みなさま、現在クラウドファンディング実施中の「SPOTLIGHT 私たちは踊りたい〜若きバレエダンサーたちのステージ&ドキュメンタリー」配信プロジェクトを応援してくださり、本当にありがとうございます。
このステージ&ドキュメンタリーに登場する全11名のダンサーたちを一人ひとり紹介するインタビューをお届けしていきます。
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すらりとした長身。長く伸びた手脚をたっぷりと使い、空気を抱えるようにしっとりと踊る姿が美しい田中玲奈(たなか・れいな)さん。7歳からバレエを始め、大阪のエトワールバレエスクールで学び、2016年にドイツのジョン・クランコ・スクールに留学。今年の7月に卒業し、ミハイロフスキー・バレエへの入団が決定していますが、ロシア入国の許可がおりず、現在は自宅で待機中です。
バレエを始めた理由
- バレエを始めた年齢ときっかけを教えてください。
- 田中 バレエは7歳から始めました。4歳上の姉がバレエを習っていて、姉が踊る姿を見るために、私もずっとお教室に通っていました。踊っているときの姉がとても楽しそうなので「私もバレエが習いたい!」と母にお願いしました。
- お姉さんは、今も踊っていらっしゃるのでしょうか?
- 田中 はい。じつは私が入団予定のミハイロフスキー・バレエに所属しているんです。名前は田中美波と言います。
- ご姉妹で同じバレエ団なのですね。お姉さんは現在もロシアに?
- 田中 はい。ずっとロシアにいます。バレエ団は新しいシーズンが始まってしまったので、帰って来ることができないままなんです。
- 初めてトウシューズを履いたときのことは覚えていますか?
- 田中 ポワントを履いたのは小学校3年生のときでした。普段よりも目線が高くなるのが嬉しかったのを覚えています。あまり苦労せずに履くことはできたのですが、やっぱり履きこなすことはとても難しいと思いました。こんなピカピカできれいな靴なのに……って。
- それから現在まで、同じスクールでレッスンをされているのですか?
- 田中 そうです。先生には本当にお世話になっています。
エトワールバレエスクールの先生には本当に感謝しています
- 先生からいただいた、印象的な言葉はありますか?
- 田中 「記録よりも記憶に残る踊りを」です。
コンクールで1位をとれば、みんなその場ではおめでとうと言ってくれる。けれども「あのときの、あの子の踊りはすごかったよね」といわれる人は、コンクールの順位とは関係がないところでみんなに強く印象を残している、と。
- 素敵な言葉ですね。
- 田中 留学したくて、そのきっかけをつかむためにもたくさんのコンクールに出ていた時期に言ってくださったんです。私はすごく緊張しやすいので、舞台に立つ経験を積んでいた時期でもあったのですが、バレエは総合芸術だから、コンクールのためだけに踊るものではない、ということを心に留めるようになりました。
コンクールから留学への道
- 玲奈さんはユース・アメリカ・グランプリ(YAGP)にも挑戦していますね。
- 田中 YAGPには、13歳の2014年から毎年出場しました。1~2年目は英国ロイヤル・バレエ・スクールの短期スカラシップをいただき、2年目のときは日本予選TOP12に入ることができました。
- YAGP2016では、日本予選クラシック部門で女子ジュニアの第1位を受賞、ニューヨーク・ファイナルに出場しました。
- 田中 はい。そのときは『白鳥の湖』の黒鳥のヴァリエーションを踊ったんです。ニューヨークでTOP12に選ばれて、ジョン・クランコ・スクールのスカラシップをいただき、留学しました。
- 留学期間は?
- 田中 15歳の1月から、4年間です。いい先生に巡り会えたと思っています。「あなたは基礎からやらないとダメ。一から見てあげるから早くいらっしゃい」と言ってくださったので、ファイナル直後の1月にはドイツへ向かいました。
- 中学校の卒業式を待たずに留学したのですね。未練はありませんでしたか?
- 田中 卒業目前だったので、ちょっと寂しい気持ちはありましたけれど、もっと上手になりたい! という気持ちが勝っていました。
- 玲奈さんがプロのバレリーナを目指そうと思ったのはいつだったのでしょうか?
- 田中 真剣に考え始めたのは、留学が決まった瞬間からですね。それまでもバレリーナになりたいという漠然とした思いはありましたが、スカラシップをいただけるかもわからなかったので、高校進学の道も少しだけ残していたんです。YAGPでジョン・クランコ・スクールに留学が決まって、そこで気持ちを固めました。先ほど、バレリーナになりたいと思っていたと言いましたが、むしろ……こんなことを言っていいのかわからないけれど「私はプロのバレリーナになる」と、最初からずっと心に決めていたのだと思います。それを自覚した瞬間だったのかもしれません。そこから練習にも、もっと身が入るようになりました。
- 次にドイツでの留学のことを教えてください。寮生活だったのでしょうか? 留学の前に準備しておくと良いと思ったことは?
- 田中 はい、寮でした。もちろん英語も勉強しておいたほうがいいと思いますが、大事だと感じたのは、洗濯や料理を自分でやれるようになっておく、ということです。親元を離れて、ひとりで自分のことをすべて管理しなくてはいけない、それが私もとても不安でした。留学をするには、やっぱり自己管理力が大切だなと思います。
- 学校に日本からの留学生はどれくらいいましたか? 言葉に不安はありませんでしたか。
- 田中 日本人は少なかったです。1学年に1人か2人ぐらいでした。また先生は基本的にドイツ語か英語を話されるので、慣れるまではすごく大変でした。
- ジョン・クランコ・スクールの特徴は?
- 田中 指導はワガノワ・メソッドです。先生方はロシア人で、すごく厳しくて、じつは何度も泣いたことがあります。
シュツットガルト・バレエの付属校なので、バレエ団との関係性も深いです。プレミア公演の前日、舞台芸術やリハーサルを見学させていただけることも多いですし、バレエ団の舞台に立たせていただく機会もあります。
- 玲奈さんも出演されたのですか?
- 田中 はい。6年生から8年生までの間に『白鳥の湖』や『ラ・バヤデール』の影の王国の場面など、劇場の舞台に立てて本当に夢のようでした。良い経験になりました。
7年生のときにシュツットガルト・バレエの「ラ・バヤデール」に出演したとき。影の王国を踊りました
- とくに思い出に残っている公演はありますか?
- 田中 2018年にバレエ団が日本公演を行ったときに、同行して『白鳥の湖』に出演させていただいたことです。東京以外に、九州や関西の地方公演もあって、地元に近い西宮での公演のときは、たくさんの友だちが観に来てくれて嬉しかったです!
日本公演の合間に、仲間を浅草へ案内しました!
バレエ団公演「眠れる森の美女」で花のワルツを踊ったときのもの
コロナで何が起こったか
- そして卒業学年の年にコロナ禍に見舞われ、ドイツから帰国することになってしまったのですね。卒業後の入団先は、このときすでに決まっていたのですか?
- 田中 ミハイロフスキー・バレエへは2月にオーディションに行き、そこでコントラクト(契約)をいただいていました。でもドイツの学校に戻ったあとに、コロナの影響で日本へ帰国しなくてはならなくなって。この時点では、4月に学校が再開する予定だったんです。だから学校の友だちとも「2ヵ月後にまた会えるよね」と、気楽にさよならを言って帰って来てしまったことを、とても後悔しています。仲間にも先生にも最後のお別れをきちんとしないままで終わってしまった。7月の卒業式もオンラインで、やっぱり悲しかったです。
8年生のクリスマス公演。このころは卒業まで一緒にいられると思っていました
- ドイツの学校時代のお仲間とは、連絡を取りあっているのですか?
- 田中 前はよくしていました。けれど今はたまに、です。やっぱりみんな忙しいし、入団先での仕事が始まっている子もいますから。
- 日本に帰国してからのレッスンは?
- 田中 最初は自宅でのオンラインレッスンを受けていましたが、どうしても集中しきれなくて、やる気が薄れてきているのではと感じるときもありました。本当ならこの時期に、もっともっとたくさんのことを学ぶつもりだったし、身につけたいことがあったのに、と思うことも多かったです。また、コロナ禍で改めて感じたのが、一緒にレッスンを受ける仲間の大切さでした。お互いを励まし合ったり、やる気や刺激をもらっていたんだなと。
バレエ団では9月から入団の予定だったのですが、ロシア大使館が開かなくてビザも発給されないため待機中のままです。バレエ団とも連絡が取れない状況ですが、入団については、今の私には何もできることがない。だからもう、とにかく日本で必死に練習して自分を磨いていくしかないかな、と思っています。
- バレエをやめたいと思ったことはありますか?
- 田中 私は、今までバレエをやめたいと思ったことが一度もないんです。もちろんレッスンが辛いなとか、足が痛いな、疲れたな、と思うことはあります。それでもやっぱりバレエが好きです。どんなことがあっても、気がついたら踊っているんです。バレエに取り憑かれているのかも(笑)。
- この「SPOTLIGHT」プロジェクトに加わったきっかけは?
- 田中 五十嵐脩くんと、今年の1月ごろにハンガリーのオーディションで会ったんです。そのときに彼の「僕はいつか舞台を上演したいんだ!」という熱い思いを聞いて、応援したいなと思ったのがきっかけです。
- 「SPOTLIGHT」プロジェクトへの意気込みを聞かせてください。
- 田中 この時期の開催は、嬉しくもあるし、少し不安もありますが、みんなで切磋琢磨しあって、いい舞台を作っていきたいと思っています。これがひとつの成功体験というか、こんな時期でも踊れるんだという経験として刻まれたらいいなと思います。
- 玲奈さんの今後の目標や夢を教えてください。
- 田中 とにかくロシアに行って、団員になって、毎日劇場で踊りたいです。コントラクトをいただいたときに観た『眠れる森の美女』の舞台に出たい、それが目標です。日本でレッスンを積んで、ロシアに入国できるようになったらバレエ団のディレクターをびっくりさせるくらい上手になって行こう、と思っています!
- \田中玲奈さんに質問!今回のステージでは何を踊る?/
- 『ライモンダ』よりハンガリアンのヴァリエーションと『パキータ』の女性ヴァリエーションを踊ります。
『ライモンダ』は8月にあった日本のお教室の発表会で踊らせていただいたばかりで、脩くんにすすめられて踊ることになりました。華やかな中にも厳格な雰囲気が漂っていて、冒頭にシュ・ス―でとまるところや、手を叩く場面などは、お客さまの息をハッと止める印象的な部分です。舞台の空気を支配するように踊りたいと思います。
\SPOTLIGHTダンサーズに質問!田中玲奈さんの踊りの魅力とは?!/
- 足のアーチがとても綺麗で、日本人離れしたプロモーションの持ち主。バレエについてはとても真面目ですが、普段はとてもユーモアがあるんです。玲奈ちゃんとSNSでメッセージのやりとりをするのが大好きです!(玉井千容)
配信情報
「SPOTLIGHT 私たちは踊りたい〜若きバレエダンサーたちのステージ&ドキュメンタリー」
●配信期間:2020年10月18日(日)20時 〜 2020年12月31日(木)23時59分
※配信される映像はアーカイブ視聴が可能です。視聴券の購入により、いつでも、何回でもご覧いただけます。
●視聴チケット発売中(有料 1,500円):購入はこちら
●主催・制作・お問合せ:〈バレエチャンネル〉編集部
Email:info@balletchannel.jp
Tel:070-4035-1905
★クラウドファンディング実施中!(2020年10月16日 23:59まで)
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