★本日のリハーサル動画★
『マノン』第1幕よりマノンとデ・グリューの出会いのパ・ド・ドゥ(小野絢子、福岡雄大)
2020年2月22日(土)開幕の新国立劇場バレエ団『マノン』。
その出演ダンサーたちによるリレーインタビュー企画「私と『マノン』」、ついに最終区間の第4区に入ります! 第3区からバトンを受け取り、リレーを締めくくるのはこの2名です!
Videographer:Kenji Hirano, Kazuki Yamakura
インタビュー動画編集:Ballet Channel
11th Runner:小野絢子(マノン)
マクミラン版の『マノン』を最初に見たのは録画で、いまは懐かしいVHSビデオでした。おそらく初演のものだと思います。とにかく衝撃的な作品でした。
2012年、初めて出演した『マノン』で、マノン役を踊らせていただきました。あの時は本当に……つらかった思い出しかありません。「手も足も出ないとはこのことか」と思い知りました。パ・ド・ドゥ自体ももちろん高度なのですが、さらに難しかったのは、それが「振付に見えてはいけない」という点です。踊りのすべてがアクティング(芝居)につながっているので、それをどう表現していくかを模索する作業が、とにかく大変でした。
今回もまた、マノン役を演じさせていただきます。もちろん現在(※取材は2月初旬)も、あがいている状態ではありますけれど、今までの舞台経験を活かしたいと思っています。
マノンという女性を、どう捉えるか。原作を読んでも彼女の視点から書かれた部分はほとんどなく、具体的な性格も描かれていません。デ・グリューの視点からは「こんな女だった」と書かれた文はありますが、彼はマノンのことが大好きですから、ちょっと理想的に描かれているんですよね。
それでも間違いないと思うのは、彼女はすごく魅力的な女性で、それが男性を虜にするということ。そして彼女自身も、そのことをとてもよくわかっている。そんな自分の使い方を知っていて、兄・レスコーの助けを借りながら、どんどんのし上がって行きます。“G.M.に身体をあげる代わりにこれをもらう”という、生きるための現実的な考えをしっかり持ちあわせている点は、ああ「女性」だなあ、と思いますね。
でも彼女は同時に、ピュアな面も持ち合わせています。とくにデ・グリューを前にしたときーー例えば第1幕の「出会い」や「寝室のパ・ド・ドゥ」の彼女は、本当に可愛らしい。それはきっと、デ・グリューとは“身体の関係”ではなくて、純粋に愛を感じているからだと思います。
『マノン』は、一人ひとりが生きることに対してどん欲であるということが、とても強く表現されているバレエだと思います。第1幕冒頭の街のシーンには「どうやって生き抜いていくか、どうやってのし上がっていくか」という、一人ひとりの放つ強いエネルギーがあります。その中でデ・グリューだけがロマンチストで、浮世離れしている存在。登場人物の一人ひとりを見てみると、それぞれが面白い演技をしています。
この作品は、例えば「ここで拍手する」とか「主役が出てきました」とか「グラン・パ・ド・ドゥとはこういう形式です」とか、いわゆる“バレエの常識”を知らなくても理解できるところが大きな強みです。ぜひ劇場に観にいらしてください。
★どの瞬間も私たちを虜にしてくれる小野絢子さんのマノン、楽しみにしています! さあ小野さん、アンカーはやはり、あの方ですね……?!
- 福岡雄大さん、質問です。『マノン』はどのパ・ド・ドゥも本当に男性の力が必要で、大変なのはわかってはいるんですけれども、選ぶとしたら、どのパ・ド・ドゥの、どこのシーンが、いちばん負担が大きく大変でしょうか?
Anchor:福岡雄大(デ・グリュー)
『マノン』との出会いは前回の2012年公演で、僕はその時もデ・グリューを踊らせていただきました。それまでクラシック・バレエで主役を踊らせていただくことはありましたが、ドラマティック・バレエである『マノン』を踊るというのは、当時の自分の中ではすごくセンセーショナルなことでした。
例えば、マイム。『マノン』の中で行われるマイムはとてもナチュラルで、「マイムをする」というよりも「心から話す」という感覚です。そうしたことも初めてで、「これでいいんだろうか?」という不安もありました。
先生にご指導いただきながらのリハーサルは、まるで“未知の場所に行くような体験”でした。
新国立劇場バレエ団は、マクミランのもうひとつの傑作ドラマティック・バレエである『ロメオとジュリエット』もレパートリーにしています。僕はロメオ役も踊らせていただいていますが、ロメオは明るくて平和主義的なキャラクター。それに対して『マノン』のデ・グリューは、もう少し人間の“闇の部分”が多いと思います。『ロメオとジュリエット』がある種の“光”を描いた物語だとしたら、『マノン』は“闇”を描いている。
デ・グリューはとてもピュアな人間で、若いというか、突っ走っていくタイプです。僕は、マノンと出会ってしまったことが彼の運命を変えたのではなくて、もともとマノンとデ・グリューは正反対の性格だったのではないかと考えています。彼の「お金よりも愛」という考えが、マノンを愛すれば愛するほど、嫉妬の心を生んでしまう。
なぜデ・グリューは、ここまでマノンに惹かれたのか。魅力的な女性だったから、といえば簡単ですが、恋するのに理由はありませんよね。……と言っておきましょうか(笑)。そういう2人のキャラクターの対比も、演じがいがあります。濃密な愛の形というものを、お客さまに少しでもわかりやすくお伝えできたら嬉しいです。
『マノン』は、本を読むような感覚で観ていただきたいです。小説は途中から読んでもあまり楽しめない。最初からストーリーを追って読み進めて、ついには最後のページに行きつくように、客席で楽しんでいただければと思います。
★本を読むように舞台を観る……素敵ですね。福岡雄大さん、アンカーにふさわしいお話をありがとうございました!
- マクミラン作品の最高傑作と言われるドラマティック・バレエ『マノン』。ぜひ劇場に足を運んでいただけたら嬉しいです。よろしくお願いします!
★ダンサーリレーインタビューはみごとゴール!
『マノン』大特集の最後は、2003年の初演キャストだった2人の素晴らしいバレリーナにお話を伺います。どうぞお楽しみに。
公演情報
新国立劇場バレエ団『マノン』