと思いました。階段を昇るように、いま竜くんの身体の中で起こっていることが、次のムーヴメントを呼び起こしていく。そしてもちろん明確なストーリーはないけれど、ちゃんと始まりがあって終わりがあるという意味で、物語的な作品だとも感じます。彼の中には行きたい方向があって、そこに向かってコツコツ歩み続けているというか。私はそういう竜くんの感情を追うように踊ることもきっとできるけれど、今のところ、もう少し距離をとって踊ってみたいと思っています。客観的に振付を見ると、可愛らしい感じのムーヴメントとか、おもしろい動きがいろいろとあるんですよ。そういうものをちょこちょこつまみ食いしていくような感覚で、彼自身から生まれた動きそのものに新鮮に出会いながら踊りたいと考えています。最終的にどうなるかは、もちろん本番になってみないとわからないけれど。

『never thought it would』リハーサルの様子 柿崎麻莉子 提供:Dance Base Yokohama

柿崎麻莉子 Mariko Kakizaki
DaBYレジデンスアーティスト。香川県出身。
2012~14年にバットシェバ舞踊団、2015~21年にL-E-V Sharon Eyal|Gai Beharに所属し、世界各国で公演・WS指導を行う。11年韓国国際ダンスフェスティバル金賞など受賞多数。21年熊本にカルチャーセンター”beq.Inc”をオープン、文化や芸術をカジュアルに楽しめる場を目指して活動中。オンラインWSなどを実施する「GAMAMA」を主催。オハッド・ナハリン考案のダンス、GAGAの指導者。

公演情報

パフォーミングアーツ・セレクション in Tokyo

【日時】
2022年11月1日(火)19:00
2022年11月2日(水)14:00/18:00
※開場時間は開演の30分前

【会場】
吉祥寺シアター

【上演作品】
『never thought it would』
『When will we ever learn?』
『瀕死の白鳥』/『瀕死の白鳥 その死の真相』

※東京公演詳細はこちら

【詳細・お問い合わせ】
Dance Base Yokohama(DaBY)公演情報ページ

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【全国ツアー情報】
パフォーミングアーツ・セレクション 2022
(上演作品は会場により異なる)

●高知公演 ※公演終了
2022年9月8日(木)19:00開演
高知県立美術館ホール

●長野公演 ※公演終了
2022年10月7日(金)16:00開演
まつもと市民芸術館 実験劇場

●福島公演 ※公演終了
2022年10月15日(土)16:00開演
いわき芸術文化交流館アリオス 中劇場

●新潟公演 ※公演終了
2022年10月30日(日)15:00開演
りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 劇場

●東京公演
2022年11月1日(火)19:00開演
2022年11月2日(水)14:00開演/18:00開演
吉祥寺シアター

●熊本公演
2022年11月27日(日)14:00開演
熊本県立劇場 演劇ホール

●山口公演
2022年12月11日(日)14:00開演
山口情報芸術センター スタジオA

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