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【1/29・30上演!】Kバレエカンパニー・トリプルビル「シンプル・シンフォニー」「FLOW ROUTE」公開リハーサルレポート

若松 圭子 Keiko WAKAMATSU

2022年1月29日(土)・30日(日)、Kバレエカンパニーがトリプルビルを上演する(会場:Bunkamuraオーチャードホール)。
演目は、芸術監督・熊川哲也
4年前に創作した小品に新たな振付を加えた新作『クラリモンド~死霊の恋~』全編『シンプル・シンフォニー』、そして渡辺レイ振付『FLOW ROUTE』だ。

初日を間近に控えた1月20日、この公演の公開リハーサルが行われた。感染拡大防止のため、今回はオンラインでの実施。カンパニーのスタジオから公式YouTubeチャンネルを通じて、『シンプル・シンフォニー』『FLOW ROUTE』の2作がライブ配信された。

『シンプル・シンフォニー』 

『シンプル・シンフォニー』の初演は2013ベンジャミン・ブリテン作曲の同名の交響曲に熊川哲也が振付けた。この作品を踊った経験を持つダンサーの誰もが「最高難度」と口を揃えるレパートリー。男女6人のダンサーがほぼノンストップで煌めくようなステップやテクニックを紡ぎ続ける、洒脱で音楽的な佳作である 

『シンプル・シンフォニー』(2016年公演より)©️Hidemi Seto

この日のリハーサルに登場したのは、成田紗弥、髙橋裕哉、小林美奈、山田夏生、杉野慧、吉田周平
ピアニストの生演奏に合わせ、バレエ・マスターの西野隼人が指導を行った。西野は、集中するあまり表情が硬いダンサーに「エンジョイ!」と声を掛け和ませたり、音楽を止めて「一瞬の静寂から再開する音と同じように、曲の緩急を身体でも表現して」と指摘するなど、細かな部分も見逃さない。

小林、山田の心弾むステップ、成田と高橋の優雅なパ・ド・ドゥ、杉野、吉田のダイナミックな動き。精確なテクニックはもちろん、優美なポール・ド・ブラやフットワークはまるで音符たちが踊っているよう。楽章によってさまざまな表情を見せるブリテンの音楽が、ダンサーの動きを通して視覚的に伝わってくるのが楽しい。

『FLOW ROUTE』

続いては、舞踊監督をつとめる渡辺レイKバレエのために2018年に振付けたコンテンポラリー作品『FLOW ROUTE』アフリカの大河にインスピレーション受けたという本作のテーマは“流れゆくもの”。渡辺は作品についてリハーサル開始前にこう語った。

流れていく2つの河が交わって1の大河になるのですが、それぞれの水の温度、濃度、そして質によって、2つの水の色は決して混じり合うことはありません物質的なものは、交わろうとしても交わない。それはこの社会も同じです。唯一交われるものがあるとすればそれは人間の“心”なのだと思います 

『FLOW ROUTE』(2018年公演より)©️Hidemi Seto

リハーサルに登場したのは、小林美奈、石橋奨也、萱野望未、高橋怜衣、辻久美子、吉田早織、辻梨花、新居田ゆり、栗山結衣、吉岡眞友子、酒匂麗、杉野慧、栗山廉、関野海斗、本田祥平、三浦響基、中井皓己、髙橋芳鳳

第1楽章はテーブルを囲んだ男性ダンサーたちの踊り。仲間にも敵同士のようにも見える男たちは、バランスが取れているようでもどこか絡まったまま。コミカルな演技の中に見え隠れするシニカルさは、人間関係の難しさを思わせる。

第2楽章はひと組の男女のパ・ド・ドゥ。渡辺が語った“交わろうとしても交われない”切なさと、だからこそ触れ合えた瞬間の喜びを、小林美奈と石橋奨也がしっとり溶け合うように踊った。このパ・ド・ドゥには飯島望未山本雅也もキャスティングされており、個性の異なる2組の表現の違いにも注目したい。

第3楽章。ダンサーたちがつぎつぎと舞台前方へ駆け出してくる。流れに翻弄される者、勢いのよい水しぶきとともに駆け抜ける者、穏やかな流れを保つ者……劇場ではベートーヴェンの楽曲と相まって、さらに迫力あるステージが見られそうだ。 

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今回の公演の3作目は、熊川哲也の演出・振付による『クラリモンド~死霊の恋~』全編だ。2018年、熊川はフランスの詩人ゴーティエの短編小説「死霊の恋」に着想を得て、約20分の小品として初演。ヴァンパイアとなった娼婦と若い聖職者の禁断の恋を描いた美しくも切ない物語が、今回は全編版として上演される。

全編版のタイトルロールはともに初役に挑む日髙世菜成田紗弥のダブルキャスト。聖職者ロミュオーには2018年に同役で注目を集めた堀内將平が、セラピオンには同じく続投となる石橋奨也と、今回が初役の杉野慧がキャスティングされている。またカンパニーの副舞踊監督である浅川紫織がクラリモンドの後見人・バーバラ役で3年ぶりに舞台復帰するのも見逃せない。

今回の公開リハーサルでは同作を観ることが叶わなかったが、バレエ団の公式YouTubeチャンネルで『クラリモンド』全編版の創作過程に密着した映像を公開している。

また、本公演では千秋楽のライブ配信が決定した。じつはライブ配信は開演15分前から視聴できるのがポイント。幕開けを待つ、あのワクワクドキドキからぜひ体感を。 

【公演情報】

熊川哲也Kバレエカンパニー Winter2022
『クラリモンド~死霊の恋~』<全編>(振付:熊川哲也)
『FLOW ROUTE』(振付:渡辺レイ)
『シンプル・シンフォニー』(振付:熊川哲也)

◎公演日程
2022年1月29日(土)13:00/17:30
2022年1月30日(日)13:00

◎会場
Bunkamuraオーチャードホール

◎詳細
https://www.k-ballet.co.jp/contents/2022lamorteamoureuse

\オンラインライブ配信決定!/
◎日程:2022年1月30日(日)12:45~
◎視聴可能時間:ライブ配信時間のみ(見逃し配信なし)
◎視聴券販売期間:1月24日10:00~1月30日12:40
◎取扱:TBSチケット https://tickets.tbs.co.jp/kb_0130live
◎詳細:https://www.k-ballet.co.jp/contents/491689

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