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【プレイリストつき!】佐々晴香(ベルリン国立バレエ プリンシパル)インタビュー~目と耳で音楽を感じて

青木かれん Karen AOKI

「バレエの美神2025」来日公演より「シルヴィア」佐々晴香、ダヴィッド・ソアレス 
Photo:Hidemi Seto©KORANSHA

音楽性豊かな踊りが魅力のベルリン国立バレエ プリンシパルの佐々晴香さん。2025年秋には「Ballet Muses-バレエの美神 2025-」で日本の舞台に立ち、『ノクターン』、『シルヴィア』よりパ・ド・ドゥ、『ドリーヴ組曲』の3演目を披露しました。

佐々さんの音楽性はどうやって培われたのか? その秘密に迫るべく、日ごろどんな楽曲を聴いているのかをインタビュー! 愛聴している楽曲をひとつにまとめたプレイリストも紹介していただきました。

佐々晴香 Haruka Sassa
2012年よりヒューストン・バレエ・アカデミーで学び、13年東京シティ・バレエ団を経て15年ドルトムント・バレエに入団。17年スウェーデン王立バレエに移籍、19年プリンシパルに昇格。22年にノルウェー国立バレエにプリンシパルとして移籍。23年ベルリン国立バレエに入団、2024/2025シーズンよりプリンシパルに昇格。©Ballet Channel

佐々さんの音楽の感じ方

佐々さんの踊りには豊かな音楽性を感じます。ご自身ではどのように音楽を捉えているのでしょうか?
佐々 私は音楽を視覚的に捉えるタイプです。もちろん耳で聴いているのですが、音の流れがオーラのように見えて、自然とビジュアル化される感覚があります。曲を聴いた瞬間に「こんな色合いだな」とか「こういう流れだな」というイメージが浮かぶんです。音楽の流れが、途切れることのない一筆書きの線になって現れます。
パ・ド・ドゥを踊る時、どのようにして相手と音楽を共有していますか?
佐々 同じ曲でも、感じ取る音はダンサーによって異なるもの。だからリハーサルで、「このフレーズでここへ行きたいよね」「ここで一度落ち着きたいよね」と、お互いの聴こえ方を共有しています。相手がどの音を頼りに動いているのかが分かると、自分もその音を意識して聴くようになって、動きがより滑らかになっていきます。「バレエの美神」で一緒に踊ったダヴィッド・ソアレスとは、不思議なくらい同じように音楽が聴こえていることが多いので、実際にはあまり言葉にしなくても自然にハーモニーが生まれるんです。
クラシック作品とコンテンポラリー作品とで音楽の捉え方は変わりますか?
佐々 コンテンポラリー作品の中には、ノイズだけで構成されていたり、明確な音楽がないものもあり、少し難しく感じます。そんな時は考え方を切り替えて、音を「音楽」として捉えるのではなく、背景の環境音のように受け止めています。音は音として存在しているけれど、自分は別の空間で踊っている感覚ですね。
クラシック作品を踊っている時は、背景とダンサーという関係性ではなく、音楽と踊りが一体となって作品を作っている感覚があります。その一体感こそがクラシック・バレエの大きな魅力のひとつだと思います。

佐々さんのプレイリストを拝見!

普段からプレイリストを使って音楽を聴いていますか?
佐々 7個のプレイリストを作って、シチュエーションによって使い分けています。クラスレッスンをする時用の曲を集めたものや、テンションが上がるアップテンポなプレイリスト。それから自宅にみんなを招いた時にかける落ち着いたラインナップや、日本の曲だけのもの、クラシックの楽曲が入ったリラックス用のプレイリスト、コーヒータイム用など……。今日はこのインタビューにむけて、新作のプレイリスト「Sound of Mind」を作ってきました。

※Spotifyに無料登録すると、プレイリストの曲をフルでお楽しみいただけます。登録済みの方は、3本線のアイコンの「Spotifyで聴く」をタップすると別ウィンドウが開き、プレイリスト全編を流しながら記事をご覧いただけます。

ありがとうございます! さっそく新作のプレイリストについて紹介していただきましょう。

┃Asaf Avidan 『One Day』『Love It Or Leave It』

佐々 この間、ダヴィッドに今日空いてる?と誘われたのが、アザフ・アビダンのコンサート。この2曲は特にお気に入りの曲です。軽い気持ちで彼のコンサートに行ったのですが、私もダヴィッドもすっかりファンになってしまって。コンサート中のMCでアザフがこう言ったんです。「芸術を鑑賞する人たちの中には現実から逃避しに来ている人が多いけれど、僕はアートを観ることこそが現実だと思う。作品を観た時の感情は幻ではなく、現実のものだから。そして、みんなが違うものを受け取れるのもアートのいいところ。だから、その日感じたことを大切にしてほしい」と。その言葉に共感しました。私は一年間怪我で舞台から離れていたので、復帰後の踊りを観てどう感じるだろうと、周りの評価が気になっていたんです。ひさしぶりに舞台に立った時に、自分がどんな気持ちになるのか少し不安もありました。でもアザフの言葉を聴いて、舞台を観た方が自由に受け取ること、それこそがアートなんだと再認識できました。

 
┃Chet Baker 『Almost Blue』

佐々 チェット・ベイカーも影響を受けたアーティストの一人です。私が以前スウェーデン王立バレエにいた時に、とあるバレエに苦戦していました。親しくしていたイタリア人のピアニストの方がその姿を見て、公演の初日にチェット・ベイカーのポスターをプレゼントしてくださって。それ以来、チェット・ベイカーの音楽をよく聴いています。

 
┃坂本龍一 『aqua』『andata』
┃Tom Odell 『Another Love』『Magnetised』『Constellations』

佐々 それから、ほとんどのプレイリストに入っている常連は坂本龍一さんとトム・オデル。坂本龍一さんの『aqua』と『andata』が大好きで、聴くと涙がこぼれそうになります。

 

┃Billy Joel 『Honestry』『Piano Man』

佐々 プレイリストの中には、懐かしい思い出の曲も入れました。父の影響でよく聴いているのは、ビリー・ジョエル。『Honestry』と『Piano Man』は、幼い頃に行った家族旅行の車内でずっと流れていた曲です。


 
┃Lana Del Ray 『Young And Beautiful』『Video Games』
┃Edward Sharpe & The Magnetic Zeros 『That’s What’s Up』
┃Of Monsters and Men 『Little Talks』

佐々 ラナ・デル・レイは私がヒューストン・バレエ・スクールに留学していた頃に流行っていました。私のなかで、サマーソングのイメージがあります。スウェーデンの音楽フェスにゲストでラナが来た時に、生で聴くことができました。Of Monsters and MeとEdward Sharpe & The Magnetic Zerosもヒューストン時代のサマーソングで、アップテンポの曲を聴きたい時によく流しています。




 

様々なジャンルの楽曲の中に、クラシックもいくつか入っていますね。

┃ピョートル・I・チャイコフスキー 『交響曲第5番』第2楽章

佐々 私の好きなバレエ音楽を入れました。いちばんは、マッツ・エックの『ロミオとジュリエット』。マッツ・エック版はチャイコフスキーの音楽が使われていて、なかでもバルコニーのパ・ド・ドゥに使われている『交響曲第5番』第2楽章が好きです。私がスウェーデン王立バレエに入団したばかりの時にはじめて観て、心を奪われました。それ以来10回は観ていますね。当時、ジュリエットを演じたのはプリンシパルだった日本人ダンサーの木田真理子さん。この曲を聴くたびに、観た時の感情を思い出すんです。物語にのめりこんで悲しい気持ちになったり、心が空っぽになったり。(曲を聴きながら)ほんとうにいい曲ですね。流れた瞬間にこみあげてきます。

 
┃Tom Waits 『Make It Rain』
┃Max Richter 『On The Nature Of Daylight』
┃Simon & Garfunkel 『Bridge Over Troubled Water』

佐々 ネオクラシックの作品に使われている音楽もよく聴いています。トム・ウェイツの『Make It Rain』は、スウェーデン王立バレエで上演していたヨハン・インガーの作品で使われていた曲。あのしゃがれ声が渋くて好きです。マックス・リヒターやヨハン・ヨハンソンの楽曲も、ネオクラシックやコンテンポラリーの作品でたびたび耳にしています。サイモン アンド ガーファンクルの『Bridge Over Troubled Water』はもともと知っていたのですが、ガラ公演で共演したダンサーの作品に使われていて、あらためて好きになりました。最近はまっている曲です。



 

┃ピョートル・I・チャイコフスキー 『眠れる森の美女』Op.66 No.18 「間奏曲」
┃フランツ・シューベルト 弦楽四重奏曲第14番『死と乙女』第2楽章
┃ベドルジハ・スメタナ 『わが祖国』

佐々 この3曲はお気に入りのクラシック音楽です。もともとピアノやヴァイオリンを使った楽曲が好きで、ほかのプレイリストの中にもバッハ、モーツァルト、ショパン、チャイコフスキーの作品が多くあります。
私はクラシック音楽を聴いている時と、踊りながら聴いている時とで感覚がまったく違うんです。どうしても踊っている時は、カウントを意識したり、動きと音のアクセントをどう合わせるかを考えています。でも音楽だけを聴いている時は、ほかのことを考えずに聴くことだけに集中できる。そのうえ、多くのバレエ公演ではオーケストラピットが舞台よりも低い位置に設置されているいっぽうで、コンサートではオーケストラの方々が舞台上で演奏していますよね。以前、ベルリンフィルのコンサートでスメタナの『わが祖国』を聴いた時に、音が降り注いでくるような感覚に圧倒されたんです。音楽を楽しむってこういうことなんだ!と。これをきっかけにクラシックをよく聴くようになりました。



 

プレイリストには、映画やドラマの楽曲もありますね。

┃Jóhann Jóhannsson 『A Model of the Universe』

佐々 映画『博士と彼女のセオリー』で流れるヨハン・ヨハンソンの『A Model of the Universe』がおすすめです。

 

佐々さん愛用のマーシャルのヘッドホン。音楽を聴く時はイヤホンではなく、ヘッドホン派とのこと

佐々さんにとって音楽とは

2025年10月に行われた「バレエの美神」では、ダヴィッド・ソアレスさんと『ノクターン』、『シルヴィア』のパ・ド・ドゥ、『ドリーヴ組曲』を踊りました。
佐々 クリスチャン・シュプック振付『ノクターン』は、無音から始まるんです。私とダヴィッドだけの世界に音楽が流れた瞬間、新しいハーモニーが生まれます。そして最後に音楽が消えると、二人だけが舞台に残される。照明も衣裳も変わらないのに、音楽で空気が変わるのが、すごくおしゃれだなと思います。
『シルヴィア』のパ・ド・ドゥは、私が踊れる喜びを噛みしめた作品です。怪我のリハビリ中は淡々とした動きの連続だったので、復帰後最初のリハーサルでレオ・ドリーヴの素晴らしい音楽を聴いた瞬間、胸がいっぱいになって。一緒に組んでいたダヴィッドに、「ちょっと待って! ハートが耐えられない!」と思わず叫んでしまいました(笑)。そのくらい、音楽に心を動かされました。
『ドリーヴ組曲』は、役柄ではなくダンサーどうしで掛け合える作品。遊び心のある振付で難しいテクニックも散りばめられていますが、踊っていてとても楽しいです。

 

「バレエの美神2025」来日公演より「ノクターン」佐々晴香、ダヴィッド・ソアレス 
Photo:Hidemi Seto©KORANSHA

これまで踊ったなかでとくに印象に残っている振付家の作品はありますか?
佐々 ウヴェ・ショルツの作品を踊った時に、「これは見る音楽だ」と感じたことがあります。音楽の構造や流れが、そのまま振付として目の前に現れているような感覚だったんです。ショルツの作品を観るたびに、私もこんなふうに踊りたいと強く思います。
先日、ジョージ・バランシン作品のコーチングを受ける機会があったのですが、そこでも繰り返し強調されていたのは音楽でした。あらためて、踊りにおいて音楽がどれほど重要なのかを実感しました。
最後に、佐々さんにとって音楽とは?
佐々 私にとって音楽は、「踊りの中心にあるもの」です。

「バレエの美神2025」来日公演より「ドリーヴ組曲」佐々晴香 
Photo:Hidemi Seto©KORANSHA

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