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【D.LEAGUE 25-26】CHAMPIONSHIP(5/31)観戦レポート〜「愛があるなら諦めるな」。FULLCAST RAISERZが悲願の初優勝!

村山 久美子

©D.LEAGUE 25-26

ダンスのプロリーグ「D.LEAGUE(Dリーグ)25-26」が、2026年5月31日のCAMPIONSHIP(CS)をもって閉幕しました。新たに2チームが加わって全16チームとなったことに伴い、8チームずつに分けた2ブロック制で〈レギュラーシーズン〉が実施された今シーズン。CSには各ブロックの上位3チームずつ、計6チームが出場して、シーズン王者の座を競いました。

はたしてどのチームが今季の覇者となったのか。さまざまなドラマが生まれたCSの観戦レポートを、自身も複数ジャンルのストリート系ダンスを踊りこなす舞踊史家・舞踊評論家の村山久美子さんの寄稿でお届けします。

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CHAMPIONSHIP(5/31)の各MATCHレポート

D.LEAGUE 25-26 CHAMPIONSHIPの全編動画はこちら

CHAMPIONSHIPは一日で王者が決まるトーナメント方式。まずはBLOCK HYPEとBLOCK VIBEそれぞれの2位・3位のチームによる〈TRIAL MATCH〉が行われ、勝ち上がったチームが、各ブロック1位でシード権を得たチームと〈SEMI FINAL MATCH〉で対戦する。その後、3位決定戦を経て、最後の〈FINAL MATCH〉でシーズンチャンピオンが決定する。

各ブロックを優勝したCyberAgent LegitとFULLCAST RAISERZは、シード枠としてSEMI FINALからの出場となる。なお、規定により、各ブロック優勝チームのうちCSP(CHAMPIONSHIP POINT)が高かったCyberAgent Legitに、トーナメントの山を選択する権利が与えられた ©D.LEAGUE 25-26

今回CHAMPIONSHIPに進出したのは、BLOCK HYPEから、レギュラーシーズンを4年連続1位で通過したCyberAgent Legit、ハイレベルなブレイキンを武器とするKOSÉ 8ROCKS、今シーズン大きな躍進を見せた女性チームMedical Concierge I’moon。BLOCK VIBEからは、昨シーズン最下位からはい上がり、同ブロック1位でCS出場を決めたFULLCAST RAISERZ、ヒップホップを軸に独自の世界を築くKADOKAWA DREAMS、個々のダンサーの高いスキルで存在感を放つDYM MESSENGERSが名を連ねた。

1st TRIAL MATCH

KADOKAWA DREAMSKOSÉ 8ROCKSの対戦、両者とも過去にCSの優勝経験をもつ。

ヒップホップをメインとする前者は、音楽の質感を次々と変えながら、シーンに多様性をもたせた。ただ、アクロバットをかなり用いたぶん、ヒップホップ本来の味わいが充分に出せていなかったように思う。勝ちを意識してか、クランプのような力のこもった動きを立ち位置を変えずに連発したシーンが目立ち、このチームには珍しく、フォーメーションの工夫も足りなかったように思う。

ブレイクのチームの後者は、平常心の落ち着きで、安定したアクロバットの連続。投げ上げられて水平回転をして床に腕立姿勢で着地などの非常にリスクの高い技も、スムーズに行われるために危険度を忘れるほど。フロアワークの足のステップの柔らかさも際立った。

結果は、42.5対57.5でKOSÉ 8ROCKSの勝利

2nd TRIAL MATCH

Medical Concierge I’moonDYM MESSENGERSの対戦。ディレクターを敏腕のMIZUEに変えダンサーの入れ替えも行って、今シーズンとくに躍進を続けてきた女性チームと、個々人のスキルの高さが最も際立つチーム。両者ともCS初出場。

前者は、全員で種々のダンスに挑戦してきたが、今回はロッキンをメインとし、まず、ロッカーのsadeとRihoを中心に、ソウルフルで柔らかい動きのかっこよさを追求するダンスを展開。最後は、今シーズン大活躍のワッキンのダンサーMEMEの、パワフルなソロで締めた。全員のシンクロはポッピンを用いた。

後者は、ストリートダンスならではの、自由さをあえて強調しているような作品。ダンスの上手さはわかるが、規定演技のエースのソロも全員のシンクロも、振りに見た目の面白さがあまりなかったのが惜しまれる。

結果は57.4対42.6でMedical Concierge I’moonの勝利。ただし、シンクロパフォーマンスの12.5対0.0という評価は、Medical Concierge I’moonのポッピンが、ポッピンの初歩の、全員のスキルのレベルが明確にならない程度のものだったため、それに満点をつけることには疑問を感じた。

1st SEMI FINAL MATCH

1st TRIAL MATCHで勝利したKOSÉ 8ROCKSと、レギュラーシーズンのBLOCK VIBEで優勝し、SEMI FINAL MATCHからの出場となったFULLCAST RAISERZの戦い。後者は、昨シーズ最下位でCS出場を逃したが、今シーズンはBLOCKの1位で出場を決めた。

前者は、1戦めよりもパワームーヴを少なめにし、ステップワークが多めの軽やかな印象のダンス。エースのYOUTEEはハウスダンスもメインとしており、急速なステップと上体のウェーヴのソロを見せた。

後者はクランプをメインにしながら、テーブルの下や間からダンサーが突如現れたり酒のボトルやハンカチなどの小道具でエピソードを語ったり、シカゴフットワークの高速ステップを入れたりと、バラエティ豊かでかつ、いつも通り大きなエネルギーが充満した舞台だった。

結果は、37.05対62.95でFULLCAST RAISERZの勝利。テクニックは同点だったが、昨シーズン最下位のチームの復活劇を応援している観客が多かったのか、配信、会場ともに観客の点数が高かった。

2nd SEMI FINAL MATCH

2nd TRIAL MATCHで勝利して勝ち進んだMedical Concierge I’moonと、レギュラーシーズンのBLOCK HYPEで優勝し、SEMI FINAL MATCHからの出場となったCyberAgent Legitの対戦。

前者は三味線の演奏などの和のテイストの音楽で、扇を小道具に使ったダンス。再びMEMEをエースにし、ワッキンをメインにした作品。扇を用い着物風の衣裳で日本舞踊を模したようなしなを作る踊り方は、ワッキンやジャズの作品では珍しいとは言えないが、ストップ、クイックなどのリズム変化といい、間の取り方といい、ダンス自体もレベルの高いダンサーならではの上手さで、作品が映えた。扇を使った規程のシンクロパフォーマンスも、よくそろった見事な出来栄え。

後者は、モダンジャズの渋く音取りが難しい音楽で、インナーマッスルでのダンスの上手さを強調した、一見地味な作品。玄人受けのするレベルの高いダンスだった。ただ、最後のロッキンの「バード」のような動きの連続は、たとえばGOGO BROTHERSのような体幹の強さなら高い評価が出たであろうが、少々力みがあって見ていて心地よいとは言えなかったので、マイナスになったかもしれない。

結果は、50.75対49.25の僅差で、Medical Concierge I’moonの勝利
今レギュラーシーズンBLOCK HYPE優勝、昨シーズンのCS優勝チームでもあるCyberAgent Legitが、ここで今季CS優勝不可能となった。

3rd PLACE MATCH

3位を決定する3rd PLACE MATCHは、KOSÉ 8ROCKSCyberAgent Legitの対戦。BLOCK HYPEのレギュラーシーズン第1位と2位のチームである。

前者は琴などの和のテイストの音楽で、パリ・オリンピックで活躍したエースShigekixの、音楽にのるというより巧みに音楽を操るような、しかも複雑な動きの組み合わせのフロアのパワームーヴを、冒頭で際立たせた。その後も、空中でビートをとらえたり、突然の間を入れたりと、アクロバティックな動きでの音楽表現が見事だった。立ち踊りのステップが、少々疲れが出たのかいつもよりもクリアでない部分もあったのが惜しい。

後者は、ポッピンをメインとし、ブレイキンのパワームーヴやロッキンを織り交ぜた作品。ブレイキンは前者に比べシンプルだったが、ソウルフルなポッピンの、ダンスとしてのスマートな美しさが光った。シンクロの整ったシーンを多く見せたことは、今シーズンの評価方法では、得点を稼いだかもしれない。

結果は42.1対57.9でCyberAgent Legitの勝利。配信、会場の観客のポイントが高かったのは、リーダーTAKUMIほかがダンスボーカルグループでも活躍しているため、応援するファンが多いことが考えられる。
シンクロのポイントでも大きな差がついた。常にフロアでのフットワークで行うKOSÉ 8ROCKSのシンクロのポイントが低めであることが多いが、床に手をついているからといって彼らのように軽やかに足を動かすのは容易ではなく、シンクロ専門のジャッジの見方に疑問を感じる。
点差が出たが、実際の舞台の内容は、優劣つけ難い対戦だった。

FINAL MATCH

優勝が決まるFINAL MATCHは、Medical Concierge I’moonFULLCAST RAISERZの対戦となった。

前者は、ピアノ曲を使って、ロッキンをメインとした作品。女性ならではの柔らかい美しさがありながらもパンチの効いたダンス。全員でうきうきと音楽にのっている雰囲気が、楽しかった。

後者は、全員で長年追究してきたクランプの、王道を行くような作品。全身の筋肉でパワーを炸裂させながら、筋肉で叫ぶ。ソロの交換の出し方も巧みで、突然現れる意表をつくもの。
最後は、全員シャツを引きちぎって、筋骨隆々のたくましい男性性をアピール。

結果は、49.05対50.95でFULLCAST RAISERZの勝利
昨シーズン最下位であったFULLCAST RAISERZが優勝まで上り詰めた。
ずっとクランプを追究し続けているこのチームが、突然今シーズン、ダンスのスキルや演出のレベルを上げたという観はなく、むしろ、昨シーズン、彼らがなかなか勝てなかったことに、筆者は昨シーズンの審査員のクランプというジャンルの表現に対する評価へ疑問を感じたほどだった。
ただ、クランプのように特徴がはっきりしているダンスジャンルのみで作品を創り続けると、マンネリ感を与えかねないため、昨シーズンは新たな側面を加えようとして演出に迷いが見えたことも確かである。今シーズンは、シカゴフットワークというまったく異なるジャンルのダンサーを入れて作品の表現の幅を広げたことで、作品に多様性が出たと同時にクランプの真価も際立ったように思われる。

FULLCAST RAISERZのFINAL MATCHのパフォーマンス ©D.LEAGUE 25-26

CHAMPIONSHIPでの最優秀ダンサーMVDには、FINAL MATCHでFULLCAST RAISERZのエースを務めたINFINITY TWIGGZが選ばれた。

気迫の演技でMVDに輝いたFULLCAST RAISERZのINFINITY TWIGGZ。優勝のコメントを求められ、「昨シーズンは14位中14位で、何も上手くいかない、何も伝わらないと思った時も、俺らは誰も諦めなかった。みなさんに伝えたいのは、『あなたが(自分のやっていることに対して)全力で、愛があるなら、絶対にあきらめないでください。そうすれば絶対に結果はついてきます』。そのことを僕らが証明しました」と語った ©D.LEAGUE 25-26

今シーズン全体を振り返って思うのは、毎シーズン、ダンサーたちのダンスのレベルが高くなり、今シーズンはさらに高くなり、どんどん甲乙つけがたいパフォーマンスの連続になってきたこと。それだけに、今シーズン新規参入した若手たちのチームLDH SCREAMとM&A SOUKEN QUANTSなどがほとんど勝てなかったのは、演出振付のアイディア云々よりも、ダンスの基礎力の違いであると思われた。地道にダンスの基礎力や筋力を向上させることが、勝利への第一歩であることに気づいてほしい。

今シーズンの問題点として感じたことは、まず、昨シーズンからはじまった「シンクロパフォーマンス」の評価。これまで何度も書いたように、この評価項目は、個性が評価されるべきストリートダンスの本来の姿に反することを強いている。また、例えばValuence INFINITIESはヒップホップ、ブレイキン、ハウスの名舞踊手ばかりの集団であるが、彼らのようにあまりにも異なるダンスジャンルのダンサーたちから成る混合チームは、同じジャンルのダンサーのチームに比べ、シンクロで使う動きが必ずしも全員が得意とするものではなくなり、動きのレベルもシンクロの度合いも低くならざるを得ない。「シンクロ」の評価を続けるのであれば、評価の仕方にもっと工夫が必要なのではないか。

配信、会場の観客のポイントが、今シーズンから50パーセントを占めるようになったことで、審査員のポイントでは勝利しているが、観客のポイントで負けた対戦もいくつか見受けられたことも気になった。観客を増やすことは最重要であるので、観客のポイントを増やしたのは理解できるが、踊る前から応援するチームにポイントを入れている観客もいるのはどうか。
筆者としては、観客には好きなチームを盲目的に応援するのではなく、パフォーマンスの優劣を判断する楽しみを感じてほしい。観客の冷静な判断力によるチーム愛が育つことが、Dリーグをより発展させることにつながると思う。

来シーズンはさらにチームが増え、全20チームでの戦いになるという。ますます多様な充実した対戦が期待される。

悲願のシーズン優勝を果たし、チャンピオンフラッグと優勝賞金3,000万円を手にしたFULLCAST RAISERZ。マイクを握ったKTRディレクター(写真左端)は「昨シーズンはどん底を経験した。それでも“優勝を獲る!”と信じてやってきた」と感無量の表情で語った ©D.LEAGUE 25-26

この記事を書いた人 このライターの記事一覧

早稲田大学大学院博士課程満期終了。ハーバード大学大学院、ロシア国立プーシキン記念外国語大学留学。 早稲田大学、工学院大学、東京経済大学で非常勤講師として、舞踊史、ロシア・バレエ史、ロシア語の講義、ストリートダンスの実技を担当。 舞踊評論家として、読売新聞、日経新聞、ダンスマガジン、各種公演プログラム等々に、舞踊評論を1980年代前半から寄稿。 文化庁芸術選奨推薦委員、東京新聞全国舞踊コンクール、さいたま全国舞踊コンクール現代舞踊部門審査員、まちだ全国バレエコンクール審査員。 著書に、「バレエ王国ロシアへの道」(東洋書店新社、2022年)、「二十世紀の10大バレエダンサー」(東京堂出版)、「知られざるロシア・バレエ史」(東洋書店)他。訳書に、「ワガノワのバレエレッスン」(新書館)他。論文に、「マリウス・プティパの創作の変遷」「F・ロプホーフのダンスシンフォニー『宇宙の偉大さ』」他多数。 バレエを東京バレエ団元バレエ・ミストレス友田弘子、ボリショイ・バレエ団元プリンシパルでモスクワ国際バレエコンクール第一回優勝者ゲンナージー・レージャフ他、コンテンポラリーダンスをネザーランド・ダンス・シアターの元中心的ダンサー中村恩恵、ストリートダンスを国際ダンスバトル世界チャンピオンSHUHOとGO GOBROTHERSのReiに師事。舞踊歴約60年現役。

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