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【第7回】ウィーンのバレエピアニスト 〜滝澤志野の音楽日記〜「3枚目のCDが発売に!」

滝澤 志野

ウィーン国立バレエ専属ピアニストとして、バレエダンサーを音楽の力で支えている滝澤志野さん。
彼女は日々の稽古場で、どんな思いを込め、どんな音楽を奏でているのでしょうか。

“バレエピアニスト”というプロフェッショナルから見たヨーロッパのバレエやダンサーの“いま”について、志野さん自身の言葉で綴っていただく月1連載。
日記の最後には、志野さんがバレエ団で弾いている曲の中から“今月の1曲”を選び、バレエチャンネルをご覧のみなさんのためだけに演奏した動画も掲載します。

美しいピアノの音色とともに、ぜひお楽しみください。

3枚目のCDが発売に!

夏に収録したレッスンCD 「Dramatic Music for Ballet Class 3 」の発売日が決まりました。
12/5に全国のバレエショップで発売が開始されます!

3枚目のCDジャケット。

ウィーン国立バレエ団プリンシパルのナターシャ・マイヤーがジャケットを飾ってくれました

ジャケット写真は2枚目のCDの時と同様に、バレエ団専属フォトグラファー、アシュレイ・テイラーが撮影してくれました。

こちらが、いつも素敵な写真を撮ってくれるアシュレイです!

撮影はこんな楽しいシーンもありつつ和やかに(笑)

そもそも、バレエレッスンCDを出すということは、私の中の「手が届かなそうな夢」でした。バレエピアノの仕事を始めてからというもの、勤め先のバレエスタジオのCDを片っ端から聴き、バレエショップに出かけては視聴して、お気に入りをiPod(時代ですね笑)に入れて聴いていました。ほとんど趣味の世界(笑)。

いまはインターネットでバレエレッスンがたくさん観られるし、バレエピアニスト人口も増え、後進の指導にあたっているピアニストさんも多いと思うのですが、私が若い頃は暗中模索するしかなく、レッスンの現場と並行して、素敵なピアニストさんのCDを聴くことでバレエピアニストの礎を作っていただいたと思っています。

そんななか、私だったらこんなCDがつくりたい、こんなCDが欲しい、という気持ちが朧げながら生まれてきました。

私の想い。それは「バレエの美しさ、音楽の美しさを伝えたい、そして芸術の素晴らしさを分かち合いたい」というもの。

最高に美しい音で、芸術性の高いレッスンCDを作りたい。

しかし、私は実務能力に欠けており、とても自分ひとりでそんなCDを作れるわけもなく、「叶わなそうな夢」として、でも、夢だけが自分の中で膨らんでゆきました。当時の夢ノートに、CDのイメージを事細かに書き込んでいました。コンセプト、選曲、楽曲解説つきのCDであること、ジャケット写真のイメージまで……。ただ、それを実行する術だけが分からなかったのです。

そして、ウィーンの劇場に就職して数年が経ち。

ウィーンでは仕事漬けの日々で、プライベートも顧みず、芸術に没頭していました。そんななか、私がここで見ている、あまりにも美しい芸術、美しいバレエを日本に届けたい、そんな気持ちが大きくなってきた頃、オン・ポワントの阿部さや子さんをご紹介いただき、私は新書館とSony Musicという最強チームに恵まれ、CDを録音することになりました。2枚目からは、互いの海外生活を支え合った美しき友人、永橋あゆみさんが監修に加わってくれることになりました。 ……3枚目のCDにして、こんなことを暑苦しく語るのは少々遅過ぎるきらいもありますが、いま、せっかく音楽日記連載の機会をいただいているので、私の初心を記しておきたくなりました。

ドラマティック・バレエを中心に録音した1枚目・2枚目より、今回のCDはさらに「現在形」。普段からクラスでよく弾いていて、ダンサーたちとともにお気に入りの曲、そして素晴らしいダンサーたちにインスパイアされた曲を収録しています。

今年3月、「Stars in Blue」日本ツアーでご一緒したオルガ・スミルノワさんが踊られた『瀕死の白鳥』、そして、7月の録音前日、エネルギーをいただきに行った「オーチャード・バレエ・ガラ」のゲネプロで観た菅井円加さんの『ヴァスラフ』。この2曲はおふたりの芸術へのリスペクトも込めて、ノーカットで収録しています。

オルガ・スミルノワ「瀕死の白鳥」

そして、ボーナストラックには、いままで数々の公演で深い想い出をいただいた、『マノン』の「沼地のパ・ド・ドゥ」を。

芸術はこんなにも美しいということ、そしてそれは一部の人間のものではなく、すべての人に開かれているということ。ひとりでも多くの方と共有できたら幸いです。

チームで手塩にかけて作った「Dramatic Music for Ballet Class 3」 、私たちの想いがたくさんの方のもとに届きますように。

今月の1曲

今月の1曲は、ボーナストラックに収録した、『マノン』終幕の「沼地のパ・ド・ドゥ」。逃げてきたルイジアナの沼地で、デ・グリューの腕の中で息絶えるマノン。ここではカットバージョン(+おまけの録音風景)で動画を作りましたが、CDではノーカット版で、音質はこれより数段素晴らしいので、ぜひCDで聴いてみてくださいね!

2019年11月20日 滝澤志野

★次回更新は12月20日(金)の予定です

New Release!

ドラマティック・ミュージック・フォー・バレエ・クラス3
ウィーン国立バレエ専属ピアニスト 滝澤志野

ドラマティック・バレエの名曲に加え、ウィーンのダンサーたちのお気に入りの曲や、ひたむきに稽古するダンサーたちにインスパイアされた曲をセレクト。ピアノの生演奏でレッスンしているかのような臨場感あふれるサウンドにこだわりました。

●ピアノ演奏:滝澤志野
●監修:永橋あゆみ(谷桃子バレエ団 プリンシパル)
●発売元:新書館
●価格:各3,960円(税込)

★詳細はこちらをご覧ください

 

ドラマティック・ミュージック・フォー・バレエ・クラス1&2 滝澤志野  Dramatic Music for Ballet Class Shino Takizawa (CD)
バレエショップを中心にベストセラーとなっている、滝澤志野さんのレッスンCD。Vol.1では「椿姫」「オネーギン」「ロミオとジュリエット」「マノン」「マイヤリング」など、ドラマティック・バレエ作品の曲を中心にアレンジ。Vol.2には「白鳥の湖」「眠れる森の美女」「オネーギン」「シルヴィア」「アザー・ダンス」などを収録。バー、センター、ポアント、アレグロなど、初・中級からプロフェッショナル・レベルまで使用可能なレッスン曲集です。
●ピアノ演奏:滝澤志野
●Vol.2監修:永橋あゆみ(谷桃子バレエ団 プリンシパル)
●発売元:新書館
●価格:各3,960円(税込)

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大阪府出身。桐朋学園大学短期大学部ピアノ専攻卒業、同学部専攻科修了。2004年より新国立劇場バレエ団のピアニスト。2011年よりウィーン国立バレエ専属ピアニストに就任。 レッスンCD「Dramatic Music for Ballet Class」Vol.1、2、3、「Dear Tchaikovsky~Music for Ballet Class」、「Dear Chopin〜Music for Ballet Class」をリリース(共に新書館)。国内のバレエショップを中心にベストセラーとなっている。2023年7月大阪・東京で初のピアノソロリサイタルを開催。初のピアノソロアルバム「Brilliance of Ballet Music~バレエ音楽の輝き」も同時発売。

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