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【レポート】高田茜(英国ロイヤル・バレエ プリンシパル)スペシャルトークショーがチャコット本店で開催されました

坂口 香野

チャコット代官山本店でトークショーを行った、英国ロイヤル・バレエ プリンシパルの高田茜さん ©️Ballet Channel

2024年8月4日、東京・代官山のチャコット本店にて、英国ロイヤル・バレエ プリンシパルの高田茜さんのスペシャルトークイベントが行われました。「想いをシェアするトークショー」と題された今回のイベントは、参加者から事前に寄せられた質問やお悩みをテーマに、高田さんが自身のバレエ人生や経験を語るという企画。美しい佇まい、おっとりした語り口、そして時折ユーモアを交えながら、バレエ上達の秘訣や役づくりのこと、バレリーナとしての転機や今後の目標、オフの日の過ごし方などについて話した高田さん。楽しくてあっという間に過ぎた1時間のトークショーのもようをお届けします。

オーディエンスは30名限定! 司会はバレエチャンネル編集長の阿部さや子が務めました ©️Ballet Channel

バレエを始めた頃のこと、バレエ上達のために大事なこと

まずはバレエを始めたきっかけについて教えてください。
3歳の頃、たまたまバレエを紹介するTV番組をやっていて、その映像が『白鳥の湖』3幕の、オディールのシーンでした。それが本当に素敵だったので、母に「これやりたい!」と言ったのを覚えています。
小さい頃はどんな子どもでしたか?
シャイなほうだったと思います。お寿司屋さんに行っても自分では注文できなくて、お母さんに「頼んで」っていうような。自分を表現することは好きだったけれど、人前に出ることは得意ではありませんでした。

ですから、コンクール等でみんながいっせいにステージ上で場当たりをする時も、積極的に前に出られなくて。バレエスタジオの先生に、「前に来なさい!」って叱られたりもしていました。

そんな茜さんが本気でプロのバレリーナを目指すようになったのはいつ頃ですか?
小学校3年生ぐらいですね。コンクールに出るようになって、舞台で踊ることがすごく好きだなと感じていたので。楽屋でのメーキャップやステージ上でのリハーサル、舞台に向かうすべての瞬間が大好きだから、このままダンスすることがお仕事になったらいいなと思うようになりました。
当時、得意だったことと苦手だったことは?
苦手なことはいろいろあって……ターンアウトとか、今も苦手ですけれど。ジャンプすることは、とても好きでした。
10代のみなさんがバレエに本気で取り組むとなると、大変になってくるのがバレエと学校の勉強の両立。参加者の方から「バレエと勉強の両立について悩んでいます。アドバイスがありましたら教えてください」という質問が来ています。
中学生の頃は、定期テストの1週間前はレッスンをお休みして、テスト勉強に集中するっていうのをよくやっていました。徹夜で勉強する日もありましたけれど、好きなお菓子とお茶を用意して勉強する時間がわりと好きでした。

©️Ballet Channel

バレエ上達のための質問もたくさんいただいています。まずは「どうしたら身体が柔らかくなりますか」。茜さんは、もともと柔らかいほうでしたか?
いいえ、硬かったです。子どもの頃はよくお風呂上がりにストレッチをしていました。開脚とかスプリッツとか。やはり身体は柔らかいほうが怪我をしにくくなるので、もっとやっておけばよかったなと思います。背骨がちゃんと動いて、周りの筋肉もしっかりとあり、その上で柔らかさがあれば、怪我しにくい身体になると思うので……今から私もストレッチを頑張ります(笑)。
とくにおすすめのストレッチはありますか?
たとえば私は最近ジャイロトニックを始めたのですが、これには骨盤を倒したり戻したりするエクササイズが含まれています。バレエは背骨を立てている姿勢が多く、腰回りが固まってしまいがちですけれど、ジャイロでは背骨が正しくしなやかに動くようにトレーナーの方にガイドしていただきながら整えていくので、とても助けになっています。怪我のため、ここ1年くらい舞台に立てていないのですが、 ジャイロを始めたことで身体がとても動きやすくなりました。今は週3回レッスンを受けています。
「バレエが上手になるトレーニングを教えてください」という質問も来ているのですが、茜さんがジャイロトニック以外にも力を入れていることはありますか?
20代の頃から膝の故障にも悩まされていたので、それ以来ずっと、カンパニー内のジムでウェイトトレーニングを続けています。もう、ジムに住んでいるんじゃないかっていうくらい(笑)、ジムで過ごす時間が多いですね。私はついやりすぎてしまうほうなのですが、幸運にも、素晴らしいトレーナーの方がいて、オーバーワークにならないようサポートしてくださっています。

バレエが上手になるためには、ふわっと何となく取り組むより、自分の弱い部分や向上させたい力をひとつ決めて、そこに向けて身体を強くするほうがいいかもしれないですね。たとえば足首がぐらぐらするようなら、足首を安定させるトレーニングを毎日少しずつ取り入れたり。

私は膝が悪いので、膝に負担をかけないために大切なお尻の筋肉やハムストリングを、重点的に鍛えています。自分の弱点と、それを補う方法を知っておくのは、大切なことだと思います。

表現に関する質問も。「上体や腕の使い方で心がけていることはありますか?」
私は若い頃に留学した先で、ロシアやフランスの先生方に、頭と腕を連動させることの大切さを厳しく教わりました。頭と腕をつねに正しい位置に置いて、一緒に動かすこと。とても難しいことですけれど、小さい頃から厳しくやっておくと、そのコーディネーションが動きの基礎になっていきます。この基礎が身についていると、全身を動かしやすくなるんです。本当に大切なことなので、今回行ったワークショップでもかなりしっかりと指導させていただきました。
次の質問は「クラシックとコンテンポラリー・ダンスの両方を、素敵に踊るコツを知りたいです」。クラシックとコンテンポラリーで、身体の使い方はかなり違いますか?
違いますね。クラシックでは重心を上に保つことが大事ですけれど、コンテンポラリーは床を感じ、身体を感じながら踊ることが多いので。ロイヤル・バレエでは、クラシックとコンテンポラリーを同時進行でリハーサルすることがよくあって、みんなひーひー言いながら踊っています。

でもそのいっぽうで、コンテンポラリーを踊ると床と自分の体重を感じて動くので、とても研ぎ澄まされた感覚になる時があって。それはクラシックにも通じるし、こんな身体の使い方があったんだという発見につながったりもします。やったことのない動きに挑戦するのはちょっと怖いけれど、臆せずに踊ってみるのは大事なこと。クラシックとコンテンポラリー、両方にチャレンジしたほうが、表現の幅は間違いなく広がると思います。

茜さんの舞台を拝見していると、役柄を「作った」感じがせず、その人物そのものがそこにいるような自然さがあります。役作りにおいて心がけていることはありますか。
作品によりますが、『マイヤリング』のように事実がもとになった作品は、時代背景や歴史、周りにはどんな人がいたのかを調べてみたりします。その人物がなぜそのような行動をするのか、表面だけ見ているとわからないことも多いのですが、調べていくと役柄の理解が深まって、自分の中にリアリティのようなものができていく。そうすると、物語が本当に起こった出来事みたいに感じられるようになってくるんです。「腑に落ちる」というのが、私がいちばん大事にしていることかもしれません。

キャラクターの外枠だけ作っておいて、相手役のリアクションしだいで即興的に演じるのも楽しいですね。演技がプラン通りに進んでしまうのは不自然かなと思いますので。舞台上で生まれる感情に任せて、「これは今この場で起こっていることだ」と信じられるのが理想の舞台。時には「そうか、こういう気持ちになるんだ!」と、舞台で踊りながら自分で驚く瞬間もあります。

©️Ballet Channel

プロとして歩み始めて……高田茜さんのバレエライフ

ボリショイ・バレエ・アカデミー留学中にローザンヌ国際バレエコンクールで入賞、研修生として英国ロイヤル・バレエに入り、その後すぐ、2009年1月には正式に入団されています。入団から今までの約15年を振り返り、ターニングポイントになった出来事を教えてください。
1つ目は、研修生としてロイヤルに入団した時です。ロシアからイギリスに来て、言語も、周囲の人も環境も大きく変わったので、自分の中の変化も大きかったと思います。

2つ目はやはり、2016年、プリンシパルに昇進した時。もちろんとても嬉しかったけれど、自分は本当にプリンシパルとしてやっていけるのかという不安のほうが大きかったですね。昇進以来、自分は力不足なんじゃないかと悩み、毎回、「今日失敗したらおしまい」というような張り詰めた気持ちで舞台を務めていました。

そのうち、急に「なぜ私はバレエをやっているんだろう」という気持ちになった時期があって。舞台を振り返っても「あそこも、ここもできなかった」とネガティブなほうにばかり考えがいってしまって、バレエを楽しめなくなっていたんですね。

そんな頃、膝の怪我でしばらく休むことになったのですが、復帰の舞台で踊ったのが、2018‐19シーズンの『コッペリア』でした。『コッペリア』はすごく楽しいバレエで、この楽しさを忘れていたな、と思いました。踊るだけでこんなに幸せな気持ちになれるのに、今まで勝手に自分にプレッシャーをかけて、楽しさをお客様に伝えられずに来てしまったなと目が覚めた。この舞台が、3つ目の大きな転機だったと思います。

私はこれまでに何度も怪我をしていて、オフになるたび、自分自身と向き合う時間を与えられています。それはとてもしんどいことですけれど、そこを乗り越えることで、新たな自分を見つけられた気がします。この先のキャリアの中で、どうしたらお客様に楽しんでいただけるか、記憶に残る舞台を作り出せるかということに、集中できるようになったように思います。

©️Ballet Channel

今のお話につながるかと思いますが、「世界の舞台で踊り続けることは、心身ともにとてもハードなことだと思います。茜さんは苦しいな、辛いなと思うことはありますか。あるとしたら、それはどんな時ですか」という質問も来ています。
怪我をしていると痛みもありますし、「周りのみんなはリハーサルや舞台で忙しいのに、自分は何をしてるんだろう」って思ってしまいます。「今は自分を責める時間じゃない」と心の中で何度言い聞かせても、わからず屋の自分がいることがあるんですね。そんな時は、リハビリのコーチやトレーナーの方々が、いつも「怪我で気持ちが落ちるのは当たり前だよ」「ダウンした時は、僕たちにいつでも話してくれていいよ」と言ってくださいます。私は周囲に心配をかけないように振舞うことが多いのですが、しんどさが顔に出ていることがあるのでしょうね。自分は周りの人たちに、すごく恵まれているなって思います。
「メンタル面での、怪我との向き合い方を教えてほしい」という質問も来ていますが、時には周囲の人を頼ることも大事ということでしょうか。
そうですね。それと、怪我をしてバレエに使っていた時間がぽっかり空くと、つい一人でぐるぐる考え込んでしまいがちです。そんな時は、ちょっと自分をほめてあげるのも良いと思います。「こんなにつらいのにリハビリに行くなんて、それだけでも偉いぞ」って。それだけで気持ちが軽くなる時もあります。

それからバレエ以外の「好きなこと」を見つけるのも大切だと思います。じつは、私は最近、Mrs. GREEN APPLEが好きになりまして……先日は横浜のコンサートに行きました(笑)。好きなものが増えるって嬉しいですよね。

「海外で活動するにあたって、苦労したこと」について教えてください。
中学3年生で初めてロシアに留学した時は、寒さや食事の違いだったり、クラスメイトがみんな素晴らしく綺麗な体型の子ばかりだったりとカルチャーショックはありましたが、すごく楽しかった記憶があります。ロシアの先生方は本当にバレエを愛していて情熱的に教えてくださるし、お友達も、私が風邪を引いた時、みんなで大きな蜂蜜のボックスを持ってきてくれたりして、優しい子ばかりでした。

いちばんホームシックになったのは、研修生としてロイヤルに入団した頃かもしれません。同時期に入団した女の子は私一人で、シャイな性格のために気軽に質問できる友だちもなかなかできず、寂しいなと感じていました。

またその年には『白鳥の湖』の群舞を踊ったのですが、振りうつしがなく、いきなり前の人を見て覚える感じだったので、大変でしたね。英語もよくわからず、違う場所に行っちゃったりして「タカダ、どこへ行く!?」って怒られたりしていました(笑)。

「プレッシャーを感じた時のメンタルの保ち方」は?
舞台でベストを尽くしたいと思うほど、自分にプレッシャーをかけてしまうということは、みなさんもあると思います。私が行きついたのは「やはりいかに自分が楽しむか」に集中することです。楽しむ気持ちがないとお客様にも伝わらないし、 気持ちの余裕があってこそ生まれるものもありますから、そこはとても大切にしています。
「バレエを楽しむためにいちばん必要なことは?」という深い質問もいただいています。
身体の感覚が鈍かったりして、思うようにステップができないとやはり楽しめませんので、自由に表現できる身体づくりをしておくことは大事だと思います。私の身体はもともとバレエ向きではなく、人より筋力がつきにくいので、様々な表現ができる身体をしっかりつくっておきたいといつも考えています。
「体調を整えておくために、日頃意識していること」を教えてください。
最近は食べるものや食事のタイミングについて、以前より厳密に考えるようになりました。たとえば翌日に重めのリハーサルがある時は、夜にたんぱく質をしっかり摂ってリカバリーに努めたり。明日頑張るためには、いつ、何を食べようかなと考えながら買い物をしたりしていますね。食事から摂るのが難しいものはサプリメントで補ったりしています。

イギリスって太陽があまり出ないので、カルシウムの吸収に必要なビタミンDを自然に摂ることが難しく、カンパニーからビタミンDのタブレットが配られたりするんですよ。ビタミンDや鉄分はサプリで補うことが多いです。ロイヤル・バレエには栄養士さんがついているので、怪我をするたび、炎症止めになる食材を教えていただくなど、相談に乗ってもらっています。

食生活について、ほかにも意識していることはありますか?
日本にいる時はお食事がすごく美味しいので、「チートデイ」(好きなものを自由に食べて良い日)ということにして、本当に好きなものをたくさん食べています(笑)。 お寿司が好きなので、近所のスシローによく行きますね。
スシロー!(笑)ちなみに好きなお寿司のネタは?
炙りエンガワです(笑)。イギリスの寿司屋さんにはあまりないので、帰国したらここぞとばかりにエンガワを頼みます。

©️Ballet Channel

宝物、リラックス法、好きな役……まだまだいろんな質問が!

ここからラストスパート、さらにみなさんからの質問をどんどんぶつけていきたいと思います。「子どもの頃から大切に持っているものや、宝物はありますか?」
おばあちゃんが作ってくれたお守りは、子どもの頃から大事に持っています。おばあちゃんは自分もバレエをやりたかったけれど、親に反対されてできなかったそうで、いつも私のバレエを応援してくれていました。私がコンクールに出るようになると、自分のお母さんの写真を入れたお守りに「茜がんばれ」と書いたステッカーを貼って、ずっと持っていてくれたんです。おばあちゃんが亡くなってからは私がそれを引き継いで、今も大切にしています。
「いつかロイヤル・オペラハウスで茜さんの舞台を見るのが夢です。ドレスコードや楽しみ方など、日本との違いはありますか?」
ロイヤル・オペラハウスはラフな格好もOKで、Tシャツにジーパンでも全然大丈夫です。ただ、オペラハウスは一歩入ると異空間で、非日常を楽しめる雰囲気になっていますので、自分なりにちょっとドレスアップして行くのがおすすめです。タキシードやお着物で来る方もいらっしゃるんですよ。
「劇場の近くで、おすすめの場所があったら教えてください。」
オペラハウスのあるコヴェント・ガーデンの近くには、たくさんのホテルがあります。コヴェント・ガーデン・ホテルのアフタヌーンティーはすごく美味しいですよ。私はいろんなレストランでお食事をするのが好きで、最近仲良くさせていただいているバーミンガム・ロイヤルのプリンシパルの平田桃子さんと「ここがいいよ」って情報を交換し合っています。イギリスはお食事がいまひとつというイメージがあったけれど、ここ10年でまったく変わり、美味しいレストランがたくさんありますし、ラーメンの一風堂や丸亀製麺など日本のチェーン店も増えました。日本食が恋しい時、こういうお店はありがたいです。
「休日はどのようにリフレッシュしていますか?」
最近は、Mrs. Green AppleのライブのDVDを見ながら、ひとりで踊って歌っています(笑)。あとは、友だちが大きなワンちゃんを飼い始めたので、一緒にお散歩したり。基本的にインドア派なので、よくその友だちに外に連れ出してもらっています。

©️Ballet Channel

「いちばん思い入れのある役や作品は?」
たくさんありますが、やはり昨年東京で踊った『ロミオとジュリエット』です。ロイヤル・バレエの公演として、日本で初めて全幕の主役を踊ることができた作品だったので、ベストを尽くして、お客様に楽しんでいただきたいという思いを強く持って臨んだ舞台でした。みなさまから温かな拍手をいただいて、本当に楽しく踊ることができ、いま思い出しても心が熱くなります。
あの日の舞台は本当に特別で、いち観客としても忘れられません。あのように真に迫る演技するためには、自分の殻を破らなくてはいけない面があるのではと思います。もともとシャイな茜さんが、恥ずかしがらずに演技ができるようになったきっかけはありますか?
ボリショイ・バレエ・アカデミーで学んだ経験が大きかったかもしれません。周りのみなさんが本当に堂々と演技をするので、私も思いきり演じて大丈夫なんだという気持ちにさせてくれました。休み時間に、クラスメイトと遊び半分で『ラ・バヤデール』のガムザッティとニキヤが対決するシーンをやってみたりもしていたんですよ。やっぱり私は演じることが本当に好きだから、ロイヤル・バレエに入団しました。じつはいまでも、仲良しのジェームズ・ヘイと「ガムザッティ&ニキヤごっこ」をよくやっています(笑)。「どっちで行く?」「今日は私がガムザッティで」なんて言いながら。
ジェームズ・ヘイさん、ニキヤもガムザッティも上手そうです(笑)。次の質問は「好きなヴァリエーションは何ですか?」
ウィールドン振付『冬物語』のパーディタのソロは好きですね。クラシックとは少し違う、彼特有の動きがあって、最初は大丈夫かなと思ったのですが、踊ってみるとしっくりきてとても楽しいんです。来シーズンの最初の作品『不思議の国のアリス』もそうですが、彼の作品にはいつもびっくりさせられます。
「来シーズン楽しみにしている演目は?」
まずは『不思議の国のアリス』です。この舞台で復帰できたらいいなと思っています。『アリス』は、ロイヤルでは2017年以来の再演になるんですよ。私は前回、カード(トランプ)の「7」の役でした。カード役は頭に数字の髪飾りをつけるのですが、ロイヤルの場合、何の数字をつけるかはダンサーが自分で自由に選ぶんです。縦長の形をしている「7」は、パートナーとぶつかって踊りにくいせいか不人気で、いつも最後まで残っているんです。私はのんびりしているから、気づくといつも7しか残っていなくて、「7」の役でした(笑)。
「いつか踊ってみたい 夢の役、作品はありますか?」
いま踊れていないからこそ、舞台に立ちたい、リハーサルをしたいという気持ちが大きいんですね。ここ1年、リハビリ用の小さなスタジオでずっとトレーニングをしていたので、大きなスタジオで、何かひとつの作品をクリエーションしてみたい。私はリハーサルが好きなほうなので、スタジオにいる時間そのものが本当に楽しいです。
最後に、これからのバレエ人生であらためて目指していきたいこと、目標を聞かせてください。
リハビリ・コーチのブライアン・マロニー先生とトレーニングをしていると、誰よりもダンサーの気持ちを理解し、つねにダンサー側に立って動いてくださっていることを感じます。組織の中では難しい面もあると思いますが、私も将来的には、ダンサー側に立って、自分の持っているものを精一杯伝えるコーチの立場になれたら、と思います。いっぽうではバレエとまったく違うことにも興味があるのですが、何をするにせよ、人の痛みがわかる人間でありたいです。そのためには、自分の思い通りにならない、うまくいかない時間もすごく大事なのだと思っています。

イベント終了後に ©️Ballet Channel

この記事を書いた人 このライターの記事一覧

東京都八王子市在住。早稲田大学第一文学部美術史専修卒、会社員を経てフリーに。盆踊り、フラメンコ、HIPHOPなど踊りはなんでも好きで、大人バレエを細々と続けている。 https://twitter.com/kayas05114080

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