左から:アレクサンドル・リアブコ、シルヴィア・アッツォーニ、ロベルト・ボッレ
昨日(7月31日)初日を迎えた今夏注目の公演「フェリ,ボッレ&フレンズ 〜レジェンドたちの奇跡の夏〜」。
前半のAプロ(8月3日まで)ではフェリ&ボッレによる『マルグリットとアルマン』など話題の演目が続々と上演され、後半のBプロ(8月3日・4日)ではフェリの復帰作のひとつ『フラトレス』など、ノイマイヤー作品を中心としたプログラムが予定されています。
〈バレエチャンネル〉では開幕直前に東京バレエ団のスタジオで行われていたリハーサルを取材。
舞台写真家・瀬戸秀美さんに、ダンサーたちの姿を撮影していただきました。
その素晴らしい写真の数々を、出演ダンサーたちへのインタビューと共に、本日より3日間連続でお届けします。
***
リハーサル風景 vol.1 〜「オルフェウス」よりパ・ド・ドゥ、「アミ」ほか
撮影:瀬戸秀美
●「オルフェウス」よりパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキーほか
出演:ロベルト・ボッレ&シルヴィア・アッツォーニ
●「アミ」
振付:マルセロ・ゴメス
音楽:フレデリック・ショパン
出演:マルセロ・ゴメス&アレクサンドル・リアブコ
出演者インタビュー
シルヴィア・アッツォーニ&アレクサンドル・リアブコ
- Aプロ、Bプロのラインナップを見た時、おふたりが踊る演目数の多さに驚きました!
- アッツォーニ ええ、本当にたくさんの作品を踊ります。
リアブコ 僕らにとっては大きな公演になりましたね。
- しかも、日本の観客にとっては目新しい作品が数多くあります。
- アッツォーニ 私たちはもう数えきれないほど何度も日本を訪れていますが、いつも心に決めていることがひとつあります。それは、観客のみなさんにとって何か新しいもの、新鮮なもの、みなさんが見たことのないもの、私たちが踊ったことのないものをお見せしよう、ということです。何を踊ればみなさんにとってその晩が特別な舞台になるだろうかと、こうして日本に戻ってくるたびにいつも考えています。
さらに今回は通常よりも少し早く来日してリハーサルをする時間を取れたので、これまであまり一緒に踊ったことのなかったダンサーとのコラボレーションもお見せすることができます。
- ご自身たちが踊る作品のなかのいくつかについて、見どころや魅力などを教えてください。
- リアブコ まずはやはり、今回みなさんに初めてお見せする演目についてご紹介したいと思います。ひとつは、僕がマルセロ・ゴメスと一緒に踊る『アミ』(Aプロ)。僕は以前マルセロがこの作品を踊るのを観たことがあったのですが、男性同士で踊る本当に素敵なパ・ド・ドゥで、「僕もぜひ踊ってみたい!」とずっと願ってきました。それが今回ついに叶います。 パ・ド・ドゥ、つまりふたりで踊ることの最大の魅力は、パートナーごとに違う化学反応が生まれること。いまはマルセロと、他の誰と踊る時とも異なる感覚を探り合い、味わいながら踊っています。また、彼はこの作品を振付けた本人でもあるので、今回少しだけ手を加え、いわばニューバージョンの『アミ』にしてくれています。
アッツォーニ “アミ”は“友達”という意味です。実際、サーシャ(アレクサンドルの愛称)と私にとってマルセロはずっとずっと昔からの友達なんですよ。ふたりが踊っているのを見ると、その友情の深さや温かさが、彼らの肌を通して伝わってきます。
そして私自身もマルセロと踊ります。リッカルド・グラツィアーノ振付『アモローサ』(Bプロ)という作品。マルセロはとてもしなやかな感性と優れた音楽性を持ったダンサーで、非常に情熱的でもあります。だから彼とはすぐにピタリと呼吸が合うんですよ。
- リアブコ もちろんシルヴィアと僕のパ・ド・ドゥでも、新しい演目をお見せします。ナタリア・ホレチナ振付『フォーリング・フォー・ジ・アート・オブ・フライング』(Aプロ)。これも僕らにとって特別な作品。ナタリアはもともとハンブルク・バレエのダンサーで、僕らと一緒に踊っていた古い友人なんです。ハンブルクを去った後はしばらくネザーランド・ダンス・シアター(NDT)で踊り、のちにフリーランスの振付家になったのですが。『フォーリング・フォー・ジ・アート・オブ・フライング』は昨年10月に上演したばかりの新しい作品で、もともとはパ・ド・カトル(4人の踊り)なんです。それをパ・ド・ドゥの形にアレンジしたものを今回はお見せします。音楽が素晴らしくて、なんというか……空気のように軽くて、神秘的で、この世のものではないような雰囲気の作品。
アッツォーニ 振付としては、“コンテンポラリー”というよりも、“ネオ・クラシック”という雰囲気かしら。
リアブコ 僕は“ダッチ・モダン”の影響を感じます。というのも彼女はいまオランダに在住しているので。
- 個人的にとても楽しみにしている演目のひとつは、アッツォーニさんとリアブコさんがふたりで踊る『アルルの女』(振付:ローラン・プティ)です。
- リアブコ 数年前に一度日本で踊りましたが、あの時が正真正銘、初めてのチャレンジでした。みなさんご存じの通り、これはもともと1幕物のバレエ。僕は残念ながらまだ抜粋しか踊ったことがありませんが、たった一部だけでも非常にドラマティックにストーリーを物語ることができる。プティが遺してくれた真の傑作だと思います。
今回はこの作品の権利保持者でありプティ作品を誰よりも深く知り尽くしているルイジ・ボニーノにあらためて指導してもらいました。この作品を踊れるのは本当に大きな喜びであり、エキサイティングでもありますが、同時に本当に難しいチャレンジでもあります。何しろ、大変なスタミナと技術が必要。ありとあらゆることを精確に行わなくてはいけない。やりすぎてもいけないし、やらなすぎてもいけない。そして、最後のクライマックスに向けてどんどん加速していくけれども、決して焦ってはいけない。
- アッツォーニ 『アルルの女』に限らないことですが、作品の一部だけを抜粋して踊るというのは、今回のようなガラ公演でいちばん難しいことのひとつです。観客のみなさんに、たった10分の踊りで、その物語のすべてを観たかのように感じさせなくてはいけないから。しかも、今回もそうですけれど、ひと晩のうちにいろいろな作品を踊るでしょう? 私たちは一瞬でパチン!と感情を切り替えて役柄に没入し、最もドラマティックな瞬間を踊るんです。
でも、それもすごく楽しい。私たちはキャリアを通して本当にたくさんの役を踊ってきました。そのおかげで、まるで自分のなかに小さな鞄があって、そのなかにいろんな役や感情や感覚やテイストなどがいっぱい詰まっているみたいな気がするんです。そこからその時どきで必要なものをポン!と取り出して、演じるべきものに集中する。そして舞台に立ち、ドラマが始まれば、動きの一つひとつがオーラを纏って光輝き始めるーーそんなイメージを持っています。10分なら10分というとても短くてインテンシヴな瞬間だからこそ、一作品ごとの爆発力は大きいとも言える。それが今回のようなガラ公演ならではの美しさだと思います。
- 最後に、アレッサンドラ・フェリとロベルト・ボッレについて、思いを聞かせてください。
- アッツォーニ フェリとボッレ。この驚くべきダンサーたちの仲間として舞台に立てることを、心から嬉しく思っています。私もふたりと同じくイタリア人で、若い頃からずっとお互いの踊りを見てきました。私たちはみんな比較的早いうちに海外に出て、それぞれの場所で活躍するようになったけれど、日本をはじめ世界のいろいろな舞台で一緒になりました。そうした機会を通して共有してきた素敵な経験、思い出、感情といったものもたっぷり込めながら、今回は踊りたいと思います。
公演情報
「フェリ,ボッレ 〜レジェンドたちの奇跡の夏〜」