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【第16回】鑑賞のためのバレエ・テクニック大研究! -スーブルソーとパ・ド・ポワソン

海野 敏

文/海野 敏(東洋大学教授)

第16回 スーブルソーとパ・ド・ポワソン

■浮遊感のある穏やかな跳躍

第15回から、床移動をあまりせず、その場でジャンプするステップを紹介しています。今回はスーブルソーと、その応用技を取り上げます。

スーブルソー」(soubresaut)は、両脚で踏みきって真上に跳び、足の前後を入れ替えず、そのまま両脚で着地するステップです。前回の「シャンジュマン」が、両脚で踏みきり、足の前後を入れ替えて両脚で着地するステップですから、スーブルソーはシャンジュマンよりも一段階シンプルです。何気なく舞台を見ていると、スーブルソーとシャンジュマンは見分けがつかないかもしれません。

フランス語の名詞“soubresaut”には、辞書を引くと「馬などが不意に跳ねること」、「乗り物が激しく揺れること」という意味があります。しかし、バレエのスーブルソーは、助走なしでふわっと跳び上がって静かに着地するステップなので、「不意」な感じはしても「激しく」は感じません。むしろ穏やかな浮遊感を感じる跳躍です。

応用技の「パ・ド・ポワソン」(pas de poisson)は、真上ではなく斜め前方に跳躍し、空中で背中を弓なりに反らしてから両脚で着地します。フランス語を直訳すると「魚のステップ」です。空中での上体を反らしたポーズを、魚が水面に跳ねる姿に喩えた名前です。「スーブルソー・ポワソン」と呼ばれることもあります。

スーブルソーには、ほかにも応用技があります。「グラン・スーブルソー」(grand soubresaut)は、空中で両膝を曲げて爪先を重ね合わせ、菱形を作ってから両脚で着地します。「スーブルソー・アン・ティル・ブッション」(soubresaut en tire-bouchon)は、空中で片脚の膝を曲げてルティレ(曲げた脚の爪先をもう片方の脚の膝に付ける)にしてから両脚で着地します。「アン・ティル・ブッション」は、フランス語で「螺旋状に」という意味です。

■作品の中のパ・ド・ポワソン

スーブルソーは、穏やかな跳躍なので、作品中で強く印象に残る振付がありませんが、パ・ド・ポワソンは、『ジゼル第2幕に印象的な振付があります。ジゼルがミルタに命じられてアルブレヒトと踊るパ・ド・ドゥです。アダージオの曲が終わった後、ジゼルがソロで踊り始めるところで、舞台中央から下手前へ向かって、パ・ド・ポワソンを4回とシソンヌ(両脚で踏切り片脚で着地するステップ)の、5回の跳躍で進みます。短いフレーズですが、両腕を前方に伸ばしてふわりふわりと跳ぶ姿は、とても妖精らしくて印象に残ります。

★動画でチェック!
こちらは英国ロイヤル・バレエの高田茜がデモンストレーションしているプティ・アレグロの映像。アントルシャ・カトルの後、スーブルソーをしています。映像の後半のデモンストレーションでは、字幕も表示されます。
こちらもロイヤル・バレエの映像より。『ジゼル第2幕で、マリアネラ・ヌネェスがふわりと軽やかなパ・ド・ポワソンを4回連続して行っています。

『眠れる森の美女』第3幕の「青い鳥のパ・ド・ドゥ」では、男性ヴァリエーションの冒頭で、ダンサーが大きく跳躍し、空中で背中を反らしたポーズを4回見せます。これもパ・ド・ポワソンの一種ですが、ここでは両脚で踏みきって片脚で着地しますので、今回紹介したスーブルソーではなく、シソンヌの仲間に入ります。

★動画でチェック!
ボリショイ・バレエの『眠れる森の美女第3幕より、アルチョム・オフチャレンコによる青い鳥のヴァリエーション。跳躍のテクニックが詰め込まれた踊りです。こちらは2011年のボリショイ劇場こけら落とし公演の映像。

(発行日:2020年09月25日)

次回は…

第17回は、「ブリゼとカブリオール」を取り上げます。発行予定日は2020年10月25日です。

第18回は「アンボアテ」を予定しています。

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うみのびん。東洋大学社会学部メディアコミュニケーション学科教授、情報学研究者、舞踊評論家。2018年度より東京大学客員教授。バレエ、コンテンポラリーダンスの舞台評・解説を『ダンスマガジン』、『クララ』などのマスコミ紙誌や公演パンフレットに執筆。研究としてコンテンポラリーダンスの三次元振付シミュレーションソフトを開発中。著書に『バレエとダンスの歴史:欧米劇場舞踊史』、『バレエ パーフェクト・ガイド』、『電子書籍と電子ジャーナル』(以上全て共著)など。

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