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【特集・ドラマ「カンパニー」③】小林美奈（有明紗良役）インタビュー〜紗良は“プリマ”の自覚を持ってその位置に立っている人。バレエへの情熱が私との共通点です

2021.01.09 阿部さや子　Sayako ABE

プレミアムドラマ「カンパニー〜逆転のスワン〜」より　社長令嬢でありバレエ団のプリンシパルという役どころを演じる小林美奈（Kバレエカンパニー）

2021年1月10日（日）から、NHK BSプレミアム・BS4Kにて毎週日曜よる10時〜10時49分（全8回）放送となるプレミアムドラマ「カンパニー〜逆転のスワン〜」。
総務一筋で生きてきた中年サラリーマン、しかも“離婚の危機”と“左遷”という二重苦を背負ったひとりの男が、ある日突然それまでまったく無縁だったクラシック・バレエの世界に身を置くことを余儀なくされる。
そして「企業の論理」や「芸術」といった価値観の対立に直面しながらも、｢カンパニー｣=｢仲間｣の力で、存亡の危機に瀕した老舗バレエ団の再生を目指していくーーそんな涙と笑いの奮闘物語だという。

「これは“縁の下の力持ち”に光を当てるドラマです。世の中の99％の人は、表に立つ1%の人を輝かせるために汗を流している。そういった人々にエールを届けられるような作品にしたい」〈制作統括・樋口俊一氏（NHK）〉

「特別な力は何も持っていない男が奇跡を起こしていく、いままでになかったヒーロー像。そしてKバレエカンパニーの全面協力により、本格的なバレエを取り込んだドラマになっているところも大きな見どころ」〈プロデューサー・宮武由衣氏（TBSスパークル）〉

〈バレエチャンネル〉では全6回にわたり、このドラマの主要キャストや原作者へのインタビュー等を特別連載！
今回はドラマのメインキャストのひとり、社長令嬢にしてバレエ団のプリンシパル・有明紗良（ありあけ・さら）役を演じる、小林美奈さん（Kバレエカンパニー　プリンシパル・ソリスト）のインタビューをお届けします。

小林美奈　©︎Shoko Matsuhashi

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小林さんは、ドラマへの出演は初めてですか？: 小林　ドラマはもちろん映像の世界でお仕事をすることじたい、人生で初めての経験です。

「有明紗良」はバレエ団のプリマという役どころで、まさにKバレエで数々の主役を踊る小林さんにぴったりですが、出演が決まった時の感想は？: 小林　当初お話をいただいた時はKバレエから３人ほど候補がいて、まずはオーディションを受けることになったんですね。オーディションは劇中のひとコマのセリフを言ってみるという内容で、もちろん合格すればありがたいですし、落ちたとしても良い経験になるから……という意気で臨みました。まさか本当に選ばれて、しかも紗良役を演じることになるとは思ってもみませんでしたけれど、選ばれたからにはしっかりやりたいなと思いました。

ドラマはセリフで演じるもので、そこがバレエと大きく違うところかと思いますが、実際に撮影に臨んでみていかがですか？: 小林　これまでは身振り手振り、全身の動きで表現してきましたので、言葉で表現するということに慣れるのがまず大変で……。演技のベテランでいらっしゃる俳優のみなさんや先輩の宮尾俊太郎さんが、どういうふうにセリフや芝居に臨んでいるかをよく見て、一生懸命吸収しています。すごく感じるのは、同じ言葉でも、言い方のちょっとした違いで相手への伝わり方や印象がすごく変わるということ。家で紗良のセリフをいろいろなパターンで言ってみたり、それを録音して自分で聞いてみたりしながら練習しています。
それから台本をしっかり読み込んで、自分が言うセリフの前後のお話もきちんと把握しておくことも心がけています。その言葉がどんな文脈のなかで語られるのかによって、出てくるものが変わってくるので。

©︎Shoko Matsuhashi

有明紗良の人物像を、小林さんはどのように捉えて演じていますか？: 小林　バレエ団のプリマとしての責任、自分はプリンシパルだという自覚をしっかりと持って、そのポジションに立っている人だと思います。そしてバレエに対して人一倍情熱があるからこそ、少しでも妥協する人がいると許せない。誰よりも努力をするけれど、努力しているところは誰にも見られたくない。焦りやつらさを他人には決して見せることなく、いつも凛として、強い意志を持つ女性です。

紗良は、小林さん自身と似ていますか？: 小林　バレエに対する思いや意志は似ていますが、性格は紗良ほどきつくないと思っています（笑）。紗良はきっぱりした性格で、言いたいことはズバッと言うし、思ったことはすぐに伝え、嫌なことは嫌だとはっきり言う。いっぽう私は思っていることを表面には出さないまま、自分の中で消化してしまうタイプです。あまりズバッと言えない性格なので、紗良みたいになりたいな……と、演じていて感じました。やはりプリンシパルなど上に立つ人は、自分の意見をきちんと言うべきだと思うので。自分とは違う人格を演じられるのはとてもおもしろいです。

プレミアムドラマ「カンパニー〜逆転のスワン〜」の一場面より

ドラマの撮影現場に入って驚いたことや発見したことは？: 小林　俳優のみなさんを間近で見ていると、演技がとにかく自然なんです。セリフがセリフではないみたいに感じられるし、掛け合いなどもナチュラルでスムーズ。私はどんなに家で練習してきても、いざセリフを言うとなると、その“文字”が頭に浮かんできてしまいます。そして「こういうふうに言おう」とか、どうしても先に頭で考えてしまうんですね。でも、俳優さんたちのお芝居にはそういうところが少しもなくて。いま起きたことに対して、いま浮かんだ言葉を口にして、いま湧き上がった感情をそのまま表情に出しているように見えます。場面ごとにパッと演技や気持ちを切り替えられるのも、本当にすごいと思います。

共演者とのエピソードで印象に残っていることは？: 小林　黒木瞳さんから、セリフのお芝居をする時のコツを教えていただきました。ちょうど今日（編集部注：取材は12月上旬）、紗良が初めて笑顔を見せて喜ぶシーンの撮影があったんですね。紗良はいつもツーンとしているので、どのくらい感情を出していいか戸惑っていたら、黒木さんが「最初は最大限に出してみて、そこから少しずつ削っていきながら、その場にちょうどいいボリュームや声色を見つけるといいわよ」とアドバイスしてくださって。すごく「なるほど！」と思いました。

今回のドラマ出演の経験を、どのように舞台やバレエに活かしていきたいと思いますか？: 小林　演技をして物語や感情を伝えること、そして「表現」であるという部分では、バレエもドラマも同じです。これからはバレエ作品もより深く読み込んで、その役のバックグラウンドなども自分なりにもっと掘り下げていこうという思いを新たにしています。そして演技面においても自分でいろいろなパターンを試しながら、「この場面はこれだ」というものを見つけて、確信をもって演じていきたい。言葉は発しなくても言葉が聞こえてくるような身体表現をもっともっと研究していきたいと思います。

©︎Shoko Matsuhashi

小林美奈　Mina Kobayashi: 山梨県生まれ。5歳よりバレエを始める。ロシア国立ワガノワ・バレエ・アカデミー留学。ロシア・サンクトペテルブルク・バレエシアター、ポーランド・オペラノヴァ・ビドゴシュチバレエを経て、14年Kバレエカンパニーに入団。18年9月プリンシパル・ソリストに昇格。