ニーナ・アナニアシヴィリ
ジョージア(グルジア)が生んだ世界的スター・バレリーナ、ニーナ・アナニアシヴィリ。彼女が特別審査員を務めるバレエコンクール「ラマジーバレエコンペティション with ニーナ・アナニアシヴィリ」が、2022年8月、大阪と東京で開催されます。
日程は、
- 8月3日(水)・6日(土):大阪・サーティホールにて
- 8月9日(火):東京・タワーホール船堀にて
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また、同コンクールの関連企画として、ニーナ・アナニアシヴィリ指導によるワークショップも、全国各地(愛知、大阪、東京、栃木)で開催されます。
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コンクールの審査&ワークショップ指導のために間もなく来日するニーナ・アナニアシヴィリに、コンクール開催への思いやバレエを志す若い世代に伝えたいこと等について、お話を伺いました。
インタビューは、ジョージアにいるニーナさんとリモートで繋いで行いました
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- ニーナさん、今日はお時間をいただきありがとうございます。コロナ禍の影響もあり、私たち日本のファンもニーナさんの姿を久しく拝見できていませんが、お元気でしたか?
- ええ、おかげさまで元気にしています。もう2年半もコロナ禍に閉じ込められていて、私は本当に日本のみなさんのことが恋しいです。でもこうしてリモートでお話ししていると距離を感じませんね。
- でもこの夏はついに、リモートではなくリアルでニーナさんに会えるそうですね。大阪(8月3日・6日)と東京(8月9日)で「ラマジーバレエコンペティション with ニーナ・アナニアシヴィリ」を開催。その関連企画として各地で講習会も企画されています。
- そうなんです! とくにこの2022年はジョージアと日本の外交関係樹立30周年を迎える年。こんなに素晴らしいことがあるかしら。本当に、本当に楽しみです。もはや言うまでもないことですが、私は日本が大好きで、日本の人々や日本のファンのみなさんを愛しています。そして私の夫がジョージアの外務大臣だった時代に、蒲原正義さんが初の在ジョージア日本大使として日本大使館をここジョージアに開設してくださったことを、私はとても誇りに思っています。じつは今回のラマジーバレエコンペティションの実行委員会会長である蒲原純子さんは、その蒲原初代大使の妻なんですよ。純子さんはこのコンペティションの発案者であり、協力してくださるみなさんと一緒にとても献身的に準備をしてくださっています。まずは今夏日本で開催して、ゆくゆくはジョージアでも開催したいと考えているようです。
- 「ラマジーバレエコンペティション」の「ラマジー」とはどういう意味ですか?
- ジョージア語で「美しい」という意味です。純子さんたちから「新しいバレエコンクールはジョージア語を用いた名前にしたい」と相談があり、私は「ラマジー」という言葉を選びました。その理由はもちろん、バレエは美しい芸術だから。そしてこのコンクールに参加してくれるみなさんも、きっと美しい踊りを見せてくれるはずですからね(笑)。でも本当に、入賞する・しないは関係なく、今回の経験を通してみなさんはより美しく変化するはず。私は自分がこれまで得てきた知識や経験、素晴らしい先生方から教わってきたことを、若いダンサーやバレエを学ぶ子どもたちに与えるのが大好きです。ですからこの夏のコンクールや講習会でどんなことが起こり、どんな結果をもたらすのか、私自身とても楽しみにしています。
- ニーナさんは、「バレエコンクール」というものの意義をどのように考えていらっしゃいますか?
- 世界には、とりわけ日本には、本当にたくさんのバレエコンクールがありますね。この状況を「こんなにコンクールがあるなんて……」と嘆く人もいると、以前同僚から聞いたことがあります。確かにその通りでしょう。でも、だからこそ良い点もあると思うのです。なぜなら若い世代にとっては、自分をアピールしてチャンスをつかむ機会になるからです。日本を含めて、国公立のバレエ学校がない国はたくさんあります。そうした状況のなかで、その子が通っているスクールが国公立であれ私立であれ、実力さえあれば平等に挑戦する機会を得られるもの、それが昨今のコンクールではないでしょうか。これはバレエを教える先生方にとっても非常に良いことだと思いますよ。なぜなら先生方もまた、自分たちの教育のレベルやプロフェッショナルさをそこで示すことができるのですから。
またバレエコンクールは、子どもたちが将来舞台に立つための手助けにもなります。子どもたちには、舞台で踊る経験が必要なのです。私が幼い頃は、ボリショイ劇場やその他の場所で頻繁にガラ公演があり、私はいつもその舞台で踊っていました。しかしそのような機会に恵まれたのは、私がボリショイ・バレエ・アカデミーという国立の大きなバレエ学校に通っていたから。学校の中にすら、小さな舞台がありましたからね。でも、私設の小規模なバレエスクールの生徒たちには、そのような環境はありません。ですから、コンクールとは可能性のある子供たちに舞台でパフォーマンスする機会を与えるもの。私はそのように捉えています。
- ラマジーバレエコンクールでは、ニーナさんは特別審査員を務めます。ニーナさんは審査をする時、主にどのような点に注目しますか?
- 審査することは簡単ではありません。とくに子どもたちを審査するのは非常に難しい。まずはその子が持っている可能性、ポテンシャルを見なくてはいけません。そして、現時点でどの程度の技術レベルに達しているかも。骨格などの条件や、身体的な美しさも大切ですし、もちろん芸術性も。バレエとはとても「ラマジーな」、つまり美しい仕事です。しかし同時に、極めて大変な仕事でもあります。これほどのことを若いダンサーに要求するのは酷なことですが、その子が将来本当にプロフェッショナルな仕事をしていくためには、これらのすべてを備えていなくてはいけません。例えばどんなにオペラ歌手になりたいと思っても、美しい声を持っていなければ決してプロのオペラ歌手になることはできませんよね。それと同じです。バレエは本当に大変な仕事です。
- ニーナさんはかねてより「日本におけるバレエ教育のシステムは、まだまだ改善の余地がある。日本人のダンサーはもっと向上できる」とおっしゃっていると聞きました。そのことについて詳しく聞かせていただけますか。
- これは日本だけについて言うのではなく、もっと広く一般的に当てはまることなのですが、子どもたちへの教育は「体系的」でなくてはいけません。バレエ学校は、クラシック・バレエだけを教えればいい、クラシック・バレエの基礎を訓練すればそれで終わり、というわけではないのです。例えばヒストリカル・ダンスやキャラクター・ダンス、そういったものも一緒に教えなくてはいけません。モスクワ(ボリショイ・バレエ・アカデミー)やサンクトペテルブルク(ワガノワ・バレエ・アカデミー)、あるいはパリ・オペラ座バレエ学校は互いに異なる教育システムを持っていますが、それぞれが独自の教育体系を築いていますよね。それは2年間で修了するようなものではなく、8年、10年とかかるものです。じっくりと時間をかけて、バレエダンサーに必要な技術や知識、教養といったものを身につけさせるのです。
これも一般的に言えることですが、例えば『眠れる森の美女』のオーロラ姫のヴァリエーション、これはコンクールでもたくさんの少女たちが踊る曲ですが、多くの子どもたちは技術的にはきちんと踊っていても、「自分が誰なのか」を理解していません。先生に教わったテクニックを、教わった通りに繰り返しているだけ。そんなふうに見えることがしばしばあります。それではいけません。バレエ教育の中で、作品や役、動きのもつ意味について、もっと深い知識を身につけさせていく必要があるのです。
- ニーナさんは、トビリシ(ジョージアの首都)と日本の両方にバレエ学校を作りたいという夢を持っていらっしゃるそうですね。
- そのことを聞いてくれて嬉しいわ!(笑)そうなんです、なぜならトビリシに留学したいと思っている日本人がたくさんいるので、そういう子どもたちの力になりたいんです。もちろんトビリシにはすでにジョージア国立バレエ学校がありますが、これは国立の学校であり、寮がありません。子どもたちを受け入れるには、寮はもちろんのこと、彼ら・彼女らが安心して生活できるための設備をすべて揃えなくてはいけません。理想的な学校を作るには莫大な費用がかかりますから、これはまだ夢の段階。将来的に、しかるべきスポンサーを見つけて、叶えられたらいいなと思っています。
でも、自立して生活できる18歳以上の若いダンサーたち向けのプログラムはすでに作っています。研修生という立場でカンパニーで経験を積めるというもので、これまで7〜8名の日本人ダンサーを受け入れています。このプログラムはちょうど学校とバレエ団の橋渡し的な位置付けで、18歳から25歳までの若いダンサーが対象。今はコロナの影響でちょっとストップしていますが、願わくば今度の9月から再開できるのではと思っています。また、今回のラマジーバレエコンペティションでも、とくに優秀な人がいたら、短期または長期でトビリシに招くこともあるかもしれません。
- ちなみに、ニーナさん自身もボリショイ・バレエ学校在学中の1980年にヴァルナ国際バレエコンクールで金賞を受賞するなど輝かしいコンクール経験をお持ちですが、いまでも印象的に覚えていることはありますか?
- 今と違って、当時は世界を見渡してもほんの幾つかしかバレエコンクールが存在しませんでした。ですからコンクールというのは出場することじたいが本当に難しかったですね。ものすごくお金もかかりましたし、私たちの場合はまず政府から許可を得なくては出場できなかったんですよ。でも当時のことで、いつも懐かしく思い出すことがあります。私にとって初めてのコンクールは16歳で出場したそのヴァルナで、そこには日本人の方も何人か観に来ていました。その翌年の1981年に出場したモスクワ国際バレエコンクールでも、また同じ日本人の方にお会いしたんです。その方は日本の生徒さんたちをロシアに連れてきているバレエの先生だったのですが、彼女が私に小さなプレゼントをくれました。それは針と糸とハサミが入った小さなお財布で、当時はそんなかわいらしい裁縫セットを見たことがなかったから、とても嬉しかったの。以来その小さなお財布をどこへ旅するにも持っていきましたし、今でも大事に持っています。
- ニーナさんが10代だったその頃のバレエと、今の10代の子どもたちのバレエを比べて、変化を感じることはありますか?
- これもまた一般的に言えば、ですが、技術的なレベルは間違いなく上がっています。それこそ今の子どもたちはコンクール経験も豊富ですし、優れたスクール、優れた教師も増えています。ただ、芸術的な面も同じようにレベルアップしているかというと、そこは逆に少し欠けているように思います。とくに若い人たちは、条件の良い美しい脚があればバレリーナになれると考えがちですが、それは間違いです。お芝居をすること、音楽を聴くこと、腕を美しく運ぶこと、他にもたくさんのことが必要です。もちろん、テクニックもとても大切ですよ。だけどそこに感動が伴わなかったら、それは芸術とは言えません。このことを、私たちは若い世代に教えていかなくてはいけないと思っています。
- 最後に、ラマジーバレエコンペティションに出場する若いみなさんにメッセージをお願いします。
- みなさんの踊りを観て、そのあとにはできるだけ一人ひとりにアドバイスできたらと思っています。小さなバレリーナとバレエダンサーのみなさん、がんばってください! 8月に日本でお会いしましょう。
コンクール情報
ラマジーバレエコンペティション with ニーナ・アナニアシヴィリ
●最新情報・詳細は必ず公式ウェブサイトをご確認ください
●問合せ先:
ラマジーバレエコンペティション実行委員会事務局
電話 070-8587-0328
8月3日(水)大阪・サーティホール
- いずれの部門も1回の演技披露及び審査
- 同日審査終了後、表彰式を開催
- 該当者には8月7日のエキシビションへの出場権が与えられる
プレバレエ部門 |
プレバレエ1
小学1-3年 男女 |
プレバレエ2
小学4-6年 男女 |
プレバレエ3
中学生 男女 |
女性部門(トウシューズ) |
ジュニア1
小学4・5年 |
★ジュニア2
小学6年・中学1年 |
★ジュニア3
中学2・3年 |
※ニーナ・アナニアシヴィリ特別審査員 審査対象部門は★印分のみ
8月6日 大阪・サーティホール
- いずれの部門も1回の演技披露及び審査
- 同日審査終了後、表彰式を開催
- 該当者には8月7日のエキシビションへの出場権が与えられる
女性部門(トウシューズ) |
★ジュニア4
高校1-3年 |
★シニア1
30歳まで |
|
|
男性部門 |
ジュニア5
小学1-6年 |
★ジュニア6
中学1-3年 |
★ジュニア7
高校1-3年 |
★シニア2
30歳まで |
※ニーナ・アナニアシヴィリ特別審査員 審査対象部門は★印分のみ
8月9日 東京・タワーホール船堀
- 1回の演技披露及び審査
- 同日審査終了後、表彰式を開催
- 東京開催は1日で全部門を行うため、定員に達した時点で受付締切の可能性あり
プレバレエ部門 |
プレバレエ1
小学1-3年 男女 |
プレバレエ2
小学4-5年 男女 |
プレバレエ3
中学生 男女 |
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女性部門(トウシューズ) |
ジュニア1
小学4・5年 |
★ジュニア2
小学6年・中学1年 |
★ジュニア3
中学2・3年 |
★ジュニア4
高校1-3年 |
★シニア1
30歳まで |
男性部門 |
ジュニア5
小学1-6年 |
★ジュニア6
中学1-3年 |
★ジュニア7
高校1-3年 |
★シニア2
30歳まで |
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※ニーナ・アナニアシヴィリ特別審査員 審査対象部門は★印分のみ
【NEWS】ニーナ・アナニアシヴィリもトークに登場! 1日限りのコンサートも開催決定
日本とジョージアの国交樹立30周年を記念して、音楽コンサート「SUMMER ART & MUSIC FEST with Nina Ananiashvili」も開催されます。
出演はトビリシカルテットと太鼓芸能集団 鼓動。トビリシカルテットはジョージアの曲も演奏予定。
このコンサートにはニーナ・アナニアシヴィリも登場! トビリシカルテットのメンバーとのトークを予定しているそう。
●問合せ先:
一般社団法人日本ジョージア文化交流協会
電話 03-3306-0900