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【バレエホリデイSP】OSK日本歌劇団 男役スター登堂結斗インタビュー “私たちはパッションのある歌劇団。パワフルな歌とダンスをお届けします”

阿部さや子 Sayako ABE

4月29日、〈上野の森バレエホリデイ2022〉で上演されるOSK日本歌劇団「Precious Stones」前半の一場面。バレエ、ジャズ、ヒップホップ……いろんなテイストが溶け合った、パワフルなダンスのオンパレード!  写真中央:登堂結斗(とうどう・ゆいと) 後列左から:瀧登有真(たきと・ゆうま)、蘭ちさと、花うらら、琴海沙羅(ことみ・さら) 提供:OSK日本歌劇団

1922年(大正11年)、伝説のバレリーナ、アンナ・パヴロワが来日したその年に、大阪の天下茶屋に設立された「松竹楽劇部生徒養成所」。
そこから、「OSK日本歌劇団(略称:OSK)」の100年の歴史は始まりました。

翌1923年に行われた第1回公演は、バレエ風の洋舞『アルルの女』。以降、トウシューズでつま先立って踊る「トウダンス」や、ローラースケートで舞うワルツの群舞、歌舞伎をベースにしたレビューなど、時代の流行や斬新なアイディアを取り入れたショーで人々を楽しませ、とくに「ダンスのOSK」と賞されるクオリティの高いダンスで大人気に。
「少女歌劇」の代表的劇団のひとつとして、独自の舞台文化を築いてきました。

しかしその歴史は波瀾万丈。なかでも2003年(平成15年)、当時の親会社だった近鉄の支援打ち切りにより解散となったことは、団員にもファンにも大きな衝撃を与えました。
それでも諦めず、存続のために立ち上がった団員たちは、20万人の署名と支援者たちの力を得て自力で活動を再開。蘇ったOSKはそれまで以上に熱くたくましいステージで着実にファンを増やし、ついに今年、創立100周年を迎えました。

このOSKのメンバーによるスペシャルステージが、東京・上野の東京文化会館で開催される〈上野の森バレエホリデイ2022で実現することに!
2022年4月29日(土)、登堂結斗・琴海沙羅・蘭ちさと・瀧登有真・花うららの5人によるミニ・レビュー・ショー「Precious Stones(プレシャス・ストーンズ)」が、バレエホリデイ特別バージョンで上演されます。

4月上旬、OSKの選抜メンバーが週5日(水曜日〜日曜日)、1日4公演を行っている大阪・心斎橋〈OSKレビューカフェ in ブルックリンパーラー〉で、この「Precious Stones」をひと足先に鑑賞。終演後、主演の男役スター・登堂結斗さんにインタビューしました!

登堂結斗さんは宮城県塩釜市出身。2014年入団。見上げるような長身、八頭身の美しいスタイルに目を奪われる麗しい男役! ©︎Ballet Channel

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「Precious Stones」、心躍る熱いショーでした!
ありがとうございます!
そのセンターを務める登堂結斗さんは、手元の決まり具合や脚のラインの見せ方がとても綺麗だと感じたのですが、バレエのご経験は?
OSKの劇団員はバレエの経験者がとても多いのですが、私自身はバレエを始めたのがすごく遅く、高校生からのスタートでした。そこから「追いつかなきゃ!」と一生懸命お稽古に通い、開脚も全然できなかったので、お風呂上がりに頑張ってストレッチなどをしていました。
OSKのみなさんは、普段はどんなダンスのお稽古をしているのですか?
公演がある時は、本番に向けて1ヵ月ほど劇団で毎日お稽古をしています。公演がない期間は、各々、自分が選んだお教室に通うなどしてお稽古をするかたちですね。いつ公演が来ても対応できるように、日舞、バレエ、ジャズなど、いろいろな分野の舞踊のお稽古に通っています。
自分がどのジャンルのダンスを稽古するかは、各々が自分で決めるということでしょうか?
そうですね。自分に足りないもの、自分に必要なもの、自分がもっと伸ばしたいもの。それぞれが目的を持ってお稽古に通わせていただいています。
登堂さんご自身は主にどんなダンスのお稽古を?
私はやはりバレエを始めるのが人より遅かったというのがあって、「もっとダンスを頑張りなさい」といろいろな方にアドバイスをいただくことが多いんです。ですからダンスは自分の課題だと思って、お稽古しています。男役の場合はジャズやモダン、ヒップホップ系が必要なことが多いので、主に通っているのはそういったジャンルのダンスです。バレエの要素はどちらかというと娘役のダンスに必要なことが多いですね。
男役のダンスには独特の魅力がありますが、踊る時とくに意識していることやこだわりはありますか?
バレエでも同じだと思うのですが、私たち男役も、一瞬一瞬のラインの見せ方を本当に大事にしています。前、横、後ろ……どの角度からでも美しく見えるラインというものをいつも研究しています。それから以前上級生の方に「男役は手が小さくならないほうがいい」と教えていただいたのですが、私はもともとの手のサイズが身長の割に小さいんです。ですからできるだけ大きく見せるように、常に神経を行き届かせておくことを意識しています。あとは、背中ですね。男役は背中が大事。後ろを向いている時でも、「気の抜けた背中」と「見せる意識を持った背中」は全然違うと思いますので、常に気を張っておくように気をつけています。

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登堂さんは、なぜOSKに入りたいと思ったのですか?
高校生の時、兄が「“歌劇”っていう世界があるんだよ。背が大きいんだし、やってみたら?」と勧めてくれたのがきっかけです。ひと目見た瞬間「素敵!」と思い、そこから私もどっぷりはまり込みました。さっそく歌や踊りを初めて習い始めたところ、歌の先生のお弟子さんが、当時OSKの生徒さんで。そのご縁で何度かOSKのショーを観劇したところ、情熱的で、歴史の重みもあって、なんてカッコいい劇団なのだろう……!と。それでこの劇団を志すようになりました。
お兄さんがきっかけというのはめずらしいパターンですね?!
そうですよね(笑)。兄はピアノを学んでいたこともあり、音楽が好きで、歌劇団の舞台などにも興味があったようです。
すると、登堂さんが歌劇団入団を目指して動き始めたのは、具体的には何歳の頃ですか?
高校2年生の終わり頃でしたから、17歳です。
それまで、将来は何になりたいと思っていましたか?
大学には行こうと考えていましたが、そのあとのことについてはまだぼんやりしていたというか、「自分はどういうことをしたいのだろう?」と何となく考えているくらいの状態でした。そんな時に、兄が歌劇の世界を教えてくれまして。「やってみたい!」と、まさに雷に打たれたような瞬間でした。
OSK日本歌劇団はまさにこの4月、創立100周年を迎えます。2014年入団の登堂さんは新しい世代ということになると思いますが、100年受け継がれている「OSKのDNA」みたいなものを感じることはありますか?
OSKは2003年に一度解散になり、その後復活したという歴史があるのですが、どんな時も支えてくださったファンの皆様や、舞台に立ち続けたOGや上級生の方々が、守り、受け継いでくださったものが本当にたくさんあることを日々実感しています。そしてその一つひとつを取りこぼさないように引き継いでいくのが、私たちの役目だと思っています。
先輩のみなさんから本当に数えきれないほどのことを教わっているかと思いますが、なかでも「まずは何よりもこれ!」と心身に叩き込まれることは何でしょうか?
OSKの劇団員としてのあり方、「品」だけは絶対に損なわないようにと。舞台に立つと、本当にすべてが丸裸になる。自分自身が全部さらけ出されるのが舞台というものだから、普段からOSKの劇団員としての自覚をしっかり持っておくように、ということをいちばんに教えていただきました。

「品だけは絶対に損なわないように」という言葉の通り、取材に応じる登堂さんは終始謙虚で礼儀正しい方でした ©︎Ballet Channel

先ほど、2003年のOSK解散についてお話がありましたが、あの時に培われた根性や強い気持ちが、今の登堂さんたちの世代にも影響を与えていると感じますか?
それはすごく感じます。解散になった当時はまだOSKのことを知らなかったのですが、このコロナ禍になり、舞台に立てることが当たり前ではないと身をもって知った今、「こういうことか」と本当に強く感じます。1回1回のステージを大切に、その1回のお客様との出会いを大切に。その積み重ねしかないのだと思っています。
ファンに応援し続けてもらえる存在であるために、心がけていることはありますか?
ファンのみなさまが私たちのことを応援してくださるのも、当たり前ではないと思っています。ですから観に来てくださったお客様に、少しでも幸せな気分を持って帰っていただくこと。それだけを考えて舞台に立っています。

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本日見せていただいたレビュー・ショー「Precious Stones」を、来たる4月29日に〈上野の森バレエホリデイ2022〉の会場で披露してくださるわけですね?!
この「Precious Stones」はこれまで4組のメンバーが上演してきまして、私たちで5組目となる人気のショーです。今日お見せしたのは3部仕立てなのですが、〈上野の森バレエホリデイ〉では第1部と第3部で構成した特別バージョンでお届けします。

こちらは第2部、銀河鉄道をモチーフにした芝居仕立てのパート。〈上野の森バレエホリデイ〉では上演されませんが、メンバー5人それぞれの持ち味が全面に押し出されてくる、とても面白い場面でした ©︎Ballet Channel

バレエホリデイで見せていただけるショーのおすすめポイントを教えてください!
私たちOSKはとてもパッションのある歌劇団です。そのパッションを、一人ひとりが踊りや歌に乗せてパワフルに放出し続けるショーになっています。様々なタイプの楽曲で綴っていくかたちになっていて、1曲1曲表現したいものが違っているので、その変化もみなさまに感じ取っていただけたら嬉しいですね。

まず前半の1曲目はガツンとくるロックです。でもオープニングなのであまり重くなりすぎずに、お客様をぐんと引き込める始まり方をしたいねとみんなで話しています。続く2曲目はとてもキャッチーな場面。5人の個性がおもちゃ箱みたいに詰まっているので、それぞれの歌い方、それぞれのアプローチの仕方を自由に発揮して、良い意味でガチャガチャ賑やかにお見せできたら。そして前半最後の曲は、みんなで心をひとつにして歌いたいナンバーです。同じ景色を見た時に、どんなふうに心が動くのか。それを確かめるために、先日5人でお花見に行ったんですよ。

後半はラテンのショーになります。OSKには、伝統的に受け継がれているラテンの「型」があります。娘役の伝家の宝刀「スカート振り」もたっぷり出てまいりますので、それらの型をきちんと踏まえながら、全力でパッションをお届けできたらと思います。頑張ります!

後半は情熱のラテン・ショー! 日常の疲れも悩みもすべて燃やしてくれる炎のダンス! 写真左から:蘭、瀧登、登堂、琴海、花 提供:OSK日本歌劇団

ショーの中には、登堂さんが娘役さんを軽々と持ち上げる見事なリフトも出てきます。
男役とはいえ男性ほどの筋力はないので、娘さんと息を合わせることがいちばんのコツかなと思います。あとは、腰など一部だけに負担をかけずに、軸で抱えるようにすること。その軸の上に、娘役さんがしっかり力を入れて乗ってくれることも大事です。
〈上野の森バレエホリデイ〉に出演してくださるメンバーをご紹介ください!
花うららはとてもしなやかで、素直で澄み切った心が踊りにも歌にも表れています。まっさらな透明感のある娘役です。
瀧登有真はとにかく情熱的で、ダンスが大好きな男役。とくにラテンでのカッコよさはピカイチです。
蘭ちさとは歌声がとてもキャッチーでクール。幼い頃からバレエを習っていて、彼女の持つ美学がダンスにも歌にも表れています。
琴海沙羅もしっかりとしたバレエ経験の持ち主です。歌にもダンスにも芝居心があって、毎回違うアプローチで演じられる娘役ですね。
今回の〈上野の森バレエホリデイ2022〉では、ショー以外にも子どもたちに「ラインダンス」を教えていただく企画も開催されます(※チケットは完売)。OSKのラインダンスは劇団の“名物”とも言える見せ場のひとつ。ぜひコツを教えてください!
ラインダンスは手をつなぐことがとても多いので、お稽古中から横とのつながりや絆のようなものを強く感じられます。みんなでぴたりと動きを揃えながら何度も何度も脚を上げ続けていると、途中でどうしても「つらい」と感じる瞬間がくるのですが、そこで大事なのは「みんなでみんなを引き上げていく」という全員の意志。一人で頑張っているだけでは絶対に成り立たなくて、みんなで同じ方向に向かって、全員でその場面を引っ張っていく。そういったとても大切なことを学べるのがラインダンスです。
最後に登堂さんの言葉で、OSK日本歌劇団とはどのようなカンパニーなのかを教えてください!
今回の「Precious Stones」というショーは時計をモチーフにしていて、私たちは時間というものを感じながら演じているのですが、100年続いてきたOSK日本歌劇団は、これからも永遠に続く時間と無限の可能性を秘めた劇団だと思っています。その長い歴史の中で見れば、私たち一人ひとりが劇団員としていられるのは本当に限られた時間。だからこそ今こうして舞台に立ち、お客様と同じ時間や空間をともに過ごせるひとときを、本当に1回1回噛み締めて、大切にしたいです。

フィナーレはOSK日本歌劇団のテーマソング「桜咲く国」。桜色の傘を閉じたり開いたりくるくる回したりしながら歌われます 写真提供:OSK日本歌劇団

【取材メモ?】
取材におじゃました日、ショーの合間のトークタイムに「バレエ」のことを話してくれました!

登堂「私はバレエを始めたのがものすごく遅くて、高校生の時からだったんですけれども、当時はもう少し横に大きかったのもあって、オーバーオールタイプのサウナパンツを着てレッスンしていたんですね。ところが当時から私はものすごく汗かきだったので、バーにつかまってパンシェをした時に、自分の汗が背中からだーっと頭のほうに流れてきたという思い出があります(笑)。バレエって本当に細かいところまで全部に意識を行き届かせないといけないので、真剣にやるとものすごく汗をかくんです」

琴海「私は小さい頃、バー・レッスンが好きじゃなくて。早くセンターに出て、もっと大きく踊りたいなといつも思っていました。でもある時、「バーってめちゃくちゃ大切やん!」と気がついたんです。座禅みたいな感じというか、自分が整うというか。それからはバー・レッスンが大好きになり、今でも家で時々やっています」

瀧登「私はバレエ経験がまったくなくて、OSKの研修所に入所してから初めて習いました。だから最初はグリッサード・アッサンブレとか言われても「はい?」となって(笑)。当たり前の業界用語(琴海「専門用語では……(笑)」)が全然わからなかくて。カタカナばかり並びますし。でも今はバレエもすごく好きで、観るのも大好きです。これからも頑張ります!」

こちらはOSKファン必携のミニパラソル。フィナーレ「桜咲く国」で、劇団員さんたちの動きに合わせて一緒にパタパタ開閉できる仕様になっています ©︎Ballet Channel

公演情報

OSK日本歌劇団ミニ・レビューショー(トークショー付き)

日時

2022年429日(金祝)14:4515:40(14:25開場)

会場

小ホール

対象

小学校1年生以上 ※開催日当日の年齢

出演者

OSK日本歌劇団
登堂 結斗、琴海 沙羅、蘭 ちさと、瀧登 有真、花 うらら

料金(税込)

2,000円(全指定)

詳細・申込 上野の森バレエホリデイ公式WEBサイト

 

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