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【音声あり】ミュージカル「CROSS ROAD~悪魔のヴァイオリニスト パガニーニ~」藤沢文翁 公開インタビュー

青木かれん Karen AOKI

音声収録・編集:Ballet Channel

劇作家・藤沢文翁(ふじさわ・ぶんおう)が原作・脚本・作詞・演出を手がけるミュージカル『CROSS ROAD~悪魔のヴァイオリニスト パガニーニ~』が、2022年6月より日比谷シアタークリエで上演中です。
同作は藤沢の脚本・演出により2012年に発表された朗読劇がミュージカル化されたもの。19世紀のヨーロッパを舞台に、実在のヴァイオリニスト・パガニーニをモチーフにしたオリジナル作品です。

去る2022年5月25日、バレエチャンネルでは藤沢文翁さんをTwitterスペースにお招きして公開インタビューを行いました。
その内容をダイジェストでお届けします。
インタビュー全編を聞きたい方は、本記事のトップにある音声動画でどうぞ!

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パガニーニのヴァイオリンをダンスで表現?!

ミュージカル『CROSS ROAD~悪魔のヴァイオリニスト パガニーニ~』はどんな作品ですか? パガニーニを描こうと決めた理由を教えてください。
〈十字路で悪魔と契約を結んで、超絶技巧を手に入れた〉と言われる19世紀最大のヴァイオリニスト、ニコロ・パガニーニが主人公の作品です。パガニーニは、あまりにも技術が高かったために本当に悪魔と契約したと信じられていて、多くの逸話を持つ音楽家たちの中でもこれほどのインパクトを持った人は他にいません。僕が興味を持ったのは、当時みんなを熱狂させ、コンサートのチケットが手に入らないほど愛されながら、悪魔と恐れられて死後はその棺を36年間も教会から拒否されてしまうというパガニーニの二面性です。クラシックの世界では悪魔のようにすごいという意味で「demoniac」という言葉を使うことがあるのですが、パガニーニはまさに「demon」だった人。それで主人公にしました。
今作の音楽について、どんなこだわりがありますか?
音楽監督の村中俊之さんと最初に話したのは、音楽の悪魔がいるとしたら、クラシックやロックといったひとつのジャンルに捕らわれず、いろんな国のいろんな曲を奏でるだろうということでした。ですから本作では、たとえばタンゴ的な曲もあればサルサのような曲も登場します。いろんな曲を、時に恐ろしく、時にチャーミングに悪魔が奏でさせるというのが、音楽についてのこだわりです。とあるシーンでは、みなさんも耳にしたことがあるパガニーニの『カプリース』を思わせる演奏を入れています。
ダンスが印象的なシーンはありますか?
パガニーニの演奏を「超絶技巧のヴァイオリンを弾くこと」では表現せずに、ダンスと音楽と歌で表現しています。なぜかというと、練習すれば「ヴァイオリンを弾ける人」という表現はできるとしても、彼が悪魔と契約したと分かるほどの演出をするのはとても難しかったから。ぜひ「ヴァイオリンを演奏するダンス」もお楽しみください! ただそのぶん、パガニーニが悪魔と契約したあとから1幕目ラストまでのダンスはもう、息が続くのかな?というぐらい大変。まるでグラン・パ・ド・ドゥの連続みたいな感じです(笑)。
振付はダンスエンターテインメント集団・梅棒の楢木和也さんですが、振付の面白いところを教えてください。
楢木さんは作り方が僕と似ていて、感覚的なものから入ってくるんです。「あ、思いついた!」と言って、どんどん身体を使って説明し始めるのが楢木さんスタイル。いざ振付をする時に、ノートにいっぱい書いてあったことを全部現場で変えちゃったりするので、面白いなと思います。そしてたとえば僕が「この小道具を使って何かできない?」と言ったら、本当にやってくれたりもします。
衣裳にはどんなこだわりがありますか?
いつも私の作品を担当している衣裳の大戸美貴さんという方がいまして。パガニーニたちは19世紀の衣裳を着ていますが、音楽の悪魔の衣裳に関してはそれよりもさらに昔の衣裳を着ているんです。悪魔ですから時代背景も一切無視して、僕と大戸さんの間で「この時代のこの衣裳がいちばん良いよね」という視点で決めています。
バレエファンに観てほしいポイントは?
今はミュージカルやバレエ、オペラ、ストレートプレイといったジャンルで区切られていますが、じつは根っこの部分は一緒で、エモーショナルな部分をどの手法で表してきたかということだけだと思うんですよね。僕の好きな言葉に「言葉で表現しきれなくなったところから音楽が始まる」というのがあるのですが、音楽だけでもすべてを表すことはできないから、たとえばバレエで表現することもある、ということではないでしょうか。つまり人間の心はとても複雑で繊細なものだからこそ、さまざまな表現方法がある。ミュージカルでは歌の部分も楽しめるし、詞の部分も楽しめるし、踊りの部分も楽しめます。ですからバレエファンのみなさんが心惹かれる点もきっと見つかると思います。
藤沢さんはイギリス留学の経験をお持ちですが、留学中にバレエ鑑賞はしましたか? 印象に残っている公演はありますか?
僕がイギリスにいた間に有名な振付家が亡くなって、英国ロイヤル・バレエでその追悼公演がありました。音楽はフォーレの『レクイエム』だったと思うのですが(*、亡くなった振付家に舞踊を捧げて、それをお客様がお金を払って観に来て、みんなでその人のことを悔やみ、そして尊敬するというのが素敵だなと感じました。ほかには、英国ロイヤル・バレエの『くるみ割り人形』は、(ドロッセルマイヤーの魔法で)クリスマスツリーが大きくなっていく演出もお金がかかっているしすごいなと思います。でもドロッセルマイヤーにあれほどの力があるなら、もう自分でねずみたちと戦えよって思う(笑)。そのくらいの魔力ですよね(笑)。
*『レクイエム』(振付:ケネス・マクミラン/音楽:ガブリエル・フォーレ)のこと
好きな振付家やバレエ作品を教えてください。
僕はモーリス・ベジャール作品がすごく好きで、シルヴィ・ギエムの『ボレロ』をよく観ていました。ずっと繰り返される単調なリズム、それがいつのまにか高揚して、僕たちもどんどん掻き立てられていって、最後はもう狂喜乱舞で終わる。あの感覚が音楽的にもダンス的にもとても好きです。
好きなダンサーはいますか?
男性だとジル・ロマンが好きでした。女性だとアリーナ・コジョカル。彼女はすごく小柄なのにとても大きく踊る方で、いちばん好きだったのは『ドン・キホーテ』です。あの小さな身体で、周りをわあっと魅了していく踊りがとても好きでした。
藤沢さんの思うバレエの魅力とは?
バレエは「余白の美」というか、言葉がないからこそ音楽を舞踊に託して行うパフォーミング・アートだと思います。たとえば『ジゼル』を観る時に、お客さんがそれぞれの言葉や感情をのせながら観るから、それぞれの悲しい物語、悲しい思いや熱い感情を表現できると思うんです。それが素晴らしいところ。あの余白を自分の心で埋めていけるのがずばり、バレエの魅力じゃないかなと思います。
もしバレエ作品を作るとしたら、どんな作品を作りたいですか?
『CROSS ROAD~悪魔のヴァイオリニスト パガニーニ~』は、できるかもしれないですね! 自分が天才ではないと気づくほどの才能の持ち主が、追い詰められて悪魔との契約で超絶技巧を手に入れるも、弾くたびに命が減っていくところは踊りで表現しやすいと思います。

リスナーからの質問に生回答!

「藤沢さんから見たそれぞれのキャストについて教えてください」
中川晃教さんはアムドゥスキアスという音楽の悪魔の役で出演しているのですが、もうこの方にしか歌えない楽曲みたいなものも存在していて。その部分ではかなり「当て書き」みたいになっているところもあります。山寺宏一さんは朗読劇の初演の時にも同じアルマンドというパガニーニの執事の役を演じていて、非常に思い出深いです。そして、東宝演劇の中でレジェンドというべき香寿たつきさんや、畠中洋さん戸井勝海さんなど、ベテラン勢バレエ作品にが名を連ねています。そこに次世代を担っていく若手のミュージカル俳優たちが入ってくるのが面白いですし、バランスが良いと思います。青野紗穂さんは若い時にアポロシアターで優勝しているディーバみたいな方なので、歌唱も楽しみにしていただきたいです。あとはとにかく、パガニーニ役の相葉裕樹さん水江建太さんが美しいです。
「今作ではパガニーニとアルマンドがWキャストですが、キャストによる違いの中で注目してほしいポイントはありますか?」
相葉さんはミュージカルに長く出演しているので引き出しも多いですし、「才能あふれるパガニーニ」という音楽的な側面が強い気がします。水江さんはパガニーニの狂気の部分がすごく宿っているというイメージがあります。狂気がありながら、心の中には寂しさを持っているお芝居をする方です。
アルマンドはパガニーニに寄り添う執事なんですが、山寺さんと戸井さんの寄り添い方のアプローチがまったく違うので、そこも楽しみにしていただきたいと思います。
ジプシーの娘アーシャ役の早川聖来さんのバレエ経験を活かした振付はありますか?」
ネタばらしになってしまうので、一応ある、と答えておきます。彼女の能力を充分に活かした演出にしたいなと思っています。
「今回アンサンブル・キャストに若い方が多い気がします。アンサンブルとはどのような役割でしょうか?」
アンサンブルはミュージカルの要です。プリンシパルの人たちはひとつの役を演じて(深く)落とし込んでいくのですが、アンサンブルのみなさんはとにかくいろんな役を演じなきゃいけない。とくに今回は7人でまわしているので、その方々にも着眼してほしいです。
「初心者向けに、バレエを観る時のポイントを教えてください」
バレエは言葉のない表現なので、ざっくりとストーリーを知っておいたほうがいいと思います。そうでないと今何のシーンを踊っているのか、見失ってしまうこともあるので。いちばんいけない見方は、ついていけなかったシーンを探すことです。むしろ今の動きで何か気持ちが伝わったという、分かったところに感動を覚えたほうがいいと思います。この世界は感動できるものが多ければ多いほど楽しいです。
「初心者が最初に観るバレエはどんな演目がいいですか?」
年齢にもよりますが、お子さんだったら『くるみ割り人形』をおすすめしますし、恋愛的なストーリーが好きな方には『ジゼル』をおすすめします。いっぽうで、日本人に理解しやすい物語は『白鳥の湖』だと思うんですよね。たとえば鶴が恩返しをするお話とか、日本には昔から「人間と動物の恋愛」の寓話が多いので。それに『白鳥の湖』の音楽はとても身体に入ってきやすいと思いますし、おすすめです。
「作品を作るうえで大切にしていることは何ですか?」
脚本を作る時、すなわち0から1を作るという部分では、普段からアンテナを張っておくことを大切にしています。そして1から10だったり100だったりを作るうえで大切にしているのは、スタッフやキャストとのコミュニケーションです。僕は衣裳を作ったりセットをデザインしたりはできないし、音楽を作れたりするわけでもありません。演じてくれる人だって必要です。つまり、その先に必要なのは「人」だからこそ、コミュニケーションとリスペクトを持つことを大事にしています。

最後に、読者やファンのみなさんにメッセージをお願いします!
ミュージカル『CROSS ROAD~悪魔のヴァイオリニスト パガニーニ~』は僕の処女作となりますが、みなさんのおかげで1が10だったり100だったりになっている作品です。クリエイティブな現場で、これから生まれるものにワクワクしている状態が続いています。その結果生み出されたもの、新しい物語が生まれる瞬間を、ぜひみなさんに目撃してほしいです。

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藤沢文翁 Bun-O Fujisawa

東京都港区六本木生まれ。英国で演劇を学んだ劇作家・舞台演出家。
ミュージカル、ストレートプレイ、アニメ、音楽朗読劇の原作・脚本・演出を手掛け、特に英国朗読劇を独自に改良した音楽朗読劇は「藤沢朗読劇」と呼ばれている。
ロンドン大学ゴールドスミスの演劇学部に入学し、同大学にて戯曲脚本・演出術を学び卒業。在学時代からロンドンを拠点に演劇活動を開始し注目を集め、2005年12月4日、日本人として初めて英国ロンドンのKings Head劇場でHYPNAGOGIAを上演し劇作家デビュー。
現在は東宝主催 クリエプレミア音楽朗読劇VOICARION、Production I.G主催Theatrical-Live、そしてソニー・ミュージックエンタテインメント主催 READING HIGHの原作・脚本・演出を担当。ゲーム化やコミカライズ、アニメ化など様々な展開を見せており、それら作品において作詞や音響監督も務めている。能楽五流派の一つ、喜多流(公益財団法人 十四世六平太記念財団)の理事に就任。
藤沢文翁オフィシャルサイト:http://www.bun-o.com/

公演情報

ミュージカル『CROSS ROAD~悪魔のヴァイオリニスト パガニーニ~』

原作・脚本・作詞・演出:藤沢文翁
作曲・音楽監督:村中俊之
音楽スーパーバイザー:塩田明弘

製作:東宝株式会社

出演:中川晃教、相葉裕樹/水江建太(Wキャスト)、
早川聖来(乃木坂46)、青野紗穂、畠中洋、山寺宏一/戸井勝海(Wキャスト)、香寿たつき

2022年6月7日(火)~6月30日(木)
会場:日比谷シアタークリエ

【詳細・問合せ】
東宝テレザーブ TEL:03-3201-7777

◆特設ページはこちら

※公演については必ず主催者情報をご確認ください。

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