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【レポート】バレエシャンブルウエスト「第30回 The清里フィールドバレエ」記者懇親会

若松圭子 Keiko WAKAMATSU

(昨年の公演より 提供:バレエシャンブルウエスト)

毎夏、清里の森に12日間だけ現れる野外バレエ劇場――バレエシャンブルウエストが主催する「The 清里フィールドバレエ」が今年で30回目を迎える。記念すべき今夏の公演概要を発表する記者懇親会が、東京・ハリウッドプラザにて行われた。

登壇者は以下の6名。

今村博明(バレエシャンブルウエスト総監督)
川口ゆり子(バレエシャンブルウエスト芸術監督)
舩木上次(萌木の村代表・清里フィールドバレエ実行委員長)
深沢祥子(バレエシャンブルウエストソリスト)
川口まり(バレエシャンブルウエストソリスト)
染谷野委(バレエシャンブルウエストソリスト)

先ずは総監督である今村博明より、清里フィールドバレエ開催のきっかけが語られた。
今村 清里フィールドバレエのきっかけは3つあると思います。
先ず第1に、清里の自然が美しくて、そのなかでお客様にバレエをお見せしたいという気持ちになったこと。
そして2つ目に、私と川口(ゆり子)がフランスで野外バレエを経験させて頂き、是非日本でもやってみたいという思いがあったということ。
3つ目は開催地、清里萌木の村の開拓精神「一流を目指す」が、私たちアーティストの目指すものと一致して心が通い、ここでバレエをやりたいなと思ったことにありますが、実はもっと古い話があります。
40年前、牧阿佐美バレヱ団時代に親しかった同僚(舩木洋子)が結婚して清里へ行きました。彼女に会いに行こうと初めて清里を訪れた時、その自然の美しさ、そして彼女が小さな稽古場で、子どもたちを集めてバレエを続けてくれていたという現状に接して、是非ここで公演をやりたいと思いました。その彼女の旦那さまがここにいる萌木の村の創業者、舩木上次さんです。
舩木さんと出会った、萌木の村という素晴らしい会場があった、ということが、清里フィールドバレエ開催の一番のきっかけになったのだと思います。

(昨年の公演より 提供:バレエシャンブルウエスト)

次に舩木上次より、清里が開拓されてから今までの流れ、今村・川口両氏との出会い、また清里フィールドバレエの開催によって、そこに住む人々の心の豊かさが育ち、バレエによって地方創成の柱になりつつあるということが語られた。

上演演目、出演者について

今回の公演は3作品。

1つ目は『眠れる森の美女』。これは清里フィールドバレエ用に作られた新演出・構成作品となる。オーロラ姫は4ステージそれぞれ異なるダンサーが出演する。

川口ゆり子 30周年記念公演『眠れる森の美女』は、本当に豪華で美しい古典の名作で、ダンサーの技量が試される作品です。大勢の素晴らしいダンサーがいなければできないこの作品を今回上演できることを本当に嬉しく、また誇りに思います。 

深沢 『眠れる森の美女』という作品は、どのシーンもオーロラ姫を取り巻く愛情、そして幸福感にあふれています。その世界を後押ししてくれるのが、舞台ばかりか客席をも包み込む清里の大自然です。もしかすると妖精が隣にいて、ささやいてくれるかもしれません(笑)。清里フィールドバレエも、30年かけてこの大自然と共に育ってきました。『眠れる森の美女』はオーロラ姫の成長のお話でもあります。この作品と清里フィールドバレエの成長を重ねて、皆さんに愛をお届けできたらいいなと思います。

今村 清里フィールドバレエは、公演を2時間以内に終えなければいけません。そこで『眠れる森の美女』は、すべてのストーリーが分かるように、プロローグ、1幕、2幕、3幕全てのシーンを抜粋して、しかしお話がちゃんと伝わるように演出を考えています。また100年という時代の変化は、装置ではなく色彩でお見せしたいと思っています。私は文化学園大学国際ファッション科で卒業制作に少し携わってもおりますので、そちらからご衣裳をお借りして、ファッションによる色彩の時差とバレエのコラボレーションでお届けしたいと考えております。

2つ目は『ドン・キホーテ』。昨年上演して好評を博し、今回は4回上演する予定。こちらもキトリ役は4人のダンサーが日替わりで務める。

(昨年の公演より 提供:バレエシャンブルウエスト)

川口まり 清里フィールドバレエの『ドン・キホーテ』は、ロシアのモスクワ・クラシカルバレエ団でご活躍されていたイルギス・ガリムーリン先生と成澤淑榮先生に振付けて頂いた作品です。ロシアらしくとてもアクロバティックで、またコミカルで、ドン・キホーテや(舩木)上次さんのようなサンチョ・パンサという(笑)太っちょな、食いしん坊な役柄がいたり、とても楽しいと思います。ドン・キホーテの夢のシーンはとても幻想的で、ダンサー達はホントに美しくて……そんな美しいなかでも腕に虫がとまって「どっか行って!」と思いつつも(笑)平然と踊っているダンサーも見どころだと思います(会場 笑)

3つ目は『30thスペシャルガラ』。バレエシャンブルウエストのダンサーたちに加え、新国立劇場バレエ団より小野絢子と福岡雄大(8/1のみ)、谷桃子バレエ団より永橋あゆみと今井智也、牧阿佐美バレヱ団より青山季可と菊地研、スターダンサーズ・バレエ団より塩谷綾菜と高谷遼、そして東京バレエ団からは上野水香(8/10のみ)と、豪華なプリンシパル・ダンサーたちも出演する。

染谷 僕が今回いちばんの目玉だと思っているのが、この『30thスペシャルガラ』です。日本を代表するスーパースターが、一挙に集まってくれました。この凄さ……イチローと松井、ベッカムとロナウドが同じチームでプレイするようなイメージを持っていただければ(笑)。そんなスーパースターが山奥まで来て、野外ですごい踊りを見せてくれる。彼らの持っているエネルギーと、この清里の土地のエネルギーが、フィールドバレエで化学反応を起こしてくれると確信しています。

深沢 他のバレエ団の素晴らしい方々と一緒に踊れることは本当に嬉しいです。私としては、いいところを盗みたいなと思っています。それを自分に取り入れて、今後、目標にしていきたいなと思います。

最後に川口ゆり子芸術監督から、清里フィールドバレエへの思いが語られた。

川口ゆり子 私どもバレエシャンブルウエストは30周年を迎えました。清里フィールドバレエも萌木の村の大きな大きな力を頂いて、共に30年やってきました。今回は『スペシャルガラ』を始め、素晴らしいゲストの皆さんに来て頂きました。一緒に踊れてよかった、ここで踊ってよかったと思って頂けるような舞台を作りたいと思いますし、これからも続けて参りたいと思います。

自分の出番がない時、みんなの様子が心配で見守るのですが、萌木の村の野外公演は星空と舞台が本当に綺麗で、なんでも許されてしまうような感覚も持てるんですね。お客さまにもそれを感じて頂き、ご自分を癒していただければ。これも清里ならではです。

私たちみんなで頑張りますので、どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

記者との質疑応答

――野外での舞台ならではの苦労は?

染谷 あんまりネガティブなことは言わないようにしていたんですけれども(笑)。先ず、標高が高く疲れが来るのが速いです。だんだん慣れてくるんですけれども、最初のうちは少し大変。初出演の方の中には、頭痛で休憩が必要となる場合もあります。あと寒い日はすごく寒いですね。夏なのにベンチコートを着る日もありますので。
公演中に関しては、たとえば野外ゆえの夜露などは、舞台に水分が飛ぶような工夫がされ、ダンサーは伸び伸びと踊らせてもらっています。ただ、ライトにどうしても虫が寄ってきちゃうんですね。でも見えないフリして踊っています。ここ(額)にカブトムシがとまっても(会場 笑)。 

川口ゆり子 踊り手の方は空間が広くて、中心を取るのが難しいです。でもそれを踊りきったときに、本当にみんな成長して。ですから今回のゲストの方たちが最後により成長した素晴らしい力も楽しみにしたいと思っております。

――何度か公演を拝見し、どうしても克服できないのが雨かと思います。ただ、雨で中止になっても、お客様の間に「また次がある、また来よう」という空気が漂うことが感動的でした。具体的にはどんなお客様が来るのでしょうか?

今村 毎回来ていますというお客さまもいますし、今年初めて来ました、去年見た人の話を聞いて来ました、などいろいろなお客様がいます。子ども料金の設定もあるので、子どもの成長に合わせてのご家族連れもいらっしゃいます。ただ1回見てリピートされる方は少なくありませんね。天候についてもご理解くださって、晴れているのに雨具を持って来てくださるお客さまもたくさんいらっしゃいます。

舩木 開始当初、地元の人たちは「バレエは都会の人が見るものだ、俺たちには関係ない」と言っておりました。友人を何回も誘うと仕方なく来てくれました。今、その友人は、孫を連れてバレエを観に行きます。あの時バレエなんかと言っていた田舎のおじいちゃんが「子どものときに見せとかなきゃダメだ」と。そんな人たちがたくさん来るようになってくれていると思います。清里フィールドバレエは、開拓であり、冒険だと思っております。雨が降ったらすべてゼロ。東京の劇場は安全安心ですが、僕たちのところはいつも波乱万丈です。そして時には、涙することもあります。川口まりさんは、主役を頂いたある年、雨でその公演が中止になりました。でも、私はそんな経験が彼女たちを育てているのではないかと思います。今の時代は無難を求めがちですけれど、僕たちは開拓者であり、冒険をこれからも求め続けて、その冒険の感動を伝えたい。リスクはあっても、その感動を知っている人たちが、また継続してバレエの良さを伝えてくれるのではないかと思っています。

今村 野外ですから緞帳がなく、お客さまとの交流も深いです。曇り空で雨がぽつぽつ来ると、客席もダンサーもスタッフも全員が祈ります。客席と舞台が繋がって、心の交流があって、共に過ごすとても幸せな時間が体感できるかな、と思っています。

***

公演は7月30日から8月10日の全12日間。
『眠れる森の美女』『ドン・キホーテ』『30thスペシャルガラ』を、連日交互に上演するので、清里に3日滞在すれば、全て違う作品を楽しめる。

(昨年の公演より 提供:バレエシャンブルウエスト)

日 時 2019年7月30日(火)~8月10日(土)
開演時間 19:00
会 場 清里高原 萌木の村 特設野外劇場
前 売 5月20日
公演特設サイト https://fieldballet.com/
主催者サイト http://www.chambreouest.com/

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